2022年10月18日 決算特別委員会
千田美津子県議の総括質疑(大要)
(千田委員)
日本共産党の千田美津子です。会派を代表して質問します。
1.コロナ感染症への対応と地域医療の充実、医師確保策について
(1)コロナ感染症への対応と感染症病床及び保健所の現状について
感染症病床と保健所体制等の実態ですが、コロナ禍により医療崩壊が現実化した背景には、医療費抑制政策を続けてきた国の医療費政策があり、その中心は病床数の削減と医師数の抑制にあります。もともと国は、感染症の患者が減ってきたことを理由に(実際は微減だった)指定医療機関や感染症病床を削減し、国内の感染症病床は1998年の9,060床から2019年には1,871床まで減らし、重症患者のための集中治療室も2013年の全国で2,889床から2019年には2,445床に444床も削減、保健所が1994年の848箇所から2020年には469箇所に激減したため、この間のコロナ感染爆発によって、「救える命が救えなかった。おおもとは新自由主義的医療改革による医療費抑制政策の弊害だ」と指摘されています。これらの指摘について、知事はどのようにお考えでしょうか。また、岩手県内の感染症病床数や集中治療室、保健所体制等の実態についてどのようにお考えかお聞きします。
(達増知事)
保健所法が1994年に地域保健法に改正され、保健所業務の多くが市町村に移管されたこと、1999年に伝染病予防法等が廃止され感染症法が施行されたことに伴い、感染症指定医療機関や感染症病床の要件が変更になり、感染症に対する保健医療体制が大きく変化したことを背景に、委員ご紹介のような意見があることは承知しております。
本県の感染症の病床の確保にあたりましては、限られた医療資源のもと、一般医療との両立を図りながら、感染フェーズに応じた病床を確保するとともに、重症患者のための集中治療に対応するため、岩手医科大学付属病院の感染症対策センター設置への支援等を行ってまいりました。
保健所体制については、新型コロナウイルス感染症の感染急拡大時に対応するため、保健師の増員や保健所支援本部をはじめとする全庁的な業務支援体制の構築により、必要な体制の確保を図ってきたところであります。
今般の新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、保健所の重要性や医療の公共性が改めて明らかになったところであり、国における体制整備等が求められていると考えております。
(千田委員)
知事が話されたように、保健所や関係者の体制をきちんと国が整備をしていくということが必要だと思います。この間、全国では 5分の1まで感染症病床を減らしたというふうにありますが、岩手県内でも7分の1まで、279床から38床まで減らしたために今回様々な手立てが必要だったわけです。感染症病床を減らすということは当然そこで働く方々の体制も弱まっている、少なくなっているということなので、是非知事が話されたように、国が今回の感染症の拡大をしっかり検証して対応していくことが必要だと思いますのでよろしくお願いいたします。
次に公立・公的病院の充実についてですが、新型コロナ危機の経験を踏まえ、感染症対策を考慮しない地域医療構想による公立・公的病院の統廃合・病床削減は中止すべきと考えますがいかがでしょうか。
例えば、胆江地域のコロナ対応では、医師会や開業医の協力と努力もありますが、地域医療構想で名指しされた市立水沢病院がその中心的な役割を果たしており、発熱外来や入院の大半を担っている状況にあります。
コロナ感染症が今後どのようになっていくか見通しが立たない中で、減らしてきた感染症病床をしっかり確保していくことは大変重要であり、岩手県においてはどの圏域においても公立・公的病院が果たしている役割は大変重要であり、充実こそ必要だと考えますが、知事はいかがお考えでしょうか。
(達増知事)
地域医療構想の背景となる高齢化の進展に伴う、医療需要の変化と中長期的な状況や見通しはコロナ禍にあっても変わらないことから、地域医療構想における必要病床数等の基本的な考え方を維持しつつ、将来の医療需要を見据えた病床機能の分化や連携についての議論を進めることは持続可能な医療体制を構築していく上で重要と考えております。
一方、本県では今般の新型コロナウイルス感染症への対応において、全国有数の公的医療機関ネットワークを核として、検査体制の拡充や病床の確保を図り、多くの入院患者を受け入れるなど、公立・公的医療機関は本県の医療提供体制において重要な役割を果たしているものと認識しております。
