2021年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(第2部)に対する質疑(大要)
・危機的大不漁の実態と対策について
【斉藤委員】
最初に、東日本大震災津波から10年という節目でありますので、2020年の県内魚市場の水揚げ量、前年比・震災前比を含めて示してください。あわせて今年の状況はどうなっているかを示してください。
【漁業調整課長】
県内魚市場の水揚げ量についてでありますが、令和2年の水揚量は8万5,166 トンで前年の83%、震災前比の48%となっております。
また令和3年における10月10日現在の水揚量は5万9,615トンで前年の112%、震災前比で59%となっております。
【斉藤委員】
主要魚種の水揚げ量の前年比・震災前比、今年の状況を示してください。
【漁業調整課長】
主要魚種別の水揚げ量でありますが、まずサケでございますが、1,734トンで前年の76%、震災前比の7%、サンマは7,527 トンで前年の96%、震災前比の14%、スルメイカは4,271トンで前年の206%、震災前比では23%となってございます。
今年10月10日現在の水揚げでございますが、サケは58トンで前年の84%、震災前の7%、サンマは539トンで前年の238%、震災前比の3%、スルメイカは836トンで前年の42%、震災前比の9%となってございます。
【斉藤委員】
いま魚市場の水揚げ量と主要魚種の震災前の状況をお聞きをしました。10年経って、なかなか漁業・水産業の現状というのは大変な状況にとどまっていると痛感をします。特にサケは震災前で7%、サンマは14%、スルメイカはかなり前も低かったんですけれども、いまサケ・サンマがスルメイカ以上の減少になっているということで、大変深刻な状況だと感じています。これは復興途上というか、復興途上以上に新たな困難に直面していると言った方が正確ではないのかと。
養殖についてもお聞きしますけれども、ワカメ・ウニ・アワビの水揚げ量、この震災前比・前年比を示してください。
【水産担当技監】
ワカメの生産状況についてでありますが、今和3年産のワカメの生産量は1万1千トンで震災前比50%となっております。
ウニにつきましては令和2年の生産量ですが、74トンで震災前比77%。
同じくアワビの水揚量につきましては、97トンで震災前の28%となっております。
【斉藤委員】
ワカメが実は震災直後ただちに取り組んで頑張ってきたんですけれども、いま回答があったように去年は50%ということで、これは日本一なんですよねワカメというのは。このワカメが50%にとどまっている要因は何なのか、そのことを示してください。あわせて対策も示してください。
【水産担当技監】
ワカメの不漁の状況でありますが、令和3年産のワカメにつきましては、養殖初期につきまして、その段階で芽落ちをしたということと、これにつきまして漁場の栄養源、水温などに基づいて生産管理を徹底しなければならないということで、そういう対策を進めてまいりたいと思っております。
また水産技術センターで開発しました大型人口種苗というのがございますが、これは陸上である程度の大きさまで育てまして、その利用が可能だということなので、そのような新しい技術を普及していきたいと考えております。
【斉藤委員】
ワカメの場合ですね、いわば従事者・担い手、これが震災前と比べてどうなっていますか。
【水産担当技監】
令和2年は852人になっておりまして、震災前の22年度は1647人になっておりますので、この比は52%となっております。
【斉藤委員】
私は一番の要因はそういう従事者が半減しているというところに大きな要因がワカメの場合はあるのではないかと。そういう点では、大変後継者を養成していくことが大事なのではないか。
話が前後しますけれども、サケの対策については議論がありました。早期に稚魚を放流するとか、生命力のある稚魚を育成するとかありましたが、最近漁獲速報を見て、今年は前年度よりも60%ぐらいなんですね、重量で見ると。お聞きしたいのは、その中でも野田が、10月10日現在ですから始まったばかりなんですけれども、353%になっているんですね。野田はなぜ急に伸びたのか。
もう1つは、定置は前年比60%にとどまっているんですが、河川捕獲が148.7%なんですね。定置が落ち込んでいる中で河川の捕獲が前年度比1.48倍になっているのはなぜなのかと。
もう1つは、中津川にサケが戻ってこないというのが新聞で話題になりました。北上川のサケは、比較的海水温が高いのに対応すると言われて、その研究もしてきたと思うんですけれども、実は漁獲速報を見ると、今年宮古以南は前年比2割以下なんですよ。去年の落ち込んだところと比べても激減をしていると。これはどういう要因だと受け止めているのか示してください。
【水産担当技監】
野田・下安家周辺のサケでございますけれども、今年の回帰が非常に良いというのは、野田の周辺、普代まで含めて良いんですけれども、野田の周辺ですけれども、実は昨年が非常に悪かったという裏返しでもあります。昨年なぜ帰ってこなかったかと言いますと、4年前の台風の被害で放流ができなかったので、昨年は落ち込んでしまったと。ただ下安家の漁協がですね、その後しっかりと放流しまして、それが今年の、他地区と比べても回帰が良いものですから、そういう結果になったのではということも要因ではないかと思っております。
