2022年10月20日 決算特別委員会
ふるさと振興部に対する質疑(大要)
・マイナンバーカードについて
【斉藤委員】
それでは最初にマイナンバーカードの取り組みについて質問いたします。
今までもいくつか議論がありました。9月末現在で、県全体のマイナンバーカードの交付率は42.9%と。実はマイナンバーカードというのは2016年1月から交付が始まったんですね。6年9ヶ月が経ちました。今日の新聞を見ると、全国的にやっと50%を超えたという報道もありますが、6年9ヶ月ですよ。なんでこれが進まないのか。その進まない要因についてどう受け止めているか答えてください。
【副部長】
住民への交付事務を担当する市町村から、現状におきましては、やはり住民に取得の必要性やメリットが十分に伝わっていないでありますとか、高齢者の中にはやはり交付手続きが煩雑と感じている方などもいるという話をうかがっておりますので、また、こういったことに関しては、取得に関するメリット、申請における支援などを進めながら、交付が進むように取り組んでいるところでございます。
【斉藤委員】
いま2つだけ挙げられました。メリットないんですよ。だから交付されないんですよ、メリットがないから。なくても生活できるから。そして煩雑だと。
それよりもっと重大なのは、これはデジタル庁の調査では、国民がカードを取得しない理由の第1位は「情報流出が怖いから」でこれが35.2%。いわば国に対して信頼がないのです。このマイナンバーカードの最大の問題は、個人の情報を国が一括して掌握して管理すると。この個人の情報は国が活用する。物事によっては企業に活用させる。こういうものなんですよ。歯止めがないんです。そして地方自治体にとってはどうかというと、地方自治体はさまざまな独自事業をやっています。マイナンバーカードの枠内で地方自治体の仕事はできないのですよ本当は。だから欧米では、地方自治体レベルのマイナンバーカードの仕組みがつくられている。国家統制なんですよこれは。こんなことを進めたら中国の監視社会になってしまいますよ。そういう不安を国民は感じている。この不安を払拭しない限り、私はこのマイナンバーカードの普及は進まないと思いますよ。
進まないから何をやってきたか。2万円のポイントだとか、県産品を送るとか、岩手県はこれまでにどれだけのことをやってきましたか。
【デジタル推進課長】
マイナンバーカードの普及について、県で取り組んできたこれまでの実績でございますが、県では国の交付金を活用しまして、令和元年度から令和3年度までの3年間、国が実施するマイナポイント第1弾および第2弾の新聞広告やチラシ配布などを実施してきたところであります。また、今年度につきましては、県内16町村を会場に、マイナンバーカードの交付申請、マイナポイントの申し込み、スマートフォンの操作講習会などを開催しておりまして、マイナンバーカードの普及促進に取り組んでいるところでございます。
【斉藤委員】
河野デジタル大臣が何と言ったか。「ポイントの効果に懐疑的で政策として邪道だ」と。デジタル担当大臣がポイントなんかでやるのは邪道なんだと、こう言っているんですよ。私まったく真理だと思います。
それに地方自治体が悪乗りしてはだめだと。今度の1億4千万円は悪乗りですよ。地方創生臨時交付金を使って、こんな邪道なやり方をしていいのかと。困ったところにこそお金をかけるべきだと。私は本会議の議案に対する質疑でもそのことを指摘しました。結局こういうことなんです。あれでマイナンバーカードの効果を上げようとしたけど上がらなかった。
だから今度何をやろうとしているか。健康保険証と一体にすると。これは鞭なんですね。しかしそもそも法律では、マイナンバーカードの取得は「任意」になっているんですよ。法律違反ですよ。国民の申請は任意だとなっているのに、健康保険証に無理矢理一体化させて、これをやらせようとする。私はこれは本当に邪道中の邪道じゃないかと思うけれども、部長どう思いますか。
【ふるさと振興部長】
報道によりますと、10月13日に健康保険証を2024年秋に廃止しまして、マイナンバーカードと一体化したマイナ保険証に切り替える方針を発表いたしましたが、厚生労働省・総務省・デジタル庁など関係省庁による具体的な検討はこれからだとうかがってございます。
