2022年3月24日 復興特別委員会
被災者の生活再建支援等に関する質疑(大要)
・被災者の生活再建への支援について
【斉藤委員】
被災者の生活再建への支援についてお聞きをしたいと思います。
予算特別委員会でも、岩手日報の遺族アンケートを紹介をして、「健康面で悪化した」というのが54.3%、「経済的な変化で悪化している」というのが50.4%と、このように紹介をいたしました。
最近、河北新報の東北3県のネット共同調査なんですけれども、ここでは27.5%が「震災前と比べ暮らし向きが厳しくなった」と。3年ぶりに悪化傾向に転じたと。いわば悪化傾向がますますひどくなったというデータもありました。
その点で、被災者の生活再建への支援というのは大変重要な課題になっていると思いますが、いわて被災者支援センターの取り組みはどうなっているでしょうか。
あわせて、昨年度までは被災者の相談体制というのが4カ所でありました。その実績はどうだったのかを示してください。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの取り組みについてでございますが、昨年4月の開設から本年2月末までに、沿岸各地をはじめ県内陸部や県外を含め、被災者233人からの相談に対し、延べ1105回対応しているところでございます。
相談の内容としましては、住宅ローンや家計の見直し、家族間のトラブルなど、経済面や生活面に関するものが多く、市町村や市町村社会福祉協議会と連携して対応するとともに、専門的な支援が必要なケースには、弁護士やファイナンシャルプランナーと連携し対応をしており、延べ93回の専門家派遣を行ったところでございます。また、今年度は1073世帯を対象に、県外および県内避難者実態調査を実施しまして、県外36世帯、県内42世帯、合わせて78世帯が被災元自治体等への帰還意思があることなどを確認したところでございまして、帰還意思のある方に災害公営住宅の募集案内を送付するなど、市町村とも連携しながら、避難者それぞれのニーズに応じた支援を行っているところでございます。
また、昨年度までの相談センターの実績についてでございますが、県では東日本大震災津波発災後、市町村の相談体制が整わない状況におきまして、被災者からのさまざまな相談に対応するため、沿岸4地区に総合相談窓口として被災者相談支援センターを設置し、平成23年7月から令和2年度末までに、相談員が20508件の相談に対応したほか、平成25年度から令和2年度末までに、司法書士等の専門家が3419件の相談に対応したところでございます。相談員による相談対応件数は、平成25年度の6080件をピークに、以後は年々減少しまして、令和2年度は451件でございました。また、専門家による相談対応も、平成25年度の787件がもっとも多く、以後は減少し、令和2年度は94件でございました。また相談員につきましては、もっとも多い年度には、4地区合わせまして21人を配置しておりましたが、相談件数の減少にともないまして、令和2年度は釜石と大船渡地区にそれぞれ相談員1名を配置し、他の地区では県職員が相談に対応したところでございます。
また、沿岸市町村に代わりまして、内陸および県外へ避難している被災者の住宅再建および意向把握を行うために、再建方法を決めかねている方への相談対応等を通じ、恒久的住宅への移行を促進するため、平成28年5月に「いわて内陸避難者支援センター」を設置しまして、令和2年度末までに12868件の相談に対応したところでございます。当センターの相談対応件数は、平成28年度の3568件をピークに年々減少しまして、令和2年度の相談件数は1540件でございました。相談業務を行う職員につきましては、応急仮設住宅の供用期間の終了を見据えまして、集中的に支援を行うため、平成29年度と30年度には、センター長を含めて相談支援員を9名配置しましたが、その後は被災者の住宅再建の状況や相談件数の減少にともないまして、令和2年度には6名で対応しているところでございます。
【斉藤委員】
丁寧な答弁をいただきました。大事なことは、いわば10年目のときの相談件数というのは451件だったと。そして新たにいわて被災者支援センター、これは2月末で1105回ですよ。私は、相談が減ったというのではなくて、それを相談しやすい、そういう体制が弱まったというのが実態ではないのかと。いわて被災者支援センター、12月以降ちょっと紹介しますと、12月末までは累計で773件でした。1月末で995件、2月末で1105件。1月122件の相談件数、2月110件の相談件数。月に100件超える相談件数を受けているんですね。ここに切実な被災者の実態が、私は氷山の一角だと思うけれども、示されているんだと思います。
