2022年3月9日 予算特別委員会
ふるさと振興部に対する質疑(大要)
・三陸鉄道の現状と課題について
【斉藤委員】
最初に、三陸鉄道の現状と課題について示してください。
【地域交通課長】
まず三陸鉄道の現状でございますが、三陸鉄道は平成6年に経常損益が赤字となって以降、厳しい経営状況が続いております。県と沿線市町村が設備維持にかかる経費を補助することなどで何とか経営を支えているという状況であります。さらに、東日本大震災津波、台風19号災害、これらによって甚大な被害を受けまして、平成31年に運行再開をしたものの、今度は新型コロナウイルスの影響で、令和2年度は過去最大の5億8000万円余の経常損失が生じるなど、経営環境は一層厳しさを増しております。
課題でございますが、本県三陸地域の基幹交通であり、重要な観光資源である三陸鉄道は、今後も持続的な運行を続けていくことが何より大切だと思っております。そのために、三陸地域における三陸鉄道の役割、意義、重要性について、改めて沿線市町村と共有し、連携して利用促進を図るとともに、その経営を支え、三陸鉄道を活用した地域創生につなげていくことが課題であり、そのための取り組みの推進が重要であると考えております。
【斉藤委員】
三陸鉄道はですね、東日本大震災津波からの復興のシンボルとも言われて、5日後に久慈市で無料運行すると。宮古から田老も無料運行して、大変地域住民を励ましたと。さまざまな困難がありましたけれども、見事に3年で再建整備をされたと。その後、釜石―宮古間、これは移管をされて、日本一の163キロの第三セクター鉄道という風になったと。私は163キロには岩手としてはいろんな意味があるのではないかと。日本一と第三セクター鉄道ということと、大谷選手も国内にいたときには最高163キロ、大船渡高校の佐々木朗希選手は高校時代に163キロを出して、すでに春のオープン戦で163キロを投げまして今シーズン絶好調という形で、この163キロというのは私本当に岩手にとっては意味のある数字になっているのではないかと。
そこで、三陸沿岸の復興まちづくりを考えたときに、三陸鉄道をどう生かすかということが大変重要な課題になっていると。三陸鉄道というのは、鉄道として生かすというだけではなくて、鉄道を利用することによって地域経済への波及効果というのが大変大きなものがあります。実際に、宮古は宮古市役所が駅の近くに移転をされました。山田は山田駅前にコンパクトシティ―住宅から金融機関からスーパーから、そういう形で駅中心のまちづくりが進められ、鵜住居では鵜住居駅、ここにグラウンドもあり、そして命の未来館があり、体育館も整備をされるという。そういう意味で、本当に復興というのは三陸と一体で進められてきたと思います。しかし今答弁あったように、度重なる台風被害その他で、そしてコロナで大変厳しい状況にあるのも事実です。
そこで、実は最近「次の10年へ」という三鉄を想う方々、県庁の職員方々もたくさん書いていますが、どうやって三鉄を生かし発展させるのかというさまざまな提言がされています。このさまざまな提言をどのように受け止めているでしょうか。
【地域交通課長】
いま委員からご紹介のありました提言書でございますが、岩手大学の齋藤徳美名誉教授をはじめ、三陸鉄道を熱意を持って支えようとする方々、それから三陸鉄道幹部職員などによる機構からなってございまして、沿線市町村とともに、三陸鉄道を活用し、被災地のにぎわいづくりといった地域創生に取り組もうとする、そのものであります。三陸鉄道の持続的な運行、さらには三陸鉄道を動脈とした地域創生、そういったものを後押しする提言であると受け止めております。あるいは地域公共交通を所管する我々といたしましても、沿線市町村とより一層連携を密にして三陸鉄道の持続的な運行を果たしていかなければならない思いを強くしたところでございます。
【斉藤委員】
復活した三陸鉄道は上下分離方式、いわば株式会社三陸鉄道が運営に責任を持つと。資産は各県・市町村ということになって、これ株主もですね、沿岸市町村すべての首長が参加をしている。まさに三陸沿岸の共同経営といってもいいものだと想います。そして一本につながったと。いわば今必要なのは、三陸沿線の市町村が一体となって、この三陸鉄道をどう生かしまちづくりを進めるのかということだと思いますが、私も読んでみて、齋藤徳美先生からも直接お話をお聞きしました。齋藤徳美先生は「三鉄が破綻したら復興も失敗だよ」と繰り返しそう言っているんですが、中村社長のさまざまな思い出、提言というのも、私なるほどなと思ったのはですね、三陸鉄道というのは、住民の皆さんの足としての役割、観光など交流人口の拡大による地域の振興に貢献する―2つの使命があると。こういった視点でですね、やはり三鉄の特殊性というのは、東日本大震災から復活をしたと、そういう点でのスタディーツーリズム、いわゆる震災学習列車、こういうところに大変大きな特徴があるのではないかと。フロントライン学習というのも提起をされております。
