2022年3月9日 予算特別委員会
ILC推進局に対する質疑
(大要)


・ILCをめぐる動向について

【斉藤委員】
 佐々木朋和委員の質問とも少しダブるところもありますけれども、論理の関係上改めてお聞きします。
 ILCに関する有識者会議、この第二期、議論のまとめというのが2月14日公表されました。この議論のまとめのポイント・要点を正確に示してください。

【副局長】
 議論のまとめでは、ILC計画について、「この3年間で一定の技術的な進展等が認められるものの、国際費用分担とILC計画の今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない。現時点においては、誘致に関する日本政府の関心表明を前提とし、かつ提案された規模によるILC準備研究座談会への移行を支持できる状況にはなく、時期尚早であると言わざるを得ない」としています。そのうえで、「素粒子物理学、加速器科学分野において、今も世界に高いプレゼンスを有し、今後の世界をリードする研究成果を創出し、本分野を振興していくことを期待し―」ということで、ILC計画の進め方について、研究者コミュニティを中心に再検討していくことや、ILC準備研究所にこだわるのではなく、国際協力による加速器の技術開発を段階的に展開していくこと、関係国の政府関係者が議論できる環境を醸成することなどについての見解等を取りまとめております。

【斉藤委員】
 今の答弁にあるように、「今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない」というのが、大局的に見たら全体の評価だったんだと思います。その中で、付言では「日本が世界に高いプレゼンスを有する基礎科学分野、今後も世界をリードする研究成果を創出し―」ということがあるんですが、「一方で」というところが大事なんですね。「昨今の関係国の厳しい財政事情等も踏まえれば、ILCの計画の進め方について、提案研究者コミュニティを中心に再検討する時期にきている」という、かなり重大な問題提起がされているのではないかと。
 例えばこの1年間で、文科省が米国・フランス・イギリス・ドイツとの意見交換をやりましたね。ここでも、財政事情の問題というのが議論になったと。単純に言うと、やれやれということではなかったと私は受け止めているんだけれども、そういう点では、全体として各国間の協議・協力体制というのはつくられていないということでよろしいか。

【副局長】
 各国の協力体制といいますか、研究者の段階の検討、それから費用分担に関してということで、それをもって国との協議というのは、それは日本もそうですし各国ともそういう体制が必要だということで、政府間の意見交換等は10月にもちろん実施されていますし、その中で今回のまとめを受けて、また今後とも情報提供して意見交換するといったところのお話はできていますので、政府間同士のやりとりというのはできていると。ただ、自分の国の研究者と国の間とのところを、もうちょっと各国ともやってもらって、政府間後の交渉のときに具体的な話ができるようにというところが期待されていると受け止めています。

【斉藤委員】
 先ほども議論ありましたけれども、「再検討する時期にきている」と。再検討にあたっては、ここで議論になったFCCの検討状況も視野に入れながらと、こういうことなんですよね。だから、提起されている再検討の中身、改めて正確にお聞きします。

【副局長】
 再検討、そのまとめの中ではですね、「ILC計画のみに閉じた議論ではなく、現在欧州で進められている次世代円形衝突型加速器FCCの検討状況党も視野に入れながら、どのように素粒子物理学、加速器科学の分野の将来像を描き、サイエンスを継続的に発展させていくのか」。ですから、ILC・FCCを含めたヒックスファクトリーに関する国際的な研究開発戦略をどのように再構築していくのか、その戦略の核心をなす課題は何か、といったことと合わせて、幅広く検討・整理しながら、関係国の研究機関の連携を強化して、段階的に研究開発を進めていくべきという話になっております。

【斉藤委員】
 提起された再検討の中身というのは、かなり大きな、重い課題が提起をされたのではないかと、私はこう受け止めております。
 いずれにしても、ILCというのは国家プロジェクトで、1つは、国内での合意形成、これがまだ十分ではないんだと思うんですね。科学者間・国民との間で。もう1つは、国際的な協議・協力の体制、だから全体として大きな進展が見られないという評価になったのではないか。
 それで、国家プロジェクトとして、国民的な合意をつくっていく上で、全国知事会が果たす役割は大きいんじゃないかと。全国知事会は、この間このILC計画についてどう議論され、政府に対してどういう提案をしているでしょうか。

【副局長】
 全国知事会ですが、平成29年度に本県で開催された全国知事会において、国際科学技術研究拠点の形成、新たな産業集積圏域の創設など、科学技術の振興に関する要望が取りまとめられまして、以降毎年度国に知事会として要望しております。
 今年度、全国知事会に対してですね、ILC計画の実現に向けた国の積極的な対応を盛り込むよう本県から働きかけまして、これまで個別の事案は盛り込まないということで調整をされてきたとうかがっておりますけれども、ILCについては全国都道府県議会議長会の要望がありますし、衆参両院で復興庁の期間延長の際の附帯決議にILCが盛り込まれたといったようなことも説明して、国家プロジェクトであるということでの実現に向けた対応・要望をするものだということでご理解いただきまして、このような国への提案・要望にILCを具体的に盛り込みました。ということで、今年度要請活動はオンラインという形にはなっていますけれども、県としては引き続き全国の知事の理解をいただいて、一体となってILCの実現に取り組んでまいりたいと思っております。

【斉藤委員】
 全国知事会がですね、岩手で開催された全国知事会を契機に、科学技術に関する要望を行って、来年度への要望でついに「国際リニアコライダー」「ILC」と明記をされたと。これは一歩前進だと思います。ただ、全国的な議論というか、国民的な議論というのはまだまだ、東北・北海道からまだ域を出ていないのではないか。そういう点で、これは日本の財政のあり方も絡む問題です。そういう意味で、しっかり国民的な合意形成、議論を展開していくことが必要なのではないかと。それを土台にして国際的な協力関係、新型コロナがあり、ロシアによるウクライナの侵略があって、世界情勢は本当に複雑、そして財政的には厳しい局面を迎えているのではないか。そういう点では少し中長期的にもうちょっと構えた取り組み、粘り強い取り組みも必要なのではないかと考えますが、局長いかがですか。

【ILC推進局長】
 ILCの実現に向けては、委員ご指摘の通り、建設候補地近傍だけにとどまらず、全国的な理解、あるいは推進の連携が必要と考えております。
 経済界等においては、東北経済連合会が隣接の経済界と広域での共同要望などを実施するというようなことに加えて、地元から日本商工会議所等への働きかけが積極的に進められておりまして、理解もいただき、例えば、昨日政府主催で開催されました新しい資本主義実現会議では、有識者構成員が日本商工会議所の会頭さんが「国際リニアコライダー誘致への取り組みについて」ということで、資料提供と発言をなさったという風にも聞いております。また、その他にも各界の著名人等による100人委員会の活動ですとか、ILCサポーターズの力添えというものもあります。
 研究者コミュニティでは、現在訪問活動等により国内大学の理解を広げておりまして、県も先ほど申した通り全国知事会等への働きかけを進めているといったところです。
 県としましては、こういった関係者と連携を深めながらですね、建設候補地ということでの役割を近傍の関係の自治体と一緒に担っていくということが重要と考えておりまして、新体制となります超党派国会議連の今後の活動方針等についても適宜情報をいただき、またアドバイス等をいただきながら、全国的な機運の醸成につなげてまいりたいと考えております。