2022年10月25日 決算特別委員会
千田美津子県議の農林水産部(農業部門)に対する質疑
(大要)


・岩手の畜産振興の現状等について

(千田委員)
 二つお伺いします。一つは畜産振興と獣医師の確保策についてです。まずは岩手県酪農肉用牛生産近代化計画がありますが、それが目指す岩手の畜産振興の現状等についてお聞します。合わせて二つ目に県の肉用牛酪農経営の実態についてお聞きします。

(米谷畜産課総括課長)
 岩手県酪農肉用牛生産近代化計画についてでありますが、県では国の酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針の策定を受けまして、令和12年度を目標とする本計画を令和3年3月に作成したところです。
 計画の中では酪農につきましては、総飼養頭数42,000頭から39,000頭へ減少を見込みますが、県全体の生乳生産量は21万トンを維持すると、肉用牛につきましては総飼養頭数88,000頭から104,000頭へ増頭、約120%とすることを目標としております。
 この目標の達成に向けまして、牛舎整備や飼料生産機械等の導入支援、県や農協等で組織する酪農肉用牛サポートチームの活動等によります、飼養管理技術の改善、コントラクターや、酪農ヘルパー組合等の外部支援組織の育成、ICT機器の導入等の支援等の取り組みを進めているところでございます。
 続きまして県の肉用牛農酪経営の実態についてでございます。現在本県の令和3年度の肉用牛の飼養頭数、戸数、和牛の繁殖経営と肥育経営と合わせまして約3,800戸、59,000頭と、酪肉近代化計画の現状年であります平成30年度に比べ、戸数で約84%、頭数約95%となってございます。酪農の飼養戸数、頭数につきましては約770戸、40,100頭と平成30年度に比べまして戸数で87%、頭数で95%となっているところでございます。

(千田委員)
 令和12年度の目標として、酪農において飼養頭数は減少するけども、生乳生産量は維持するということでありましたし、肉用牛については、飼養頭数そのものの拡大、120%目指すということがわかりました。そのために必要な様々な牛舎の整備とか,サポートチーム等の活用でいろいろと大変だと思いますが、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それから経営実態についてですけども、この間5年間で飼養頭数もですが、和牛繁殖農家が740戸減っている。それから肥育が約100戸ですね。 乳用牛が170戸減少しております。ただ全体で見ますと、1戸あたりの飼養頭数はそれぞれ増えているということで、農家の頑張り、それから様々な指導や支援がこのような状況を生み出しているものと思います。
 今日いろいろ議論があったように、畜産を取り巻く環境は飼料の高騰など、大変だと思いますが、引き続きこの計画の達成を目指して力を入れていただきたいなと思います。

・獣医師の確保策について

(千田委員)
 三つ目ですけども、先ほど菅野ひろのり委員から質問がありました、家畜診療所の縮小の問題です。先ほども答弁あったと思いますが、これは家畜共済制度が改正されて、それに伴って岩手県の農業共済組合が家畜診療業務を見直したということで、令和 6年の4月から共済組合の家畜診療業務の対象外となることが決定したということを聞きました。
 先ほどもありましたが、大きな懸念をされるのが大家畜を対象とした開業医師がいない、釜石・大槌地域だと思います。先ほどの答弁では、最終的に、県全体の獣医師を確保していくことなどの答弁がありましたし、今現在、地元の自治体、農協等と検討されているということでありますが、この間の検討で、今どのようなことをやられているのか、その状況についてお聞きします。

(高橋振興衛生課長)
 釜石・大槌地域における地域獣医療の確保に向けた検討状況でありますが、釜石・大槌地域につきましては、県振興局、釜石市、大槌町、農業協同組合と共に、地域獣医療の確保に向け、本年 1月13日に検討の場を設置し、これまでに4回検討会を開催し、具体的な対策を検討して参りました。牛飼養農家の飼養状況とか、将来の経営意向などについてお聞きし、地域の飼養頭数が10年後も概ね維持される、という調査結果を得まして、現状と同程度の獣医療を確保することが必要であることから、現在は近隣の獣医師 、開業獣医師などに診療を依頼することの条件について整理しているところです。