そこで、いま6名体制でという話をしましたが、実際には県の予算措置は人員たった4名なんですよ。そして相談件数が多いときには8名体制でやっていると。そもそも私は、県の設定が過小評価なのではないかと。心のケアセンターは、県内4カ所で1カ所8〜9名ですよ。全体で52名の体制でやっている。心のケアは、もう縮小しないと、中長期でやると、これは知事がはっきり言っています。心のケアと生活再建に対する支援は車の両輪だと思います。やはり同じような位置づけで、この被災者の生活再建を支援する。そのことがますます今重要になっているのではないか。せめて、実際に8名配置してやられているわけですから、8名程度の体制に、県としても体制強化するということを考えるべきだと思うけれども、車の両輪で心のケアと生活再建を支援する―この岩手型の取り組み、全国に誇る取り組み、そういう位置づけでやるべきだと思いますけれどもいかがですか。
【復興防災部長】
いわて被災者支援センターでございますけれども、この体制・予算につきましては、被災者を取り巻く状況、そして昨年度までの被災者からの相談件数の推移、先ほど課長の方から答弁させていただきましたが、これらを踏まえて措置をしているものでございます。
事業の実施にあたりましては、予算額、業務内容、想定される配置職員数などを仕様としてお示しをし、企画提案の上、現在の受託者から、県が示した予算の範囲内で仕様以上の取り組みが可能という提案がありましたことから、委託をしているものでございます。
令和4年度の当初予算につきましても、同様の考えで担当しているところでございまして、しっかりと対応していただけるものと存じております。
【斉藤委員】
部長の冷たい答弁ね、被災者が聞いたら本当にがっくりくると思いますよ。令和3年度の設定が前年度の相談件数、落ち込んだときの相談件数を前提にしたと。しかし、実際に2月末までに1100件の相談を受けているわけでしょう。そして、弁護士等の専門家の相談が90件を超えていますよ。それでいわて被災者支援センターは「伴走型支援」というのをやっているんです。伴走型支援、どれだけ対応しているか分かりますか。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの伴走型支援についてでございますが、令和4年2月末現在で233件の相談に対しまして、153件の個別支援計画を策定しまして、関係機関等と連携して支援を行いまして、これまで27件が支援終了ということになっております。
【斉藤委員】
だから今やっている生活再建支援というのは、困難な方の支援なんですね。ですから弁護士等の相談もやって、弁護士と1回相談受けても解決しないんですよ。だから今答弁があったように153件の個別支援計画を立てて、そして継続的に支援しているんですよ。
あなた方が今年度、事業費を設定して企画提案をやったから、事業費の枠でやらざるを得なかった。しかし実際には、あなた方の想定を超えた相談件数があってですね、実際に8名配置をして対応しているというんだから、私はそれに対応した見直しを図るというのは当然だと思いますよ。
伴走型支援というのは、本当に私は東日本大震災津波からの復興で、これからの教訓になる取り組みだと思うんですよ。1回だけにしないで、解決するまで粘り強く相談に乗って解決していくと。もちろん関係機関と連携すると。こういう素晴らしい取り組みなんですよ。それをあなた方4人の人員でやれというのは無理な話。弁護士の相談どういう風にやられているか分かると思うけれども、事前に相談の内容を聞き取って整理をして、相談を受けた後、その後のフォローをやっているわけですよ。これに2人対応するんですよ毎週。その他にさまざまな相談が出るんですね。
ぜひそういう今年度の実績、こういうものをしっかり踏まえて、必要なら予算も体制も拡充すると。そのことをしっかり考えていただきたい。
・被災者の医療費免除終了後の取り組みについて
【斉藤委員】
そこで、被災者の医療費免除の取り組みが昨年の12月で終了しました。実は、県保険医協会の調査で、すでに4月から課税世帯で医療費免除が受けられなくなった方々がいました。どのぐらいの人が医療費免除が受けられなくなったのか。「通院できなくなった」というのが国保世帯で12.7%、後期高齢者で10%ありました。「今年の1月から窓口負担が発生する」―これは非課税世帯の方々ですね。「通院できない」と答えたのが国保で22.4%、後期高齢者で17.7%ありました。こういう方々の必要な医療をどのように支援するのか。具体的な支援の取り組みを示してください。
【保健福祉企画室企画課長】
一部負担金免除終了後の被災者の支援についてでございます。
医療を必要とする方が適切な医療を受けられるよう、一部負担金免除措置の対象者であった方々に対するいわて被災者相談支援センターに設置する相談窓口や、各種生活困窮者への制度周知について、昨年11月に市町村や社会福祉協議会等に文書で協力を依頼したところでございます。
