2022年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(農業関係)に対する質疑(大要)
・米価下落の実態と影響について
【斉藤委員】
最初に米価下落の実態と影響についてお聞きいたします。
令和2年度産米、令和3年度産米の米価下落の状況、農家の減収、赤字の農家の実態はどうなっているでしょうか。
【県産米戦略監】
令和2年産米、令和3年産米の米価下落の状況についてでありますが、令和3年産の本県ひとめぼれの出回りから令和4年1月までの出荷業者と卸売事業者との相対取引価格は、60kg当たり22586円となっております。令和2年産米に比べまして約1800件程度低下してございます。
農家の減収、赤字の農家の実態でございますが、令和3年産ひとめぼれの令和4年1月までの相対取引価格をもとに、国が公表しました本県の10アールあたり10表550kgで、10アールあたりの収入額を試算しますと107790円となります。最新の値であります令和2年産の東北の米生産費の作付規模別の全算入生産費を見ますと、約5ヘクタール未満で収入額を生産費が上回るといった状況になってございます。
【斉藤委員】
県内の平均農家2.1ヘクタールと決算のときには言ってもらいました。10ヘクタールの農家、100ヘクタールの集落営農ではどれだけの減収になりますか。5ヘクタール未満の農家戸数は何%になりますか。
【農政担当技監】
5ヘクタール未満の農家戸数の方を私の方で答弁させていただいて、その間にそれ以上の規模については答弁させていただきます。
5ヘクタール未満の県内の農家戸数ですけれども、2020年の農林センサスを見ますと約26000戸で、割合でいきますと95%となっております。
【県産米戦略監】
JA概算金が2300円ひとめぼれで下がったということで、それに対しまして収穫量の550kgで試算しますと、県平均規模の2.1ヘクタール規模ですと44万円、10ヘクタールですと212万円の減収となります。
【斉藤委員】
ちゃんと答えてくださいよ、決算のとき答えているんだからちゃんと。
5ヘクタール未満、赤字の農家は95%ということでした。圧倒的に県内の農家赤字生産で米をつくっているということになります。
それで、ナラシ対策、収入保険加入状況、それの補てん額は分かりますか。
【水田農業課長】
ナラシ対策の件ですけれども、補てん額はございません。令和2年産の補てん金は、米については実績ゼロです。ありません。3年産の補てん額につきましては、今度5月の下旬に公表となる予定となっております。
【斉藤委員】
3年産米は5月に出るというんだけど、なんで令和2年産米は去年の5月に出ないんですか。
【農産園芸課総括課長】
令和2年産のナラシの関係でございますけれども、その部分につきましては、価格差の関係で実際の支払いが行われなかったというものでございます。
【斉藤委員】
ナラシに入っていても令和2年産米はいわば対象にならなかったということですね。丸々減収になったということになるんだと思います。これ決算のときの答えを紹介しますと、令和2年産米というのは22億円の減収なんですよ。令和3年産米は65億円の減収見込みということでありました。22億円減収になってもナラシ対策の対象にならないと。これはとんでもない話ですよ。
それでもう1つお聞きをいたしましょう。今の令和4年産米の作付面積、減反分、余剰米の実態はどうなっていますか。余剰米を市場から隔離しないと、米価暴落の悪循環になってしまうのではないかと思いますが、いかがですか。
【水田農業課長】
令和4年産の減反面積についてでございますが、県、関係機関・団体で構成する県農業再生協議会では、国が示した令和4年産の全国の主食用米の適正な生産量をもとに、本県4年産の生産目安を、作付面積で令和3年産の実績に比べて約1700ヘクタール減の約44500ヘクタールとしております。
【県産米戦略監】
余剰米を隔離しなければ米価が下がるということでございますけれども、需給あるいは価格の安定につきましては、やはり県というよりも国が主導を持って実行していただきたいということで、県におきましても国に対しまして再三にわたりまして要望活動を行っているところでございます。
【斉藤委員】