国においては、次の感染症危機に備えるために、公立・公的医療機関等が担うべき医療の提供の義務付けや、保健所機能の強化等が盛り込まれた感染症法等の改正を予定していますことから、この動向を注視しつつ、本県の強みである公的医療機関ネットワークや、関係機関との連携を生かし新興・再興感染症等の発生にも柔軟に対応できる医療提供体制の更なる充実に向けた検討を県としては進めてまいります。
(2)医師・看護師の確保策について
(千田委員)
医師・看護師の確保策についてお聞きします。
日本の医師数は、人口1,000人当たり2.43人で、OECD加盟国のうちデータのある29カ国中26位、G7主要7カ国の中で最低の医師数となっています。また、日本の入院患者1人当たりの看護師数は0.86人で、ドイツの1.61人、フランス1.75人、イギリス3.08人、アメリカ4.19人など、欧米諸国の2分の1から5分の1の水準に過ぎません。
長時間・過密労働・低処遇の中、年間10人に1人の看護師が辞めており、現場では深刻な看護師不足が続いています。これらからまずは医師不足解消のため、国の責任で医学部定員を1.5倍化し、OECD並み(11万人増)に医師を増員すべきと考えますが、知事はどうお考えでしょうか。
(達増知事)
国においては、平成19年度までの医学部定員抑制政策を転換し、平成20年度以降、臨時定員増や恒久定員増を行い、令和4年度全国の医学部定員は9,374名と、最も少なかった平成19年度と比較して、1749名、1.23倍の増加となっています。
本県においては、岩手医科大学医学部の入学定員は県による医学奨学金枠の積極的な拡大などにより、当初の80名から現在、臨時定員増35名を含む130名まで順次拡大が図られて参りました。
一方で、国の医療従事者の需給に関する検討会においては、定期的な医師需給推計を行った上で、働き方改革や医師偏在の状況等を考慮しつつ、将来的な医学部定員の減員に向けて医師養成数の方針にについて検討することとしており、令和6年度以降の医学部定員・臨時定員の減員が懸念されます。
本県においては、県医師確保計画に基づく取組を進めておりますが、医学部定員増を継続する場合であっても計画最終年の令和18年度においても医師不足の状況が見込まれ、医師不足や偏在解消を図る上で、医学部定員増の維持・恒久化が必要であることから、医師少数県で構成する「地域医療担う医師確保を目指す知事の会」等の活動を通じて、国に対して引き続き強力に要請してまいります。
(千田委員)
岩手県医師確保計画についてお聞きします。
全国最下位にある医師偏在指標に基づく都道府県順位を下位3分の1のレベルから脱却させることを目標に、岩手県医師確保計画が策定されましたが、この間の取組により医師偏在がどう改善され、目標の達成見込みはどのような状況なのか、知事に伺います。
また、依然として看護師不足は深刻ですが、この対応についても併せてお聞きします。
(達増知事)
県では、令和2年3月に策定した岩手県医師確保計画において奨学金養成医師の配置や即戦力医師の招聘等により、令和5年度までに266人の医師を確保する見込みとしており、令和3年度までの実績は、奨学金養成医師の県内従事者162人、即戦力医師招聘25人の計187人となっています。
奨学金養成医師については、令和4年度は過去最多の122人を配置するなど、これらの取り組みにより医師確保は着実に進んでいるものと考えておりますが、今後とも年々増加が見込まれる奨学金養成医師の計画的な配置や、即戦力医師の招聘の取り組みを重点的に行なってまいります。
看護職員については、「いわて看護職員確保定着アクションプラン」に基づく、進学セミナーや看護職員修学資金貸付制度などなどの取り組みにより、県内就職率は平成22年度から上昇に転じ、近年は60%後半で推移し、就業看護職員数も徐々に増加しています。
一方で、高度・先進医療に対応した手厚い看護体制を維持し。その後の働き方改革にも対応していくためには、更なる看護職員の育成確保が必要と考えていることから、引き続きアクションプランに基づき、県内就職率の向上や離職防止、潜在看護師の再就職支援などに取り組んで参ります。
(千田委員)
この間、臨床研修指導医講習会を全国で初めて県主催で開催し、指導医と研修医の比率が3.8対1と全国有数の指導体制となっていることは大いに評価したいと思います。しかし、残念ながら研修後の県内への定着率が年々減少している状況にあります。今後どう打開していくかが課題と思いますが、どのようにお考えかお聞きします。
(八重樫副知事)