この点でちょっとお聞きしたいんですけれども、この間、今年度でもいいですが、修学旅行、企業・団体の研修旅行、これどのぐらい三鉄が活用されているでしょうか。
【地域交通課長】
今ご紹介いただきました三陸鉄道が実施しております震災学習列車、これは24年から運行しておりますが、これまで約76000人の方々にご利用いただいております。今年度につきましては、1月末時点で181件、ご利用いただいている方は9156人となってございます。
【斉藤委員】
修学旅行その他で内訳分かりますか。
【地域交通課長】
内訳はちょっと今手元にはございません。
【斉藤委員】
陸前高田の津波伝承館もですね、コロナの下ですけれども、かなり県内外からの修学旅行、団体での参加が多かったということであります。そういう意味でいくと、これを定着させるということが大変大事なのではないかと思います。
提言の中ではですね、やはり地域の方に使ってもらうという点では、町内会・老人クラブ、さまざまな地域の会社、いわば貸切列車というのも意外と知られていないと。ですから、そういう地域の方々が積極的に活用するという、地域に愛され地域に活用されてこそ長続きするんだと思います。
もう1つ印象に残ったのは、これは中村社長が言っているんですけれども、「三陸の子どもたちが自慢できる鉄道にしたい」と。彼は実は自分が千厩地方振興局の時に、当時の東山町では、町の有名な観光資源である猊鼻渓を、中学校3年生全員に体験させているんですね。町の誇りとして。やはり三陸鉄道を三陸地域の宝として、例えば中学校3年生がみんなそういう震災学習列車にしろ、そういう形で体験をするということも大変大事なのではないか。そういう点で、地域に愛される、いろんな団体がそういう活動で活用するということが大変大事ではないかと思いますがいかがですか。
【地域交通課長】
まさに今ご紹介いただきました、子どもたちの心に三陸鉄道を深くとどめてもらうといったような取り組みは非常に重要であると考えております。これまでもですね、子どもたちを対象とした取り組みとしては、幼稚園児等に三陸鉄道の絵を描いていただいて、三陸鉄道の列車の中にその絵を飾り、乗車機会を創出するような取り組みですとか、今年度につきましては、新たにこれまであまり利用機会のなかった小学生を対象に「無料の日」というものの設定も行っておりますし、中高生を対象とした一日フリー乗車券の割引販売といったものにも取り組んで、子どもたちに対して利用促進ですとか、マイレール意識を持っていただこうという取り組みも幅を広げてきたところでございます。
今ご紹介のありました子どもたちの取り組みに対する取り組みというのは非常に重要だと思いますので、今後そちらの方も県と沿線市町村で組織しております利用促進協議会の事業等を通じて力を入れてまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
もう1つ、「次の10年」のところで大変勉強させられたのはインバウンドなんですね。お隣秋田県の秋田内陸線では、コロナ前までは台湾からのインバウンドが好調で、2019年は35000人利用したと。これは台湾の旅行エージェントを継続して訪問して関係を築いたと。団体ツアーの受け入れを増やしたと。秋田の内陸線でこれができたわけですから、台湾というのは岩手でも大変たくさん多くの観光客が来られている。その一環に、震災から復興した日本で一番長い三陸鉄道、これを体験してもらうと。そういう取り組み、これはポストコロナを想定して、戦略的にやる必要があるのではないか。
もう1つ、ここにもあるんですけれども、三陸沿線市町村は株主です。ですから、三陸鉄道というのは自分たちの鉄道なんですね。ところが、意外と自治体の職員が使っていないと。「担当になって使いました。大変良くなりました」というのもここには出ています。やはり普通なら会社をあげて、役所をあげて、可能なら三鉄を利用すると。そうしてこそ三鉄に対する愛情も良さも分かってくると思うんですね。こういう点はすぐに生かせるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【地域交通課長】
