2022年12月5日 12月定例県議会本会議
一般質問
(大要)


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。県民の切実な要求、県政の重要課題について主に達増知事に質問します。

1、新型コロナ感染拡大から県民の命とくらしを守る課題について

(1)第8波の感染拡大の状況と第7波の教訓について

 第一に、新型コロナ感染拡大から県民の命とくらしを守る課題について質問いたします。
 11月29日の新規感染者数は2248人となり、第7波のピーク2017人を3回更新しました。11月の感染者数は3万4126人となり、10万人当たりの感染者数は846.4人となっています。11月のクラスター発生は199件と8月の131件を大きく上回り、高齢者施設のクラスターが94件と半数近くを占めています。医療施設でも8月の16件を上回る28件のクラスターが発生しました。特に重大なことは、死者数が66人と8月の54人を超えて増加していることであります。
 岸田自公政権は、第8波を迎える新型コロナ感染拡大に対し、「行動制限は行わない」と成り行き任せに終始し、感染が拡大したら医療機関への受診抑制を求める無為無策というべき対応であります。
 知事は第8波の感染拡大の状況をどう認識されているでしょうか。第7波の教訓をどう受け止め、感染拡大の抑止と新型コロナから県民の命と健康を守る取り組みを進めているのでしょうか。

【達増知事】
 斉藤信議員のご質問にお答え申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況等についてでありますが、10月に入り全国的に感染が拡大し、県内においても感染者数の増加が続いており、現在は8月の第7波のピーク時に匹敵する水準となっています。第7波では、オミクロン株の高い感染力により、本県でも高齢者施設や医療機関でのクラスターが複数発生し、また、医療従事者の感染などにより医療機関に大きな負荷がかかったところです。
 こうした状況を踏まえ、重症化リスクの高い方が必要な検査や診療を円滑に受けられるよう、陽性者登録センターや検査キット送付センターの設置、高齢者施設や保育園などにおける集中的検査を拡充し、第8波に備えてきたところです。
 現在、第8波の感染拡大により医療現場の負荷が再び高まっていることから、本部員会議などを通じて、県民の皆様に対し、希望する方のワクチンの早期接種、県の専門委員会からのアドバイスに基づく基本的感染対策の徹底、可能な限り平日・日中の相談・受診への強力など、重ねてお願いしてきたところです。
 今後においても、患者が適切な医療を受けられるよう関係機関と連携し、引き続き診療・検査医療機関や検査体制の充実、ワクチン接種の推進に努めてまいります。

(2)具体的な感染防止対策の徹底について

【斉藤議員】
 それでは具体的な感染防止対策の徹底についてお聞きします。
 厚労省の専門家会議(アドバイザリーボード)は、「年末に向けて、社会経済活動の活発化による接触機会の増加等が懸念される」と増加要因を指摘するとともに、基本的な感染対策の再点検と徹底について、「飲食店での忘年会・新年会は、第三者認証店等を選び、できるだけ少人数で、大声や長時間の滞在を避け、会話の際はマスクを着用する」「できる限り接触機会を減らすために、職場ではテレワークの活用等の取り組みを再度推進するなどに取り組む」「イベントや会合などの主催者は地域の流行や感染リスクを十分に評価したうえで開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策を実施する」と提起しています。
 県として、こうした専門家会議の提起を踏まえて、具体的な感染防止対策を県民に分かりやすく提起すべきと考えますがいかがでしょうか。

【復興防災部長】
 新型コロナウイルス感染症にかかる具体的な感染防止対策についてでありますが、県では、県内の感染状況を踏まえ、県新型コロナウイルス感染症対策本部員会議を随時開催し、県民の皆様と感染状況を共有するとともに、県民一人一人が場面場面に応じた感染対策を徹底していただくよう呼びかけているところです。
 11月18日に開催いたしました第65回本部員会議では、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会からのアドバイスを基に、県対策本部として感染対策の徹底と事前の備えのお願い、そして感染防止のための効果的な換気についてと、分かりやすくまとめたチラシを作成し、県民や事業者の皆様に実践していただくよう呼びかけたところであります。
 また、本部員会議の結びには、毎回知事から県内の感染状況を踏まえた感染対策についてメッセージを発表するとともに、県ホームページ・SNSなどのほか、新聞・テレビによる報道等を通じて分かりやすい情報発信に努めているところです。
 今後も感染状況を踏まえ、適時に本部員会議を開催し、県民の皆様に対し感染状況に応じた感染防止対策を丁寧に呼びかけてまいります。