やはり先ほど申し上げた通り、いわゆるカードは義務ではなくて希望でございます。引き続き紙の保険証をご希望される方もいらっしゃると思いますし、高齢者それから乳児、自ら取得できない方、さまざまな事情がある方もありますので、医療がやはり国民等しく提供されるように、そういったマイナンバーカードが取得できない人、しない人に対しても、そういうことがないように適切な処置が必要だと思ってございます。そういった意味で、国においてそこは責任をもって検討していただきたいと思っております。
【斉藤委員】
全国紙も地方紙も厳しい批判の社説をあげています。これは昨日の河北の社説ですが、「法的には任意のはずのマイナンバーカード。強引なやり方で大きな政策転換を図るのは、拙速で乱暴ではないか。政策転換の背景にはカードの普及が進まない事への焦りがある」と。まったく本当に統一協会問題で追い詰められた政府が迷走していると、私はそういうことなのではないかと。
マイナンバーカードの本質をしっかりつかんだ上で、よく見定めながらこの取り組みを岩手県としては進めていただきたいと思います。
・JR東日本のローカル線切り捨て問題について
【斉藤委員】
次に、JR東日本のローカル線切り捨てへの対応についてお聞きをいたします。
赤字ローカル線の現状、これはどのようになっているでしょうか。
【地域交通課長】
赤字ローカル線の現状についてでございますが、本年4月、JR東日本から平均通過人員、いわゆる輸送密度というものでございますが、2019年度実績におきまして、1日あたり2000人未満の全国の情報が開示されたところでございます。
本県では、大船渡線、釜石線、北上線、八戸線、花輪線、山田線の6路線・10区間が対象となっておりまして、開示された情報によりますと、いずれの線区も収支は赤字となっておりまして、赤字額は、山田線の上米内〜宮古間の18億9500万円がもっとも大きく、次いで大船渡線の一ノ関〜気仙沼間で15億7500万円という形で開示がなされているところでございます。
また、平均通過人員でございますが、秋田県にまたがる花輪線の荒屋新町〜鹿角花輪間が1日あたり78人ともっとも少なく、次いで北上線のほっとゆだ〜横手間の132人となっているところでございます。
【斉藤委員】
この時期にJRがわざわざ赤字ローカル線の状況を打ち出して切り捨てようとしていると。これは新型コロナ禍の下でたしかに2年間JR東は赤字でした。たった2年間ですよ赤字は。その前の3年間はもっとたくさんの黒字を出しているんですね。惨事便乗型のローカル線廃止の国とJR東一体となった驚くべきことではないのか。
そこでお聞きしますが、JR東日本の経常利益について、この2年間とその前の3年間どうなっているか示してください。
【地域交通課長】
JR東日本の経常利益についてのお尋ねでございます。
2017年度におきますJR東日本単体での経常利益でございますが、3589億4300万円となっておりまして、2018年度が3548億5200万円、2019年度が2601億3600万円の黒字となっております。
2020年度と2021年度の状況でございますが、5177億1500万円、1777億1800万円の赤字となっております。
【斉藤委員】
ちょっとたどたどしい答弁で心もとないんだけれども、実はこの2年間の赤字というのは6954億円でした。新型コロナの下で。その前の3年間の黒字は9738億円なんですよ。この5年間で見たら黒字なんです。だから騒ぎ立ててローカル線が赤字だから何とかしようという情勢では全然ない。
もう1つ聞きましょう。JR東日本の内部留保はどうなっていますか。
【地域交通課長】
JR東日本の内部留保、いわゆる利益剰余金の部分でございますが、こちらも過去5年間で申し上げますと、2017年2兆146億8400万円でありました。これが2021年で1兆5348億8100万円となっているところでございます。
【斉藤委員】
利益剰余金だけで1兆5348億円あるんですね。全労連は春闘白書で毎年大企業の内部留保の一覧表を出しています。この試算は、利益剰余金だけでなくて、資本剰余金その他を含めて内部留保を出しているんですけれども、それで見ますと2兆9518億円です。これだけの内部留保を持っているんですよ。びくともしないんですよ。これだけの利益と内部留保があるんだったら、公共交通機関として赤字地方ローカル線を守るというのが公共交通を担う責任があるのではないかと思いますけれども、部長にその見解をお聞きします。
【ふるさと振興部長】
JR線を含むローカル鉄道でございますけれども、地域の住民の足という、移動手段のみならず、災害時の代替性、補完性、そのほか観光、物流など地域経済を支える重要な社会インフラだと思ってございます。