今ご提言いただきましたインバウンドに関する取り組み、なかなかコロナ禍ではすぐには難しいですが、その先を見据えた取り組みの中で、そういった視点も持ちながら取り組んでまいりたいと考えますし、それから沿線市町村との連携ということにつきましては、この「次の10年」の提言書、沿線13市町村の全職員の無料( )も出されておりますので、この提言書を一つのきっかけにさせていただきながらですね、より沿線市町村と三陸鉄道に対する意識を共有し、今お話のあった、出張のときには三鉄を使う、通勤に使う、そういった取り組みの拡大につなげていきたいと考えます。
【交通政策室長】
ただ今インバウンドの関係についてお話がありましたけれども、台湾につきましては、これまでもですね三陸鉄道におきましては、「あまちゃん」がありまして、あまちゃんを見たいということで台湾の方々かなり来ておりました。ただ、コロナの関係もありましてなかなか来れなくなったということでございまして、ぜひ今委員お話あった通り、その点については伸ばしていきたいと思います。
もう1つはですね、IGRと三鉄はですね台湾と協定を結んでおりまして、そういった取り組みも進めながら活用して進めていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
【斉藤委員】
本当に三陸鉄道を愛する方々がさまざまな提言をされております。ぜひこれを生かして、これからの10年、三鉄も三陸沿岸地域も元気になったと、そういう取り組みをぜひ進めていただきたい。
・いわて復興応援隊、地域起こし協力隊について
【斉藤委員】
最後1つだけ。いわて復興応援隊、地域起こし協力隊の取り組みについて、それぞれの実績、岩手にその後残って頑張っている方々少なくないと評価もされていますが、その取り組みも含めて示してください。
【地域企画監】
いわて復興応援隊の取り組みと実績についてでございますが、県では国の復興支援員制度を活用しまして、被災地の復興や地域振興の支援などを行う、いわて復興応援隊を県内外から募集しまして、これまで沿岸市町村を中心に延べ61名の隊員を配置し、令和3年度においては12名の隊員が活動しているところでございます。
隊員の取り組みとしましては、交流人口の拡大に向けた広域的なプロジェクトの推進に重点を置き、沿岸広域振興局や三陸ジオパーク推進協議会、三陸鉄道株式会社等に隊員を配置しまして、三陸防災復興ゾーンプロジェクトや三陸鉄道の利用促進にかかる情報発信、オンラインセミナーなどによるジオパークの地域への普及啓発など、地域と連携したさまざまな取り組みを行っているところでございます。
これまで受け入れを行った隊員のうち、7割を超える方が県内に定住しているというところでございます。
【地域振興課長】
地域起こし協力隊の活動と実績についてでございますが、総務省の調査をもとに県の方で集計したところになりますけれども、令和3年度では32市町村で210名の隊員が活動しております。
活動の例といたしましては、例えばブドウなどの果樹栽培や森林の利用促進をはじめとした農畜産業・林業・漁業への従事、それから体験型観光コンテンツの開発や道の駅開業支援などの観光資源の企画・開発などに関する活動、地域や地域産品の情報発信・PRに関する活動、それから移住・交流促進に関する活動など、さまざまな活動が行われてございます。
また、任期終了後の定住状況につきましては、令和2年度末までに任期が終了したおおむね1年以上活動した隊員193名のうち、約7割の133名が県内に定住しておりまして、この方々は57名が起業、53名が就業、13名が就農等となっております。これまで県の方といたしましては、市町村との担当職員との情報交換会、あるいは起業を目指すセミナーなどの開催で活動を支援しているところでございます。
【斉藤委員】
復興応援隊、地域起こし協力隊、本当に復興の中で、地域起こしの中で素晴らしい役割を果たして、7割が定住しているというのはおそらく全国トップクラスだと思うんですね。そこにも岩手の魅力があるのではないか。
東海新報には、陸前高田市では若者は100人この間移住しているという報道もありました。この若者の活力を大事にして、この取り組みを進めていただきたい。