2021年10月15日 決算特別委員会
復興防災部に対する質疑(大要)
・防潮堤等海岸保全施設の復旧・整備について
【斉藤委員】
それでは、今回の決算はですね、東日本大震災津波復興の10年の節目にあたりますので、主な取り組みの成果、到達点について最初にお聞きをいたします。
防潮堤等海岸保全施設の復旧・整備について、工事完了地区、そして工事中の地区・箇所の完了の見通しはどうなっているか。防潮堤の高さを地域住民の意向を踏まえて変更された地区・箇所はどうなっているか示してください。
【復興推進課総括課長】
ただいま防潮堤等海岸保全施設の復旧・整備についてのお尋ねでございました。
令和3年9月末時点で、海岸保全施設134箇所のうち、工事が完了した箇所は、県事業 93箇所、市町村事業29箇所、計122箇所でございまして、市町村事業はすべて完成してございます。残る12箇所につきましては、11箇所は令和3年度、宮古市の閉伊川水門につきましては令和8年度の完成を目指しまして、現場の状況に応じた工夫や調整を行いながら、工事を進めております。
また、防潮堤の高さを地域住民の意向を踏まえて変更、下げた地区、これにつきましては、19箇所ございまして、18箇所が既に完了しており、残る1箇所は令和3年度内の完成を目指しております。
【斉藤委員】
岩手県の場合にはですね、明治の津波、昭和の津波、そして今回の東日本大震災と、116年の間に3回、いわば10mを超える巨大な津波があったわけで、私は基本的には県民の財産を守る防潮堤は必要だと思います。ただ、これを進めるにあたって大事なことは、住民の合意なんですね。ただ、あれだけの大災害の直後で防潮堤の高さを決めるというのは大変至難な業だったと。そういう中でもですね、19箇所で住民の意向を踏まえて防潮堤の高さを下げる取り組みもあったということは、大変貴重なことだったと思います。
・住宅再建への補助について
【斉藤委員】
2つ目に、被災者の住宅再建への県独自の補助の実績、件数と補助額についてどうなっているでしょうか。
市町村も住宅再建への独自補助を行いましたが、市町村の独自補助の状況をどのように把握しているでしょうか。
【被災者生活再建課長】
東日本大震災津波の被災者の住宅再建の状況でございますが、県と市町村が共同で実施しております被災者住宅再建支援事業の令和3年9月末現在での支給件数は10202件、補助額は県と市町村を合わせまして144億792万円余となっております。
また、住宅再建への独自補助を実施している市町村でございますが、沿岸10市町村で実施しております主な補助内容は、建設購入費への更なる補助や借り入れに対する利子補給補助等と承知をしております。
【斉藤委員】
河北新報でですね、いま知事選の関係で県政の検証というのがあって、実は岩手の住宅再建の取り組み、宮城県はなかったということで比較がありました。私は、岩手県は独自にこうした住宅の補助を行ったということが自立再建を大いに推進したのではないかと。
あわせて、実は市町村は200万300万の補助をさらに上乗せしてやっていると。ですから全体としてですね、被災者生活再建支援金、これは加算支援金は200万円、全体では300万円です。そこにだいたいプラス300万円ぐらいの住宅再建への支援があったというのが、私は岩手で、市町村と一緒に100万円の補助というのも10202件、これは計画を超えているんですよ。想定した計画を超えて自立再建が進んだというのは特筆すべき成果だったという風に思います。
・被災事業者への経営支援について
【斉藤委員】
3つ目に、グループ補助の実績、2つの機構による債権の買い取りなど二重債務対策の支援件数、その後の経営支援の対策と体制はどうなっているでしょうか。
【復興くらし再建課総括課長】
被災事業者への経営支援についてでありますが、まず、グループ補助金の実績につきましては、これまで、延べ1571事業者に対しまして、918億円を交付決定しているところであります。
また、二重債務問題を抱える県内事業者への債権買取等の金融支援件数につきましては、岩手産業復興機構における債権買取が110件、返済猶予が179件、新規融資が25件、東日本大震災事業者再生支援機構における債権買取が167件となっておりまして、これら2つの機構による債権買取の合計が277件、これに返済猶予や新規融資も含めた支援件数の合計が481件となっております。
その後の経営支援につきましては、事業者の抱える課題や事業環境の変化に応じまして、国や商工団体等の関係機関と連携して、経営相談や金融相談、商品開発や販路開拓の支援、専門家の派遣による課題解決や経営戦略策定に向けた支援などを行っているところでございます。