JR東日本は、収支や平均通過人員のみで存廃を判断するのではなく、まずは交通事業者の使命としてJRローカル線を維持し、引き続き安定的な運航をしていただきたいと考えております。
また、鉄道ネットワークは国の交通政策の根幹として維持されるべきであり、国においてはJRローカル線を維持するための支援を行うべきだと考えてございます。
【斉藤委員】
新幹線を整備するときに、1つは地方負担があった。もう1つは在来線を切り捨てられた。この地方の負担額、岩手県の負担額、ぜひ後から出していただきたい。
いわば黒字を出すところだけ、おいしいところだけとって、他の赤字になりそうなところは地方に転嫁させてきた。これは私たちは絶対に忘れてはならない。新幹線というのは全体の鉄道ネットワークの中で成り立つものなんです。新幹線だけでは成り立たないんだから。
私はそういう意味で、鉄道ネットワーク全体で、地方ローカル線を含めて公共交通を維持すると。これは政府・JRとの交渉となると思うので、その大義を掲げて堂々とこれは交渉しなくちゃならないと。「赤字で大変だけど残してくれ」というたたかいではない。莫大な利益をあげてきた、地方の犠牲であげてきたJRの責任で公共交通機関を守るという取り組みをぜひ進めていただきたい。
それで今度の議会でもですね「JRのローカル線維持・確保連絡会議」を設置するとなっていますけれども、その構成メンバー、いつ頃設置されるのか。路線ごとにJR沿線自治体会議、これを沿線市町と設置するとしていますけれども、その目的、取り組み、構成メンバーはどうなっているでしょうか。
【地域交通課長】
JRローカル線維持・確保連絡会議についてでありますが、構成メンバーにつきましては、県とJR東日本から経営情報が公表されました県内6路線の沿線市町の首長を構成メンバーとする予定としてございます。開催時期につきましては、現在沿線市町の方と調整を進めているところでございまして、年内できるだけ早い時期に開催したいと考えているところでございます。
次に、JR沿線自治体会議、路線ごとの会議でございますが、今回JR東日本から収支が公表されました6路線は、路線ごとに状況が異なりますことから、地域住民の意向を把握しつつ、今後想定されるJRとの協議や国が設置する特定線区再構築協議会での対応について検討することを目的として設置するものでございます。取り組み内容としましては、国やJR東日本への要請内容の検討、マイレール意識など住民意識の醸成や鉄道の利用促進、JR東日本や国の協議会の方から何らかの提案がなされた場合の対応などについて、路線ごとに検討・協議をしていく予定でございます。構成メンバーにつきましては、県と路線の市町の首長等を想定しているところでございます。
【斉藤委員】
最後の質問になりますけれども、この地方ローカル線問題というのは岩手だけの問題では当然ない。全国の地方自治体の問題であります。ですから、そうした東北・全国の地方自治体と連携をすると。全国知事会も声をあげると。そういう取り組みが必要ではないかと思います。これは最後に部長に聞いて質問を終わりたいと思います。
【ふるさと振興部長】
全国との連携というお話でございました。ローカル線の問題は本県だけではなく、多くの道府県に共通する課題でございます。今年5月に、本県を含む28道府県連名で国に対しまして、国の交通政策の根幹として鉄道ネットワークを維持すべきこと、それからJRを含めた鉄道事業者の経営基盤の安定化への支援を行うこと。それから、鉄道事業者側の判断によって鉄道廃止が可能な手続きを見直していただきたいこと、といったようなことなどについて共同で提言を行ったところでございますし、本県の単独の政府要望におきましても同様の要望を行っております。
また、JR東日本から収支が公表された県内6路線のうち、4路線については隣県にまたがる路線となってございます。隣県の沿線市町村も含めた、沿線自治体が連携を密にして対応を県とする必要があると思ってございます。
これから県内自治体と会議をもつということでございますが、他県との連携のあり方についてもそれぞれ沿線自治体と協議してまいりたいと思ってございます。
引き続き、こういった同様の課題を抱える他の自治体、他県等とも連携いたしまして、地方ローカル線の確保に向けまして国やJR等への働きかけなど、さまざま取り組んでまいりたいと考えております。