2021年10月20日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
【斉藤委員】
先ほど、わが党の千田美津子さんの質問に対する知事答弁が取り上げられました。私から、どういう質問でどういう答弁だったか、正確にお話ししておきます。
千田美津子さんはこういう風に質問しました。「若い人たちが岩手に住み、そして岩手で子どもを産み、そして岩手で安心して暮らす。そういう部分でも非常にこの産活のプロジェクトというのは、すごく大事だし、取り組んでいただきたいと思うわけですが、その点お聞きして終わります」と。最後の質問です。知事答弁、「この周産期医療に関してはこの保健福祉部以外の調整にまで踏み込んでいませんでしたので、今この場で男女共同参画、若者支援、そして産業経済、農林水産業もそうですし、建設関係もそうですし、あと教育の現場、警察もよろしくお願いします」と。ここからが結論です。「出産・子育てに関して県全体で総力をあげて、子どもを産み育てられる、安心できる岩手にすることをこの場で決定させていただきます」と。前向きの答弁ですけれど、特に踏み込んだものではないということを率直に言っておきます。
・新型コロナ対策について
【斉藤委員】
今まで触れていないところを触れておきます。
透析患者、妊婦等の感染者に対応できる病床は何病院、何床確保されているでしょうか。実際の活用実績を含めて示していただきたい。
【理事心得】
まず透析患者につきましては、県内において受け入れ可能な病院は10病院、これまでに13人の入院患者に対応してきたところでございます。
次に妊婦である感染患者につきましては、受け入れ可能な病院は10病院、これまでに17人の入院患者に対応してきたところでございます。
なお病床につきましては、陰圧病床の設置ですとか、病棟のゾーンニング、動線確保等の観点から、透析患者や妊婦など特定の分野別に確保しているものではなく、新型コロナウイルス感染症対応として確保している病床の中で、医療機器やスタッフを調整しているものでございます。
【斉藤委員】
透析や妊婦さんの対応というのは大変特殊なところですから、10病院で対応されたと。私は評価しておきたいと思います。
重症病床は何病院、何床確保されているのか。実際の稼働病床はどうだったか。
あわせて、県内のICU(集中治療室)は何病院、何床確保されているでしょうか。
【理事心得】
まず重症者用病床でございますが、県内におきまして新型コロナウイルス感染症の重症患者を受け入れ可能な病院は、感染蔓延期のフェーズ3におきまして13病院45床となっております。実際の稼働病床につきましては、これまでのピーク時で申し上げますと3病院4床となっております。
次に県内のICUの確保病床でございますが、県内には新型コロナウイルス感染症患者用のICUの確保病床はございませんが、HCU(高度治療室)を2病院において28床確保しているところでございます。
【斉藤委員】
ICUではなくてHCUということですけれど、やはり世界的に見ますとこのICUというのは、かなり欧米関係ではしっかり整備されているんですね。日本では本当にこれが少ない。そして今それを減らしている。いま2病院28床なりましたけれども、県内に、岩手医大、中央病院、さらに県立の久慈病院、大船渡病院というのは救命救急ですよね。こういうところにもICUなりHCUというのは確保されないのか。そのことをお聞きします。
【理事心得】
本県におきましては、ICUにつきましては主に救急医療ですとか高度救命救急センターにおける一般医療の高度医療に対応するという方向でございまして、HCUにつきましては、医療機関と調整のうえ、一部の病床を新型コロナウイルス感染症患者用に運用するということとしておりますので、そういった機能分担を図りながら、一般医療と新型コロナウイルス感染症との両立を図っているところでございます。
【斉藤委員】
医療崩壊が起きた1つの要因は、こうした重症病床に対応できなかったということだったと思います。岩手は感染爆発までいきませんでしたから、しっかり対応されたと思いますけれども、やはりこういう時期にこそ見直してですね、ICU・HCUというのを、できれば基幹病院ぐらいには設置するということが必要なのではないかと。
・介護保険20年の検証について
【斉藤委員】
次に介護保険20年の検証を含めてお聞きをします。
