2021年12月6日 文教委員会
再発防止「岩手モデル」に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
委員長。質問に入る前に、資料を委員の皆さんにお配りをしたい。これは、盛岡一高事件の裁判の中で、後輩の生徒が一高における暴力・暴言をリアルに陳述したものです。諮ってください。よろしいでしょうか。
【委員長】
それでは委員の皆様にお諮りしたいと思います。ただいま斉藤信委員から資料の提供の申し出がありました。いかがいたしますか。お配りをしてよろしいですか。ではお願いします。
【斉藤委員】
私は、再発防止「岩手モデル」策定委員会での検討状況についてお聞きをいたします。
最初にですね、再発防止「岩手モデル」を検討する中心問題は、なぜ不来方高校のバレー部員の自死事件が起こったのかの検証にあると思いますが、いかがですか。
【県立学校人事課長】
再発防止「岩手モデル」についてでありますが、現在検討を進めている再発防止「岩手モデル」の出発点としては、委員ご指摘の通り、当該県立学校生徒の自死事案にあり、その解明については、ご遺族のご要望を踏まえ、第三者委員会を設置し取り組んできたところでございます。当該第三者委員会においては、事案の事実経過や背景等の調査を行い、その結果明らかとなった事実およびその事実に基づき検討・考察した結果を、昨年7月に調査報告書としてまとめていただいたところでございまして、その内容については、県教委として深く重く受け止めています。
【斉藤委員】
不来方高校のバレー部員の自死事件の原点は、顧問教師の前任校であった盛岡一高事件への学校と県教委の対応にあったと思いますが、どう受け止めていますか。
【県立学校人事課長】
前任校の事案にかかる学校と県教委の対応についてでありますが、第三者委員会の調査報告書において、前任校の事案における学校および県教委の対応が不十分であったという指摘を踏まえ、再発防止「岩手モデル」策定委員会の部会の中で、当時の関係者へのヒアリング等を行いながら、学校および県教委における当時の対応状況や、対応として不足していた点、それらは重大事案につながった理由等について明らかにするための作業を進めているところでございます。
9月に開催いたしました第4回策定委員会においては、現時点で確認できた内容を報告したところでございます。当該策定委員会の中で、各委員より、さらに事実確認が必要な部分や対応として不足した点、およびその理由の分析、整理の仕方などについてご意見をいただいたところでございます。
引き続き策定委員会の意見を踏まえながら必要な作業を進め、当該校の事案につながることとなった理由を解明していくこととしております。
【斉藤委員】
盛岡一高事件についてはですね、学校がまともな調査をしなかったために、被害者が裁判に訴えざるを得なかった。これは盛岡地裁、仙台高裁、法廷で争われて、暴言・体罰が認定をされて、有罪判決となりました。顧問教師による暴言・体罰について、盛岡一高が必要な調査を行わなかったことが最大の問題だったと。なぜ暴言・体罰の事実確認をしなかったのか。そのことはどのように検証されているでしょうか。
【教職員課総括課長】
前任校における学校、県教委の対応の部分、体罰を確認しなかったのかという部分につきましては、先ほど木村課長の答弁にもありました通り、策定委員会の部会におきまして解明作業を進めておりまして、9月18日の第4回策定委員会の中で報告を行ったところです。
現時点におきましては、確認できた事実関係といたしまして、平成21年の11月になりますけれども、被害生徒の保護者からの訴えを受けまして、学校においては、顧問教諭はもとより、他の教員にも部活動指導における体罰や暴言の有無について確認を行っているところでございます。その聴取の結果でありますが、顧問教諭からは、「体罰は行っていない」こと、それから「強い口調での指導は行った」ことを確認し、また他の教員からの聞き取りでも、顧問教諭による体罰は確認できなかったことから、校長といたしましては、強い口調で指導を行ったことにつきまして、不適切として注意したところでございます。
【斉藤委員】
顧問教師の校長に対する虚偽の発言が、裁判で訴えざるを得なくなった最大の理由です。すでに裁判の過程でこれは翻して、体罰があったことを認めました。県教委の調査でも、やっと裁判の過程で体罰があったことが明らかになりました。この顧問教師の虚偽の発言・証言、どういう問題ですか。
【教職員課総括課長】
先ほども答弁させていただきました、11月の保護者からの訴えの段階におけます、学校による調査に対しまして、顧問教諭が体罰を否定したことに加えまして、他の教員からも顧問教諭による不適切指導の事実を確認できなかったことから、県教委および学校といたしましては、顧問教諭による体罰はなかったものと、その時点では判断したものでございます。
