2022年7月1日 文教委員会
不来方高校バレー部元顧問教諭の懲戒免職処分に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
今回の顧問教師の処分、懲戒免職処分というのは当然の結果だと。ただあまりにも遅すぎた。そしてその理由が、あまりにも曖昧だと。そのことを率直に指摘をしたいと思うんです。
処分理由は、「生徒に対する不適切な言動」ですよ。生徒に対する不適切な言動が懲戒処分の理由だったら、なぜ第三者委員会の報告書であれだけ詳しく顧問教師の言動が明らかにされていながら、処分に至らなかったのか。私は不思議でならない。せめて第三者委員会の調査報告書が出て、その確認をしたら、懲戒免職にあたる処分になったじゃないですか。調査委員会の報告書以外に、県教委が調査した新しい事実・中身ありますか。
【教職員課総括課長】
我々の行った調査についてでありますけれども、委員ご指摘の通り、第三者委員会の調査報告書の内容を踏まえまして、当該校における元バレーボール部員に対しまして、県教委として事実確認のための調査を行ったところです。
この中で、27年度においても元顧問教諭が部活動指導時に、複数の生徒に対して「使えない」などと発言したことが新たに確認されておりまして、今回の処分理由の一つとしたものでございます。
【斉藤委員】
私が3月22日の常任委員会で、なぜあなた方の調査が遅れているのかと。教育長はこう答弁したんですよ。「前任校赴任時までさかのぼって、元部員等多くの関係者を対象として調査を行っている」と。これが遅れている理由だった。
盛岡一高事件の再調査、これは完結したんですか。その結果はどういう中身ですか。
【教職員課総括課長】
前任校である学校における元顧問教諭の部活指導に関する部分につきましても調査を進めてまいりました。その中では、情報をいくつか得られましたけれども、最終的には事実認定をするまでには至らなかったというところでございます。
【斉藤委員】
私は去年の12月の常任委員会、2月県議会での一般質問・常任委員会で、盛岡一高事件でどういう暴言・暴行があったのか。裁判で出された陳述書を含めて、詳細に明らかにしました。率直に言うと、不来方高校以上の本当にひどい暴言・暴力が、数年にわたって行われていたというのが陳述書の内容ですよ。だったら盛岡一高事件で懲戒免職すべきだったんじゃないですか。あなた方はそれを見逃したんじゃないですか。しっかり答えてください。
【教職員課総括課長】
今回の処分につきましては、処分理由として、当該校における平成27年から平成30年度までの複数年にわたって、悪質な言動を含めて不適切な言動が常習的に行われていたということに加えまして、前任校での事案にかかる一審判決におきまして、違法行為ですとか社会的相当性を欠く行為が認定され、元顧問教諭もこれを承知していたにも関わらず、再び同様の行為を行っていたなどの事情も踏まえたものであります。
一方で、前任校における事案ですけれども、これは平成20年7月から平成21年2月までということで、数ヶ月間における生徒に対する不適切な言動および体罰を処分の対象としたものでございまして、これ以前に処分歴もなかったことなどを踏まえたものでありまして、今回の処分内容とは異なるものと認識しております。
【斉藤委員】
今回の懲戒処分であなた方が指摘した不適切な言動、本当に第三者委員会の調査報告よりもあっさりしています。そしてそれよりもひどい暴力・暴言があったのが盛岡一高事件なんです。陳述書をあなた方がもらっても調べなかった。だから再調査を去年の「岩手モデル」策定委員会の中であなた方は明らかにしたじゃないですか。そして教育長は「その盛岡一高事件の調査のために処分が遅れている」と言っていたんですよ。
盛岡一高でどんな暴力があったのか。これは2年後輩の生徒が、「髪をつかまれて壁に激突させられる」「約30分ぐらい、繰り返し繰り返し怒鳴りながら平手打ちをしていた」「先生の怒鳴り声と『パチンパチン』という音が響き渡り、時々ちらりと見るとワッペンのことで怒鳴られながら平手打ちを受けていました」「ボールを投げつけられる」「日常の練習でボールを頭にぶつけることがありました」―こういうのが2年後輩、その後にもやられていたと証言しているんですよ。あなた方、裁判で明らかになったこの事実を正面から受け止めていたら、厳しく処分していたら、不来方高校事件はなかったのです。あなた方見過ごしたんじゃないですか。見逃したんじゃないですか。教育長そう思いませんか。
あなた方が再調査で、再調査することがおかしいんですよ。処分の前に裁判の中で明らかになったんだから、だから調査しないで一高事件のあの不十分な処分が行われたと。そのことを教育長は認めますか。
【教育長】
まず今回の処分における経緯について、参事からも答弁申し上げた通りでありますが、一昨年7月22日に報告書をいただいて、そしてそれはあくまでも第三者委員会が専門的なそれぞれの知見から報告書がまとめられて、その上で私どもそれを受け取り、そこから処分権者としての調査確認をした上で判断しなければならなかった。そのときに、前任校の赴任時までさかのぼって確認した上で最終的な結論を出さなければならなかった。今回の結論は、そこまで調査した上で、今回の内容になったものであります。