(千田委員)
 様々検討されたり、農家のみなさんの意向を聞いたりされているということはわかりました。それで、この釜石・大槌地域の現在の飼養頭数はどうなっているか、飼養戸数、頭数、それから5年後、10年後の農家の皆さんの見込み、それからこの間の診療実績についてお尋ねいたします。

(高橋振興衛生課長)
 令和4年度現在は、33戸、約300頭の牛が飼われている状態です。10年後には33戸のうち戸数は減少しますけども、約300頭の飼養頭数は維持されると意向調査で把握されたところです。
 現在の診療件数については内部会議として取りまとめており、詳細な数値の答弁は差し控えたいと思います。

(千田委員)
 診療実績、結局、飼養農家戸数、頭数もさることながら、どれだけの診療実績があるのか、これからの対策を練る上で非常に大事なことだと思います。関係者には資料が渡っているのでそれを見ているんですが、例えば事故外ということで、釜石・大槌地域では200件のレセプトがあるようです。1件のレセプトというのは1回のことではなくて、何回行っても1件という取り扱いのようなので、例えば獣医師さんが500回、1000回行ってるかもしれません。そういった意味での200のというレセプトということのようです。
 かなりの診療実績があるわけで、そういった意味では、今まわりの獣医師を含めて対応を検討されているということですが、やはり農家のみなさん、5年後、10年後は飼養戸数は減っても、頭数は拡大していく、という意向が先ほどの答弁でも示されておりますので、ぜひここを励ますような取り組みを早急に明らかにしていくことが大事だと思うんですがいかがでしょうか。

(高橋振興衛生課長)
 ただいま委員からご指摘ありましたとおり、地域の意向を把握して獣医療確保に向けて、検討・対策を進めていくことが重要と認識しております。
 現在、検討会において、地元の自治体、農協などが十分議論を重ねているところであり、対策の方向性を決めているところであります。引き続きこの検討会で市町村、農協とも連携し検討して参りたいと思います。

(千田委員)
 家畜共済制度改正に伴って共済組合が見直しをしたわけですが、この独立採算制度となったために今回のようなことになっているということですが、どのような経過が現実的にあったためになったのか、それからこの間、県に対しては農業共済組合等から具体的な相談等はなかったのでしょうか。
 
(中野参事兼団体指導課総括課長)
 家畜共済制度が平成30年度に改正され、31年の4月から施行され、家畜共済勘定から家畜診療所勘定が分離するような形で独立採算制となりました。共済組合の家畜診療所の赤字が顕在化いたしまして、共済組合としての家畜診療所の効率的な運営が一層求められたというところがございました。
 そういう中で、令和2年、県の方にも請願が出されました。そのような状況の中で共済組合家畜診療所も、いわゆる収支改善を進めてきたところでございます。県といたしましても家畜共済と家畜診療所の収支が改善均衡するように、家畜診療所の維持できるように国に対して要望を行ってきたところでございます。

(千田委員)
 今日もいろいろ議論ありましたけども、頑張っている飼養戸数は減ってはいますけども、飼養頭数を増やすために頑張っているわけですから、畜産県として、農家のみなさんが安心して経営できる状況に持っていくことが県としても非常に重要だと思います。
 そう意味では、これまでのさまざま家畜診療所の運営体制がいろいろありますけども、やはり横の連携をもっと深めながら、それから獣医療体制の地域区分がありますよね。その区分の見直しとかで、もう少し展望が見えるような形でやっていただきたい。関連する獣医師にアンケートを取られました。全体の獣医師が決して多くはない中で、人の医師不足でだけではなくて、大家畜の獣医師も少ないという、そういうイメージになるになると大変なので、これについては獣医師をもっと増やす取り組みを、県としても引き続き頑張っていただきたいと思うわけですが、部長にお聞きをいたします。

(藤代農林水産部長)
 獣医師確保についてですが、畜産を行っている農業者の皆さんが安心して経営を行っていくためには、地域で安定的に診療を受けられる体制を作ることが大変重要だなと考えております。ただ一方では人の医師と違い、獣医師はそれぞれの農家を訪問して診療しなければならないということもあります。
 今、県内で共済組合から獣医師がかなり退職した部分がかなりございます。かなりの方は県内で獣医師という仕事をしていただいていますが、一方で、家庭の事情等で生活しやすい所に行くという傾向もあります。そういった中で、牛の頭数とかがあまり多くないところで、収入の確保も含めてどういった獣医療構築できるかということもあり、今、地域で様々議論をいただいているところですので、それぞれの地域に応じた形で獣医師を確保できる、あるいは獣医療の提供が受けられるよう、引き続き地元の方と取り組みを進めていただきたいと考えているところでございます。