その後、市町村に寄せられた相談状況につきまして確認しましたが、10市町村において医療費負担の軽減方法などについての相談があり、市町村においては、高額療養費制度や生活困窮者自立支援相談制度などに説明しまして、その中でも高額療養費の限度額認定証の交付など、具体の支援につながった事例もあったと聞いてございます。
今後におきましても、市町村におかれまして、市町村社協や民生委員・児童委員などの関係機関の皆様と一層の連携を図り、受診に不安を抱えている方の把握と、適切な支援の窓口の紹介などを行いまして、被災者の一人一人の状況に応じた支援が行われるよう取り組みを進めてまいりたいと思っております。
【斉藤委員】
私この件で、岩手県が各市町村長、そして社会福祉協議会等に通知を出して、「一部負担免除措置終了にともなう支援について」という依頼文書を出しているということは私評価したいと思います。
しかしこれは本当に簡単なことではないので、やはり市町村と心一つに、一つは実態を把握すべきだと。そして、例えば低所得者であれば生活保護の受給も含めて、あらゆる支援や制度を活用して、実際に去年の4月以降では、「受けられていない」という方が10%以上ありましたので、そういう点をぜひ丁寧に強化をしていただきたい。
・災害公営住宅のコミュニティ確立の支援について
【斉藤委員】
災害公営住宅の集会所の活用状況について示してください。
【建築住宅課総括課長】
県が管理します災害公営住宅の集会所の活用状況についてでございますけれども、29団地に設置いたしました集会所の活用状況につきましては、令和3年度第3四半期の一月当たりにおきまして、4回以下が24団地、15〜20回が5団地となっているところでございます。
【斉藤委員】
災害公営住宅のコミュニティの確立というのは大変切実な今の課題です。
実は、岩手大学と大船渡市が「災害公営住宅のコミュニティと生活に関するアンケート」、これは県営・市営含めて全災害公営住宅の入居者全体を対象にして行われた調査で、本当に大事な調査だったと。その中で一番注目したのは、「震災前と比べて近所や地域と関わる機会が減った」と答えたのが42.5%。入居者の孤立化・孤独化が高齢化と相まってやはり深刻になっているということですね。いま災害公営住宅のコミュニティの拠点である集会所が、4回以下は24団地だった。4回以下といってもほとんどは1回2回です。ほとんど集会所が閉まっている。20回、15回というところがあるんですよ。20回、15回というところはなぜこれだけ集会所活用されているか。生活支援相談員が複数配置されているところが、こういうコロナ禍の下でも活用されているのですよ。いま本当に孤立化・孤独化・高齢化が進む中で、災害公営住宅に支援員をしっかり配置をして、お年寄りが安心して外に出れる、みんなと関係が持てる、そういうコミュニティの形成に今全力をあげなかったら、ただの高齢者住宅になってしまう。県にそういう危機感あるでしょうか。
【保健福祉企画室企画課長】
生活相談員の配置の関係でございます。県ではこれまで、生活支援相談員の配置につきましては、被災者の見守り等の個別支援や、サロン活動等を通じた福祉コミュニティの形成支援などに取り組んできたところであり、これらの取り組みにより被災者の孤立防止や災害公営住宅の入居者相互のつながり作り、近隣住民との交流促進などの一定の役割を果たしてきたと認識しております。また、生活支援相談員の活動分析・評価などを行うため、県社会福祉協議会に設置しました東日本大震災被災者実態調査研究委員会におきましても、「相談員による訪問活動が日々の暮らしのセーフティーネットとして重要な機能を担っており、被災者に寄り添い、住民とともに生活課題に取り組む活動を継続する意義は大きい」と評価されていることから、県といたしましてもこうした取り組みを継続していく必要があると考えてございます。
【斉藤委員】
私の質問に答えていないんですね。あなた方はそういう危機感がありますかと。災害公営住宅の圧倒的多数が1回2回、コミュニティの拠点である集会所が使われていない。この深刻さを受け止めるべきだ。一方で、紹介したように、例えば生活支援相談員が配置されている県営みどり町災害公営住宅、これは大船渡です。大槌の県営上町災害公営住宅、そして山田町の大沢災害公営住宅、こういうところは20回15回使われているんですよ。本当に明白な違いが出ているんです。このことをあなた方はリアルに受け止めて、やはり災害公営住宅のコミュニティという風に一般的にしないで、せめて配置しているところ並に、集会所にお年寄りが安心して足を運べるように、それは自治会の活動を支える土台にもなるんです。孤独死が増えているんですよ今、災害公営住宅で。私はそういう意味で、この違いをはっきり見定めてやるべきだと。
生活支援相談員について、実は今年度67名の配置でした。来年度の計画を見ましたら68名で実績より1人多いんですが、陸前高田や釜石は増やしているんですね。今年の実績よりも増やしています。やはり必要な支援員は配置すると。増員もすると。あと4年なんですよ、第二期復興創生期間というのは。財源が保障されているこの時期に、しっかり支援をして、災害公営住宅のコミュニティを確立していくと。自前で運営できるようにしていくということが必要だと思うけれども、いかがですか。なぜ配置しないんですか。配置できないのですか。