平成30年度から始まった新専門医制度は臨床研修後の専門研修の指導体制や、プログラムが充実としているとみられる大都市の病院での研修を志向する若手医師が増えるなど、地域間、診療科間の医療偏在を助長しているとの指摘もあり、近年の研修医の県内の定着率の低下の要因となっているものと認識しております。
こうした中で、県では奨学金養成医師との面談を通じて県内医療機関でのキャリア形成支援を図ることなどにより、臨床研修後の県内定着率は平成30年度の73.7%から令和元年度は87.7%、2年度は82.8%と復調傾向にあるところです。今後も若手医師のキャリア形成支援につながる魅力ある専門研修プログラムの充実強化に取り組むとともに、臨床研修医の段階から積極的な周知に努めるなどさらなる定着促進を図って参ります。
(千田委員)
周産期医療体制の充実・強化策についてお聞きします。
この間、日本共産党として、産婦人科医師の養成・確保に今まで以上に取り組み、地域周産期母子医療センターの機能を維持すること、2次医療圏でお産が出来る体制をめざすこと、院内助産を進めることを知事に申し入れてまいりました。
県内どこにいても安心してお産が出来るように、周産期医療体制の確立は県民だれもが願う喫緊の課題であり、重要施策でありますが、これまでの実績と今後の取組について知事はどうお考えかお聞きします。
(達増知事)
県内の周産期医療は、全県的に産科の医師が不足している中、産科診療所についても医師の高齢化の進行や後継者不足等により、分娩取り扱いを断念せざるを得ない施設の増加が懸念されるところであり、地域における産科診療体制を確保していくことは重要な課題です。
県ではこれまで4つの周産期医療圏を設定し、医療機関の機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の整備を進めてきたほか、令和2年度からは産科等を選択した地域枠養成医師に対するあらたな特例措置の開始や、医療局奨学金に特別貸付枠を設定するなどにより、病院に勤務する産科医数は横ばいとなっており、引き続き産科医のさらなる確保に取り組んで参ります。
令和6年度からの次期保健医療計画の策定に向け、「周産期医療実態調査」を行い、圏域をまたいだ妊婦の受療動向等の分析を進めるとともに、医師の負担軽減にもつながる院内助産などにおいて、妊産婦へのきめ細かなケアを行う助産師の育成・確保と、一層の活躍促進に向けた取り組みの検討をすすめ、安心して妊娠・出産ができる周産期医療の充実に努めてまいります。
(千田委員)
今年、妊産婦等への「周産期医療実態調査」を県が実施されるようですが、その対象は今の妊産婦だけであり、私は中・高生やその親世代にどうあってほしいかの意向把握も重要ではないかと考えます。また、市町村の取組では、花巻市が民間の医療機関に沖縄から赴任した医師に様々な支援を行っているとお聞きしましたが、医師が赴任するかどうかを決定づける上で、重要なのが自治体の取組姿勢であり医師招聘のカギを握っていると感じました。今回の調査は市町村の意向も聞かれたようですが、これらを十分に把握され今後の対応に活かすべきと考えます。
また、岩手の周産期は資源の集約化が進められていますが、花巻の医師との懇談で「周産期医療センターは、ハイリスク分娩の砦であるべきで、正常分娩やリスクの低い分娩は、一次医療機関が担うことが望ましい。一次医療機関での分娩が停止した奥州市については、若い世代の地域離れが一層加速する可能性があり、一次医療機関の再開が望ましい」と語ったそうです。まさにこの医師の指摘のように、一次医療機関の再開に力を入れるべき時ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(野原保健福祉部長)
知事からご答弁を申し上げましたとおり、「周産期医療実態調査」による受療動向の分析ほか、妊産婦のニーズ等についても把握することとしております。また周産期医療協議会における市長会、町村会からの意見聴取や委員からご紹介がありました、花巻市の取組みなど、市町村から医療機関との情報連携や妊産婦支援に係る取組状況等の聞き取りを行っているところであります。
また産科診療所への支援という視点もいただきました。県では限られた医療資源のもとで、効率的かつ質の高い周産期医療を提供するために、地域で分娩を取り扱う診療所と、周産期医療母子センター等の機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の整備を進めております。そのため、分娩取扱医療機関がない市町村において、新規に開設、または新たに常勤の医師を確保して分娩取り扱いを再開する場合ほか、既存の分娩取り扱い医療機関の継続等を支援するために、施設整備等に対する事業費等の補助を実施しているところでございます。
