2021年7月2日 文教委員会
岩手県の中学生スポーツ・文化活動に係る提言に関する質疑
(大要)


・自主的・自発的な部活動について

【斉藤委員】
 最初にですね、この提言の性格と県の方針との関わりをお聞きしたいんだけれども、普通は提言というのは、提言を受けて県が方針化するというのが普通ですね。ところが先ほどの説明を聞いていると、答申がもう方針そのもので、個別にあとは具体化するという風にしか聞こえないんだけれども、この有識者会議の提言の性格、それについて教育委員会や文化スポーツ部が、これを受けて計画を立てるとか方針を決めるということではないんですか。

【保健体育課総括課長】
 平成30年度に国のガイドライン等を受けて、県の方針を策定いたしました。令和元年度に、文化庁のガイドラインを盛り込んだ内容を含めまして、県の方針を改定いたしました。それに従って、今まで部活動を関係者が一体となって進めておるところです。ただ、課題と申し上げました部活動、クラブ活動ではまかないきれない多様化ですとか、さまざま働き方改革ですとか新たな動きが出てまいりまして、そういった今後のあり方を関係者からご意見をいただいて、今回まとめていただいたものということでございます。
 方針につきましては、その提言を受けまして、今後どうやって取り組むかということをご提言いただいた内容でございますので、方針の改定ですとか、今後必要なものというのも盛り込みながら進めていくということでございますので、これまでの方針は従来そのまま進めておりますが、必要な改定というのは取り組みながら改定していくということになります。

【斉藤委員】
 そうすると、今回の提言を受けて、個別具体的な課題については具体化していくと、こういうことですね。
 それで、個別にお聞きをしますけれども、4ページ目のところでですね、「中学校における自主的・自発的な参加により行われる部活動の推進」ということで、資料が2つ出ています。令和元年度は、「任意加入とし、いずれの部にも所属しないことを認めている」のは157中4校でした。令和2年度は、「いずれの部にも所属しないことを認めている」というのが150校中60校。ということは、いわば任意加入にしているのは60校ということですか。

【保健体育課総括課長】
 資料にございます令和2年度における中学校の部活動加入ということで、任意加入としているのは、この時点では60校というデータでございます。

【斉藤委員】
 最新のデータはあるんですか。150校中60校だったら、自主的・自発的活動にならないじゃないですか。令和2年度は、「運動部・文化部等への所属はさせる」というのが90校ですよ。これはあなた方の部活動の方針でも明記されているわけでしょ。自主的・自発的な、強制してはならないと。しかし実態は90校が強制をしていると。直近のデータに違いはあるんですか。

【保健体育課総括課長】
 今年度の部活動の加入に関する調査は、11月を目途にしておりますので、3年度のデータはまだ把握していないところございます。

【斉藤委員】
 これは、教師のパワハラ・体罰事件、深刻な事件を通じて、私はこの部活動のあり方について、これは学習指導要領でも「自主的・自発的活動」と位置づけられているのに、岩手は全国で一番強制加入だったと。その改善を求めてきたけれども、まだ多数がそうなっているということですね。
 教育長、これをどういう風に見ていますか。任意にしているところの方が少ないんですよ。これだけあなた方が徹底してきて、なんでこうなっているのか。その問題は何なのか。

【教育長】
 ここで出された提言のデータにつきましては、委員ご指摘の通りの数値になってございます。それを受けまして私どもも、自主的・自発的な活動にということで方針を見直ししてございまして、今それに沿ってですね取り組みを進めているところでございます。