当面の緊急課題として、実はこの8月から補足給付の改悪によって負担増が発生をしています。資産要件が変えられて、補足給付の対象外になった。食費負担の見直しで負担増になったと。私は盛岡市内の特養ホームの実態をお聞きしましたけれども、4割以上の入所者が負担増になったと。そしてその中には資産要件でそもそも補足給付の対象外になると。食費の場合はですね、いわゆる年収120万円を超えた場合に食費負担が倍になるんですよ。それだけでも2万2千円の負担になる。私が聞いたのは最高額で月9万円。月ですよ。そういう負担増になったという入所者がいて、これなら今入っている特養を出なければならないんじゃないか。もう1つは「これから入りたいと言っても入れなくなってしまうんじゃないか」と、大変な危機感でありました。資産要件、食費負担の見直しというのはどういう仕組みになったのか。その実態、影響をどう把握しているでしょうか。
【長寿社会課総括課長】
介護保険の補足給付の見直しによる負担増についてであります。今ご紹介いただきましたように、低所得の施設入所者等にたいし、食費および居住費の補助を行う補足給付でございますが、所得に応じて自己負担額が設定されております。こちらの自己負担額が令和3年8月から、非課税世帯のうち所得が120万円を超える者の自己負担額が引き上げとなっております。
例えば、特別養護老人ホームの多床室に入所されている方の場合、食費および居住費の自己負担限度額の合計額が、日額では710円増の1730円、一月当たりでは2万1584円増の5万2592円となっております。また、一定以上の預貯金がある方につきましては、補足給付の対象とはなりませんので、例えば所得が120万円を超える方については、預貯金が「1000万円以下」とされていたものが、8月以降は「500万円以下」に引き下げられております。
なお、負担増による影響等につきましては、今後市町村から報告されます8月以降の介護保険給付費の分析ですとか、関係団体等からの聞き取りによりまして、実態の把握に努めてまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
この補足給付というのは、そもそも低所得者、非課税世帯の方が対象だったんですよ。その低所得者にこういう負担増を押し付ける、本当にこんな冷たい政治はないと。実態を把握して、この撤回を国に求めるべきだということを指摘を指摘をしておきたいと思います。
そこで、昨年度で介護保険20年経過をいたしました。保険料はどれだけ引き上がったんでしょうか。
【長寿社会課総括課長】
介護保険料につきましては、本県も全国と同様に上昇傾向にございます。制度開始の平成12年における県内市町村の保険料平均は2868円でございました。今年度から令和5年度までの第8期介護保険事業計画期間においては、6033円に上昇しているところでございます。
なお、全国の第8期保険料の平均額は6014円となっております。
【斉藤委員】
この20年で保険料は、岩手の場合は2.1倍ですよ。倍以上に上がって、これは高い保険料を払っても、先ほど言ったように高い利用料を強いられると。まさに「保険あって介護なし」ということではないのかと。
そこでこの20年間、どのような介護サービスの削減・縮小が行われてきたんでしょうか。
【長寿社会課総括課長】
介護保険制度のこれまでの主な見直しについてでございます。
まず施工5年後、平成17年に居住費・食費につきましては保険給付の対象外となりまして、その分所得の低い方への補足給付が設けられております。
平成18年には、要支援1および2の軽度者へのサービスの一部を地域支援事業へ移行する、などが行われてきております。
先ほどもご質問あった通り、令和3年8月からは、補足給付および高額介護サービス費の見直しがございまして、利用者の負担限度額の改正が行われたところでございます。
【斉藤委員】
20年間で保険料は2倍になった。ところが介護サービスは削減に次ぐ削減なんですよ。必要なサービスが受けられない、特養ホームにも入れない。特養ホームの待機者今どうなっていますか。
【長寿社会課総括課長】
特養の待機者につきましては、833人となっております。
【斉藤委員】
以前にもらった資料だったんですけど、待機者が全然減っていないと。保険料払っても入りたい特養入れなかったら、これは契約違反なんですね。
