2021年10月18日 決算特別委員会
ILC推進局に対する質疑(大要)
・ILCをめぐる政府・文科省の動向について
【斉藤委員】
まず最初に、ILCをめぐる政府の動向をどのように把握されているでしょうか。
【副局長】
ILCに関する政府の動向ですけれども、昨年8月に設立されたILC国際推進チームが検討を進めてきたILC準備研究所に関する提案書、これが本年6月に公表され、また国内の研究者による「ILC計画に関する主な課題について」も同時期に取りまとめられたことを受けて、文部科学省は7月に有識者会議を再開したというところです。
また、文部科学省は、この第1回目の会議の場で、この秋には欧米の政府機関との意見交換を行うよう調整していると明らかにしておりまして、その実現と着実な議論の進展を期待しております。
有識者会議、先ほど申しあげた通り今日3回目ということで、あと2回予定されていて、年内または年度内に取りまとめを行うと発表されております。
【斉藤委員】
文科省の動向も今の答弁の範囲内ですね。何かありますか文科省の動向について。
【副局長】
いま申しあげた通りであります。
【斉藤委員】
それでは前の2人もお聞きをしましたが、文科省の有識者会議について私もお聞きをしたいと思います。
文科省の有識者会議は、前に審議のまとめを公表しました。以前に提起をされた審議のまとめの内容はどういうものですか。
【副局長】
有識者会議、前回平成26年に設置されまして、平成30年7月にILC計画の見直しを受けたこれまでの議論のまとめというもので取りまとめをしておりまして、研究者コミュニティからの聞き取りや調査・分析を通じて、さまざまな観点から調査・検討を行い、ILC計画の全体像を可能な限り明確に示すものという位置づけて取りまとめされています。
議論のまとめにおきましては、ILC計画は新しい物理の解明に貢献することが期待されている計画という学術的な意義を認めるものと認識しておりますし、ILC計画の実現に向けては、
・国際的な研究協力及び費用分担の見通し
・学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解
・技術的成立性の明確化
・コスト見積もりの妥当性
・人材の育成・確保の見通し
こういった課題が示されているものです。
【斉藤委員】
それで、今回文科省のILC有識者会議が7月29日に再開をされて、第1回の会議が開催をされました。そして第2回の会議が開催をされたということになっております。この再開された理由と目的は何でしょうか
【副局長】
前回のとりまとめからおよそ3年ほど経過しておりまして、その間、研究者側では、様々な課題に対しての対応を進めてきているというところがあります。それが国内の研究者による「主な題について」のとりまとめですし、それからILCを進める国際的な研究者の皆さんから「準備研究所提案書」も出たということで、文部科学省ではそういう課題の取り組み状況、進捗の確認、最新の情報をフォローアップするということで再開したとしております。
【斉藤委員】
第2回目の会議が10月14日に開催をされたと。新聞報道で報道されていますけれども、この第2回会議の内容を示してください。
【副局長】
第2回目、それから今日の第3回目と、ILC計画を提案している研究者の方から、具体的な課題の取組状況等を説明して、有識者の委員の方から質疑しているという状況であります。
それで第2回の会議では、計画を提案している研究者から、ILCの重要性と幅広い研究の可能性、国際協力による技術開発・コスト削減の成果、準備研究所設立の意義などについて説明をされて、委員との意見交換、こういったものが行われました。
【斉藤委員】
10月15日の胆江日日の報道では、「計画を推進する方々から大変な危機感が表明された」と。「日本が世界をリードできるめったにないチャンス。ここでモタモタしているとILCが海外にさらわれてしまう」と。こういう発言とかですね、「日本政府の前向きな姿勢がない限り、プレラボは開設できず、予定している行程は実現できない」と。こういう危機感が表明されたと。一方で有識者会議の方の発言も紹介されているんですね。「高エネルギー分野の世界共同大型プロジェクトは、ILCかFCCぐらいしかない」と。「文科省の見解や予算面の厳しさのある中、当該分野の継続性を考える上では、誘致前提のプレラボ開設ではなく、技術開発と国際プロジェクトの継承という位置づけで取り組んでいけないものか。政府や他分野研究者との温度差が埋まらないと、次のステップに行くのは厳しいと思う」と、これは有識者のメンバーの発言なんですね。
第3回会議が18日、今日開かれるというので、1年かけて議論されると。この有識者会議が推進している研究者との意見交換をやって、また議論のまとめを立てると思うんですけれども、この議論のまとめというのはどういう性格のものになりますか。文科省はこれをどのように受け止めるということになりますか。
【副局長】
文部科学省からは、このとりまとめの後、具体的にどう進めるといったことについては今のところ正式に特段の発表はされておりません。
ただ文部科学省としては、国際分担の協議ですとか、技術的成立性の課題、こういったものの確認をしたいということがありましいて、国際分担については、秋に米欧政府機関との協議ということで調整すると。それから技術的成立性についてということで、国内の議論を有識者会議で進めているということですので、県としては、文部科学省が考えている対応を、手順を踏んで進めているものと考えておりますので、これまで示されてきた課題を具体的にどう乗り越えていったらいいのかといった前向きな議論、国際的な議論を具体的に進めていただきたいと期待をしております。
【斉藤委員】
私は率直に、国際的なILCの研究者が北上山地にこうしたILCの研究施設を整備したいと。それに応えて岩手が誘致を進めるというのは当然のことだと。ただ、政府の対応、文科省の対応というのが「関心を表明しただけ」にとどまっているわけですね。そしてさまざま研究者がプレラボの提案をしても、それに前向きの対応はしないと。予算はいつも同じと。だから、見放してもいないけれども、前にも進まないと。これが今の政府の対応ではないのかという感じをしますけれども、そうした中で、県とすればどういう形で今後、私は政府・文科省が一歩踏み込まない限りこれは進まないんだと思うんです。そういう点で県はどういう方向で今後取り組むのか、それを聞いて終わります。
【ILC推進局長】
これまで研究者による国際的な検討が進む一方で、国内では昨年のマスタープラン2020以降、目に見える形で議論が進んでこなかったわけですけれども、先ほど答弁しましたように、今般出された国内の研究者による「ILC計画に関する主な課題について」というものが、研究者の自主的な公表であったと聞いておりまして、研究者と文科省と同期した動きが出てきたと受け止めております。
また県としても、KEK等と準備研究所設立に向けた国内外の議論の状況ですとか、どんなことが課題になっているかといったことを意見交換しながら進めてきているわけですけれども、準備研究所という1つの国際協力の枠組があるわけですけれども、それに関わらないで、しっかりした国際協力の枠組があればですね、それで進めていく、準備研究所につなげていくといった考え方もあるようで、いまKEKでは加速器の技術開発の予算の増額も考えていると聞いております。
いずれ今回有識者会議の中で、文科省の方では、欧米との意見交換を進めていくとしておるわけですけれども、次の段階としては、文部科学省だけではなくて、政府として、最終的な意思決定に向けて、前段階としての国際協議を進めていくということについて了解していただいてですね、省庁協力して進めていってもらって、そうしたところで国内の議論も機を逸しないように進めていくことが必要かと思っております。
そういったところで県としては、研究者等と課題を共有して、緊密に連携しながら、超党派国会議連等とも連携して、お知恵をいただきながら、いずれあらゆる可能性を考えて、政府に積極的に働きかけてまいりたいと考えております。