しかしながら、その当時の学校では、顧問教諭の強い口調での指導の具体的な内容の確認が十分でなかったことですとか、あとは被害生徒や他の部員に対する事実確認を行わなかったこと、さらによると県教育委員会による積極的な実態把握ですとか学校への指導助言が行われなかったことなどによって、不適切な部活動指導について正確な事実確認ができずに、顧問教諭の指導とも十分なものとならなかったものととらえております。
【斉藤委員】
実は、不来方高校でバレー部の顧問から自死に追い詰められる執拗な暴言、これは詳しく第三者委員会の調査報告書で明らかにされています。実はこの原形が、盛岡一高であったということなんです。
先ほど皆さんにお配りをいたしましたこの陳述書は、仙台高裁での裁判の中で、被害者生徒の2学年下のバレー部員の陳述書です。2学年下ですよ。どういうことが陳述されているかというと、2枚目のところから見てほしいんですけれども、被害者に対する学年に対する暴力、ここでこう書いています。「円陣を組んだ際、顧問の先生は3年生の顔を何発もビンタをしました。初めて1年生のときにこれをまざまざと見たので、すごく衝撃を受けたのを覚えています。顧問の先生がバレー部員に暴力を振るうところを何度も目撃し、私自身も受けました。頻度が高い生徒もいた印象です」ということで、どういう暴力が行われたのかということで、詳しく書いています。
暴力の種類(ア)「髪をつかまれて壁に激突させられる―顧問の先生から髪をつかまれたうえで、体ごと壁に投げつけられて、壁に激突されるという暴行を受けていました。髪をつかんだまま体育館の壁に3回ほどバレー部員の頭を打ち付けていました。顧問は『てめぇ』などと怒鳴っていました。同じく同級生のバレー部員も同様に髪をつかまれて壁に投げつけられたことがありました」。
2つ目「平手打ち」。これは顧問の先生によって「壁に投げつけるようにして立たせ、その後約30分ぐらい繰り返し繰り返し怒鳴りながら平手打ちをしました。30分ぐらいの間、顧問の先生の怒鳴り声と、パチンパチンという音が響き渡り―」と。
(ウ)として「ボールを投げつけられる」―「日常の練習でボールを顔にぶつけることがありました。
「鍵を投げつけられる」―「先生が私に向かって自動車の鍵を投げつけたこともありました」。1m程度の距離で鍵を投げつけられて、本人は顔を背けてかろうじて壁に鍵が当たったと。
実はこういうことを被害生徒が訴えていたんですよ。教官室に呼ばれて、こういう暴力・暴言があったということを訴えたのが最初の事件の発端でした。しかし学校側は、顧問の先生、その時の生徒はほとんど調べなかった。バレー部員も。顧問の先生の虚偽の証言だけを根拠にして、まともな調査をしなかった。
この陳述書を皆さんも見たと思うし、皆さんからもらったのだから、この陳述書を見たら顧問の先生による暴力・暴言が日常的に、被害生徒の学年だけではなくて、数年にわたって行われていたということが明らかになったのではないでしょうか。県教委は裁判の過程で示されたこの暴力・暴言の実態をどう受け止めたのか。なぜ調査しなかったのか。このことを示してください。
【教職員課総括課長】
陳述書が提出された当時のこの内容についての確認ということでございますが、いま現在、策定委員会の中の部会で進めておりますこの事案の理由解明の調査の中でも、当時の学校の管理職ですとか県教育委員会の関係者にもヒアリングをしておるところでしたが、いま委員からご指摘いただいた中身につきましては、ヒアリングの中では確認しておらなかった部分でありまして、詳細にはちょっと不明ではございますけれども、我々の持っている資料の中では、陳述書の内容を受けて、当時の生徒さんからヒアリングをしたとか、それを示すような書類は現時点では確認はできていないというところです。
【斉藤委員】
公の裁判の過程で、深刻な盛岡一高における暴力・暴言の実態が陳述書という形で、これは証拠採用されたものですよ。その時にあなた方は、応訴したことが間違いだったと気づくべきではなかったんですか。それを今までまったく調べてこなかったと。県教委の責任はきわめて重大ではないでしょうか。
実は裁判が終わったときに、教育長の談話が出ました。「平手打ち、体育教官室での叱責等、部員に対する言動が違法な行為と認定されたところ。重く受け止める。深くお詫びをします」と。その後、「事実関係の認定については本件訴訟の過程において尽くされたところであります」と。こう書いているんですよ。いわば陳述書で被害者生徒に対する暴力・暴言だけではなくて、数年にわたってこういう暴力・暴言が行われていた。この陳述書は、顧問教師の評価に関わる問題だと思うんですよ。だから、この二審の判決が終わった後にどういう処分が下されたか。「減給1ヶ月」ですよ。こんなことないでしょう。この問題にあなた方が正確に対応しなくて、そしてこの顧問教師がそのまま不来方に行ってバレー部の顧問を続けた。だから第二の悲劇が起きたんでしょう。
学校の対応も大問題だけれども、その学校の対応をあなた方は許してきた。県教委の対応はもっと重大だったと。第二の事件を引き起こしてしまったと。そういう反省はありますか。
【教職員課総括課長】