【斉藤委員】
 答弁になっていない教育長。なんでこんなに遅れているのかと。いわば多数が強制加入になっているんですよ、このデータだと。おかしいでしょう。自主的・自発的活動というのは、部活動の根本問題だと思っているんですよ。後でも少し提起しますけれど。例えば、以前の改定された部活動のあり方に関する方針でも、私は矛盾があると思うのは、「校長、各部の責任者は、毎年度部活動にかかる活動方針を策定し公表する」と。いわば顧問が活動計画を策定し、生徒・保護者に情報提供するとなっているんですよ。ところが文章の中では、「活動計画を生徒自身が作っていく」となっているんですよ。顧問が作るから顧問の部活動になっちゃうのですよ。本当にこれは部活動のあり方の改定版ですよ。おかしいんだと思いますよ、こんな表現は。自主的・自発的活動だったら、生徒と一緒に活動方針をつくると。こうなんなくちゃダメでしょう。だからあなた方の弱点はそういうところに出ているんですよ。そうしてこそ、自主性・自発性・創意工夫というのは生まれるんだと思うんですよ。
 不来方の事件だって、顧問教師が自分の部活動のように扱ったから、あのような残念な事件になったと思うんですよ。生徒・部員が主役じゃないんです。主体じゃないんです。
 そういう意味で、ここの部活動の根本である自主的・自発的な参加によって行われる部活動という、この徹底にもっと教育委員会が全力をあげるべきだと。これは、言葉はきれいだけどね、大変な課題です。生徒が主体となった活動にするということは。今そこにやはり根本の問題があるんだと私は思うんですよ。
 素晴らしい指導者の体験なんかを聞いても、素晴らしくなればなるほどあんまり口出さないで、生徒に考えさせて、いろんな課題に直面したときに、生徒自身がそこを打開していく、解決策も出していくと。それでグッと伸びるという話もよく紹介されるんですね。言われたことをやっているだけでは、一定の力はつくけど、本当の意味の実力にならない、私はそのように思うんです。だからそういう意味で、この4ページのところを私は紹介したんですけれども、ここの冒頭にあるように、やはり部活動のあり方の根本問題、ここを2年3年経って、まだ強制加入が多数を占めているという状況を放置していたら、部活動の改善にはならないと。私はそのように思いますので、ちょっと教育長の答弁は、どうやってこれを徹底しようかという熱意を感じさせないものでした。
 私は部活動の改定の方針の今の具体的な問題を指摘しました。活動方針を顧問教師が決めて、生徒・保護者に情報提供する。これはおかしいんじゃないですか。

【保健体育課総括課長】
 部活動のあり方に関する県の方針のご指摘をいただいたところでございますが、まさに今回提言を受けて、さらに取り組むべきこと、あるいは改善すべきことが明らかになったととらえてございます。委員ご指摘の部分につきましても、提言では「生徒自らが部活動の計画段階から参画し、生徒本位の活動を」ということを提言を受けましたので、今後改めて進めてまいりたいと考えておりますし、部活動の任意加入につきましても同様でございまして、これまでも各市町村等と一体となって取り組んでまいりましたが、現実はなかなか改善されないところがございました。今回提言を受けて、改めて提言を周知しながら、各市町村・市町村教育委員会と理解を共有し、情報を共有し進めてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 この自主的・自発的な活動ということが部活動の根本であり、岩手の場合特に、この問題の正しい解決なしに部活動の改善はあり得ないと。そして実態にもあるように、かなり現場に抵抗感、不理解がありますね。校長にもあるし、部活動担当の教員にもあるんだと思いますよ。なかなかこれは根深い。それを本気で、いろんな事件も通じてですね、それを打開するのがまず一番の問題ではないかということを指摘をしておきます。

・部活動の休日の設定について

【斉藤委員】
 2つ目にこの提言では、文科省の提言の目玉はここだと思うんですけれども、中学生の多様なニーズに応えるための指導者および活動場所の確保というので、「休日の部活動を地域に移行する」と。これは文科省の提言の目玉ですね。そして、今回も新しいテーマはここなんだと思います。私はこの点でも、部活動のあり方では、いわば休みなしに部活動をやるのは止めなさいと。これはスポーツ医科学、成長過程の子どもたちのそういう状況からいっても、中学生は週2日休みとなっていますよね。特に休日を中心にして。休日休むべきだと提言していて、「休日は地域に活動を移行する」というのは矛盾があるんじゃないですか。部活動のあり方では、例えばいろんな地域の活動あると思うんだけれども、そういうものも含めた定義なんですよ、週2日休めというのは。ところが今回「休日は地域に部活動を移行しなさい」と言ったらいつ休むんですかと。これは部活動のあり方に関する方針にも反するということになりませんか。そこの整合性はどうとるんですか。

【保健体育課総括課長】
 いま委員ご指摘の休日を地域の部活動に移行することによって、生徒がより負担に感じる、あるいは活動の過多というのも懸念されるところでございますが、そういった生徒の活動をトータルで、休日の部活動も考え、平日と照らし合わせてトータルで生徒の適切な部活動というのを進めていくべきということで、細かい部分についてはやはりさまざま課題がありますので、整理していかなければならないと考えてございます。

【斉藤委員】
 細かい課題じゃないんですよ。部活動のあり方で提起した中心問題なんですよ。中学生は週2日休ませなさいと。これは教員のためだけじゃないんですよ。子どもたちの健全な成長・発達のために、ジュニアアスリートのですね、これは国際オリンピック、エリートのジュニアアスリートに対する声明の中で科学的に提起をされていることなんですよ。だからそれを受けて、部活動のあり方では、中学生は休日を含めて2日休みなさいと。大会があったときには振り替えで休ませなさいと、ここまでなっている。これは個別の課題じゃないんです。部活動のあり方のもっとも重要な具体的課題だったんですよ。私はその整合性を聞いているのです。そういう風に提起しながら、休日は部活動は地域に移行しなさいと。だったら休日・休養はどう取るんですか。