【斉藤議員】
 国が、政府が成り行き任せで何もしないと。全国そういう雰囲気なんですよ。そういう中で、感染抑止を徹底するということを特別に、知事を先頭に強調しなければ、本当に県民のものにならないと。そのことは指摘をしておきたいと思います。

(3)医療提供体制の強化について

【斉藤議員】
 必要な医療提供体制の強化について質問します。
 現在確保されているコロナ対応病床はどうなっているでしょうか。県立病院、公立・公的病院の確保病床と割合、実際の入院患者の状況と割合を示してください。
 県立病院での感染・濃厚接触等による欠勤の状況はどうなっているでしょうか。発熱外来の検査・診療機関の拡充が求められていますが、発熱外来の現状を含めて示してください。

【保健福祉部長】
 現在確保しているコロナ対応病床については、最大確保病床が435床、そのうち県立病院は280床で64.4%、公立・公的病院は125床で28.7%となっております。また、確保病床への入院患者については、10月以降の第8波においては、12月2日現在、延べ829名のうち、県立病院は593名で71.5%、公立・公的病院は192名で23.2%となっております。
【医療局長】
 県立病院での欠勤の状況についてでありますが、10月下旬から欠勤者数が増加に転じ、11月22日現在の1日当たりの欠勤者数は219名、11月29日現在では201名となっており、第7波のピークであった8月23日の欠勤者数210名と同程度となっています。
 発熱外来の現状についてでありますが、中央病院を除く19病院と沼宮内および花泉の2地域診療センターが診療・検査医療機関として県から指定され、発熱患者等の診療・検査を行っているところでございます。検査件数で見ますと、職員へのスクリーニング検査も含めてですが、11月14日の週は平日1日平均で約600件の検査を実施しており、第7波のピークであった8月15日の週の約540件よりも1割ほど上回っている状況であります。

【斉藤議員】
 発熱外来については、当初414医療機関でしたが、今どうなっているか。どれだけ増加しているか示してください。
 もう1つ、病床使用率についてなんですけれども、厚労省の専門家会議が毎週公表している病床使用率と10ポイント違っています。厚労省は先週の会議で岩手県は45.9%、県の発表は35.9%なんですよ。これは空床補償とも関わっていると思うので、統一すべきではないのかと。国が発表するのと県が発表するのと違っていたらおかしいんじゃないでしょうか。

【保健福祉部長】
 診療・検査医療機関につきましては、逐次拡大を図っておりまして、毎日状況は変わっておりますので、約420を超える医療機関となっているところでございます。
 また、国が公表する病床使用率と県の使用率の差でございます。国の公表につきましては、いま現在医療のステージ2でございますので、確保病床は435、これは最大確保病床数ですので、いま用意している病床数に対する使用率という形で公表していますが、県の使用率は最大確保病床数を分母とさせていただく。これは最大確保病床が県の実態を表しておりますので、そういう形で評価させていただいているところでございます。

【斉藤議員】
 県と国が発表する病床使用率が10ポイントも違ったら問題じゃないですか。そして、国の発表というのは空床補償の対象ベッド数だと思うんですよ。違いますか。

【保健福祉部長】
 実態として、いま確保している病床に対して補助金というのが対応しておりますので、そういった側面はございますが、やはり県民の皆様方に、当然我々感染拡大してくれば、いろいろな制度を速やかに転換して対応するわけでございますので、県で確保している病床と、それに対応する数という形で、これは第5波以前からもこのような形で公表させていただいておりますので、やはり数値の一貫性という意味で、いまの状況で公表しております。
 そういった意味では、議員からご指摘いただいた点については、丁寧に説明に努めて参りたいと考えております。

【斉藤議員】
 ぜひ分かりやすく、二重基準にならないようにやっていただきたい。

(4)高齢者施設での感染対策について

【斉藤議員】
 高齢者施設のクラスターが増加しています。第8波のクラスター発生と感染者数を示してください。その要因は何でしょうか。高齢者施設で療養中に亡くなった方はどうなっていますか。厚労省の専門家会議は、「高齢者施設等における頻回検査等の実施と医療支援のさらなる強化」を提起していますが、どう取り組まれているか示してください。

