2022年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(林業・水産関係)に対する質疑(大要)
・気候危機打開と林業分野の取り組みについて
【斉藤委員】
地球温暖化防止、気候危機打開にかかる林業分野の取り組みについてお聞きをしたいと思います。
まず第一に、森林吸収量について、2014年は200万6千トンの削減効果、ところが2017年は108万2千トンに大幅に減少していますが、この減少した理由はなんでしょうか。
【森林整備課総括課長】
森林吸収量の減少理由でありますが、森林吸収量の算定は林野庁が行っており、森林の拡大・縮小の変化や、再造林・間伐等の森林整備の状況などについて調査を行うとともに、各都道府県や森林管理局から提出された民有林および国有林の森林資源に関するデータを基に、1年間の樹木の増加量を推定し出していると聞いております。
森林吸収量の増減につきましては、民有林のほか国有林における間伐等の森林整備の実施状況や、森林の伐採および伐採後の再造林の状況、樹齢の変化など、さまざまな要因が影響しているものと考えられます。
【斉藤委員】
実は2016年度は91万3千トンまで落ちているんですね。あまりにも下落幅が大きいのでどういうものかと思いますが、2030年度の森林吸収量、この目標は133万9千トンと見込まれていますが、その理由はなんでしょうか。低い目標ではないかと考えますが、同時に、この目標を達成する取り組みはどういうものでしょうか。
【森林整備課総括課長】
2030年度の森林吸収量についてでありますが、第二次岩手県地球温暖化対策実行計画における2030年度の森林吸収量は、2013年度から2017年度までにおける本県の森林吸収量の平均値を2030年度の森林吸収量として見込んだところでございます。また、第二次実行計画では、2030年度の森林吸収量目標を、前の計画の114万8千トンを約17%上回る133万9千トンとしたところでございます。
森林吸収量は、森林が年数を経る、高齢化することにともなって減少していくことから、県では2030年度の森林吸収量の目標達成に向けて、利用期を迎えた人工林資源の循環利用を進め、再造林などの適切な森林整備を促進してまいります。
【斉藤委員】
実は岩手県地球温暖化対策実行計画、来年度見直しと。目標も引き上げると。こういうことになりますね。私は昨年度決めた目標がこの間の平均値だったということで、あまり前向きに見えないんですね。どうせ掲げるんだったら、これまでの最高の200万6千トンぐらいを回復するぐらいの目標を示さなかったら、2030年の目標達成には貢献できないんじゃないか。県が目標を引き上げる、見直すという中で、この森林吸収量をどのように見直す考えか示してください。
【森林整備課総括課長】
森林吸収量につきましては、人工林が高齢化すれば森林吸収量減少するということで、これは明らかな事実でございます。例えば、杉であれば30年〜40年生が一番多い生長量となって、この部分が吸収量が多くなりますので、どんどん資源が高齢化しておりますので、森林吸収量の数値というのは、岩手県だけでなく全国的にも割合は小さくなるという、これは避けられない事実かなと思っております。その中で、県として再造林とかを積極的に進めて、いかに減るのを抑えるかと、そういう考えが適切だと考えておりますので、見直しにあたってはそういうことも含めながら考えていきたいと思っております。
【斉藤委員】
ちなみに長野県は、この森林吸収量を引き上げるという目標を去年の6月に出していますので、単純ではないということは分かりますけれども、世界で45%CO2削減するというのがグラスゴー合意ですよ。実は今の各国の目標をやっても1.5℃に抑えられない。もうすでに1.2℃ぐらいまで上がっていると言われ、本当に2030年までの、厳密にあと9年間ですけれども、どこまで取り組むかということが問われていますので、ぜひ林業の分野で、岩手県は本州では最大の森林県ですから、長野県に負けないような目標の設定というのをできるのではないか。
もう1つ、木材利用や木質バイオマス活用によるCO2削減の目標と取り組みについて示してください。
【林業振興課総括課長】
木材利用、木質バイオマスに関するCO2排出削減の目標値でございますけれども、これは直接の目標値は定めておりませんが、令和2年3月に策定した岩手県県産木材等利用促進行動計画に、県産木材の利用促進に関する2022年の目標として、所在需要量134万6千立方と、エネルギー施設でのチップ利用量23万3800トンを掲げております。
