2021年7月6日 6月定例県議会最終本会議
千田美津子県議の請願不採択に対する反対討論全文


・被災者の医療費・介護保険利用料などの免除措置の継続を求める請願、東日本大震災被災者の医療費窓口負担の免除を求める請願について

 日本共産党の千田美津子です。
 私は、請願陳情第47号及び第51号について、請願を不採択とする環境福祉委員長報告に反対の立場で討論をいたします。
 請願陳情第47号「被災者の医療費・介護保険利用料などの免除措置の継続を求める請願」及び請願陳情第51号の「東日本大震災被災者の医療費窓口負担の免除を求める請願」であります。
 東日本大震災津波からまもなく10年4ヶ月が経過しようとしており、三陸沿岸道路や防潮堤、災害公営住宅など公共施設や震災遺構など、ハード面の整備は完成に近づいています。
 しかし、災害公営住宅では、65歳以上の高齢者を含む世帯は約6割であり、うち独り暮らし高齢者世帯が約3割を占めており、さらには月収8万円以下で国の家賃減免対象世帯が約7割を占めるなど、その実態は高齢化と低所得が被災者の実態であります。
 このような中で、被災者の国保、後期高齢者医療、介護保険、福祉サービスの自己負担免除を全国では唯一、岩手県と市町村が継続実施してきましたが、被災者の医療費負担免除を10年間継続実施し、11年目も非課税世帯に限定して実施していることは、被災者の命と健康を守る上で最大の成果であり、全国から注目されている取り組みであります。
 しかしこの間、医療費支援とその終期について、県は「国保の財政状況、市町村が抱える個々の事情等を勘案すると、今年12月が目安となるものと考えている。応急仮設住宅等にお住まいの方が、恒久的な住宅に移行したことを確認した上で判断したい」等と述べてこられました。
 国保財政や市町村の事情等、厳しい現状はその通りかもしれません。しかしながら、この間岩手県保険医協会の皆さんが実施された「被災者アンケート」を見せていただくと、本当にそれで良いのかと思わざるをえません。
 今年4月から医療費の窓口負担が発生した方で「必要な通院は出来ている」と答えた方は、国保の被保険者で44.1%、後期高齢者医療の被保険者で46%にとどまっており、5割以上の方が「通院の回数が減った」39.7%、「通院できなくなった」12.7%と答えておられます。2012年に支援が打ち切られた社会保険の被保険者も、「必要な通院はできている」との回答は52.4%にとどまっています。
 さらに、来年1月以降に医療費の窓口負担が発生した場合、「これまで通り通院する」との回答は、国保被保険者で26%、後期高齢者医療被保険者で27.2%にとどまっており、いま免除されている7割以上の方がこれまで通り必要な受診が出来ない実態が明らかになりました。このままでは、被災された方が必要な受診が出来ず、症状をさらに悪化させる恐れがあるのではないでしょうか。
 被災者の皆さんから寄せられた意見では、「免除のおかげで通院しています。免除が切れたらとても病院に通えなくなるのではと心配しています。歳とともに思いがけなくケガなどして、自分でもどうする事もできません。免除していただきありがたいと思っています。しかし、今後のことを考えると不安です」。また別の方は「薬を止める事が出来ないので、食費等減らして医療費を捻出するしかない」「アパート代も少しずつ上がってきて、今免除されてようやく暮らせている状態です。治療が出来ないなら死のうと考えた事もありました。しかし内心は“生きたい”です」「夫が施設に入っているので、私の食事も1回になる日もあります。家賃も上がり風呂も3日に1回です」等々、岩手県や市町村のこれまでの支援に対する感謝の言葉とともに、被災者の一層厳しい生活実態が記されております。
 今年3月末時点で、応急仮設住宅等から災害公営住宅など恒久住宅への移行が終了しましたが、アンケートでは、災害公営住宅の家賃負担や家賃の引き上げに不安を感じておられる方が多いのも実態であります。
 本請願の委員会審査の中で、毎年実施されてきた保険医協会のアンケート結果や被災者の声も紹介しながら、県当局は被災者の声や実態をどう把握しているかと質問したところ、「5月末に関係市町村と医療費支援について意見交換を行ったが、その際に被災者からは特に医療費負担が大変だとの声は聞こえていない」との答弁であり、これには全く驚くばかりでありました。被災者に寄り添うと言いながら、行政の都合で被災者の声や願いに耳を傾けようとしない実態があることに愕然としたところです。
 私は、いかなる結論を出すにつけ、行政はこれまで以上に被災者の声や実態を丁寧に聞き取り、対応していく過程が必要だと考えます。
 県は2021年の医療費支援をどうするかの検討過程で、「被災者一人ひとりの復興を成し遂げるためにも、被災者の適切な医療の確保は重要であり、被災者の状況に応じた支援のあり方について、引き続き市町村と調整を図る」としてこられました。この姿勢は、今後も貫くべきものと考えます。
 いわて県民計画では、「お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現」を掲げておりますが、「誰一人取り残さない」というSDGsの立場と一体のものです。生活が困難な状況にある被災者の命と健康を守るためには、医療・介護等の免除措置を継続実施していくことがどうしても必要です。
 このような観点から、請願陳情第47号及び請願陳情第51号は採択すべきと考えます。
 
 以上で、請願を不採択とする委員長報告に対する反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。