それから、前回処分の件につきましては、これは当時、平成20年7月から21年2月までの数ヶ月間における不適切な言動、それから体罰を行ったことに対する処分ということで、当時の判断としてそのようにされたということと受け止めております。
【斉藤委員】
私の質問にしっかり答えてほしいんですよ。あなた方は、昨年から一高事件は再調査したんです。不十分だからしたんですよ。そしてその中で深刻な事態が盛岡一高事件で起きていたと。これをあなた方は見過ごしてきたと。これは認めますねと聞いているんです。これにきちんと対応していたら、不来方高校事件はなかったんじゃないかと。これは県教委の対応ですよ、まさに。県教委が裁判応訴したんだから。
教育長、あなた方は再調査をした。深刻な事実が明らかになった。再調査しなくちゃならなかったような不十分な処分をしたということじゃないですか。簡単に答えてください。
【教育長】
これは、当時そのように教育委員会として判断されたと。
【斉藤委員】
まあ答えられないということですよね。再調査しなくちゃならなかった、そういう不十分な、調査もしないで、前任校の処分がされたと。それが傷を広げたと。これは県教委として深刻に検証して、反省すべきです。
もう1つ、先ほど千葉伝委員も言ったけれども、自死事件との関係について曖昧にしてしまっているんです。なぜ死んだんですか。新谷翼君はなんで死んだんですか。顧問の暴言・暴力がなかったら私は死ななかったと思いますよ。それだけの重い事実が、実は調査委員会報告書で詳しく解明されています。一番解明されているのがそこなんです。
そこで、あなた方が処分した翌日に、岩手日報ですけれども、教育評論家の武田幸子さんがこういうコメントを出しています。「自殺から4年が経過し、十分な調査期間があったにも関わらず、県教委が元顧問の暴言との因果関係を判断しなかったのは問題だ。『暴言が自殺の一因だった』と認定した県教委の第三者委員会の報告を無視した形で、不誠実と言える。うやむやなまま処分して終わったことにしたいという思惑が透けて見えるように感じる。県教委は因果関係を解明すべきだ。そうでなければ、いま進んでいる再発防止策に関する協議に悪影響が出かねない」―私まったく同感です。
それで、第三者委員会でどういう風に解明されたのかを改めてまた指摘します。報告書の54ページからなんですが、「絶望感および孤立感の増大と希死念慮の増」という見出しで、「4月以降集中的になり、かつ強まっていたX顧問の叱責および暴言、4月以降に厳しさを増し、集中的に行われるようになったX顧問の叱責が、Aのバレーボールに対する意欲を奪い去り、さらには自分の運動能力への劣等感と、『E大学のバレーボール部でやっていけるはずはない』という思いを増大させ、同大学に進学せざるを得ない状況に至ったことへの絶望感を一層深めさせることになったことは想像に難くない」「X顧問のAを叱責した発言が、いずれもいたずらに威圧・威嚇し、人格を否定し、意欲や自尊感情を奪うものであり、指導としての域を超え、教員としての裁量を逸脱した不適切な発言と言わなければならない」。そして最後にこう言っています。6月29日、自死の本当に直前です。「AはX顧問から『お前はそれでも3年生か。だから負けるんだよ。部活辞めろと言ってるんだ』などの言葉で、かなり強く、しかも繰り返し叱責されている。Aは声も出せなって下を向いてしまい、練習終了後には周囲から孤立しているように、『もうやってられねえ』と述べていた。このX顧問の叱責や発言が、それまでも増大し続けていたAの絶望感や孤立感を、より一層深めることになった可能性は否定できない」―こういう指摘なんですね。
60ページではこう述べています。「なお6月29日のX顧問の叱責や発言が、それまでも増大し続けていたAの絶望感や孤立感をより一層深めることになった可能性も否定できない。Aは6月中旬以降には、苦しみの中で疲れ果て、楽になりたいという心理状態となり、苦しみから脱出する方法として、自死以外の方法を考えることができない心理状態に陥り、7月3日に自死するに至った」と。
4月以降の集中的な暴言、そして高体連の決勝、Aのために負けたと。その後の激しい暴言なんですよ。そしてその数日後に自死したと。これが第三者委員会の報告書ですよ。一番力を込めて明らかにされたのは、顧問の暴言の経過、その影響と打撃です。
先ほど、自死の6つの要因と言うけれども、中心的な要因はこれですよ。そのことについて私は、県教委が不問に付した。こんな曖昧さを残す処分でいいんですか。
教育長、これだけの執拗な暴言がなかったら、私は新谷翼君は自死しなかったと思いますよ。何が自死の原因だとあなた方は考えているんですか。
【教育局長】
いま報告書の内容について委員からお尋ねがございましたが、我々この調査報告書すべて受け止めておりまして、調査報告書の内容がおかしいとか、そういうことは一切考えておりませんで、受け止めております。