【斉藤委員】
私いま気候危機打開の立場で聞いているので、やはりそれやったらどのぐらいのCO2削減の効果が出るのか、そういう試算をしっかりするべきだと。今の情勢のもとで、やはりCO2削減にどう林業分野で貢献していくか、木材利用の問題でもそういう視点が必要だと思います。
もう1つ、いわて木づかい住宅普及事業、これは8700万円、いわて木があふれる空間づくり事業費、これが新規で1510万円となっているんですけれども、県土整備部も住宅に対する補助があり、林業もある。しかし統一していないんですよ。岩手県として、高断熱化・高機密化、県産材を活用したモデルの住宅建設の統一した規格を示して、思い切ってそれを普及するということが必要なのではないか。環境省も補助金がある、林業も補助金がある、県の補助金もある、それを全部足したらかなりの補助になるのではないか。その代わり、本当にレベルの高い、CO2削減に貢献するような住宅をこれから2030年には多数にしていくという目標が必要なのではないかと思いますが、いかがですか。
【林業振興課総括課長】
委員から今お話がございました通り、県土整備部との連携につきましては、今3年目になりますけれども、県土整備の建築の技術者の方を林業振興課にお呼びいたしまして、一緒にいろんな検討に取り組んできたところでございます。この中で、例えば今年度から実施しております木づかい住宅の内容でありますとか、来年度から取り組む予定にしております民間商業施設を対象とした木造化・木質化、こういった部分での連携がだいぶ図られて、内容もだいぶ充実していると理解しております。
今後につきましては、この県土整備部との連携をさらに密にしまして、内容を見直しながら、より良い事業にしていく必要があると思っておりますので、引き続き同じような検討を重ねながら強力な制度にしていきたいと思っております。
【斉藤委員】
県土整備部でも聞きますけれども、やはり岩手が目指す2030年の気候危機打開に貢献できる住宅の整備、リフォームを含めですけど、そういうきっちりしたレベルの高い規格を定めて進めるべきだと。
・水産業再生の課題について
【斉藤委員】
水産業再生の課題についてお聞きいたします。
「岩手県水産業リボーン宣言」というのが出ました。きわめて時宜に適した宣言であり、方針だったと。ただ、「リボーン宣言」というのが分かんないんですよ。おそらく漁民の皆さん「リボーン宣言てなんだ」「リボンを付けるのか」と。「再生宣言」ですよね。水産業再生、なんで美しい日本語を使えないのかと。だいたいカタカナ使うときはごまかすときなんですよ。政府のやり方そうなんです。カタカナ使うときはごまかしてしまう。やはり美しい日本語でこういう大事な宣言は打ち出すべきではないかというのが私の感想ですが、中身についてお聞きします。
主要魚種であるサケ・サンマ・スルメイカ、この水揚げ量、直近で出してください。今年度さらに昨年度より落ち込んでいますので、直近の水揚げ量は震災前と比べてどうなっているのか。
そして現段階でその要因、資源回復の取り組みをどう進めるのかお聞きします。
【漁業調整課長】
主要魚種の水揚量についてのご質問でございますが、令和3年の漁期におけます県内魚市場の水揚げ量は、主要魚種別に見ますと、サケは413トンで震災前の2%、サンマは2883トンで震災前の6%、スルメイカは1102トンで震災前の6%となってございます。
減少の要因ということでございますが、サケは震災の影響が続いていますほか、近年の海水温の上昇によりまして、稚魚放流後の減耗があったものと推定されてございます。サンマでございますが、資源量が低下していることに加えまして、北からの親潮が弱い状況にございまして、本県沖に来遊しづらいという状況がございます。スルメイカでございますが、資源量が極端に少ない状況などが指摘されてございます。いずれも、海洋環境の変化による影響が示唆されてございます。
これを踏まえまして、資源回復に向けての取り組みでございますが、サケにつきましては、稚魚の放流数を安定させるために、種卵の確保に努めるほか、回帰率の向上に向けて放流サイズの大型化ですとか、あるいは放流時期の見直しなどを進めてまいります。また、サンマ・スルメイカでございますが、こちら広域的な資源になりますことから、国の研究機関と連携して資源管理の推進に取り組んでいくこととしております。
【斉藤委員】
今度、サケ資源の回復で遊泳力の強い稚魚生産と。今までは海水温に強い北上川の稚魚の開発というのもありましたよね。これはどういう科学的な検討でこのようになったのか。あわせて示してください。
