2022年10月19日 決算特別委員会
復興防災部に対する質疑(大要)
・復興の現状と課題について
【斉藤委員】
昨年度は11年目を迎えた復興の取り組みとなりました。復興の現状と課題についてどうとらえているか示してください。
【復興推進課総括課長】
復興の現状と課題についてでありますが、ハード面では、復興道路が昨年12月に全線開通、災害公営住宅の整備が令和2年12月までに完了、商業施設等が順次再開されるなど、計画された多くの事業が完了するとともに、 ソフト面では、新たなコミュニティ形成の支援などによる生活の再建、事業者の販路開拓支援等による生業の再生などを支援してきたところでございます。
一方、完成していない社会資本の早期整備、被災者に寄り添ったこころのケアといった復興固有の残された課題や、東日本大震災津波伝承館を拠点とした伝承・発信に、引き続き取り組んでいく必要があると考えております。
また、新型コロナウイルス感染症や主要魚種の不漁、今後起こり得る巨大地震・津波への対応など、復興の進展に影響を与える新たな課題への対策を講じつつ、復興の取組により大きく進展した交通ネットワークや港湾機能を生かした施策を展開していくことが重要と考えております。
【斉藤委員】
今後の課題として、こころのケア、災害公営住宅等のコミュニティの確立というのが提起をされていると思います。災害公営住宅のコミュニティという点でいけばですね、9月末現在で5293戸・9177人が入居しています。いろんなところから被災した方々が集まって、そして新型コロナが2年3年と継続する中でですね、これはコミュニティの確立は大変切実だと思いますけれども、どのように取り組まれているでしょうか。
【被災者生活再建支援課長】
心のケア、災害公営住宅等のコミュニティの確立の現状についてでありますが、いわて被災者支援センターでの相談対応におきまして、経済面や生活面などへの支援のほか、心のケアへの対応が必要と判断される被災者の方につきましては、専門的ケアを実施している岩手県こころのケアセンターにつなぐなどの対応をしているところでございますが、これまでのところ、両センターが連携して対応した実績はないところでございます。
次に、災害公営住宅等のコミュニティの確立の現状についてございますが、被災者が恒久的住宅など新しい住環境で生活するためには、住民がお互いに支え合うコミュニティの形成が重要と認識しているところでございます。
このため県では、市町村社会福祉協議会への生活支援相談員の配置や災害公営住宅等への地域見守り支援拠点の設置、市町村及びコミュニティ支援を行う民間団体等の調整役となるコーディネーターの配置などにより取り組んできたところでございます。
こういった取組によりまして、令和4年4月末現在で、災害公営住宅184箇所中172箇所、全体の93.5%で自治会が設立されるなど、コミュニティ形成が進んでいると認識しているところでございます。
【斉藤委員】
こころのケアは、県のセンターが沿岸に4地区あって、全体で52名の体制でしっかりやられていると思います。
災害公営住宅のコミュニティの確立はですね、自治会はつくられたものの、集会所がほとんど月に1回とか2回程度しか使用されていない。コミュニティの形成が進んでいないというのが大変切実な課題ですから、これは直接配置するのは保健福祉部ですので、そことしっかり連携をして。支援員が配置されている災害公営住宅は、月に20回30回と集会所が使われて、いつでも入居者がそこで集える状況がつくられていますので、だから4カ所程度にとどめないで、しっかり配置するようにしていただきたい。
・生業の再生の現状と課題について
【斉藤委員】
次に、生業の再生の現状と課題、あわせて、この間岩手県は若者・女性などの起業支援で164件の起業を支援してきました。昨年度からこうした起業した事業者へのフォローアップ事業を進めていますけれども、その取り組み、実績はどうなっているでしょうか。
【副部長】
生業の再生に係る現状と課題についてでございます。水産加工事業者に定期的に訪問したりして御意見を伺っているところでありますが、業者の皆さんからは、主要魚種の不漁に伴いまして国産原材料の確保が難しくなっているうえに原材料価格が高騰している、近年、電気料金や資材費が高騰しているということ、それから新型コロナウイルス感染症の影響により需要が減少しているなどの声を聞いているところであります。こういった声を踏まえまして、関係部局や関係機関と連携しながらではありますけれども、商品開発への支援でありますとか、商談会の開催による販路開拓支援、人材確保への支援といったところに取り組んでいるところでございます。
