2021年10月25日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・大震災津波10年―応急仮設住宅・災害公営住宅の整備、教訓について
【斉藤委員】
それでは最初にですね、震災復興10年にあたって、応急仮設住宅、災害公営住宅の整備、その内容、教訓などについてまとめてお聞きをします。
応急仮設住宅の整備について、整備戸数、プレハブ協会、ここには企画部会・住宅部会があります。公募事業者によるもの、長屋・戸建ての整備数、一戸あたりの経費はどうだったか。
災害公営住宅の整備数と木造戸建て、長屋の整備数、一戸あたりの経費はどうだったか。
応急仮設住宅・災害公営住宅の整備にあたっての課題、教訓をどう認識されているか。また、応急仮設住宅の震災復興を踏まえた改善された規格はどうなっているかを示してください。
【建築住宅課総括課長】
応急仮設住宅の今回の東日本大震災津波を受けましての整備状況についてでございますけども、委員からご紹介いただきましたとおり、県全体で13,984戸の応急仮設住宅を整備させていただきました。
このうち、遠野市が独自に整備した40戸、住田町で整備した93戸を除きます県発注分が13,851戸という形になっています。整備事業者別といたしましては、11,499戸を県と災害協定を締結しております一般社団法人プレハブ建築協会が、2,244戸を県が公募いたしました事業者で整備させていただきました。
また、県におきましては、長屋形式のものが13,743戸、戸建形式のものが106戸となっております。なお戸建形式のものは全て公募事業者により整備されたものとなっております。
また、戸当たりの整備費用につきましては、後から断熱工事等追加工事しましたけれども、追加工事を含めました1戸当たりの整備費用は約617万円となっております。
災害公営住宅の整備状況につきましては、東日本大震災津波からの住宅再建のために整備されました災害公営住宅につきましては、県および14市町村で5,833戸という形になっておりまして、このうち県といたしましては、2,827戸を整備しまして、今現在1,760戸を管理しております。
また、県が整備しました災害公営住宅の木造戸建て、長屋の整備戸数でございますけれども、木造戸建てで一関市県営構井田アパートを13戸整備しておりまして、こちらの工事費は1戸当たり1855万4千円。木造長屋につきましては全体で22戸整備しまして、内訳は盛岡市県営備後第1アパート10号棟で8戸、1戸当たりの工事費は2190万4千円、奥州市県営桜屋敷アパートで14戸、1戸当たりの工事費は12,97万1千円となっております。
整備に当たっての課題、教則という形になりますけども、応急仮設住宅におきましては、課題といたしまして、震災前にあらかじめ選定していた土地があったのですけども、そちらの土地の方が全て津波により浸水したということから、用地の選定について、公有地だけでは不十分というような状況がございました。また、必要供給戸数ですが、短期間に大量に供給しなければならないということで、プレハブ建築協会だけでは無理だ、ということで整備に時間を要したことがございました。さらに全国一律の整備仕様ということ、住宅の仕様が一律であったため、本県の地域性を踏まえた住環境整備が後から必要になったという形になっております。
これらの教訓を踏まえまして、応急仮設住宅につきましては、災害の規模ですとか、状況を踏まえました用地の選定、確保が必要であるということ。それから災害の規模に応じまして、地元事業者による供給ですとか、民間賃貸住宅を活用いたしました賃貸型仮設住宅の供給も必要であること。また、最後ですけども、本県のような寒冷地につきましては地域特性に沿った住環境設備が必要であると認識しているところでございます。
続きまして、災害公営住宅の整備につきましては、同時に被災地域が広かったこともありまして、同時に複数の災害公営住宅を整備する必要があったということから、事業者選定が困難であったこと。かさ上げですとか高台造成工事などのまちづくり工事との調整が必要であったこと。最後ですけども、入居後におきましては、従前の生活様式と異なることから、コミュニティ形成支援が必要であったことが課題であったと考えております。
今後の教訓といたしましては、事業者確保のため、敷地提案型ですとか設計施工一括発注方式など様々な発注方式を取り入れることが必要であること。また、昨今南海トラフでも、事前復興の考え方、復興事前準備による被災後の復興期に対応できる仕組みの準備ですとか、地域性などによる配慮、今回漁具置き場ですとかペット対応ですとかいろいろ整備させていただきましてけれども、こういったものが必要であること。また、入居後の円滑なコミュニティ形成への配慮が必要であると考えております。
今後の応急仮設住宅の規格、東日本大震災津波を受けての規格というところでございますが、今回みなし仮設ということで賃貸住宅を活用しましたけれども、賃貸型仮設住宅の供給が可能になったということ。それから今回追加工事でありました、風除室や追い炊き機能の設置など、地域の実情に応じた整備が可能ということで、国の方が取り扱いを決めたところになっております。
また、一定規模以上の団地には集会場の設置ですとか福祉型仮設住宅の整備が可能とされたところであり、コミュニティへの配慮がなされているところでございます。こちらにつきましては、国の方で見直しがなされるとともに、建設型の基本額も戸当たり571万4千円ということで、引き上げられている状況でございます。