【斉藤委員】
グループ補助もこの東日本大震災津波の復興の中でつくられた新しい制度で、その後の大きな災害でもこれは実施をされるようになった大変貴重な取り組みだったと。ただ、1571者が交付決定をされたんですけれども、その後倒産した、また交付決定されたけれども廃止になったと、こうした件数もあるし、業者は、特に沿岸は震災・大不漁・コロナ、先ほど原発汚染水という問題もありましたが、私は先日陸前高田に行ったときにですね「4重苦だ」と、こういう話もありました。本当にこの復興のまさに途中なんですね。そして3つも4つも新たな困難に直面していると。その点で、しっかりしたフォロー、この体制はどうなっているかをお聞きします。
【復興くらし再建課総括課長】
グループ補助等を含めました被災地の「なりわいの再生」に向けまして、委員おっしゃる通り厳しい状況が続いてございます。そうした中、復興の取り組みにより大きく進展いたしました交通ネットワーク、港湾機能、そういった優位性を生かしまして、復興特区税制、津波立地補助金なども活用した幅広い産業の集積促進、水産業・水産加工業の振興のほか、新型コロナウイルス感染症対策を徹底した交流人口の拡大を図りまして、地域経済を活性化させていく必要があると考えてございます。
そのため、具体的には、復興特区税制や国・県の補助事業などを活用いたしまた企業誘致、移転元地を活用した幅広い産業の振興、造成地や移転元地等の活用の促進による中心市街地の活性化、専門家派遣等によりますグループや事業者の商品開発、販路開拓、PR等の支援、同じく専門家派遣等によります水産加工事業者の生産性・付加価値の向上支援、こういったものに取り組んでございまして、引き続き、被災地の経済の回復を図ってまいりたいと考えてございます。
【斉藤委員】
ぜひ復興・再建の途上と。そして新たな困難に直面しているということですから、直接的には商工労働観光部ということになると思いますけれども、復興の本当に重要な今後の課題としてしっかり取り組んでいただきたい。
・未来のための伝承・発信について
【斉藤委員】
東日本大震災津波伝承館の来館者数とその特徴、県内震災遺構や観光等へのゲートウェイとしての役割はどう発揮されているでしょうか。
【復興推進課総括課長】
まず東日本大震災津波伝承館の来館者数でございますが、令和元年9月22日の開館以来、令和3年10月14日時点になりますが、41万3093人の御来館をいただいてございます。
来館者の特徴についてですが、団体利用・予約の9月末現在の状況から目的別に見ますと、教育関係が276件・13760人、観光関係が313件・3168人、地域団体等その他の利用が144件・2127人でございまして、教育旅行を中心とした利用が人数ベースで72%を占めているという状況でございます。
また、観光の利用では、県内が16件・407人、県外が297件・2761人となってございまして、県外からの来館が多いという状況でございます。中でも東京都からの御利用が222 件・1706人ということで、かなり首都圏の方からお出でになっていただいております。
ゲートウェイとしての役割についてでございます。こちらにつきましては、これまで40万人を超える御来館をいただいておりまして、三陸におきます伝承拠点施設として、一定の集客効果を発揮しているのではないかと認識してございます。
この間、3.11の伝承ロード推進機構と連携しまして、沿岸各地の震災遺構とか語り部団体とか、そういったところともネットワークを強めまして、伝承館におきまして、受付の職員・解説員がそれぞれの施設を紹介する、こういったような取り組みをしております。
また観光面におきましても、市町村・観光団体との連携を進めまして、旅行会社の認知度向上を図ってまいりまして、伝承館を組み込んだツアーの構成も非常に多くなってきているというところでございます。今後も取り組みを進めてまいります。
【斉藤委員】
津波伝承館は私も何度も足を運んでいますけれども、宮城の伝承館も見ました。福島はニュース報道でしか承知していませんけれども、やはり一番充実して見応えのある施設が岩手の津波伝承館だという風に思います。
それで、復興公園も整備をされて、震災遺構も整備されてきていますから、そことの連携をさらに強化をすれば、魅力はますます増加するのではないかと。東京からかなり来ているというのと、教育旅行が大変大きいというのは大変素晴らしい成果だと思います。
・被災者支援センターの取り組みについて
【斉藤委員】
次に、被災者支援センターの取り組み、その拡充についてお聞きします。
昨年度の内陸被災者支援センターの実績、決算額はどうなっているでしょうか。
【被災者生活再建課長】