【保健福祉部長】
 県内における新型コロナウイルス感染症新規感染者数は、10月が12,222名、11月が34,126名となっております。また、高齢者施設のクラスターは10月が35件、11月が94件となっております。12月4日までに新型コロナウイルス感染症で亡くなった285名のうち、高齢者施設で療養中の死亡者数は42名となっているところであります。
 感染者の増加要因については、ワクチン接種等で得られた免疫の低下や、気温の低下に伴い換気が十分に行われないことなどが国のアドバイザリーボードなどで指摘されているところであります。

【斉藤議員】
 いま施設内療養で亡くなったというのが42名。これは死者の14.7%なんですよ。7人に1人です。私は施設長からもお話を聞きましたが、「最大限入院させてほしい」と。これが施設の責任者の切実な声ですよ。もっと高齢者施設でのクラスター対策を徹底することと合わせて、施設内療養で亡くなるということがないような、そういう手立てをしっかりとるべきじゃないでしょうか。

【保健福祉部長】
 高齢者施設でのクラスターがやはり第8波・オミクロン株の高い感染力を背景に、非常に多くなってきているのは事実でございます。
 県といたしましては、施設の状況に応じまして、いわて医療福祉施設等クラスター制御タスクフォースを派遣をいたしまして、感染管理の徹底の支援、また、入院調整などのさまざまな支援を行っているところでございます。患者さんの状況に応じまして、当然医療が必要な方については入院対応とする、また患者さんの状況に応じては、むしろ転院させることによって負担が増す、その介護施設の場で医療従事者が出向いて、その場で治療を行う方がむしろ療養環境としては適しているといった判断もあることから、患者さんの状況に応じまして今後とも適切な支援、療養環境の整備、また高齢者の方々が亡くなることがないようにという視点で取り組みを進めてまいります。

【斉藤議員】
 施設内療養で42人が亡くなっている。亡くなった方の7人に1人です。クラスターが発生した高齢者施設というのは職員も感染しているんですよ。そういう中で、感染した入所者を看るという状況ですから、本来医療施設ではないので、本当にこの高齢者施設に対する医療支援を強化することと合わせて、施設内で42人亡くなったということをもっと厳しく受け止めて対策をとっていただきたい。

(5)後遺症対策について

【斉藤議員】
 新型コロナ感染の後遺症対策について、後遺症の実態調査結果はどうなっているでしょうか。山形県では専用相談窓口を設置するとともに、専門外来等の医療機関を県のホームページで紹介しています。県としても専用相談窓口と専門外来を設置すべきではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 令和3年度に実施をいたしました県内の罹患者、県の調査では、約1割の方が「倦怠感、気分の落ち込みが約6ヶ月以上継続した」と回答するなど、症状や療養期間の状況は、国が行った全国調査と同様の結果となっております。この調査結果も踏まえまして、県・医師会で調整し、県内の医療機関に対しまして、罹患後の症状がうかがえる方が受診した際には、国が作成した診断の手引きに基づき対応すること、また症状を有する方については、かかりつけ医または最寄りの内科で対応し、必要に応じて専門医を紹介するよう依頼しているところでございます。罹患後症状については、現在国において研究が進められておりますが、いまだ治療法が確立されておらず、現状では対症療法とならざるを得ないことなどから、県内の医療機関に専門外来等はまだ現時点では設置されていない状況ではございますが、保健所や一般相談窓口であるコールセンターにより、症状に応じて医療機関の受診を案内するなどの対応をしているところでございます。
 また、県医師会および医療機関と連携をして、罹患後症状の診療を行う医療機関の情報の取りまとめを進めておりまして、今後医療機関の意向を踏まえながら、周知・広報についても調整を図っていく考えであります。

【斉藤議員】
 山形県の取り組みを紹介しました。専用相談窓口、専門外来を設置しているんですよ。岩手何もやっていないじゃないですか。これ河北新報に出ましたけど、これ宮城の患者なんですけど、「どこに行っても診療してくれなかった」。これは岩手県内もそうですよ。私は後遺症の方々からお聞きしましたけど。宮城の人は山形まで行って診察を受けているんです。後遺症というのは感染した方の1〜3割発症しているんです。中には、仕事ができなくなった、退職せざるを得なくなった。諸外国では労災の対象にまでしていますよ。そういうしっかりした対策をとるべきじゃないでしょうか。
 これは知事に聞きましょう。これは真剣に後遺症対策をとっていただきたい。

