2022年7月5日 6月定例県議会最終本会議
防衛費の対GDP比2%以上への大幅増額に反対する請願の
不採択に対する千田美津子県議の反対討論


 日本共産党の千田美津子です。
 私は、請願陳情受理番号第70号「防衛費を対GDP比2%以上に大幅増額することに反対する請願」について、総務委員長報告では不採択とのことでありましたが、これに反対の討論をいたします。
 岸田首相は6月末、G7主要7カ国、NATO(北大西洋条約機構)両首脳会議出席の日程を終えて帰国されましたが、ロシアによるウクライナ侵略が主要議題となる中、「軍事対軍事」の流れに乗り、大軍拡を次々に表明しております。29日のNATOサミットでは、「年末までに、新たな国家安全保障戦略等」を策定すると述べ、「日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意だ」と表明しています。「日米同盟を新たな高みに引き上げる」と述べるなど、軍事費のGDP比2%への引き上げを求めるNATOに呼応し、大軍拡に乗り出す姿勢をアピールしています。
 これらはいずれも、軍事費を「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標2%以上も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」とした自民党の参院選公約を念頭に置いたものであります。
 また今、ウクライナ危機に乗じて、自民党だけではなく、日本維新の会なども、憲法9条を改定し、日本を「軍事対軍事」の危険な道に引き込み、くらしを押しつぶそうという大合唱が起こっていることも重大であります。軍事一辺倒で平和はつくれません。日本が軍拡で備えれば、相手も軍拡を加速し、「軍事対軍事」の悪循環に陥ってしまいます。
 日本が攻撃されていないのに、アメリカが海外で戦争を始めれば、集団的自衛権の行使を認めた安保法制を発動し、自衛隊が米軍と一体となって、相手国を「敵基地攻撃能力」を使って攻撃するということになり、これは「専守防衛」の大原則を投げ捨てるものであり、憲法9条のもとでは許されない事であります。しかも、そのような事態が現実となれば、相手国は大規模な報復に出て、日本は戦火に包まれる―。ここに日本の平和と安全が根底から覆される現実的危険があると言わなければなりません。
 それ故、今ウクライナの事態から引き出すべき教訓は、軍備の増強ではなく、戦争が始まる前にそれを食い止めることであり、そのためには、力による対決に陥る軍事力や軍事同盟の強化ではなく、地域の全ての国を包み込んだ平和の枠組みを作ることこそ重要ではないでしょうか。
 日本共産党は、憲法9条を生かして東アジアに平和をつくる外交ビジョンを提案しています。いま、ASEAN東南アジア諸国連合は、ASEAN10カ国と日米中など8カ国でつくる「東アジアサミット」を平和の枠組みとして強化し、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望し、ASEANインド太平洋構想を提唱しています。今、日本が取り組むべきは、ASEANの国々と協力し、東アジアサミットを強化し、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしていくため、憲法9条を生かした徹底した平和外交こそ、取り組むべき政治の最大の仕事ではないでしょうか。
 今、物価高騰が庶民のくらしを襲っています。なぜ、物価がこんなに上がっているのか。原因はウクライナ侵略だけではありません。アベノミクスの「異次元の金融緩和」が異常円安と物価高騰を招いており、その責任は重大であります。しかも、労働者の賃金は上がらず、年金は下がり続けています。さらに、教育費が重すぎること、消費税の増税が家計を痛め続けています。労働者一人当たりの実質賃金は、1997年と2021年を比較すると、年間61万円減り、日本はOECD主要国の中で、唯一「賃金が上がらない国」になっています。
 そのような中、世界では、物価高騰や新型コロナ禍への緊急対策として91の国と地域が消費税(付加価値税)減税に踏み出しています。日本だけ出来ない理由はありません。自民党は、「消費税を下げたら、年金財源は3割カット」などと消費税減税を拒否しています。いま、社会保険料は上がり続け、年金額は削減されています。さらに今年の10月からは高齢者の医療費の窓口負担が2倍になります。このような中で、軍事費を2倍にすること自体、到底受け入れられるものではありません。
 岸田政権は、参院選挙後、利用者負担大幅値上げなど、介護保険の見直し議論を本格化させようとしています。軍事費「2倍化」5兆円以上の軍拡を掲げるもと、社会保障予算がさらに削減され、制度が改悪される危険が高まっていると言わなければなりません。
 さらに、自民党は、軍事費を「GDP比2%」と言いながら、その財源をどうするかは一切明らかにしておらず、隠したままであります。政策と財源はセットで公約する、これが民主政治の基本ではないでしょうか。
 日本共産党はこれらの財源について、「消費税増税か社会保障削減にならざるをえない」と指摘し、軍拡の中止を求めています。
 このような点で、政府が急ぐべきことは、防衛費の大幅増額・大軍拡ではなく、消費税減税など本気でくらしを守る政治の実現こそ重要ではないでしょうか。
 このような観点から、請願陳情第70号は採択すべきであり、不採択とした総務委員長報告に反対といたします。

 以上で、反対討論といたしますが、なにとぞご賛同賜りますようお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。