【保健体育課総括課長】
 部活動の方針の中では、中学校の場合でございますが、平日1日、土日どちらかは1日を休日ということで、本県でもしっかり守られている状況にございます。
 あわせて、地域移行になった場合も、その活動の休養日を守った状態でということで、地域における部活動でもこういった方針を踏まえた、関連をさせながらということで、やはりこれはしっかり、学校から離れて地域の指導者に預けるばかりではなくて、その活動の実態も学校もとらえ、学校の部活動の状況も、休みの状況も含めて、地域の指導者が理解し―ということで、そういったところで関係者が情報共有をしながら適切な休養日、適切な活動量というのを踏まえた指導を行うべきと考えております。

【斉藤委員】
 この休養日の問題は、あくまでも部活動のあり方方針が基本だと。だから休日に移行する場合でも、週2日休ませるということを前提にした活動にしなくちゃならない。これはぜひ徹底していただきたい。
 これは何というか、日本的な根性論が土台にあるんですよ。大谷選手の話題があるけど、練習しすぎだと言われているんですよ日本の選手は。大リーグの選手と比べると。だからもっと科学的に、本当に時間を集中的にやるという。そして必要な休養は取ると。特に成長世代の、こういうジュニアの世代というのは、そのことがすごく大事で、最近例えば小学校なんかでいくと、子どもたち・少年の野球肘というんですか。これを放置すると中学校・高校で投げれなくなるという、今そういうことを地域で大学の先生なんかが協力して、山形がこの間テレビで紹介されていました。みんな点検をして、異常があれば休ませると。そういうことが今までなくて、本当に成長する芽をたくさん潰してきたんだと思うんです。だからそういう意味で、休養を取らせる、休養日を設けるということは、部活動の改善の大変重要な中身なので、ぜひそれを生かすようにやっていただきたい。
 地域への移行で最後に言えば、「地域総合スポーツクラブ」とありますね。盛岡の資料も見たんだけれども、盛岡は大きいのでいろんなスポーツクラブがあります。年会費3000円〜5000円、一月だいたい3000円〜5000円のラインなんですね。だから、お金がかかるんですよ、地域でこういうのに参加しようと思えば。ただ盛岡はそういう条件あるけれども、盛岡以外となったらそんな簡単ではないんだと思うんですね。盛岡では経済的負担が問題だし、それ以外でいけばそれだけの受け皿があるかというと決してそうではないのではないかと。そういうことも含めて、私は地域への移行というのは結論先にならないで、今の部活動の改善を進めながら、子どもたちの希望にどう応えるようなものに改善するかということが必要だと。

・大会のあり方について

【斉藤委員】
 この関わりでですね、この提言でも触れているんだけれども、大会のあり方を見直すべきだと提案しているでしょ。私は陸上部の顧問にパワハラを受けて、県内有数の選手が陸上部を辞めざるを得なかったという相談を受けたときに、その陸上部の大会が毎月のようにあるんですよ、びっくりしたけれども。そうすると、目先の大会でどういう風に記録を伸ばすか、勝つかというクラブ活動になっちゃってる。中学校1年生からですよ。これは子どもを潰すようなやり方なんだと思うんですね。だから中体連だけじゃないんです。陸連の大会とか何かの大会とか本当に、そういうものを私はかなり思い切って整理をして、やはり中学生の時代は数ヶ月・半年ぐらいの成長の段階を見て、筋力もつけさせる。いろんな意味でそういう科学的なトレーニングというのは必要なんだと思うんだけれども、でも大会があればやっぱり勝つか負けるかということになってしまうんですよ。
 だから、この大会の見直しというのは、なんだか中長期的課題になっているけれども、この見直し無しに、部活動が歪められる実態というのは改善されないんじゃないかと思うけれども、いかがですか。

【保健体育課総括課長】
 今回の提言で示していただいた中身は、国の部活動改革と連動するということで盛り込まれてございます。国の改革の中では「合理的で効率的な部活動の推進」ということで、「大会・コンクールのあり方の整理」ということで明記されてございます。「地方大会の開催の実態を把握し、大会のあり方について整理するように」ということ、それから「大会が生徒の活動の成果の発表の場であることを考慮しつつも、生徒の大会の参加による負担が過度にならないように、参加する大会を推薦する」とされておりますので、こういったあたり国の動き、それから提言に盛り込まれた動きをしっかりと踏まえて、改善するところは取り組んでいきたいと思います。

【斉藤委員】
 大会については、種目によってはかなり違いがあるんだと思います。ただ本当に毎月のように大会がある種目もあるんです。だからそういう点でいくと、そういうものは、主催者が違うと言ってしまえばそれまでだけれども、そういうのをやっぱり整理するのが県の役割なのではないかという風に思いますので、そういうことも「中長期」と棚上げしないで、よく改善をしてやっていただきたい。