【達増知事】
 今県内の医療機関に専門外来等が設置されていない状況の中で、悩みを抱えている方の相談窓口については、保健所や一般相談窓口のコールセンターがなっている状況ではあるんですけれども、先ほど保健福祉部長の答弁にあったような罹患後症状の診療を行う医療機関の情報の取りまとめ等、県医師会や医療機関における対応が進んでいくよう、県も協力をしながら、いわば受け皿といいましょうか、そちらの体制の状況に応じながら、相談体制の方もそれに合わせて強化していくという風にしていきたいと思います。

【斉藤議員】
 よろしくお願いします。こういう対策をとってこそ県民が安心して暮らせるわけだから。


2、物価高騰から県民の暮らしと営業を守る課題について

(1)物価高騰対策のカギとなる賃上げと消費税減税について

【斉藤議員】
 第二に、物価高騰から県民の暮らしと営業を守る課題について質問します。
 安倍政権以来のアベノミクス・「異次元の金融緩和」によって、異常な円安と物価高騰が引き起こされています。労働者の実質賃金が10年間で24万円も減少し、「賃金が上がらない国」「経済が成長しない国」になってしまいました。あらゆる分野で物価が高騰し、1世帯当たり年間13万円の負担増となっています。物価高騰から県民の暮らしと営業を守り、持続可能な成長を実現するためには、物価高騰を上回る賃金の引き上げと消費税の5%への減税こそ必要と考えますが、知事の認識を伺います。

【達増知事】
 まず、物価高騰対策としての賃上げについてでありますが、日本銀行盛岡事務所による直近の岩手県金融経済概況では、「県内経済は緩やかに持ち直している」とされ、また、10月末現在の影響調査結果においても、「売り上げ状況に改善傾向が見られるものの、燃料費や原材料価格の高騰の影響などにより、盛岡市の消費者物価指数が前年を上回って推移し、事業者からも「利益が減少している」といった声が多く寄せられております。多くの事業者は厳しい経営環境を強いられている状況です。
 このため、全国知事会を通じて生産性向上への支援や価格転嫁の円滑化による取引適正化等を進め、地域の企業の賃上げを可能とする環境整備の推進を図ることについて国に要請しているところです。
 県としても、企業の生産性向上など賃上げにつながる取り組みに対する支援を進めてまいりたいと思います。
 次に、物価高騰対策としての消費税減税についてでありますが、コロナ禍においてさまざまな国で落ち込んだ需要を喚起するため、消費税の減税などの経済対策がとられていると承知しており、経済回復の途上にあって物価高に見舞われている我が国においても、地域で生活する人々の消費する力が維持され、活力が損なわれることなく経済が動いていくことが何より重要と考えています。消費税は、国民が日常的に消費する財やサービスに課税されており、物価が高騰している中、その軽減は国民生活の負担を減らすものと考えておりますが、地方において子育て支援や介護人材確保などの社会保障財源として不可欠なものであることから、消費税軽減にあたっては代替財源の確保が必要であります。
 県としては、これまで全国知事会等を通じて、物価高騰対策の拡充やさまざまな産業分野の事業者・生活困窮者への支援等について要請してきたところであり、今後も引き続き県民の暮らしと生業を守るため、国に対し、大胆かつ強力な財政出動と、地方重視の経済・財政政策の必要性について提言等を行ってまいります。

【斉藤議員】
 消費税の減税、付加価値税の減税は世界約100カ国で実施されています。これは世界の常識なんです。
 各国の最低賃金、日本は平均で961円ですが、岩手県は854円です。ドイツ1,734円、今年3回引き上げています。イギリス1,596円、フランス1,598円、今年3回引き上げています。オーストラリア2,005円。日本の最低賃金の低さが全体の労働者の賃金の低さを表しています。私は最低賃金、年内にも引き上げよと、強く県から求めていただきたいと思います。