それで、なぜこんなことになったかというと、介護報酬がこの間どんどん下げられてきた。消費税分の手当、さらにはですね処遇改善加算は別枠で措置されていますから、それを除くとこの20年間で介護報酬は−6.44%。いわば社会保障削減路線のもとで、介護保険は介護の社会化どころか、まさに「介護あって保険なし」、こういう風になってしまった。1つ紹介しますと、堤修三さん、これは初代の厚労省の老健局長、介護保険制度をつくったときの老健局長です。「団塊以降の世代にとって、介護保険は国家的詐欺になりつつあると思う」と。介護保険つくった人がこう言っているんです。「国家的詐欺になりつつある」と。本当に私は異常な事態だと思います。
そこで、介護保険事業者の倒産・廃業はどうなっているでしょうか。
【長寿社会課総括課長】
令和2年度の介護サービス事業所の廃止および休止の状況についてでございます。廃止が72事業所、休止が48事業所となっております。
廃止・休止の理由につきましては、人材不足によるものが70事業所、経営難によるものが8事業所となっております。
【斉藤委員】
廃止が72、休止が48と。その理由も、人材不足が70ですよね。先ほど来、介護人材の議論がされました。本当に大変な事態になっている。介護人材がいないというのは、介護人材の給与水準があまりにも低いからです。全産業と比べて月9万円違う。それでいて夜勤もある。本当に高齢者一人一人に専門性が問われる、そういう仕事で、しかし待遇が悪い。このことを抜本的に改善しなかったら、介護保険はまさに成り立たない。実は去年、読売新聞が特集を組みました。県庁所在地と中核市、政令市の自治体を調査したんですけれども、今後10年間で9割の自治体が「現行のままでは維持することが困難だ」と。その理由の第一は「人材、事業所が不足する」、2つ目は「保険料の上昇に住民が耐えられない」、今これがまさに介護保険の実態だと思います。
そこで、最後なんですけれども、いま何が介護保険で問題になっているかと。この介護人材の不足については、私は今手を打たなかったら、5年後10年後では遅すぎると思いますが、県とすれば、どうやって介護人材を確保しようとしているかを示していただきたい。
【長寿社会課総括課長】
今ご指摘のありました通り、介護人材の確保について非常に重要な喫緊の課題という風に認識をしております。県としましては、先ほどお話をさせていただきましたけれども、参入の促進、労働環境・処遇の改善、専門性の向上という3つの視点で取り組んでまいりたいと考えております。
これまでも、イメージアップのための情報発信ですとか、求職者に対するマッチング支援等々行っておりましたけれども、これまでの取り組みに加えまして、今後は新たな介護人材として期待される外国人人材の受け入れですとか、介護ロボット・ICTを活用した労働環境の改善にも力を入れて取り組んでまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
根本的に給与を、それこそ10万円ぐらい上げないとだめですよ。それはもう選択されない最初から。だから介護専門学校に入らない最大の理由は「将来が見えないから」なんですよ。だからそこはもちろん国の問題だと思います。
あわせて、いま新型コロナで介護施設の利用が減ったり、衛生用品の確保で去年は若干手当がありました。今年はないんですね。こういう介護施設の減収対策はどうなっているか。感染対策に対する支援はどうなっていますか。
【長寿社会課総括課長】
いわゆる感染症対策のかかり増し経費につきましては、基本報酬へのプラス0.1%の上乗せが行われているところでございます。9月までは0.1%の基本報酬への上乗せという形になりますが、10月以降は補助金の形で上限額おおむね6万円程度ということで国の方から連絡がきておりますが、まだ具体的に詳しい情報は入っておりません。
【斉藤委員】
本当にコロナ対策は、事業者の支援も、こうした医療・介護施設に対しても、去年はやったんですよ。持続化給付金も家賃支援給付金もやった。今年感染が爆発してもっと大変だったときに、8月9月で打ち切ってしまうと。わずかなもので。診療報酬もそうです。介護報酬もそうです。
本当にこんな姿勢で新型コロナ対策をやっていると言えるのかと。私は率直に思いますよ。やはり感染が拡大したらそれなりに対策を強化するというのが本当ではないのかと。
そしてもう1つ、この間県内における介護離職はどのようになっていますか。どう推移してますか。
【長寿社会課総括課長】
本県の介護労働者の離職率につきましては、令和2年度で13.4%となっております。