起業した方へのフォローアップの状況についてでございます。委員からお話がございました通り、沿岸地域における起業・新事業への支援につきましては、平成25年度から令和2年度までの8年間で、 計164者に対しまして、初期費用に対する補助金を交付してきたところでございます。令和3年度からは、これらの補助金交付先のうち、起業から間もない方など、概ね100者程度を対象に、事業の継続と成長をサポートするため、事業を創設しまして、県商工会連合会に専門経営指導員1名を配置して、事業者を訪問しヒアリングなどをしながら、経営課題を抱えている方や事業拡大に取り組む方などへの経営指導を実施いたしますとともに、より専門的な支援が必要な方には専門家を派遣して対応しているところでございます。
令和3年度におきましては、41事業者を訪問し、助言・指導を行うとともに、専門家を29事業者に延べ49回派遣し、事業者の取組を支援してきたところでございます。
・いわて被災者支援センターの取り組みについて
【斉藤委員】
次に、いわて被災者支援センターの取り組みと体制の強化について質問します。
この課題はですね、本会議でも高田県議、小西県議からも取り上げられ、復興特別委員会としても釜石のセンターを視察をしてまいりました。
そのうえで、1つは昨年度の取り組みの実績はどうか。今年度の実績はどうなっているかを示してください。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの取組実績についてでありますが、令和3年度は、4月の開設から本年3月までの間に、沿岸各地を始め、県内陸部や県外部を含め、243人からの相談に対して、延べ1288回対応したところでございます。
また、本年度は9月末までに105人からの相談があり、昨年度から継続する相談者への対応と合わせて延べ1358回対応しているところでございます。
相談内容としましては、住宅ローンや家計の見直し、家族間のトラブルなど、経済面や生活面に関するものが多く、市町村、市町村社会福祉協議会などと連携して対応するとともに、専門的な支援が必要なケースについては、弁護士やファイナンシャル・プランナーと連携し、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援を行っているところでございます。
【斉藤委員】
いわて被災者支援センターの活動実績を聞きました。相談対応状況についてはですね、昨年度は1288回、今年度は9月30日現在で1358回と、すでに去年のレベルを超えて、特に専門家派遣、これは主には弁護士相談なんですけれども、去年は107回でしたが、9月30日までにすでに70回開催をされているということです。大変頑張られているなと。ただ、訪問同行支援というのが9回にとどまっているんですよね。困っている方というのは、なかなか相談機関に届かないというのが特徴なんですよ。ですから訪問・アウトリーチが必要だと私たちは考えているんだけれども、この間の相談対応の中で、いわば個別支援計画を作成して支援した、そして支援完了した状況はどうなっているでしょうか。
【被災者生活再建課長】
個別支援計画の作成の状況についてでありますが、開設から今年度の9月30日までの間に作成したのは、348件中225件となっております。このうち、141件がこれまでに支援を終了している状況となっております。
【斉藤委員】
いわて被災者支援センターというのは、そもそも目的が複雑で困難を抱えた被災者を支援すると。ですから、専門家・弁護士の相談会をやってもですね、1回で解決するわけではないんですね。そこで解決の方向が示されれば、フォローして解決まで支援するということになるわけです。そういう支援が必要な方達に個別支援計画を立てて、継続的に支援するということをやっているわけですね。今までに141件・62.6%が支援完了したということですから、これは素晴らしい成果だと思いますが、私はそういう点ではもっと困難な方々に届いていないんじゃないか。例えば、今年の相談事業は105人なんですね。本当にまだ限られた人しか手が届いていない。もっとこれを広げる必要があるのではないか。