先ほど申し上げましたけれども、学校と県教委における当時の対応につきましては、第三者委員会の報告書におきましても「十分でなかった」とご指摘をいただいておるところでして、最初に口頭でも申し上げましたけれども、そういうことにつきましては真摯に受け止めておるところでございます。
【斉藤委員】
現時点であなた方の反省があまりにも足りないのではないかと思いますよ。原点は、被害生徒・保護者から訴えられたときに、学校が部員の調査をしなかったことなんですよ。いわば、4人の同学年の生徒を調査したという報告はあります。しかし裁判の過程の中で、このうち2人は「何の記憶をもありません」と言っています。この4人の調査も作ったものではないかと思います。4人の調査で「体罰はない」、こうやって否定したんですよ。
それでひどいことは、当時の被害者・保護者に対して、調査を拒否して、「後からつくられた記憶もある」と副校長は言ったんですよ。二重三重に被害者・被害者家族に対して、甚大な打撃を与えるような対応を学校はしてきた。本当に許されない。こういう対応も検証すべきだと思いますよ。
それで、顧問の教師が裁判で訴えられている最中に、不来方高校の異動を認めました。この異動の過程で、「顧問につけることに疑義を出す人が県教委の中にもいた」と書かれています。しかし、校長が「責任を持って対応する」という形でこの異動はやられていた。暴力・暴言が問題になっている裁判の過程で、裁判の中身も示さず、こういう異動を認めたことはきわめて重大だと思いますがいかがですか。
【教職員課総括課長】
当該顧問教諭の人事異動に関してでございますけれども、その当時の定期人事異動作業の中につきまして、教職員課としては当該教諭の状況を把握するために、前任校の校長へのヒアリングを行いましたが、前任校の校長は、前任者が引き継ぎがなかったことから、「依然保護者とトラブルがあった程度」としか把握していなかったために、教職員課に対しては望ましい説明がされなかったということでございます。
教職員課では、校長から確認した当該顧問教諭の勤務状況ですとか、あとは当該校からの運動を希望する声等、そういう要望も総合的に勘案いたしまして、顧問教諭の当該校への異動を決めたということでございます。
【斉藤委員】
事実経過の流れだけでは反省にも何にもならないんですよ。
残念ながら時間がないので、当該顧問についての処分がなぜ遅れているのか。もう事件が起きてから3年経っているんですよ。なんで遅れているんですか。
もう1つは、事実確認という話をこの間議会でもしてきました。顧問教師は、県教委の事実確認に誠実に対応しているのですか。事実確認が進まない原因はなんですか。
【教職員課総括課長】
当該顧問教諭に対する処分等の措置のための調査ということでございます。この教諭にかかる処分等の措置についてでございますけれども、本件にあたりましては、先ほどの斉藤委員からの前任校における事案の裁判におきまして、陳述書という形でご提示いただきましたけれども、そういう声があったと疑われるような内容が記載された書証が示されているということから、この具体的な内容につきましても調査する必要があるととらえておりまして、現在、過去にさかのぼりまして、卒業した生徒らに書面ですとか、直接の聞き取りによる調査を行っている状況でございます。
【斉藤委員】
必要な事実確認はすべきだと。しかしダラダラとすべきではないと。
例えば今年1月、沖縄で柔道部の部員が顧問によって追い詰められて自殺をした事件。7月に懲戒免職処分されています。7ヶ月ですよ。3年もかかっているということ自身がきわめて異常だと。この教員には毎月給与が払われボーナスも払われるんですよ。おかしいではないですか。速やかに必要な事実確認はやって、遅くとも年度内にはこの処分の決着を、これだけの事件ですから、一高事件も不来方事件も含めて、私は懲戒免職を免れないと思うけれども、しっかりやるべきだと。
最後だけ教育長に聞きましょう。年度内には必ず必要な調査をやって処分をしますと、言明してください。
【教育長】
処分に向けた調査等について時間を要しているという答弁をさせていただいております。
9月に行った第4回の再発防止「岩手モデル」策定委員会、これまで事実関係の調査等も進めてきました。そして学校および県教委の不足した点、それぞれの当時の関係者、これは平成21年までさかのぼるわけでありますけれども、多くの関係者、そして改めて確認する時間等がかかっております。
それから9月の委員会の際には、これまでの取りまとめした中間報告という形でございますけれども、委員会で報告をさせていただき、被害者の家族、ご遺族の方々にも説明をさせていただきました。そしてまたそこでご意見等も頂戴し、さらに確認すべき点等もご意見を頂戴してございます。
それらを踏まえながらですね、私ども処分権者として、これは慎重に判断しなければならない部分当然ございますので、そのために時間を要しているということでございます。
調査が進み次第、そこはしっかり判断して対処してまいりたいと考えております。