2022年7月5日 6月定例県議会最終本会議
物価高騰対策の強化を求める意見書に対する高田一郎県議の賛成討論
日本共産党の高田一郎でございます。
発議案第8号、「物価高騰対策の強化を求める意見書」に賛成の討論を行います。
発議案8号は、今日の物価高騰を招いた要因である「異次元の金融緩和についての見直し」を進め、実体経済をよくするために、
第一に、消費税率の5%への時限的な減税、
第二に、中小企業への公的助成を行って最低賃金の引き上げを行う、
第三に、年金生活者を支える必要な対策を講じること、
これを政府に求める意見書です。
「異次元の金融緩和」は2012年に就任した安倍元首相が経済政策「アベノミクス」の「第1の柱」として、日銀に共同声明を結ばせて導入した政策であります。日銀が国債を大量に買いとって金融市場にお金を供給したことで投機が活発になり株価は上昇いたしました。また、外国為替市場では円安が進み、輸入物価を押し上げました。今日の物価高は、コロナ危機からの経済回復による需要増、ロシアによるウクライナ侵略に伴う国際市場の混乱と「異次元の金融緩和」が相まって引き起こしたものであります。
政府は、「異次元の金融緩和」によって大量の資金を供給すれば、インフレ期待によって物価が上昇し、経済の好循環が生み出され、デフレ対策につながる」としてきました。
異次元の金融緩和で実際に起きたのは、大企業と大株主が大もうけだけでありました。株価は9年で2倍になり、大企業の内部留保は130兆円増加し466兆円にもなりました。一方、賃金はこの24年間、年収で61万円も減少し、消費は一層冷え込みました。この「異次元の金融緩和」で実際に起きたのは格差の広がりであり、日本経済の低迷でした。「トリクルダウン」は起きなかったのです。
物価高騰のさなかに、さらなる円安を加速させる金融政策は国民を苦境に立たせるだけであります。 金融頼みではなく、実体経済をよくすることを最優先にする政策への転換が必要です。
発議案にある3つの対策は物価高騰からくらしを守る大きな力になるものであります。
第1に、消費税5%減税は、税の不公平を正して、成長が止まった日本経済を立て直すために欠かせない課題であります。
総務省の家計調査では、年収200万円以下の層では、物価上昇による家計の負担が年収比で4.3%増え、消費税5%増税したのと同等の影響となっております。一方年収1500万円超では0.7%増であり、家計に占める消費税負担も低所得層に重くのしかかっています。それだけに全ての物価を一気に引き下げる消費税減税は、最も効果的な物価対策であります。世界ではこの間、消費税・付加価値税減税を実施した国・地域は91か国にもなっており、日本が出来ないはずはありません。
消費税の税収は導入以来34年間で476兆円となりました。一方この間法人税は324兆円、所得税・住民税は289兆円の減収となりました。これは消費税の穴埋めのために消えたのはまぎれもない事実であり、「社会保障の安定財源」などではありません。
大企業・富裕層はコロナ危機の中でも資産を大幅に増やしました。ここに応分の負担を求めることは、税の再分配機能を強化して、格差を是正するうえで避けて通れない課題であります。安倍政権のもとで2度の税率引き上げは、その都度個人消費が落ち込み、日本経済の成長を止める要因になっています。消費税減税はこの流れを転換させる大きな一歩になるものです。
第2に、最低賃金の引き上げは、物価高騰のなかで国民の生活を守るうえでも、日本経済全体を底上げする上でも最大の力となります。
2021年度の本県の最賃は時給821円、年収で148万円、これはまさにワーキングプアの水準であります。いわて労連の生計費調査では、若者単身では1ヶ月22万8664円が少なくとも必要であり、時給に換算すれば1524円(月150時間)になります。また、内閣府は、年収200万円台の低所得層の増加の原因が「非正規雇用の増加」だと認めています。そして25年間で35歳〜44歳の働き盛りで、所得中央値が92万円もこの間減少しております。非正規雇用労働者の賃上げは消費を増やし、経済全体を活気づけるものであって、日本経済の底上げにとっても焦眉の課題であります。
すでに主要国では最賃を大幅に引き上げています。イギリスは1520円、フランスは1521円、政権が変わったドイツでは10月から1683円、オーストラリアは今月から5.2%引き上げて2000円を超える大幅な引き上げが行われています。アメリカでは、バイデン大統領が1950円(15ドル)への引き上げを打ち出しています。政府の賃上げ支援策は、賃金を上げた企業の法人税を減税するものであり、この施策では全体の7割を占める赤字企業には何の恩恵もありません。引き上げのカギは中小企業への直接支援であります。すべての企業で賃上げできるようにするには、赤字企業も負担している社会保険料を賃上げに応じて軽減することがもっとも効果的であります。日本共産党は、アベノミクスで増えた内部留保に年2%、5年間で10%の時限的課税を行い、総額10兆円の財源で中小企業への直接支援を行い、また、賃上げや気候危機打開のための設備投資を控除することを提案しています。大企業が利益を増やしても内部留保が積み上がるという経済のゆがみを正すうえでも大きな力となります。
第三に、物価高騰は高齢者の暮らしにとって大きな痛手となっており、年金生活者への対策を講じることは不可欠な課題であります。
物価高騰にもかかわらず6月支給分から0.4%削減となりました。この10年間で物価上昇分を差し引けば6.7%も減らされています。自公政権が「100年安心」の名で年金の支給水準を減らし続ける仕組みを導入したことが異常事態を招いています。年金は高齢者の生活を支える命綱であります。内閣府の高齢者白書では、60歳以上の67%が「公的年金が収入源」と答えています。しかし、支給額は低く、就労を希望する理由で最も多いのが「収入が欲しい」としています。もともと年金だけでは生活できない実態があります。岩手県内の家計消費支出に対する年金支給総額は10%超となっており、年金削減は消費を冷やし、地域経済にも深刻な打撃となります。この10月からは、後期高齢者の医療費窓口負担の2倍化で、多くの高齢者が不安を抱えています。物価高騰が長期化することが予測される中で年金生活者の生活を支える必要な対策を取ることは政治の責任だと思います。
以上の理由でこの発議案に賛成するものであります。ご清聴ありがとうございました。