その上で、懲戒処分は行政処分でありますから、因果関係については、やはり専門的な考察を必要とする部分でありますので、我々として報告書を受け止めつつも、この顧問が行った行為を積み上げれば、必ずしも因果関係に言及しなくても、これは免職相当にあると。先ほど参事の方からも、この教員は前任校の訴訟でも損害賠償を認められているわけです。そういう教員がまたこういう行為を行っているということも踏まえまして、我々としてはこの調査報告書をすべて受け止めた上で、処分のあり方として今回こういう風な説明書に書かれているような、個別具体的な行為を列記した上で、免職相当ということで懲戒処分に至ったというものでございます。
【斉藤委員】
私は2月県議会でも紹介したけれども、昨年1月に沖縄で、部活動の顧問から執拗な叱責を受けて男子生徒が自死したと。沖縄県は、その年の7月29日に懲戒免職処分にしました。半年です。ここでは、「不適切な指導が繰り返され、精神的な負担が累積した結果、自死した」と、こう判断していますよ。
バレー部員の自死事件、生徒一人が亡くなっていると。顧問の言動がそれにどういう影響を与えたかを触れなかったら、重大性が出てこないじゃないですか。言動だけ、うわべだけ紹介して、これだけで懲戒処分?私はこういう暴言が懲戒処分にあたるということは理解するけれども、一人死んでいるんですよ、追い詰められて。その関連一言も触れられていない。前任の盛岡一高事件はもっと深刻な暴言・暴力があった。それにも全然触れられていない。
あなた方が公表した処分理由はそうなんですよ。こんなあっさりしたものなんですよ。あっさりしたものじゃないでしょう。今まで4年間かけて、こんなうわべのあっさりした処分理由でいいんですか。これだったら供養になりませんよ。教育長、こんなあっさりしたうわべの処分理由だったら。私はそう思いますよ。
教育長、本当に第三者委員会でここまで解明された自死事件との関係を、あなたはどう受け止めているんですか。
【教育長】
このことは、教育委員会を代表する者として、大変重く受け止めておりまして、私もこれまで先ほども申し上げました通り、何度も弔問に訪れ、ご遺族様からお話をうかがい、そして誠実に対応してきたところでございます。
その上で、これまでも第三者委員会からの報告書、この内容についても一昨年7月22日に受け取ったときにですね、大変重い内容だということもお話しました。そして、さらに報告書に書かれている内容によりますと、学校・県教育委員会での不足した対応等にも触れられているということがございました。そのことから、私ども、どのような形で調査し、この処分権者としての対応ということにも、これは誤りがあってはいけませんので、慎重に判断しなければならないと考えまして、前任校にまでさかのぼった上で、そして当時の部員、年数がかなり経っていてなかなか調査に協力いただけなかった方々も中にはいますけれども、多くの方々に協力をお願いし、その上で事実関係等を調査を尽くして判断をしなければならないということで、時間をかけざるを得なかったと。これにつきましては、昨年の7月3日に弔問に訪れた際にも、「なぜ遅れているのか」ということも問われました。その際にですね、「処分権者としての調査を尽くさなければなりません」ということでお答えをさせていただきました。
やっとここに来て、このような形で、まとまったところで処分に至ったというところでございます。
【斉藤委員】
時間なので最後の質問にします。
私冒頭に、県教委が新たに調査で明らかになったこと、平成27年の暴言だけですよ。4年かけてその程度ですよ。盛岡一高事件の方が深刻な事実があったでしょう。本当にあなた方4年かけて何を調査してきたのか。
この第三者委員会の報告書の76ページには、盛岡一高事件について、「県教委が生徒への不適切な言動および体罰を理由にして、X顧問に対して減給1ヶ月の懲戒処分を下した。しかし繰り返しになるが、県教委は処分を下すまでの裁判の過程において、過去のX顧問の不適切な指導について、すでに確認していたのであり、その時点で必要な対応や対策をとる必要があった。それを怠ったことによって、第4章第1の1で触れた『校長の不十分な管理・指導』、そして本県事案へとつながった可能性は否定できない」―こういう厳しい指摘なんですよ。私は、この中身はさらに一層明らかになってきていると思っております。第三者委員会の報告書以上に、あの陳述書で、盛岡一高で何が起きていたのかというのは一層明らかになった。それをあなた方は黙認した。見逃した。県教委の責任はきわめて重大。
県教委の処分についてはこれからということです。本当に徹底して検証してやっていただきたい。それなしに、再発防止「岩手モデル」はできません。本当に皆が納得するような調査、県教委の責任は本当に重大だと思うので、教育長、その点どういう風にやっていくのか。いつ頃までに県教委の処分は行われるのか示してください。
【教育長】
当該顧問の処分については、今回の処分でもって実施しましたけれど、残る調査報告書にご指摘されている県教委の対応の不足について、これまでも当時の教育委員会に在籍していた職員の個々の方々からも、調査は確認は済んでおります。そしてその内容等、調査結果について、処分の対象になるかどうか、いま確認作業を進めているところであります。
ここはそれに時間をかけることなくですね、可能な限り速やかに対応してまいりたいと考えております。