2022年10月21日 決算特別委員会
医療局に対する質疑
(大要)


・行財政改革の報告書について

【斉藤委員】
 行財政改革の報告書が議論になりましたので、1つだけお聞きをしたい。
 総務部でも取り上げたんですけれども、私が一番危惧しているのは、県立病院の創業の精神「県下にあまねく良質な医療の均てんを」と。ところが報告書は「県下にあまねく」が無くなって、「良質な医療の均てんを」となっているんですよ。そのことについて医療局長はどのように受け止めましたか。

【医療局長】
 考え方としての「あまねく医療の均てん」というところの趣旨は変わらないものと私も考えております。

【斉藤委員】
 総務部長も曖昧な答弁だったけれども、他意はないような答弁だったので、ただ、言葉というのは本来厳密なものですから、本当の狙いがどこにあるかは分かりません。
 私は、人口減少にともなって県立病院のあり方を検討する、改革するということは当然あるかもしれない。しかし、「県下にあまねく医療の均てん」という創業の精神は、どういう改革の下でも守らなくちゃならない。それが岩手の県立病院たる精神だと思いますので、そのことを冒頭にお聞きをいたしました。

・県立病院の新型コロナ対応について

【斉藤委員】
 最初に、新型コロナ感染症の対応についてお聞きをいたします。
 県立病院の感染症病床の確保、昨年度の新型コロナ患者の入院対応はどうだったのか。今年度はどうか。県内感染者の入院患者に占める割合を含めて示してください。

【医事企画課総括課長】
 県立病院の感染症病床の確保および新型コロナ患者の入院対応についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れるため、フェーズに合わせて病床を確保しており、県立病院においては6病院に22床配置している感染症病床を含め、16病院で最大で280床の病床を確保しているところであります。
 令和3年度においては、1,988人の感染患者を受け入れており、県内の確保病床に入院した患者としては全体の約54%を受け入れているところであります。
 令和4年度においては、9月末までに1,363人の感染患者を受け入れており、県内の確保病床に入院した患者としては全体の約55%を占めているところであります。

【斉藤委員】
 県立病院が新型コロナで入院患者の半分以上に対応したと。私は高く評価をしたいと思います。
 あわせて、県内には盛岡市立病院とか水沢総合病院とか公的病院がまた重要な役割を果たしているのも事実で、合わせますと本当に8割以上公立・公的病院が重要な役割を果たしたし、私は県立病院全体のネットワークで、応援体制を含めて重要な役割を果たしたのではないかと思います。
 次は、県立病院内のクラスターの発生状況、感染・濃厚接触などによって欠勤者が200名近くになったということがテレビや新聞などでの報道でも出されましたけれども、その状況とそれへの対応はどうだったのか示してください。

【職員課総括課長】
 県立病院におけるクラスターの発生状況についてでありますが、県からの発表においても施設名は公表されていないことから、個別の病院名については答弁を差し控えさせていただきますが、実際いくつかの県立病院において、クラスターが発生しているところでありまして、特に第7波の期間中に多く発生しているところであります。
 次に、感染や濃厚接触などによる欠勤者の状況と対応についてでありますが、県内で感染者が大きく増加した8月以降では、8月23日に1日あたりの欠勤者が、最大の210人となりましたが、以降減少いたしまして、10月18日現在では61名となっているところであります。
 出勤困難な職員が多数発生した病院においては、地域の救急医療を最優先で守るためBCPを発動し、比較的緊急性の低い手術や検査の延期などにより対応しているところであります。
 さらに、県立病院においては、令和3年度から県立病院間の応援体制を強化するため、看護師を4つの圏域に各8名、計32名を配置し、職員の感染者数の増加等により医療体制がひっ迫した際には、県立病院のスケールメリットを生かして相互応援を行っているところでございまして、今年度上半期の実績では、延べ1364日の応援を行うなど、県立病院全体で診療への影響を最小限に留められるよう努めているところであります。

【斉藤委員】
 欠勤者の最大は210名だったと。中央病院が何度かテレビに出て、60人前後の欠勤者で、医療制限をせざるを得なかったと。他の病院でもそういうことになったと思います。そういう厳しい中で、診療応援、いま聞いて改めて驚きましたが、1364日、これは上半期だけでこれだけの応援体制をとられたと。まさに二重の県立病院のネットワークを生かした対応だったと思いました。