いわて内陸避難者支援センターの令和2年度の実績および決算額についてでございますが、いわて内陸避難者支援センターでは、内陸および県外に避難している方々の住宅再建に係る意向把握や再建方法を決めかねている方への伴走型の支援等を行ったところでございます。令和2年度は、1540回の相談に対応したところでございます。
同センターの運営に係る予算でございますが、委託料のみで構成されておりまして、令和2年度の決算額は5609万5千円余となっております。
【斉藤委員】
いわて内陸避難者支援センターというのは、岩手モデルと言われて、県内外の避難者、直接訪問も含めて、本当に伴走型の支援をやってきたと。
これを引き継いで、さらに困難な被災者に対応しようというのが今年度から始められた被災者支援センターであります。いわて被災者支援センターの今年度の取り組み、体制、事業費はどうなっていますか。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの今年度の取り組みと体制、事業費についてでございますが、いわて被災者支援センターでは、市町村、市町村社会福祉協議会等の関係機関や、弁護士、ファイナンシャルプランナーといった専門家と連携し、住宅ローンの返済や家族関係に関する悩みなど、多様な課題を抱える被災者への支援を行っております。
センターの相談支援員が電話や自宅へ訪問するなどして相談に応じているほか、沿岸4か所での無料法律相談や、弁護士およびファイナンシャルプランナーの個別派遣により、専門的な相談にも対応しているところでございます。
9月末現在の相談対応回数は、466回となっており、沿岸各地はもとより、県内陸部や県外を含めた被災者からの相談に対応しております。
また、今年度、県外および県内避難者の実態調査を実施しているところでございまして、その結果を基に、被災者のニーズに応じた支援を行っていくこととしております。
センターの体制については、釜石市にセンターを、盛岡市にサブセンターを設置し、兼務職員を含め、センター長1名、相談支援員等5名の計6名となっており、本委託事業に係る予算額は3981万7千円、委託契約額は3941万3千円となっております。
【斉藤委員】
私もこのいわて被災者支援センターについて、始まる前に、3月の特別委員会で、あまりにも重要な課題に取り組むのに、人員・体制・予算が少ないのではないかと指摘をいたしました。改めて聞き取り調査をいたしましたが、本当に大変なんです。いま人員は6名と言いましたけど、予算規模では4人なんです。これ委託したインクルいわてが兼務でそこに人を配置してやっとやっていると。こういう状況であります。そしてこの中身も、困難を抱えている方々の伴走的な支援、もう1つは、弁護士、ファイナンシャルプランナーなどの毎週1回の相談会、そして内外の被災者の実態調査ですよ。こんなたくさんの課題をやっているのに、予算が昨年よりも2000万円近く減らされたと。大変ですよ。いま相談件数466件ということですけれども、これは毎月増えていて、9月は111件の相談があったと。いわば実態調査を通じて周知されて、相談されると。もう1つは、毎週弁護士等の専門家の相談をやっているんですよ。これやるのに予約制です。事前に相談者の中身をしっかり予備調査をして、専門家の相談のときには2人配置されてやっているんですよ毎週。そしてその後、相談を受けたらフォローアップしなくちゃならない。これが伴走的支援なんです。
そして実態調査では、県内外の避難者の状況を改めて調査をしています。この点では、予算も人員も減らして、これだけの仕事をやるのは本当に無理なんだと。岩手モデルを引き継いで、11年目もやるというので、さらに全国から注目されている。「さすが岩手だ」と。しかし、体制がこんなに貧困、予算もこんなに貧困ということでは、本当に現場を無理を強いることになるのではないか。
最後に部長に聞きますけど、実際に取り組み状況を聞いて、新たな岩手モデルをつくるということで、この体制の拡充、取り組みの拡充を図っていただきたいがいかがですか。
【復興防災部長】
県では、この事業の実施に当たりまして、被災者を取り巻く状況、そして3月まで設置していた被災者相談支援センター、いわて内陸避難者支援センターにおける相談件数の推移等も踏まえながら、本年2月に予算額、業務内容等を提示しまして、コンペ方式ということで企画提案を募って、インクルいわてさんの方から提案をいただいて、その内容でスタートしている状況でございます。
相談件数、あるいは相談内容、そういったものがどういう状況にあるのかをしっかり分析をいたしまして、次年度以降の検討を進めていきたいと思います。