(2)物価高騰に対する補正予算について

【斉藤議員】
 今日補正予算第7号の説明がありました。福祉灯油助成は、基準額を6000円に引き上げて(2分の1補助、3億2,679万円)、また、農業の肥料価格高騰対策、配合飼料価格対策、それぞれ3億6,000万円、7,200万円余の予算ということが紹介をされました。
 また、介護施設については、高齢者施設物価高騰対策で3億8,000万円、医療施設物価高騰対策で4億2,500万円、障がい者施設等も補正予算第7号が最終日に提案されるということなので、質問しようと思いましたが、紹介だけにとどめて、この提案は評価をしたいと。

(3)中小企業・小規模事業者への支援について

【斉藤議員】
 残念ながら、欠落したのが中小企業対策でありました。
 中小企業・小規模事業者は、長引くコロナ禍、物価・原材料高騰、過剰債務という「三重苦」に苦しんでいます。無利子・無担保のいわゆる「ゼロゼロ融資」の残高は全国で42兆円となっています。県内の融資残高、過剰債務の実態はどうなっているでしょうか。物価高騰の影響を含め示してください。

【商工労働観光部長】
 昨年5月末まで実施していた新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の貸付実績は、累計で12,110件・1,944億790万円余となっており、多くの事業者に利用されております。このうち、令和4年10月末までに、全体の6割となる6,673件について返済が開始され、残高は1,512億6,381万円余となっているところです。
 県内の中小企業者の過剰債務の実態については、東京商工リサーチ盛岡支店が今年6月2日に公表した第21回新型コロナウイルスに関するアンケート調査結果によれば、「コロナ前から過剰感がある」が17.8%、「コロナ後に過剰になった」が20.8%となっており、合わせて38.6%、4割弱が過剰債務と回答しているところです。多くの事業者はいまだコロナ禍前の売り上げ回復までには至っておらず、加えて最近は原油価格や原材料価格の高騰、円安の影響を指摘する声が増えている状況にあります。

【斉藤議員】
 具体的な提案を含めて質問します。
 県内経済と雇用を支えている中小企業・小規模事業はつぶさないの立場で、昨年度70億円規模で実施された「地域企業経営支援金」を今年度も実施すべきではないでしょうか。QRコード決済ポイントに11億円という補正予算が今日説明されました。こういうのを止めて、中小企業支援策を、今年度はまったくやられていませんよ。物価高騰支援金の実績も含めて示してください。
 コロナ対応融資(ゼロゼロ融資)を「別枠債務」にして、事業継続に必要な新規融資が受けられるように対策を講じることが必要だと考えますが、県としてどう対応されているでしょうか。

【商工労働観光部長】
 燃料費や原材料価格の高騰により、製造業や建設業をはじめ、幅広い業種の事業者が厳しい経営環境にあることから、国においてより多くの事業者を対象とした大胆な支援を行っていくべきと考えております。また、10月に国が公表した総合経済対策においても、物価高騰、賃上げへの取り組みが盛り込まれており、今後これらの取り組みの具体化の動きや県内の経済状況の推移を見極めつつ、必要な対応についての検討を進めてまいります。
 物価高騰対策支援金の実績ということでございますが、申請手続きの簡素化等の見直しを11月下旬に行っておりますので、その前のものでの状況になりますが、審査終了して支給した実績で、11月28日現在で物価高騰対策支援金が20件・205万円、物価高騰対策家賃支援金が112件・988万9千円、合計で132件・1,193万9千円となっておりまして、その見直し後に事務局に対して問い合わせや申請辞退も多く届いているという状況を確認しております。
 ゼロゼロ融資を別枠債務にするなどの対応についてでございますが、県ではゼロゼロ融資の取り扱い終了後においても、低利の新型コロナウイルス感染症対策資金の取り扱いを継続しており、このうち、ゼロゼロ融資の借り換えや事業継続に必要な新規融資にも活用可能な伴走型支援金について、今年10月1日以降、融資限度額を従来の6,000万円から1億円に引き上げて対応しているところです。さらに、先ほどもありましたが、10月に国が公表した総合経済対策において、ゼロゼロ融資を含めた既存の債務の返済期間をさらに繰り延べることを可能とし、加えて新たな資金需要にも対応した貸付を可能とする信用保証制度の創設が検討されていると承知しており、その詳細が明らかになり次第、県としての必要な対応を行うとともに、いわて中小企業事業継続支援センター会議構成機関の金融機関や商工指導団体等と緊密に連携しながら、引き続き事業者からの相談にきめ細かく対応してまいります。