また、定置網での漁獲が低調である一方、河川遡上が前年よりも多い要因につきましては、これも推測なんですけれども、津軽暖流により親潮の南下がブロックされて、岩手県沖合の水温が高いままであることから、サケは、水温の低い水深の深いところから直接河川に回帰したために、定置にぶつからないように川の方に上がっているというのが、これが水温の高いときにはそういう傾向が見られますので、たぶん今年もそのような状況になっているのかなと考えております。
中津川のサケがなかなかのぼらないということなんですけれども、実際に北上川水系のサケには、遺伝子的に高水温耐性が強いということなんですけれども、やはりサケ資源そのものが全体的に少ないことから、相対的に遡上数が少ないと推測しております。
【斉藤委員】
宮古以南も前年度比で激減していると。もしそれにコメントがあれば後で。
【水産担当技監】
宮古以南でサケの漁獲が少ない要因につきましては、近年の高水温の影響等により、ここ数年、特に宮古以南でのサケの回帰が少なかったことから、稚魚の放流数も少なくなっていたこと等が影響したと考えております。
【斉藤委員】
それで、大幅に漁獲量が減少しているんですけれども、そうした中でも逆に南の魚が獲れるようになっているという。増加している資源の有効活用の取り組み、魚種転換の課題と対策はどうなっているでしょうか。
マイワシを対象とした小型漁船による試験操業の取り組みと今後の見通しを示してください。
【漁業調整課長】
増加している資源についてでありますが、近年の海洋環境の変化によりまして、主要魚種の資源量が減少する一方で、マイワシの資源量は増加しております。令和2年における県内魚市場へのマイワシの水揚量は2万3,181トンと、震災前の約96倍まで増加しているところでございます。
県では、マイワシ資源を有効利用するため、市町村や漁協等が実施する、県外のまき網船による県内魚市場への水揚誘致や、新たに県内小型漁船による資源の利用の検討を支援しているところでございます。
小型漁船による試験操業については、令和元年度から知事の特別採捕許可による小型漁船のマイワシ試験操業を実施しておりまして、1年目の令和元年漁期は4,889トン、2年目の令和2年漁期は3,317トンを水揚げしてございます。
今後の見通しとしては、3年目となる令和3年漁期においても、引き続き試験を継続する予定としておりまして、いま準備中でございます。
【斉藤委員】
新たな漁業・養殖業の導入の取り組みと県の支援策、採算の見通しを示してください。
【水産担当技監】
新たな漁業・養殖業についてでありますが、現在、サケ、マス類の海面養殖を推進しているところでございます。先行している久慈、宮古、大槌の3地区では、令和5年度の漁業権の切替時期を待たずに、本年10月1日に漁業権の免許を取得しまして、11月から本格的な事業を開始することになっております。また同時に開始してます釜石地区では2期目となる養殖試験を実施します。さらに今年度から山田地区でも新たに養殖試験を開始したいという要望を受けておりますので、その取り組みを進めていきたいと思っております。
収支なんですけれども、令和3年度は600トン弱の生産がありましたけれども、来年度の生産計画も合わせましてこの2倍となっておりますので、生産は拡大していくということですので、その推移を見て支援してまいりたいと思っております。
【斉藤委員】
それから、新型コロナによる漁業への具体的な影響と県の対策を示してください。
【水産担当技監】
新型コロナによる具体的な影響と県の対策についてでありますが、主要魚種については、令和2年12月のアワビの販売単価は、令和元年度同月比で25%減。令和3年9月のホタテガイの販売単価は、前年同期比で11%減となっており、これらの価格の低下については、新型コロナの影響による外食産業などの需要の減少などが要因と考えております。
県では、これまで、県内小中学校等への学校給食向けへの食材の提供や、県内量販店150店舗における水産物販売促進キャンペーンによるフェアの実施等に取り組んだところであり、今後も、市場の動向をしっかり把握しながら、漁業関係団体や流通加工関係者等とも連携し、引き続き必要な対応をとっていきたいと思っております。
【斉藤委員】
最後です。小型漁船漁業の状況、課題について示してください。
【漁業調整課長】
小型漁船漁業の状況と課題についてでありますが、漁業センサスによりますと、平成30年における総トン数20トン未満の小型漁船漁業の経営体数は2,017経営体ということで、平成25年比の95%となっているところでございます。
課題とすれば、小型漁船漁業の経営については、近年のサンマやスルメイカ等の不漁に加え、今春のイサダの漁獲量も2,998トンと前年の約2倍に増加したものの、震災前の17%にとどまるなど、厳しい状況にあると認識しておりまして、その経営の安定化が課題と考えているところでございます。