2021年7月6日 6月定例県議会最終本会議
請願採択に対する賛成討論全文
・計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度の拡充を求める請願について
日本共産党の斉藤信でございます。請願陳情受理番号45号「計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度の拡充を求める請願」を採択とする文教委員長の報告に賛成の討論を行います。
請願は3つの項目について政府に対して実現を求めるものであります。
第一の請願項目は、「中学校、高等学校での35人学級を早急に実施すること。また、さらなる少人数学級について検討すること」であります。
小学校における35人学級の実現は、2021年3月31日に成立した「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律」の成立によって、実に40年ぶりに実現しました。40年間、国民の切実な願いに背を向けてきた自公政権のその後の姿勢を大きく変える快挙というべきものでした。2021年度の予算要求に当たって萩生田文部科学大臣は「小中学校での30人学級の実現」を求めましたが、財務省の厚い壁と抵抗の前に、小学校のみの5年をかけた35人学級の実現となったものであります。
最近も新たな動きが生まれています。6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の方針2021」、いわゆる骨太の方針では、「GIGAスクール構想や小学校における35人学級等の教育効果を実証的に分析・検証する等の取り組みを行ったうえで、中学校を含め、学校の望ましい教育環境や指導体制の在り方を検討する」と明記されました。来年度予算編成に向けた検討項目の一つに「中学校までの35人学級」が位置付けられたことは重要です。萩生田文部科学大臣は、6月29日の閣議後の会見で「中学校でも35人学級を導入することについて、正面から堂々と必要性を主張して、必要な手続きをやっていきたい」と発言したことも重要であります。小学校だけでなく中学校まで35人学級を実現することはまさに当面の緊急課題になっています。さらに高校まで拡充し、文科省も求めていた30人学級の実現をめざすことはあまりにも当然の課題ではないでしょうか。
第二の請願項目は、「学校の働き方改革、長時間労働是正を実現するため、計画的な教職員定数改善を推進すること。また、自治体が学級編成基準の弾力的運用が実施できるよう、加配定数の削減は行わないこと」であります。
教員の異常な長時間労働の解決は重大な社会問題、教育問題となっています。異常な長時間労働とは、超過勤務手当もなしに過労死ラインを超える月80時間、100時間を超える長時間労働が蔓延していていることであります。その結果、教員をめざす学生が減少していることは教育の危機ともいうべき事態であります。
教員の長時間労働の最大の要因は、教員の数が少なすぎることです。文科省の教員勤務実態調査(2016年)では、持ち帰り残業を含めて1日当たり12時間近く働き、さらに土日も働いています。教員の大幅な増員を図ることは緊急の課題であり、計画的な教職員定数改善を推進することは当然のことであります。また、35人学級の推進に当たってこれまでの加配定数を削減することは教員の大幅増員に逆行するものであり、あってはならないことであります。
少人数学級の実現とともに、大幅な増員によって教員にゆとりが確保されることは、子どもたち一人一人にゆきとどいた教育を進める最大の保証となります。
第三の請願項目は、「教育の機会均等と水準の維持向上を図るため、地方財源を確保したうえで義務教育費国庫負担制度の負担割合を引き上げること」であります。
40人学級を40年間も放置し、教員の異常な長時間労働を蔓延させてきた最大の要因は、OECDで最低の教育予算にあります。日本の教育公財政支出の対GDP比は2.9%で38ヶ国中37番目です。OECD平均4.1%の70%に過ぎません。OECDの平均まで引き上げるだけで約5兆円の教育予算の増額となります。教育予算をせめてOECDの平均並みに大幅に引き上げるべきであります。
義務教育費国庫負担制度は、憲法26条「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」、この規定に基づいて、国の責任でどこに住んでいても教育を保障する制度として整備されたものであります。
義務教育費国庫負担制度は、1970年代までは対象費目等も拡充をされてきましたが、1980年代以降は行政改革と財政再建を名目に一般財源化され縮小されてきました。義務教育費国庫負担割合は、2006年度に三位一体改革と地方分権の名のもとに国の負担割合が2分の1から3分の1に変えられました。しかし、義務教育費のほとんどは人件費であり、地方財源に移譲されれば一般財源となり、教育費に回される義務がなくなります。全国どこでも必要な教育、いわゆる教育の機会均等を保障するためには、地方の事情によって教育費、教職員の人件費が左右されることはあってはならないことであります。教育予算を大幅に増額し、国庫負担割合を3分の1から2分の1に戻すことはこの間の実態からも必要であります。
これらの三つの請願項目の請願に反対することは、35人学級の早期実現と拡充、教員の長時間労働の是正と教員の計画的な増員、教育費の大幅な増額と確保という県民の願いに背を向けるものであります。
改めて議員各位の請願への賛同を求め賛成の討論といたします。
ご清聴ありがとうございました。