・医師、看護師確保について

【斉藤委員】
 次に、医師・看護師確保の状況についてお聞きをいたします。
 経営計画から見て、医師の確保はどうなっているでしょうか。

【医師支援推進監】
 経営計画に対する医師確保の状況についてでありますが、現行の県立病院の経営計画では、令和元年度から令和6年度までの6カ年で臨床研修医を含め81名の増員を計画しているところでありますが、令和3年度は12名の増員計画に対し、配置実績は24名の増員となったところです。
 また、今年度は、11名の増員計画に対して、8月1日現在で28名の増員となっているところでございます。
 この医師数が増加している主な要因としましては、県立病院で義務履行を行う奨学金養成医師の配置が、令和4年度は107名と令和3年度と比較して13名増加しております。
 養成医師の配置が始まった平成28年度以降年々配置数が増加していることなどによるものと考えているところです。

【斉藤委員】
 令和3年度、これは計画に対して12名増と。令和4年度も計画に対して17人増と。それはそれで私評価するんですけれども、令和元年度から令和3年度で見ますと、40名の計画に対して34名の実績で−6となっていますから、正確にこの経営計画との関わりでいけばきれい事だけではなかったということも指摘しておきたいと思います。
 次に、看護師の確保がこの経営計画から見てどうなっているのかと。令和3年度までの3カ年で見ると−10となっているところに驚きを感じております。なんでこういうことになったのか。新型コロナで今年度・昨年度、大変な努力をされている中で、看護師は減ったと。ちょっと信じがたい実態ではないのかと。その要因、今後の対策を含めて示してください。

【職員課総括課長】
 看護師の確保についてでございますが、令和元年度から令和3年度までの配置実績は、医療の質の向上で27人を増員する計画に対し53人の増員、産育休に対する代替職員確保で45人を増員する計画に対しては48人の増員、病床適正化で33人を減員する計画に対しては72人の減員とし、合計で39人を増員する計画に対し29人の増員としたところであります。
 また、計画の中間見直し後の令和4年度の配置実績でございますが、医療の質の向上で4人を増員する計画に対し2人の増員、産育休に対する代替職員確保で計画どおり14人の増員、病床適正化で10人を減員する計画に対し1人の減員とし、合計で8人を増員する計画に対して15人の増員としたところでございます。
 令和3年度までの配置実績が計画から減少したのは、患者数の減少等を踏まえた病床適正化を進めてきたことによるものでありまして、これを踏まえ、医療の質の向上等に係る増員を前倒しで進め、中間見直し後の計画においても、計画期間全体で、医療の質の向上について中間見直し前の計画を18人上回る57人の増員を図ることとしているところでございます。
 また、計画とは別に、新型コロナウイルス感染症に対応するため、県立病院全体で36人を増員配置しているところであり、今後とも、看護師の負担軽減、良質な医療の提供及び医療の安全を確保するための体制整備に努めていくものであります。

【斉藤委員】
 私はそもそも県立病院の経営計画で看護師の増員計画があまりにも少なかったということを一貫して指摘をしてきました。少ない計画の中で、3年間で−10という計画に対して、そこは本当にこの新型コロナ禍の下で、さっきの答弁にもあるように、今年の上半期だけで1364日の応援体制をとらざるを得ないと。こういう中でなぜ計画から10人もマイナスになるような結果になったのかと。
 看護師の実態、月8日を超える夜勤者の状況とその解消の取り組みについて示してください。

【職員課総括課長】
 看護職員の月8回超の夜勤者の状況と解決の取組についてでありますが、月8回超の夜勤に従事した看護職員の数は、令和3年度におきましては、13病院で、延べ1733人となっており、令和2年度と比較して延べ621人増加しているところでございます。
 また、令和4年度については、第1四半期までの実績で14病院、延べ487人となっており、令和3年度の同じ時期と比較して延べ89人減少しているところでございます。
 令和3年度の増加の要因としては、特にも新型コロナウイルス感染症の陽性者との接触または感染疑い等に伴う出勤停止者が発生したこと、職員の子が通う学校などの休校による休暇取得者が生じたことに伴う調整、また、ワクチン接種後の副反応発生による休暇などの取得に伴う調整などが挙げられております。
 医療局においては、先程述べさせていただきました新型コロナウイルス感染症に係る体制強化のための増員のほか、これまでも、育児休業取得者等の代替職員の正規職員による配置、夜勤専従などの多様な勤務形態の導入、採血業務の臨床検査技師への移管などのタスク・シフティングの推進、あるいは、外部専門家を通じた業務の見直し、さらには、病児保育の導入による院内保育の充実などにより、職員の負担軽減を図る取組を進め、離職防止や新採用職員の確保を図るとともに、業務の繁閑に応じ、県立病院間で相互応援を行うなど、看護職員の夜勤回数の抑制に向け、取り組んできたところであります。引き続き、夜勤回数の抑制に向けた取組を推進してまいります。

