2022年10月25日 決算特別委員会
農林水産部(農業部門)に対する質疑
(大要)


・米価対策、水田活用交付金の問題について

【斉藤委員】
 それでは、令和4年産米の米価と水田活用交付金の問題についてお聞きをいたします。
 令和4年産米の概算金が示されました。ひとめぼれで前年比1000円増、しかしこれは60キロあたり11000円なんですね。これは5年間で2番目に低い米価であります。先ほど議論がありましたけれども、生産費を償える農家の状況をパーセント含めて示してください。

【水田農業課長】
 生産費を償える農家の状況についてでありますが、最新の値となる令和2年産の東北の米生産の作付規模別の自作地地代等を含む全算入生産費は、1ヘクタールから3ヘクタールの作付規模で、10アール当たり131,271円、3ヘクタールから5ヘクタールの作付規模で、10アール当たり114,664円となっております。
 令和4年産のひとめぼれの9月の相対取引価格をもとに、9月25日現在の国の作柄概況で示された本県の10アール当たりの予想収量であります537キロを用いて10アール当たりの収入額を試算すると117,925円となり、3ヘクタール以上の規模で生産費を上回る状況となっております。
 この3ヘクタール以上の規模の農家戸数でございますけれども、割合は11%となってございます。

【斉藤委員】
 これは、生産費が令和2年産米の生産費なんですね。令和4年度は議論があったように、飼料・肥料、私がいただいた資料だと肥料代で144.5%、1.4倍以上に上がっているので、これは生産費は上がるんだと思います。
 それで、実は昨年産米というのが一番米価が下がったんですけれども、9月10日付の日本農業新聞、「21年産米の大幅な米価下落で、JA全中・全農の試算では15ヘクタール以上の農家でもコスト割れしている」と。議会で聞いたときには、5ヘクタール未満みんな赤字ですと。これは95%でした。しかし全農・全中の試算だと15ヘクタール以上の農家もコスト割れしていたと。この全農・全中の試算は承知していますか。

【水田農業課長】
 全農・全中の試算につきましては承知してございませんでした。

【斉藤委員】
 あなた方も調べなきゃないと思うんだよね。これは9月10日付の日本農業新聞です。
 だから実際は、昨年ももっと深刻だった。そして令和4年産米はこの肥料代等の高騰分、これは生産費に入っていないので、3ヘクタール未満―これは89%になるんですけど、それどころではないんだろうと思います。そこの深刻さをしっかり受け止めていく必要があるのではないか。
 ちなみに、あなた方の試算で10ヘクタール、100ヘクタール規模の農家の減収はどうなるか。県全体ではどれぐらいの減収の見込みなのか。これは令和元年と比べて示してください。

【県産米戦略監】
 委員ご指摘の通り、令和4年産のひとめぼれは1000円引き上げられたところでございますが、コロナ禍前の令和元年産米と比較しますと2,100円低くなってございます。これを、国が公表しました本県の10アールあたり収量537キログラムで試算した場合には、10ヘクタール規模では約188万円、100ヘクタール規模では約1,880万円下回るところでございます。
 また、県全体につきましては、ナラシ対策や収入保険による補てん額を除くことが必要ではございますが、仮に令和3年産米の民間流通量に当てはめて試算しますと約56億円となってございます。
 ただ、昨日、国から令和3年産米のナラシ対策の補てん額が公表されておりまして、岩手県では約18億円が補てんされているということでございますし、収入保険につきましては、農作物全体での補填ということで米のみの補てん額は明らかではございませんが、相当額が補てんされていると思ってございます。

【斉藤委員】
 いずれにしても、米の生産費が令和2年産米、これは物価高騰前の価格で比べて今の減収規模です。だから昨年に匹敵するような減収の規模になるのではないかということは指摘をしておきたいと思います。
 そこで、水田活用交付金の減額の推計というのは出ますか。

【水田農業課長】
 先般、国が公表しました「令和4年産の水田における作付状況」によりますと、転換作物については、令和3年産と比較して、牧草等の飼料作物が減少している一方で、飼料用米やホールクロップサイレージ用稲、大豆、加工用米などが増加しております。
 飼料作物については面積が減少しましたが、飼料用米や大豆などは面積が大幅に増加しておりまして、加えて、収量に応じて交付単価が変わる作物もあることから、交付金の減額についてお示しすることは難しいところでございます。