【斉藤議員】
 知事にお聞きします。私質問で紹介したように、昨年度は70億円規模で地域企業経営支援金、これが本当に県内中小企業に喜ばれたんですよ。一番利用した事業でもありました。今年は物価高騰対策支援金だけしかないんです。これ13億円の予算でしたね。1000万円しか使われていない。まったく失敗した制度だった。それしかないんですよ。一部の人のQRコードの還元なんていうんじゃなくて、いま本当に困っている中小企業に対する支援を物価高騰対策としてもやるべきだと思いますが、知事いかがですか。

【達増知事】
 この中小企業・小規模事業者対策は非常に重要なところでありまして、先ほど担当部長が答弁したように、国の総合経済対策、約30兆円規模の対策の中で、物価高騰・賃上げへの取り組みが盛り込まれておりますので、その具体化の動きを見ながら県としても必要な対応をしてまいりたいと思います。
 また、いま12月、年末の中小企業・小規模事業者向けの緊急電話相談については、今年もしっかり対応して、中小企業・小規模事業者がきちんと年を越えて、来年持続可能な形で進んでいけるように対応してまいります。

【斉藤議員】
 最終日に提案される補正予算は評価するんだけれども、中小企業対策が欠落しているということは厳しく指摘をしたい。昨年度とえらい違いなんです。


3、東日本大震災津波からの復興の課題について

(1)被災者の心のケアの取り組みについて

【斉藤議員】
 第三に、東日本大震災津波からの復興の課題についてお聞きをいたします。
 被災者の心のケアの取り組みは、次期県民計画アクションプラン(素案)に位置付けられたことは高く評価します。現在52人の体制で取り組まれていますが、今年度の実績と今後の方向性を示してください。

【保健福祉部長】
 私の方から心のケアについて答弁させていただきます。
 心のケアセンターによる令和4年10月末現在の相談支援件数は、4,634件で、前年同期に比べ31件少なくなっていますが、依然として多くの相談に対応しているところであります。また、市町村、保健師等への助言などを行った件数は1,611件で、前年同期比で98件増加するなど、心のケアセンターが果たすべき役割は依然として高いと認識をしております。
 県としては、こうした状況を踏まえ、引き続き心のケアセンターを中心とする相談支援体制を堅持し、被災者に寄り添った対応を継続するとともに、地域の保健師などの人材育成、スキルアップの支援や心の健康の普及啓発などを行い、関係機関・団体と連携しながら、被災者の心のケアに、包括的・中長期的に取り組んでいく必要があると考えております。

(2)いわて被災者支援センターの体制強化について

【斉藤議員】
 困難を抱えている被災者への伴走的支援を実施しているいわて被災者支援センターの取り組みも重要です。9月県議会でも複数の県議から取り上げられました。わずか4人の人員配置という不十分な体制を強化して、全国に誇れる被災者支援の取り組みとして強化・継続すべきと考えますがいかがでしょうか。

【復興防災部長】
 いわて被災者支援センターでは、恒久的住宅への移行後のローン返済や家賃負担など、経済面や生活設計の面などで、複雑かつ多様化した相談内容に対応するため、市町村や市町村社会福祉協議会といった関係機関と連携を図りながら、伴走型の支援を行っています。また、専門的な支援が必要なケースについては、弁護士やファイナンシャルプランナーとも連携しながら、一人一人の状況に応じたきめ細かな支援を行っています。
 今後とも、センターの特徴を十分に生かしていくため、引き続き弁護士会などの関係機関との連携を図るとともに、介護や子育て、生活困窮などさまざまなニーズに対応した包括的な支援に取り組む市町村や、市町村社会福祉協議会などとも一層の連携を図っていくこととしています。こうした取り組みを第二期復興推進プランに位置づけながら、被災者一人一人に寄り添い支援してまいります。

【斉藤議員】
 復興防災部長、私体制の強化を求めたので。わずか4人の体制で、釜石と内陸の盛岡に2つの事務所をかかえて、NPOは独自に人を派遣してやっているんですよ。そういうところをよく鑑みて対応していただきたい。