【斉藤委員】
丁寧な答弁をいただきました。
災害公営住宅については、宮城と違って岩手県独自に県営の災害公営住宅を整備したということは大変良かったと思っております。大変丁寧な回答でしたので、これはこれで終わりにします。
・災害公営住宅の家賃問題について
【斉藤委員】
国の特別家賃低減事業の対象世帯、すでに家賃が引き上げられている世帯はどうなっているでしょうか。
県の家賃低減制度の周知と活用はどうなっているでしょうか。
【建築住宅課総括課長】
国の特別家賃低減事業の対象世帯、県の家賃低減制度の状況についてですが、令和3年10月1日時点ですが、国の東日本大震災特別家賃低減事業の対象世帯数は945世帯で、全入居世帯1,451世帯における割合は65.1%となっております。
それから県の独自減免を活用している世帯数は、令和3年10月1日時点で133世帯となっておりまして、同じく割合は9.2%となっております。
【斉藤委員】
入居者の最大の不安はですね、家賃問題・生活問題なんですね。国の特別家賃低減制度というのは、5年経過をするとだんだん上がっていきますので、岩手県は独自の減免制度があって、ほぼ国の減免と同等の減免制度になっています。これは周知徹底をして、しっかり減免制度が受けられるようにしていただきたい。
一番の問題は収入超過者の問題です。収入超過者の実態、希望する被災者が安心して継続入居できる手立てをとるべきですが、陸前高田市が実施している「みなし特定公共賃貸住宅」の導入はなぜできないのか。どう検討されているのか示してください。
【建築住宅課総括課長】
収入超過者の退去問題についてでありますが、県営災害公営住宅における収入超過者の実態について、本年10月1日時点で収入基準を超過している世帯は116世帯であり、そのうち収入超過認定されている世帯は100世帯となっております。
県といたしましては、収入超過者が継続して入居できますように、平成30年度から収入超過者の割増家賃に上限額を設けまして減免するとともに、引き続き入居を可能とする運用をしているところでございます。
委員からのご指摘のありました中堅所得者向けの「みなし特定公共賃貸住宅」制度導入につきましては、被災者や本来対象とする所得階層の入居に影響を与えないことが導入の条件となっております。このため、その前段階として、昨年7月から一般の方向けの入居募集を実施しているところでございまして、これまで136世帯入居いただいております。これを踏まえまして、中堅所得者を対象とします「みなし特定公共賃貸住宅」の制度を導入した場合、本来階層となる所得階層の入居への影響が懸念されたところでございまして、県といたしましては、現在、入居要件を見直した場合を想定いたしまして、民間賃貸住宅に関係する団体や市町村との調整を進めているところであります。
【斉藤委員】
これは千田美津子県議の一般質問でも紹介したんですけれども、陸前高田市が「みなし特定公共賃貸住宅」の制度を早々と導入をして、現在52戸が入居しています。52戸のうち41戸が収入超過世帯です。あと11戸が一般です。若い世代もそこで入っている。だから収入超過者の追い出しはないのですよ。実際に陸前高田市が実施をして、こういう形で成果をあげているということをしっかり見ていただきたい。
それで、県土整備部長は本会議の答弁で、「よりきめ細かい家賃体系の導入、入居要件の見直しに取り組んでまいります」と答えました。収入基準を見直すということで検討されていると聞いていますが、どういう中身で、来年度から実施できるのかどうか示してください。
【建築住宅課総括課長】
収入要件基準に係る見直しについてでございますが、いま現在検討中というところでございまして、具体的な内容を申し上げることは出来ないところです。
本来入居する階層のニーズを考慮しながら、委員ご指摘の通り被災者が安心して住み続けられる制度設計となるよう今後も取り組んでまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
今年の予算議会のときにもこの問題を取り上げて、どういう答弁だったかというと、「できるだけ早期に、沿岸地域の復興にふさわしい制度の設計を進めてまいります」と。去年の決算もそうでした。「できるだけ早期に」と、1年も2年も。こういうのは早期ではないんですよ。本来なら、震災10年という1つの節目にそういうしっかりした対策をとるというのは当然だと思いますよ。さっきの答弁で、すでに収入超過対象になっているのは100世帯ですよ。この方々は来年4月入居を続けられませんよ。高い家賃を押し付けられているんだから。この100世帯の方々が安心して入居を継続できるように、今年度中に、私は12月議会で必要な手立てをとらなかったら、4月の入居継続が間に合わないと思いますよ。部長に聞きましょう。来年4月入居継続できるように対策とる決意ありますか。
【県土整備部長】
やはり被災者が安心して住み続けられるという状況をつくっていくと、それを視野に入れて取り組んでいくというのが私たちの仕事だと思っております。ただ、急いで、もちろんそれは急いで考えていきたいと思っていて、その方向で今詰めている最中であります。具体的にはやはり今この場ではお話できる状況ではないというところはご理解いただいた上ですが、そういったスピードは、被災者の方に対してスピード感を持ってというのはその通りだと思いますので、そういった気持ちを建築住宅課とも共有して取り組んでいきたいと考えております。