それで、増加している魚種の状況と有効利用の現状、今後の課題を示してください。
【水産担当技監】
稚魚の生産、遊泳力の強い強靱な稚魚をつくる、大型な稚魚をつくるということを加えたのはですね、1つに、放流直後に、沿岸域には対馬暖流が津軽海峡を渡りますと南下する流れがありまして、これの勢いが近年強くなっておりますので、稚魚はオホーツクに行くときにですね、沿岸域を伝って北上してきますので、もろに暖流とぶつかるということですので、その津軽暖流に打ち勝つために大型で強靱な遊泳力のあるサケをつくらなければならないということで、令和4年度の当初予算にそのような稚魚をつくる補助事業を設立したものでございます。
次に、増加している資源の利用の状況と課題等についてでございますが、マイワシが水揚げ量が増えているわけでございますが、マイワシにつきましては食用もありますが、養殖業のエサなどへの仕向けが多いということでございます。また、増えているサワラにつきましては、県内では認知度が低くて、主要な消費地である関西方面等に出荷されてしまうということで、県内で消費量が少ないという状況にございます。このため県では、これらの魚種が地元で付加価値向上が図られるように、県の水産技術センターですが、漁獲時期別の成分分析、主に油の成分ですけれども、その分析等を行っているほかですね、沿岸広域振興局で成分特性や加工方法等を学ぶセミナーを水産加工業者向けに開催しております。また、これらがより高値で地元で取引されますように、鮮度管理の徹底とか高度衛生品質管理によります付加価値向上を図るなど、消費者から選ばれる産地づくりを目指すということで、収益力の高い水産業が沿岸各地で展開されるように取り組んでまいります。
【斉藤委員】
北海道もですね、北海道産ブリを押し出すなんていう、本当に考えられないような事態になって、私は増加している資源を最大限活用すると。そのためにさまざまな水産加工への支援などもやっていただきたい。
最後にまとめて聞きますが、新たな漁業・養殖業、これはサケ・ます関連の養殖が盛んです。この採算の見通しはどうなのか。稚魚の生産からの一貫体制の取り組みはどうなのか。このことを示してください。
もう1つは、漁業振興でもっとも重要な課題と言ってもいいと思いますが、漁業後継者の育成と支援について、これはリボーン宣言でも提起されていますが、県・市町村の支援策と後継者確保の実績を示してください。
【水産担当技監】
サケ・ます養殖についてお答えさせていただきます。まず採算性ですけれども、サケ・ますにつきましてはですね、近年、回転寿司等のサーモンの人気など、国内では生食の需要が堅調に推移しております。また全国的に、サケも含めて原料不足がございますので、例えば今期に水揚げが始まりました宮城県の養殖銀鮭ですけれども、この価格が前年度の2割を超して高値で取引が開始されております。本県においてもですね、採算がとれる方向にあるのかなと考えております。
一貫体制でございますが、現在、宮城県の養殖銀鮭に供給する種苗というのは、岩手県内の養殖業者さんが仲介している事例がございますので、今般、来年度の予算でオリジナルの種苗を県産でもつくっていくということも行いますし、また関係の養殖業者さんとですね、どうやって供給体制をつくっていくかというのも検討していきますので、そういうことも進めていきたいと思っております。
【漁業調整課長】
漁業後継者の育成と支援についてお答えさせていただきます。県では、漁業担い手の確保・育成の取り組みを進めるために、昨年度、岩手県漁業担い手育成ビジョンを策定いたしまして、魚家子弟に限らず多様な人材を地域の内外から新規漁業者として受け入れまして、地域が一体となって次代を担う意欲ある漁業者として確保・育成するということを基本目標にして、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
具体的に、SNSの活用による就業情報の発信ですとか、あるいはアカデミーもこの中に含まれます。また、定置漁業の経営者との連携による終年雇用の場の確保、こういったところを進めているところでございます。
一方で市町村の方では、就業奨励金ですとか住居費補助など、主に民生部門の支援をいただいているところでございます。
こうした市町村と連携した取り組みによりまして、昨年度の新規就業者は、県外出身者10名を含みまして総勢48名を確保しまして、また、これまでにアカデミーで研修を終えた13名全員が本県漁業の第一線で活躍いただいているところでございます。