・農業用ため池の安全管理について

(千田委員)
 それでは二つ目、農業用ため池の安全管理についてお尋ねします。
 7月23日に金ケ崎町のため池で、草刈り作業をしていた男性二人が溜池に落ちて溺れて亡くなるという重大事故が起こりました。農業をしている男性が誤って転落し、助けようとした別の男性も溺れて亡くなったという、大変痛ましい事故であります。
 このような事故をなくすために、今後どうあればいいのか、以下についてお聞きをいたします。一つは県内の農業用ため池及び防災重点農業用ため池の現状についてお聞きします。

(佐々木技術参事兼農村建設課総括課長)
 県内の農業用ため池でございますが、全県で2365箇所ございます。所有者別では、国又は地方公共団体が524カ所、土地改良区は206カ所、個人が1446カ所、その他水利組合などが189カ所となってございます。
 管理者別では、国又は地方公共団体が86カ所、土地改良区が654カ所、個人1375カ所、その他水利組合などが250カ所となってございます。
 そのうち決壊した場合に、家屋や公共施設の存在し、人的被害を与える恐れがある防災重点農業ため池が県内で881カ所ございます。所有者別では国又は地方公共団体が295カ所、土地改良区が103カ所、個人が470カ所、その他水利組合が8カ所となってございます。
 また、管理者別では国又は地方公共団体が63カ所、土地改良区が308カ所、個人が421カ所、その他水利組合などが89カ所となってございます。

(千田委員)
 全体で2365カ所、防災重点農業用ため池が 881カ所ということで非常に多いわけですし、また、その所有者もいろいろとあり、それらの方々が連携して防災のために取り組むことが必要です。
 それで二つ目ですが、数年間の農作業中のため池での事故発生状況、及び事故防止策についてお尋ねします。
 合わせて、農業用ため池保全サポートセンターの設置が国から指導されておりますけども、市町村との連携をする上で、これが重要だと思いますが、設置見込み等についてお聞きをいたします。

(佐々木技術参事兼農村建設課総括課長)
 ため池での事故の発生状況及び、その防止策についてでございます。
 過去5年におきましては、農作業中のため池での事故はご案内のとおり、今年7月に発生した農業用ため池での法面草刈作業中の転落死亡事故が一件のみとなってございます。
 県内、毎年営農開始時期ですとか、梅雨期とか台風時期前に農業施設の管理作業時における安全管理の徹底について。毎年通知を発出しております。これらに加えまして、今年7月に起きました事故においては、8月に開催いたしました、農業用ため池の保全安全管理に係る市町村との意見交換会を開催しておりまして、安全管理の徹底について再度周知させていただいたところでございます。
 引き続き、施設管理者及び作業従事者の皆さんに対しまして、急な法面など、危険な場所にはむやみに立ち入らないこと、やむを得ず立ち入る必要がある場合は、命綱の装着でありますとか、複数名での監視体制強化を行うなど、管理作業の安全を確保するよう注意を喚起して参ります。
 次に農業用サポートセンターに関するお尋ねでございます。
 県では農業用ため池の管理及び保全に関する法律の施行を受けまして、令和元年8月に岩手県土地改良団体連合会及び一般社団法人岩手県土地改良設計協会を構成員とした、農業用ため池対策チームを設置しております。
 このチームが市町村と連携のうえ、ため池の届出など法に基づく周知でありますとか、ため池の防災・減災などの対策のを図ってきたところであります。この対策チームの3年間の活動状況を踏まえまして、本年8月に市町村との意見交換を実施したところ、ため池の適正管理は更に普及啓発をするためには管理者及び所有者に対しまして、ため池の漏水でありますとか、堤体の変位を確認する、定期点検の確実の実施など、今まで以上に指導・助言を強化する必要があるのではないか、などの意見が挙げられましたところでございます。これを受けまして県ではため池サポートセンターをすでに設置している他県の活動状況等を調査いたしまして、本県におけるサポートセンターの必要性について検討を行っているところでございます。