2022年3月25日 2月定例県議会最終本会議
高田一郎県議の請願不採択に対する反対討論全文


・東京電力福島第一原子力発電所におけるAIPUS処理水の海洋放出方針を撤回し、安全な処理・保管方法の確立を求める請願

 日本共産党の高田一郎でございます。
 請願陳情受理番号44号、60号について委員長報告に反対討論を行います。
 請願陳情44号は、「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出方針を撤回し、安全な処理・保管方法の確立を求める請願」であります。
 政府は昨年の4月にアルプス処理水を福島県沖に海洋放出を行う「多各種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」決定いたしました。
 全漁連や福島県漁連が反対し、福島県議会や県内7割の43市町村議会が反対や慎重対応の意見書を採択し、政府と東京電力が「関係者の理解なしに汚染水のいかなる処分も行わない」と文書回答(2015年8月)をしているのに、当時の菅首相が両漁連会長とわずか20分間会談しただけで海洋放出を決めたことは、本当にひどい対応と言わなければなりません。
 2011年3月、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染が多くの住民の暮らしと生業に深刻な影響をもたらしました。土地も海も汚染され、農林水産業への風評被害も続き、そして不十分な賠償の中で生業訴訟も続いています。福島の復興、生業の再生は11年たっても道半ば、海洋放出は県民の懸命な努力を無にし、震災、大不漁、コロナの三重苦に大打撃を与えるものです。
 事故を起こした原子炉を通った汚染水は、トリチウム以外の62種の放射性物質があり、トリチウムの濃度や組成はタンクによって均一ではなく、通常の原発とそもそも同一ではありません、溶け落ちた核燃料=デブリの冷却のために、今後も大量の汚染水を海に流すことになれば、福島のみならず東北の沿岸漁業に従事する方はみんな強く危惧しています。
 朝日新聞が最近実施した調査でも、東北3県被災地市町村長の6割が処理水放出に「容認できない」と答えています。全漁連は、「我が国漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねない」「漁民の総意として絶対反対である」と訴え続けています。
 約束を反故にし、これだけ異論や反対の声がある中で、海洋放出を行うべきではありません。陸上保管を続け、その間にトリチウム水の分離技術の開発へ世界の英知を結集し解決を図るべきです。500倍に薄めての海洋放出は、500倍に薄めても500倍の量を放出したら同じことであります。1基分を全体のタンクの量の半分にあたる500基分の海水が必要であり、政府も東京電力も40年かかるとされており、タンクが目の前から数年でなくなるわけではありません。海洋放出をなぜ急ぐのか、その理由に「1000基のタンクでほぼ満杯だから」と言っていますが、原発敷地内に64町歩の用地が確保されていることは資源エネルギー庁も認めているところであります。
 分離が困難とされるトリチウムについて国は、世界の技術を公募したところ、ロシアの原子力関連企業「ロスラオ」が小規模施設実験で99.8%分離可能とする提案を行っていたのに、政府は「大規模施設では無理」と早期に判断、提案を拒否していたことも明らかになっています。
 北海道・東北知事会でも「トリチウムの分離技術など新たな技術動向の調査研究を推進すべき」と決議を上げています。政府は、海洋放出ありきの対応は改めるべきであります。
 福島原発の汚染水が増え続けるのは原発事故が収束していないためであります。そのしわ寄せを、事故を引き起こした東京電力と政府は事故被害者に責任を押し付けるようなことを行うべきではありません。海洋放出に頼らない立場で、科学者の英知を結集して対応することこそ、真の復興と再生、故郷を取り戻すことができるのであります。
 以上の理由で総務委員長報告に反対するものであります。

・介護保険施設における補足給付の見直し中止を求める請願

 次に、請願陳情60号は、「介護保険施設における補足給付の見直し中止を求める請願」であります。
 昨年8月からの『補足給付』の改悪を見直し中止を国に求める請願です。
 今回の補足給付の見直しにより、特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型施設、介護療養型医療施設などに入所している低所得者(年金収入月10万円)の負担を月2万円から4.2万円に引き上げ、ショートステイの食費負担はすべての住民税非課税世帯で1.5倍〜2倍の引き上げとなりました。資産要件の見直しでは、「補足給付」の対象となる預金を1千万円以下から収入区分に応じて500万から650万円以下に変えられてしまいました。(単身の場合)「補足給付」を利用できなくなると、年収80万円以下の場合、食費・居住費の負担が月6.8万円、年間81.6万円も一気に増えることになります。県が行った影響調査では、食費の負担増が5289人(認定者数の38%)、預貯金要件では729人が対象外となると試算されております。
 補足給付は、2005年の介護保険の改悪で食費・居住費を全額自己負担にしたときに、厚生労働省は「低所得者に配慮する」と言って導入しました。ところが自公政権は、使える要件を厳しく絞り込み、改悪を繰り返し、今回3回目の見直しとなりました。「低所得者に配慮する」という言葉は完全に消えうせています。
 負担増となった家族からは「月10万円の母の年金がなくなる」「生活費も負担の増える中どこを削ればいいのか」―こういう悲鳴も上がり、支える家族の援助も限界であります。コロナ禍で仕事を失ったり、収入が減ったりした人の中には親を施設で介護している人が数多くいます。苦境にある方々に追い打ちをかける「補足給付」の見直しはまったく道理がありません。
 介護保険制度は、介護の社会化を目的に始まり22年目となりました。しかし、この21年で介護保険料が2.1倍にもなり、一方介護サービスは、要支援1、2の保険から外され、特養ホームの入所要件の制限、要介護認定制度の改悪、利用料の3割負担導入など、介護サービスを介護保険からどんどん外してきました。
 高齢化が急速に進む中で、介護サービスの利用が増えるにもかかわらず、国は負担を増やすどころか保険料を上げサービスを抑制してきました。保険料50%、国25%、都道府県と市町村で25%と財源構成自体に限界にきています。「持続可能な制度」を理由に高齢者に負担と我慢を求めるのではなく国庫負担をふやして持続可能な介護保険、安心してサービスを受けられる制度に抜本的な転換こそ必要であります。
 以上の理由で、環境福祉委員長報告に反対をいたします。

 議員各位のご賛同をお願いし、私の反対討論といたします。
 ご清聴ありがとうございました。