(千田委員)
地域医療を担う医師の確保をめざす知事の会について、お聞きします。
医師少数県で構成された「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、さまざま実績をあげてきていると思いますが、知事は、この間の活動の成果・手応えをどう評価され、今後の取組について、どのようにお考えかお聞きします。
(達増知事)
令和2年1月の発足以来、医師少数県12県の連携のもと「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は医師不足と偏在の解消をめざし、国に対して医学部臨時定員の継続や恒久化、臨床研修制度や専門研修制度の見直し、医師の働き方改革と医師確保偏在対策の一体的推進等について提言を行ってまいりました。
知事の会の提言内容は、厚生労働省の医師需給分科会において取り上げられたほか、自由民主党の「医師養成の過程から医師偏在是正を求める議員連盟」から要請を受けて説明を行うなど、各方面から大きく注目をされています。
提言内容の内、医学部臨時定員増の継続や、専門医資格更新時に地域での勤務を促す制度の検討、医師の働き方改革に関する継続的な実態調査等が国の具体的な施策や取り組みとして実現しております。
現在、国において次期医師確保計画のあり方等について検討が行われているところであり、この議論を注視しつつ、「知事の会」参画県と情報交換を行いながら、今後のさらなる活動の展開について検討を進めてまいります。
(千田委員)
国のワーキンググループが必要医師数の算定のあり方、医師確保の在り方等も検討されているということで、これは少数県のみならず具体的な提案、OECD並みに増やすべきという提言がますます重要になってくると思いますがいかがでしょうか
(野原保健福祉部長)
ご指摘のとおり、国の方では医療計画のあり方に関する検討会のもとに医師確保計画等のワーキンググループが設置されまして、医師偏在指標の在り方等について今、議論が重ねられているところであります。こうした場においても医学部定員の臨時定員はなく定員の恒久増などについても意見を申し上げているところでありまして、そうした視点で国の方に対して意見を申し上げて参りたいと考えているところでございます。
2.子どもの貧困と児童虐待への対応について
(千田委員)
児童虐待への対応について、お聞きします。
児童虐待防止対策を強化するために、児童福祉司等を大幅に増員し児童相談所の体制の強化を図ること、市町村の児童虐待対策については専門家の配置など体制と取組を強化し、盛岡市や遠野市の取組を踏まえて総合支援拠点施設の整備に取り組むことを求めてまいりましたがどのような状況でしょうか。
(八重樫副知事)
児童相談所の児童福祉司については、国の「児童虐待防止対策体制総合対策プラン」に基づき、平成30年度の37人から本年度には57人へと20人の増員を図り、里親支援や市町村支援を専門に担当する児童福祉士を配置するなど、児童相談所の体制強化を図ったところであります。
市町村の体制強化については、県では平成29年度から毎年度、市町村要保護児童対策地域協議会の調整担当者となる専門職員を養成するための講習を実施してきており、これまでに56人の市町村職員が終了したところであります。
また、市町村の子ども家庭総合支援拠点については、平成30年度に盛岡市が、平成31年度に遠野市が開設したところでありますが、国のガイドラインやアドバイザー派遣事業の活用を促進するなど、現在までに合計12市町村に開設されたところです。
県としては、児童虐待防止対策をさらに強化するため、職員の専門性や対応力向上のための研修や市町村への技術的助言を行うなどにより、今後も引き続き児童相談所と市町村の体制強化を図って参ります。
(千田委員)
職員の充実はそのとおりでよろしいかと思いますが、相談所の数を増やすこと、それから施設の老朽化に対してどのように対応するお考えかお聞きいたします。
(八重樫副知事)
児童相談所の更なる充実強化について、年々増加する児童虐待相談に対応するため相談対応件数の状況に応じた児童福祉士等の配置を進めてまいります。さらにいわゆるスーパーバイザーの養成を進めるとともに、警察等関係機関との連携強化による対応力の向上によって児童虐待対応への充実強化を進めてまいります。
また宮古につきましては新しい児童相談所ということで整備をさせていただきました。老朽化している児童相談所について、整備等と順次今後検討して参りたいと思います。