2022年3月25日 2月定例県議会最終本会議
千田美津子県議の発議案に対する反対討論全文
・令和4年度の水田活用の直接支払交付金の見直しに関する意見書
日本共産党の千田美津子でございます。
私は、発議案第14号、「令和4年度の水田活用の直接支払交付金の見直しに関する意見書」について、反対の立場で討論をいたします。
この意見書は第1に、今回の見直しにより、交付金の対象水田から除外されることにより、農地維持や農業水利施設の管理が困難となり、耕作放棄地の増加や離農者の増加等が懸念されるため、運用にあたって丁寧な説明を行うことや、生産現場の実態や課題を十分に踏まえることを求めてはおりますけれども、あくまでも撤回ではなく「見直しを進めるべき」としている問題でございます。
第2は、多年生作物である牧草の取り扱いについて、畜産農家は自給飼料確保のために水田を賃借しており、今回のような唐突な見直しにより交付金が削減された場合、賃借料の負担が大きくなり、賃貸借契約の継続にも影響を及ぼすことから、営農計画等を十分に検討する期間を設けてほしいという内容ではありますが、その趣旨は交付金の見直しを肯定しているものであり、到底容認することはできません。
今回の見直しが公表されて以来、政府が育成するとしてきた大規模経営や集落営農からも「もう続けられない!」との悲鳴が上がっており、このままでは生産基盤のさらなる弱体化と食糧自給率の一層の低下はまさに必至であり、白紙撤回こそ必要であります。
先ほどの討論でもありましたが、岩手県内でもこのようなことから、岩手県町村会が2月15日の定期総会において、見直し撤回を決議しており、さらに岩手県市長会も2月24日に、自民党総裁等に対して見直しの撤回を要望する等行っており、「撤回すべき」の声はまさに多くの県民の思いではないでしょうか。
またこの間政府は、主食用米の生産量を抑制する減反を進めてきましたけれども、昨年末、農林水産省から水田機能を有する農地における主食用米から他作物への作付転換を支援する水田活用の直接支払交付金の見直しを行い、令和4年度から5年間に一度も水を張らない水田は交付金の対象から除外するとの方針が示されたため、これまで転作に協力してきた農家は、この交付金が得られることを見込み、水田を畑として利用して農業を行っており、今回の見直しに伴い、経営の支えとしてきた交付金の対象外となることによって、今後、経営困難に陥る農家や離農による耕作放棄地の増加が懸念されています。
また、今回の見直しについては、農家や関係団体からは、説明不足との声や、今後の経営に関する不安の声が上がるとともに、この春の作付準備が本格化する中、今後の農業経営の見通しや融資の計画が立てられないなど、深刻な影響が生じています。
このような中で農家からは、米価暴落に加えて、政府が突如持ち出した「水田活用直接支払交付金」の見直しに対し、長年、転作を進めておいて、転作を続けたら助成金をカットするとは、「2階に上げてはしごを外すようなものだ」との怒りの声が広がっています。
政府は、今回の見直しが農業関係者に与える影響の大きさを認識するとともに、水田活用の直接支払交付金の見直しは白紙撤回し、農家の安定した経営を支えるための予算の充実こそ急務であります。
昨年の総選挙での与党などの農業政策には、「産地交付金を含む水田フル活用予算は責任を持って恒久的に確保します」などと謳っており、今回の水田活用交付金見直しは、「公約違反だ!」との指摘が上がるのも当然であります。
2020年の日本の食糧自給率は37%と過去最低であり、主要国では際立った低さであります。国内での畜産に欠かせない飼料の75%は輸入であり、化学肥料原料の大半も国外からの輸入となっています。このように、日本は食糧の6割以上を海外に依存しており、その危うさが地球規模の気候変動やコロナ感染拡大の中で浮き彫りになっており、さらにロシアのウクライナ侵略が世界の食糧情勢に深刻な影響を及ぼしています。
このような中、世界は地球規模の環境破壊やコロナ危機を踏まえ、人と環境に優しい農政への転換を進めています。そして欧米では、農業所得に占める価格保障と所得補償等の補助金の割合が、イギリスは90.5%、ドイツは69.7%、フランスは94.7%であるのに対し、日本は30.2%にしか過ぎません。世界規模の災害や食糧不足が指摘される中で、今必要なのは、欧米並みの農業保護であり、食糧自給率の引き上げこそ重要であります。
日本も食糧の外国依存を改め、価格保障や所得補償の充実などで多彩な家族経営が成り立ち、農村で暮らせる農政に真剣に踏み出すべきだと考えております。そういった点でも、今回の水田活用直接支払い交付金の唐突な見直しなどは、まったく論外であり、撤回すべきであります。
以上の観点から、発議案第14号「令和4年度の水田活用の直接支払交付金の見直しに関する意見書」については反対するものでございます。どうぞご賛同賜りますようお願い申し上げまして、反対討論といたします。
ご清聴ありがとうございました。