【斉藤委員】
 実は、主食用米が2500ヘクタール減っているんですよ。そして飼料作物が479ヘクタール減、そして飼料米は1147ヘクタール増―これだって主食用米の半分以下なんですよ、増えた分は。全体として私は作付減っているんじゃないか。いわば耕作放棄地が増えているんじゃないか。それは試算できるんじゃないですか。2500ヘクタール水田が減った分、転作されていないでしょう。

【水田農業課長】
 この数字につきましては、国が公表している水田活用交付金の対象となる面積と理解してございまして、他にも申請をしていなくても作付をしている場合もあると思いますので、試算につきましては難しいところと考えております。

【斉藤委員】
 毎年同じ基準で公表されているんだから、水田は昨年度2000ヘクタール減ったんですよ。今年2500ヘクタール減っているんですよ。その分が転作されているかと。転作するどころか転作助成金=水田活用交付金を減らすというんだから。ますます耕作放棄地がふえているんじゃないかと聞いているんですよ。明らかになったこのデータで示してください。転作面積は総面積で増えているんですか、減っているんですか。減っているとすればいくら減っているんですか。

【水田農業課長】
 主食用米の面積につきましては2500ヘクタールの減少ということでございまして、その一方で飼料用米・加工用米・大豆・小麦等については増加している状況でございます。
【農政担当技監】
 水稲の作付状況でございます。委員ご指摘の通り、主食用米につきましては2500ヘクタール減っているというところでございます。一方、先ほどありましたように、増加している面積もございますが、全体としては1070ヘクタールほど減っております。この状況につきましては、詳細についてはまだ把握していないところでございます。

【斉藤委員】
 そういう答弁をちゃんとしてください。1070ヘクタール減っているんですよ。この分が作付されないとしたら減収分でしょう。作付しても減収するのが水田活用交付金ですから。あとでぜひ1070ヘクタール減というんだったら、この減収分は後で示してください。そして飼料作物、先ほど言ったように479ヘクタール減です。飼料作物のほとんどは牧草ですよ。これは昨年のデータでその比率が出ていますから、牧草で減った分で、そして作付した分でまた減収ありますからね、そういうことを後で示していただきたい。
 水田活用交付金については、農水省も最終とりまとめを行いました。かなり切実な声が全部網羅されています。主にどういう中身になっているか示してください。

【水田農業課長】
 国が取りまとめをいたしました5年間での水張りを困難とする課題等についての主な内容でございますけれども、ブロックローテーションにつきましては、「品目によってはブロックローテーションになじまないものがある」「6年以上の間隔で輪作体系を組んでおり、今後5年間では水稲作付を行う予定がない」「水稲以外に水張りを行う品目をどう扱うのか」「交付金の対象外となれば飼料の安定供給の継続ができなくなる」等の意見が出されております。

【斉藤委員】
 これは本当に農家の、地方の声がしっかり出ているんだと思うんですよ。ところが新聞報道を見ると、水張り1ヶ月程度でどうかという話なんですよ。全然違うじゃないですか。ブロックローテーションになじまないというのは、大豆・野菜・牧草ですよ。6年以上の間隔でローテーションやっているところも少なくない。牧草関係でいけば、「牧草の経営が成り立たず、粗飼料の安定供給が継続できなくなる」と、切実な声じゃないですか。土地改良関係では、「交付対象水田から除外されれば、賦課金の支払いが困難となる」「水利施設の維持管理、土地改良区の運営に影響が出る」。まったくこの通りですよ。抜本的に見直しをしなかったら農家がつぶされる。物価高騰の中で。腹をくくって、東北・北海道が団結して、全国知事会を動かして、水張り1ヶ月ぐらいでお茶を濁すなんていう見直しには絶対終わらせないということを部長に求めたい。