それで去年の取り組みでお聞きをしたいんですが、去年被災者の実態調査をやりました。それで「地元に戻りたい」という被災者が県内外で78世帯ありました。これに対する支援、現状はどうなっているでしょうか。
【被災者生活再建課長】
帰郷希望のある被災者への支援と現状についてでありますが、昨年度、避難者―県外県内含めてでございますが、1073世帯を対象に帰郷の意向などを確認するアンケート調査を実施したところでございます。
調査の結果、620世帯から回答がございまして、うち帰郷希望のあった78世帯に対して、センターから電話で連絡を行いまして、個々の状況をお聞きながら、災害公営住宅の募集案内や沿岸市町村への移住定住支援の情報を送付するなど、帰郷に向けた支援に取り組んでいるところでございます。
帰郷意思のある方に対しましては、引き続き市町村とも連携しながら情報把握に努めていきたいと思っておりますし、また必要な支援を行っていきたいと考えております。また、今年度におきましても、令和3年度の調査で回答いただけなかった世帯などを対象としたアンケートを実施しているところでございます。今後、調査結果をとりまとめのうえ、支援を希望する方に対しては、適切に対応してまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
これは最後の質問になりますけれども、いま大変貴重な被災者に対する支援を続けていると。そして成果もあげていると。しかしまだ対象は狭くて届かないと。
そこでこの被災者支援センター、私たちが現地調査に行ったときもそうでしたけれども、いま配置されているのは7名なんですね。ところが県の委託条件というのは、人員4名なんです。これが大きな制約になっていると思うんですね。人員4名の予算で、独自にNPOが7名配置して、それでもやはりまだまだ届かない被災者が多いと。
これは高田県議も提案したんだけれども、こころのケアセンターは全体で52名、沿岸4地区にそれぞれ8〜9名配置しているんですよ。達増知事は「この体制は維持する」と、確固とした姿勢を示しているんですね。被災者支援センターも、全国に本当に誇れるような活動だと思うんです。それにしては体制が弱すぎる。これは本当に私だけじゃなくてたくさんの県議がそれを感じて、議会でも取り上げてきた。
部長さん、本当に体制をせめて沿岸のこころのケアセンター1カ所分―8〜9名ぐらいの体制が最低でも必要なのではないかと。そうすれば105名じゃなくて、200名300名という困難な方々に手が届く、そういう取り組みになるのではないかと。被災者の医療費免除も昨年の12月で打ち切られました。「医療が受けられない」という切実な声も県の保険医協会のアンケートでも浮き彫りになりましたよ。そういう方々に本当に相談に乗って支援を強化する、こういうことも含めて体制の強化が必要だと思うけれども、部長さんどうですか。ここまでさまざまな県議から提案されているときに、しっかり受けて立つべきではないですか。
【復興防災部長】
こころのケアセンターのお話がございました。
岩手県こころのケアセンターは、精神科の医師や保健師、看護師、精神保健福祉士などの専門職を内部に配置しまして、被災者の相談に応じて、精神的負担を軽減するためのケアを継続して実施していると承知してございます。
一方、いわて被災者支援センターは、被災者からの経済面や生活面等の相談について、相談支援員が対応してございますし、住宅ローンの返済とか生活設計の見直しと、こういった専門的な支援が必要なケースにつきましては、先ほど来答弁してございますが、弁護士やファイナンシャル・プランナーなどの外部の専門家と連携して対応しているという状況になってございます。
両センターでは、支援対象者とか支援方法が異なりますので、体制とか事業規模を単純に比較することはできないものと考えてございますけれども、いずれ被災者のニーズに沿ってどういう体制で臨んでいけばいいかというのは引き続き検討させていただきたいと考えてございます。
【斉藤委員】
少し前向きな雰囲気がありました。実は個別支援計画というのは、10枚に渡るような支援計画を立てているんですよ。本当に克明に被災者の状況をつかんで、必要な支援を継続してやっている。このスキルというのは、まさに専門家といってもいい。だから弁護士と連携しながら、そういうことでやっているので、ぜひ来年度には体制がしっかり強化されるように期待して終わります。