【斉藤委員】
 やはり現実をよく見る必要があると思うんですね。令和3年度の月8回超の夜勤者は1733人で、前年度621人も上回ったと。それはコロナの関係ありますよ。しかし今年の第1四半期ですから4〜6月ですよ。487人だと。実は7月以降に感染拡大して、先ほどお話ししたような、昨年を上回るような欠勤者が出ているんですよ。だから確実にこれは超えますよ昨年度を。そういう状況の中で看護師の増員計画が達成されなかったことが大問題じゃないかと、改めて指摘をしておきます。
 それでもう1つお聞きをします。普通退職者、いわゆる途中で早期退職する看護師の状況、年代別状況、その理由を示してください。

【職員課総括課長】
 看護師の普通退職の状況についてでありますが、令和3年度の普通退職者は102名となっており、前年度と比較して23名の増となっているところであります。
 年代別で見ますと、20代が45名、30代が24名、40代以上が33名であり、いずれの年代においても、結婚や家族の介護等、家庭事情による理由が多数となっているところであります。

【斉藤委員】
 本当に看護師さんが厳しい中で去年102名早期退職、中途退職といいますか。そしてその中で一番多いのが20代なんですね。102名のうち45人ですから、45%といってもいいぐらいの数ですよ。30代は24人。だから若いうちに辞めちゃっているんですね。結婚とかあるんだけれども、それでも働ける職場でなかったら、看護師さん確保できないじゃないですか。結婚しても安心して働ける職場をつくらなかったら、ざるで水をすくうことになっちゃうんだと思うんですよ。やはりここをシビアに見て、そういう意味でも看護師の待遇改善が決定的に重要だと。だから私はもう経営計画の看護師増員計画そのものがあまりにも貧困じゃないかと思っているんですけれども、本当にそこの増員計画を見直して、本当に県立病院に行くと「あんな仕事になるのか」というので、実習をやれば本当に行きたくなくなるという声も一部にある、一部に。全部とは言いません。だからそういう意味では、やはり県立病院が看護学生にとっても魅力のある、ああいうところで働きたいと思われるような看護師の待遇改善を図る必要があるんじゃないか。県立大学の看護学部の先生方とも懇談した機会がありました。同じ事を言っています。だからやはり看護師確保を考えれば、看護師さんの待遇改善というのは大変大事だということも指摘をしておりました。
 時間がないので最後に、看護師の処遇改善についてお聞きをいたします。2月から9月までの処遇改善は全看護師を対象にいたしました。その際の医療局の持ち出しはいくらだったか。10月から診療報酬に基づく病院を限定した処遇改善となりました。残念ながら、対象の前の病院の看護師は今回の処遇改善の対象にならないと。これは本当にこれだけ頑張っているときに、そして先ほども答弁があったように、15病院以外の病院からも応援行っているわけですよ。応援に行った日数だけ加算するような処遇改善でいいのかと。今回は43億円の純利益をあげたわけですけれども、やはり財政の見通しがある限り、すべての看護師を対象にして処遇改善をやるべきではないか。そのために必要な経費はいくらか。そのことを示してください。

【職員課総括課長】
 令和4年2月から9月までの看護職員の処遇改善についてご説明いたします。
 国の看護職員等処遇改善事業において、国の補助金により実施することとされ、補助対象となるのは15病院に限られたところでございましたが、医療局においては、一時的な補助金による措置であることや経営への影響等を踏まえ、全ての病院等の看護職員を対象に、月額4000円の特殊勤務手当を支給したところでございます。
 このことによる医療局の負担は、特殊勤務手当のほか、超過勤務手当等の基礎額増加による増加分を含めて、8ヶ月間の合計で2700万円程となり、このうち、全病院等を対象としたことによる影響は、1100万円程の増加となったものでございます。
 続きまして令和4年10月以降の看護職員の処遇改善についてでありますが、この施設基準を満たす15病院の看護師・准看護師及び助産師約3150人を対象に、月額12,000円。 先ほどの3倍の特殊勤務手当を支給するという制度に変わったところであります。
 これに係る年間の所要額は、6億100万円余、うち医療局の負担は7300万円余となるのに対し、処遇改善の対象とならない看護師約300人も対象とした場合は、さらに5400万円を要し、医療局の負担は、1億2800万円余となる見込みでございます。