実は令和3年・4年産米の需給見通しを見ますと、令和3年の生産量は701万トンでした。そして需要量は702万トンから706万トンなんですね。だから生産量と受給は基本的には今合っているんです。ただ、余剰米が、在庫量が去年の6月で218万トン、令和4年6月だと213万トンぐらいになると。これは余剰米を隔離すれば、200万トンを保管してですよ、これ採算合うようになっているんですね。令和4年・5年産の見通しで見ますと、生産量は675万トン、需要量は692万トンですから、若干差がありますけれども、基本的にはだいたい生産と需要量と合うと。だから今余っている、コロナの影響で余っている余剰米を20〜30万トン隔離したら、米暴落は阻止できると。これは技監に聞きましょう。そう思いませんか。
【農政担当技監】
米の需給見通しについては委員ご指摘の通り、令和4年産米の生産量で675万トンというのが国から示されている数字でございまして、これに対しまして、来年6月末に200万トン程度が在庫としては適正だと国は言っていますので、それを全国で取り組んで令和4年産の生産量が達成できればそれが達成できるんだろうと思っていますけれども、それを達成するには本県とすれば約1700ヘクタールの作付転換というものをお示ししているところでございます。
【斉藤委員】
だから転作しているんですよ。転作してトントンになっているんですよ。ただ余剰米、いわゆる20〜30万トンの新型コロナの余剰米がそのままだぶついているから、国はただ保管だけしているから、これが影響して4年産米も暴落しますよ、このままだったら。それは何としても食い止めなくちゃならないのではないかと。2年連続の暴落なんですから。
・水田活用直接支払い交付金の大幅削減について
【斉藤委員】
米価が2年連続暴落してですね、農家の96%が赤字になっているときに、いま政府は何をやろうとしているか。今日各委員から議論になりました。水田活用直接支払い交付金を大幅に削減すると。新型コロナで困っているときに、また助成金を大幅カットする。私はこのこと自身が、まったく農業・農民を顧みない、そういう姿勢じゃないのかと思います。
水田活用直接支払い交付金の県内の実績はどうなっているでしょうか。作物別に分かれば示してください。
【水田農業課長】
交付金の県内の実績についてでございますが、全体の面積につきましては127億円と答弁させていただいているところでございますが、その内訳としての戦略作物助成の分についてですが、品目別の交付額は公表されていないんですけど面積が公表されておりますので、牧草や飼料用米、トウモロコシなどの飼料作物が約7700ヘクタール、飼料用米が約3600ヘクタール、大豆が約3500ヘクタール、麦が約3300ヘクタールなどとなってございます。
【斉藤委員】
面積で言いますと一番多いのが飼料作物なんですね。7600ヘクタール。これほとんどおそらく3万5千円が1万円になるでしょう。この影響額いくらになりますか。
【水田農業課長】
見直しにかかる減収額につきましては、現在生産者それぞれが作付する作物や面積などを令和4年産の営農計画を検討しているところでございまして、現時点でお示しするの難しいところでございます。
【斉藤委員】
あまりにも影響額が大きいから答えられないんですよ。これ深刻な事態ですよ。
実は総括質疑のときに高田一郎県議が、ある農業法人の具体的な試算を紹介しました。70町歩の水田、10町歩は牧草、250万円の減収です。12町歩は飼料米、72万円減収です。320万円以上の減収になると。「経営計画が立てられない」―現場はこう言っているんですよ。飼料作物なんてほとんど減収の対象になってしまいますよ。
それで、5年に1回水張りだと。これまったく矛盾している。水田から転作しようと言っているときに、5年に1回水田作れと。おかしいじゃないですか。そして農家の声は、転作ローテーションというのは「全く合理性がない」と。大豆にしても麦にしても飼料作物にしても、そんなことをやったら作物の質が悪くなる、量が取れない。蕎麦なんか本当に何十年かかって蕎麦のための土地を作ってきた。それを水田に返すなんてことはあり得ないんですよ。これ経済合理性が全くないんですよ。あるのは何かというと、財務省の攻撃で「転作助成金減らせ」ということ。そのためにこういう見直しを押し付けているんじゃないですか。5年に1回のローテーションという、農業技術上で何かメリットあるんですか。5年に1回米作ったらどうなるんですか。こんな矛盾した政策ないでしょう。どうですか技監。
【農政担当技監】