【斉藤委員】
いま災害公営住宅の実態というのは、高齢者が4割を占めています。高齢者世帯が6割を占めています。これから5年10年経ったら、こういう方々が介護施設に入居したり、亡くなったりするんですよ。今どのぐらい空き室がありますか。今しっかり手立てをとらなかったら本当に空き室だけ増えていくと。そして自治会の担い手もいなくなってしまうと。予算議会のときに指摘しましたが、大船渡の県営住宅では、2月の時点で30代・50代の働き盛り、自治会役員が退去しているんですよ。いま100世帯のこういう方々、いわゆる現役世代ですよ。こういう方々の入居を継続して、引き続きそういう現役世代・若い世代が入居できるような対策を今とらなかったら、災害公営住宅は高齢者住宅になってしまいますよ。先を見越してしっかりした手立てをとっていただきたい。部長いかがですか。
【県土整備部長】
災害公営住宅の活用、それからコミュニティの確保のためには、やはり空きストックを少なくするということは、大事だというふうに思っております。
そういうことで、今、災害公営住宅において、一般募集というのを昨年7月から定期募集ということで始めて7回やりました。全部で7回定期募集しています。7月からは随時の募集に切り替えて、いつでも応募できる、していただけるような仕組みとしております。
そういったことと、それからあとは、内陸の方の公営住宅でやっております若者を対象とした、移住定住のためのですね、住宅の目的外使用ということになるんですけども、所得の制限がないという意味で目的外使用ということになるんですが、そういったところを沿岸の災害公営住宅にも適用するような方向でいろいろ考えておりますので、そういった様々な面の取り組みで、ストックをですね、少なくとも減らしていくというような取り組みを考えているところでございます。
【斉藤委員】
災害公営住宅に若者も、目的外使用も考えているということで、これセットでぜひ来年4月から実施できるようにぜひやっていただきたい。
・2050カーボンニュートラルの実現に向けた住宅の対策について
【斉藤委員】
2030年までに岩手県は2013年比で41%CO2削減をする目標を掲げました。この目標に関わって、住宅の断熱化を含めた省エネの目標を持っているんでしょうか。
【建築住宅課総括課長】
2030年に向けまして、住宅の方向性の在り方でございますけども、本年8月23日に、経済産業省、環境省、国土交通省の3省によりまして「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」が公表されたところでございます。こちらによりますと、2030年までには、今現在、県の「住みたい岩手の家づくり促進事業」などでやっております省エネ基準をさらに引き上げるという方向性が示されております。
2030年までには、もう間もなくでございますので、国の動向を踏まえながらどのように取り組んでいくか、環境部局とも連携しながら取り組んでいきたいと考えているところでございます。
【斉藤委員】
知事が気候危機の非常事態宣言を出して、そして地球温暖化防止の実行計画を出して、2013年比で41%CO2削減、実はこれは低いんですよ。国連が世界に提起しているのは、2010年比で45%削減なんです。先進国は50%60%やるべきだというのが国連の提起です。国の目標も低いけれども残念ながら県の目標も低い。これは見直すという答弁がありました。
それで大事なことは、県の目標を裏付ける個別の具体的な計画が必要なんですよ。住宅での省エネ・断熱というのは、県民の暮らしにとっても、そして省エネにとっても大変重要なポイントになると思っています。いま灯油代がどんどん上がっているじゃないですか。これは断熱すると半分、さらにはゼロにすることもできるんですよ。国土交通省が8月23日に出した、遅まきながらですけれども、これは2030年まではZEH・ZEB基準、そういうレベルに引き上げると言っているんだから、本当にこれを具体化をして、県土整備部としてどうこの省エネに貢献するのか、しっかり目標を持って、今日は住宅の話だけをしましたけれども、住宅だけでなくて、再生可能エネルギーでいけば別の課題もあると思いますけれども、そういう点で、これは部長に聞きましょう。だから知事を本部長にした全庁的な体制が必要だと。これは県民参加でやらなければダメだから、県民参加の県民会議が必要だということを提案をしました。まさに世界の重大問題、県政にとっても中心課題の1つとして、全庁挙げて、県土整備部挙げて、これは取り組むべきだと思いますがいかがですか。
【県土整備部長】
全庁を挙げてということで、環境については各部局で関わることになりますので、全庁で同じ方向性を持ってということで理解しています。
その中で、県土整備部としてどう取り組むかということでありますが、委員ご指摘のとおり、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、日本の最終消費エネルギーの3割を占めるのが民生部門でありますから、住宅の部分を強化するということが大事だと思っております。
そういった意味で、木材の利用拡大や省エネルギー住宅のさらなる普及といったところを柱として、県土整備部としては取り組んでいくということで、住宅部門の総合的な計画ということで住宅マスタープランの改定作業をしておりましたので、そこの施策の1番目に位置づけようとしていること、あとは目標を持って取り組んでいくことを考えております。