4、緊急の子育て支援策の課題について

(1)高校生までの医療費助成の現物給付化の早期実現を

【斉藤議員】
 第四に、緊急の子育て支援策の課題について質問します。
 高校生までの医療費助成の現物給付化については、知事が本会議で、「高校生までの医療費助成の現物給付化について、来年度実施に向けて検討を進める」と答弁をいたしました。知事の決断を高く評価をいたします。来年8月からの実施ということになるのかお知らせください。

【達増知事】
 現物給付の対象拡大についてでありますが、現物給付の高校生までの拡大については、市町村等と協議しながら検討を進めることとしており、その時期については、中学生までの拡大の経緯を踏まえれば、最短で来年度の受給者証の更新時期である令和5年8月と想定されますことから、当面これを念頭に市町村や関係機関と具体的な協議を進めてまいります。

(2)高すぎる国保税の引き下げ、子どもの均等割りの免除について

【斉藤議員】
 高すぎる国保税の引き下げは、県民の切実な要求であります。特に、国保税と中小企業の労働者が加入する協会けんぽには2倍の格差があります。この格差是正は国の責任であり、地方自治体の課題でもあります。どう格差是正に取り組むか示してください。
 緊急の課題として、子どもの均等割りの免除を実現することは、格差是正という点でも、子育て支援という点でも重要な課題であります。宮古市では、ふるさと納税の寄付金を活用して1260万円を繰り入れ、1人29200円の子どもの均等割りを免除しています。知事はこの取り組みをどう評価しているでしょうか。この取り組みを県内市町村に積極的に紹介し広げるべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 国民健康保険は、構造的に被保険者の年齢構成が高く医療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が高く、所得水準が低いことが保険税負担が協会けんぽよりも重くなっている原因と認識しております。現在の国保制度においては、国の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、構造的な課題の解決に対応したものとなっているとは言えないと考えております。このため、県の政府予算提言要望や全国知事会を通じて、国に対し、国庫負担率の引き上げなどさまざまな財政措置の方策を講じ、構造的な課題を解決し、医療保険制度間の公平性を確保するとともに、今後の医療費の増加に耐えうる財政基盤の安定化を図るよう要望してきたところであり、今後も財政措置の拡充についてさまざまな機会を通じて国に働きかけてまいります。
 子どもの均等割り免除の取り組みについてでありますが、宮古市では子どもの均等割りの免除について、子育て支援施策の一環として独自の判断により対象年齢および軽減額を拡大していると承知しております。本来子どもの均等割り軽減措置等は、個々の市町村が財政負担を行いながら導入するものではなく、また、各自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で子育て世代の負担解消が行われるべきであると考えておりまして、県としては、県の政府予算提言要望や全国知事会等を通じて、子どもにかかる均等割り軽減措置の対象年齢および軽減額の拡大を国に要望しているところであり、さまざまな機会を通じて今後も働きかけてまいります。

【斉藤議員】
 国保の子どもの均等割りの免除は本来国がやるべきですよ。就学前の2分の1に減免した。本当に中途半端。本気で子育て支援に取り組んでいるか疑われます。
 宮古市の例を紹介しましたが、一般会計からの繰り入れは1,260万円ですよ。それで、例えば子どもさんが2人いたら約6万円の増税なんですよ。それだけでも大きな負担軽減になると思うので、今できる市町村のこういう取り組み、大いに県が応援していただきたい。


5、「行財政改革に関する報告書」について

(1)報告書の性格と意義について

【斉藤議員】
 第五に、「持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書」の懸念すべき課題について質問します。
 この報告書は、「持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会」の議論等を踏まえ、岩手県総務部が取りまとめたものとなっています。なぜ研究会の報告書ではなく、庶務を担当した岩手県総務部が取りまとめた報告書になったのか。報告書の性格と意義について示してください。

【総務部長】
 行財政研究会は、県が定めた開催要項に則り、本県のこれまでの行財政運営の状況等における中長期的な課題や特徴の分析、人口減少や少子高齢化といった構造的課題への対応策、持続可能な行財政基盤の構築に向けた方向性について、客観的かつ多角的な視点からご議論いただいたところであります。
 その上で、本報告書につきましては、研究会が諮問・答申という形式をとっていないことに加えて、研究会の構成員の皆様のご意向も尊重して、庶務を所管する総務部において、研究会における議論をとりまとめたものであり、その取りまとめにあたっては、座長をはじめ構成員の皆様から内容の確認をいただきました。これらの内容については、人口減少、少子高齢化という構造的な課題に対するあるべき施策の1つが示されていると認識しており、今後の行財政運営にとって参考になるものと考えております。