先ほどから採算ご答弁申し上げているところでございますが、この直接支払い交付金については、水田からより収益を上げていただくという形で、作付転換、他の作物を作る際に支援する交付金という形で交付されているものでございますので、もし仮にここで水稲以外の畑作物が定着しているのであれば、国の方では畑地として高収益作物を作って生産をあげてほしいという目的で今回見直しをされたと承知してございます。また、生産者の方にあっては、そういった水田の方の農地を最大限活用して収益を上げるような経営をしていただきたいと考えてございます。
ただ一方で、制度運用の継続前提にですね、生産者の方これまで取り組んできたというような実態も承知してございますので、そういった地域の実態については国の方にしっかり伝えていきたいと考えているところでございます。
【斉藤委員】
まったく残念ながら技監らしい答弁にならなかった。保副知事は総括質疑の答弁でこう言っています。「我々とすればいかに今回の見直しが現場にそぐわないものであるかということについて、基本的な数字、データを用意したうえで、実態として農家の皆さんの経営が今後も持続可能なように何かできないか、そういった観点で考える」と。知事は「地域の事情を国に理解してもらって、その地域の状況に合うような農政施策というものを求めていくようしている」「生産者の皆様の希望が叶い、力強く農業を進められるよう、全国知事会と連携しながら取り組んでいきたい」と。知事・副知事がこんな立派な答弁しているときに、あなた方は国の言い分をオウム返しにすると。おかしいじゃないですか。もっと現場の農家の実態、要求、矛盾、こういうものをしっかりまとめて、全国知事会、東北・北海道知事会、緊急にやるべきですよ。
実は飼料のカットは来年から始まるんですよ、4月から。飼料米の複数年契約のカットも来年から始まるんですよ。5年後じゃないんですよ。そういう緊迫性、緊張感を持って、岩手の農業を守ると。こういうことで部長、しっかり実態を把握して、整理して、要望をまとめて、知事会や国に働きかける必要があるんじゃないですか。
【農林水産部長】
先ほど来からご答弁申し上げてございますが、いずれ地域の実情とか実態として、堂々と国に申し入れできる材料をきちんと整理をしていかなきゃないと思ってございます。その上で説得力ある中身にして、国に何を申していくか、戦略を考えていかなければならないと思ってございます。
全国知事会の関係もですね、各県から今この問題について知事会として要望をあげようということに残念ながらなってございません。そういう実態がまだございませんので、おそらく各県とも同じような状況でいろいろ悩みを抱えているところだと承知をしてございます。
【斉藤委員】
だからこそ岩手が音頭をとってやるぐらいの構えでやってくださいよ。本当にこれ大変ですよ。
結局牧草地、補助金がなかったらこれ土地を農家に返す。荒廃地になります。麦・大豆も、採算とれなかったら辞めるしかないんですよ。農地の荒廃ですよ。そういう危機感を持ってやっていただきたい。
・農業切り捨て政治は許されない
【斉藤委員】
先ほど部長は「補助金に頼らない農業の自立」と言いました。これ間違いです。いいですか、農業所得に占める補助金の割合は、イギリス90.5%、ドイツ69.7%、フランス94.7%、日本は30.2%です。農業というのは食料戦略物資、安全保障に関わる物資、自然環境を守っている、そういう役割を果たしているんですよ。だから日本がわずか37%の自給率なのに、100%を超えているフランスでもこれだけ補償しているんですよ。米価の下落の責任もとらない。その中で今度は転作助成金まで大幅カットする。まさにこういう農政でいいのかということが問われている。
部長、先ほどの発言ちょっと訂正したらいいのではないですか。
【農林水産部長】
私が申し上げましたのは、各国の比較ということではなくてですね、いずれ補助金・助成金の制度がころころ変わっていくとかですね、そういったときに、すぐそれが生産者の方にダイレクトに影響が出るような、そういう不安定な状況になってはなかなか難しいのではないかと、そういう意味で申し上げたところでございます。
生産者が本当に意欲を持って将来を見越しながら、生産活動に勤しむということができるときに、その内訳がほとんどが、例えば補助金ですとか交付金ですということであれば、なかなかそちらが恒久的な制度であれば将来を見越した制度で運用できると思うんですが、なかなかそうなっていないというのもございますので、そういう意味で申し上げたということでございます。