【保健福祉企画室企画課長】
生活支援相談員の配置のお尋ねでございました。県ではこれまでも市町村の社会福祉協議会と市町村等といろいろ協議を踏まえまして、必要な人員を配置しているところでございまして、来年度は7市町村の社会福祉協議会より県社協に、ご案内がございました現在の配置数とほぼ同様の68名を配置することとしております。
それから、見守り支援拠点というのも随時整理しているところでございますけれども、これにつきましては来年度さらに1カ所拡充する方向で検討を進めているということも聞いておりまして、県としましては今後も市町村や市町村社協の意向をうかがいながら、地域の実情に応じた支援の実施のための必要な体制の確保を図ってまいりたいと考えてございます。
【斉藤委員】
ぜひ生活支援相談員を配置しているところとしていないところで明確な違いが出ていますから、成果もあがっていますから、自治会長何て言っているかというと、「支援員の配置によって、うんと助けられている」と。そうしないと自治会長が鍵を管理しなくちゃならない。これはつらいことですよ。ぜひ1カ所プラスというその程度ではなくて、いま被災者生活支援の財源もあるんだから、必要な取り組みはしっかりやると。
・津波伝承館、復興祈念公園の取り組みについて
【斉藤委員】
東日本大震災津波伝承館のこれまでの来館者数、修学旅行やその内訳、特徴を示してください。
コロナ禍の下で、小中高などの修学旅行はかなり増加したのではないか。これをコロナ禍だけの取り組みにしない、そういう取り組みが必要だと考えております。そこを見越して、コロナ後を見越して、さらに教育旅行・修学旅行を、今後のことも含めて拡充する取り組みが必要ではないのか。
そして伝承館大変大きな役割を果たしていると思いますが、国内外に大震災津波の教訓をどう発信しているか。
ゲートウェイとして、県内震災遺構や観光との連携はどう図られているか最後に聞いて終わります。
【復興推進課総括課長】
まず、全体の来館状況でございますけれども、令和元年9月22日の開館以来、本年2月末現在で47万5109人というご来館をいただいております。
また、修学旅行等の内訳、特徴についてでございますが、団体利用予約の2月末現在の状況で、目的別に見ますと、教育関係が326件・16306人、観光関係が214件・4298人、地域団体や企業研修といったようなその他の分類が273件・3631人となっておりまして、教育旅行を中心としたご利用が非常に多いというような状況でございます。小中学校・高校の修学旅行の状況でございますが、同じく本年2月末現在では、小中学校の団体、来館者が12344人となっておりますが、県内が9007人・70%を超えるということで、県内利用がやはり小中学生が多いと。一方高校生につきましては、来館者3434人のうち県内が2003人・58%と、高校生については比較的県外が多いというような状況になっております。
コロナ禍の一過性に終わらせない取り組みということでございますが、まさにその通りでございまして、一つやはりリピートの特徴ということで、伝承館を中心に訪問校へのメールでの情報提供とか、あるいは学校訪問での営業をしてございます。また昨年の8月は、教員向けに2回研修会を開催いたしまして、校長先生や副校長先生といったような管理職も含めて31名ご参加いただいております。
国内外への発信でございます。国内向けで特徴的なところを申し上げますと、やはりオンラインの発表ということで、2月に試験的にローカル5Gなども使いまして、葛巻高校とかいろんなところを結んで伝承館の情報を発信しております。来年度これを広げていきたいと考えております。海外向けといたしましては、昨年の12月、インドのアチェの博物館と連携しまして、国際的なフォーラムに参加いたしました。本県の復興の取り組みをその場で発信いたしました。また、震災アーカイブなどでも非常に好評でございまして、そういったものを通じまして海外に発信してございます。
ゲートウェイとしての対応でございますが、2つお話したいと思います。1つ、来年度から三陸DMO、こちらが沿岸の方に拠点を移すようになりまして、この伝承館いままで2月末で15万人集めておりますが、こういった伝承館をゲートウェイとしながら、震災遺構を活用した観光ネットワークづくり、こういったものを進めていきたいと思います。2つ目は、今年の秋、伝承館開館3周年となります。これに合わせまして、震災語り部ガイドサミットを予定しておりまして、県内はもとより、被災3県、あるいは神戸の方からも、あちらはもう27年の歴史がありますので、さまざまな語り部ガイドを一堂に集めまして、ネットワークを組んで、それを観光の方につなげていきたいと考えてございます。