【農林水産部長】
 水田活用交付金の見直しの関係につきましてですが、いま委員からご指摘あった通り、地域の方からさまざまな声をいただいているということと、またそういった影響があるというふうにとらえているところでございます。
 このため県では国に対し、6月、あるいは機会あるごとに、5年に1度水張りにつきましては、地域の実情を十分に踏まえた運用とするようなこと、それから水田を有効に活用した多年性牧草の生産への支援を拡充するといったようなことなどを要望しているところでございます。引き続き全国知事会とも連携しながら、国に対しこういった地域の実情に沿ったような運用とするよう要望していきたいと考えているところでございます。

【斉藤委員】
 米価が下落し、物価高騰で農家が本当にいま先の見通しが立たないような状況で、水田活用交付金を削減するなどという悪政・暴政、絶対に許してはならないと強く求めておきたいと思います。

・物価高騰の農業への影響について

【斉藤委員】
 次に、物価高騰による影響について。全国都道府県、県内市町村でどのような農家への直接支援の取り組みが行われているか簡潔に示してください。

【企画課長】
 現時点で把握している状況で申し上げますと、本県を含めまして全ての都道府県におきまして、燃油や肥料、飼料といった生産資材の価格高騰に対応しまして、例えば省エネルギー化や肥料コスト低減に向けた取組、さらには配合飼料価格の上昇分に対する支援などが行われているものと承知しております。
 また、県内の26の市町村においても、燃油や生産資材の価格高騰に対する支援が実施されておりまして、それぞれの市町村の実情に応じた取組が行われているものと承知しております。

【斉藤委員】
 農家に対する直接支援がどう行われているか。全国都道府県ほとんど直接支援をやっていますよ。北海道は、農業従事者に燃油・飼料・肥料高騰対策にかかる経費を助成―24億4800万円、青森県は、原材料価格の高騰に対応するための経営の継続発展に向けた取り組みを支援―7億5400万円、山形県は、肥料価格上昇分の7割を支援する政府対策への上乗せ―6億4900万円、福島県も、肥料などの値上がり分の一部を助成―6億500万円。岩手県は、農家に対する直接の支援がないんですよ。県内の市町村はほとんど直接助成です。岩手県の物価高騰対策、いま厳しい中で、省エネの施設を整備したら補助するなんて、少しピントが外れている対策になっているんじゃないでしょうか。農家に対する直接支援、全国並にやるべきじゃないでしょうか。

【農業振興課総括課長】
 農家への直接的な支援ということでございますけれども、県は県でさまざまな国の制度も活用しつつ、県独自の支援策も講じているところでございます。また、個別具体にそれぞれの現金の給付であるとか、そういったものをどうかという話もあるかもしれませんが、個別具体な話でいきますと、それぞれの経営状況等も異なってきておりますので、なかなか直接的な支援というのは現時点ではどうかなということもございますが、その必要性とかも見て検討してまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 ほとんどの都道府県は農家直接補填なんですよ。県内の市町村もそうなんですよ。例えば盛岡市は、上限100万円の飼料購入費13%支援、八幡平市も限度額100万円、配合飼料購入1トンあたり600円、だいたい上限100万円とか200万円規模で農家支援していますよ。そういう意味でいけば、岩手県の支援はなぜ全国と比べてこんなに低いのか。県内の市町村が頑張っているのに岩手県の支援がないのはなぜなのか。これは最後部長さんにお聞きしましょう。ちょっと見劣りするんじゃないかと。53億円の新たな交付金も出ているわけだけれども、せめて全国並、県内市町村並の支援を岩手県もやるべきじゃないでしょうか。

【農林水産部長】
 委員からご紹介のありました、全国あるいは県内の市町村で直接補填するということについては県の方でも承知してございますし、また、有効な方策の1つとも考えているところでございます。
 一方で、資材価格の高騰につきましては、円安がまだ歯止めがかかっていない状況ということもありますので、引き続きまだまだ続くのかなと見ているところでございます。こういった中で県としては、まずは国の支援策が農家に届くようにということで、これは側面的な支援になるかもしれませんが、普及センターあたりが入りまして、そういった取り組みをサポートしながら、農家の方に支援金が届くようなこと、あるいは県独自措置しました6月補正、あるいは省エネ対策ということで、将来には当然コスト減という形でつながってきますので、こういったような対策を講じて、その上でまたさらに県としてどのような対応が可能かということは引き続き検討してまいりたいと考えております。