【斉藤議員】
 今後の行財政運営について「参考になるもの」と、そういう性格ですね。分かりました。

(2)県立病院に関する議論について

【斉藤議員】
 県立病院のさらなる充実の課題として、新しい時代の「良質な医療の均てん」に向けてと提起されています。県立病院の創業の精神は「県下にあまねく良質な医療の均てんを」であります。なぜ「県下にあまねく」の言葉が削除されたのか、どういう議論があったのか示してください。

【総務部長】
 研究会におきましては、本県の県立病院について、県民の健康や暮らしの安心安全を守ることを重視してきたこと、全国的にも例を見ない数の県立病院を維持しながら、毎年度一般会計からの繰り出し金でその経営を支え、経営効率化の努力をしていることなどについて評価する意見をいただきました。
 その上で、さらなる充実に向けた今後の方策等について、まずはこの状況を県民や市町村等に理解していただく必要があること、この特性を生かしデジタル化等への対応の必要性や医療の高度専門化を踏まえた二次医療圏の見直し、ハイボリュームセンターの整備など、これまでの歴史的経緯も踏まえ、引き続き県立病院を中心として、県民により良い医療を提供していくための検討の必要性等について議論があったところでございます。
 本報告書においては、これらの議論を踏まえて取りまとめたところであり、「県下にあまねく良質な医療の均てん」という県立病院の創業の精神は引き続き尊重されているところでございます。

【斉藤議員】
 県立病院の創業の精神を堅持することについて知事の受け止めをお聞きします。

【達増知事】
 県立病院は、昭和の初期に県内各地に開設された共同の医療施設から始まっており、県下にあまねく良質な医療を均てんさせるため、苦心努力された先人の考えや行動は、県営医療における創業の精神として一貫して受け継いできたものであります。
 県立病院の事業運営においては、この創業の精神を受け継ぎながら、県全体の医療提供体制の中で県立病院に求められる役割を引き続き果たしていってほしいと考えております。
 また、今後行われる次期保健医療計画や県立病院の次期経営計画の検討においても、このような精神の下、人口減少、少子高齢化、医療の高度化・専門化といった求められている課題に的確な対応がなされるよう、医療従事者・関係機関・市町村・地域住民等との丁寧な議論が重ねられることを期待しております。

(3)県立高校に関する議論について

【斉藤議員】
 県立高校における学びの質の向上として、「現在の学区やブロックといった圏域を越えて県全体で学校の適正規模や適正配置について検討し、より充実した学びの環境を進めていくことが必要」と提起されています。報告書でめざしている高校では、地域の高校はなくなるのではないでしょうか。どんな議論があってこうした提起がされたのでしょうか。これでは、現在進めている、地域に必要な高校を維持する取り組みを否定するものではないでしょうか。地域と結びつき、地域に支えられ、進学も就職の希望もかなえられる高校こそ目指すべき姿ではないでしょうか。

【総務部長】
 研究会においては、本県の15歳未満人口が2045年までに半分程度まで減少する見込みであること、県立高等学校の小規模校化が全国と比較しても進行していることなどについて、客観的なデータに基づき分析が行われたところであります。
 その上で、今後生徒数の減少に伴い、現在の学校規模の維持が困難となる恐れがあることを踏まえ、一定程度の学校規模の維持を前提として、県全体で学校の適正規模や適正配置について検討し、現在の学区やブロックといった圏域を越えて安定的に外部からの学生を確保できる体制を構築すべきではないかとの意見があったところでございます。
 また、生徒にとって魅力的な学校となることで、生徒が持つ多様な選択肢に応えることができるよう、ハード・ソフト両面における学びの環境を充実させていくための施策の必要性などについてもご議論いただきました。
 これらの生徒視点に立った、より質の高い学びの場の創造に向けた取り組みの必要性については、現行の少子化による生徒数の減少への対応や、地域との連携等の考え方とおおむね共通していると受け止めており、今後報告書も参考としながら、教育委員会等においてさらなる充実に向けた施策の議論等が行われるものと承知してございます。

【斉藤議員】
 岩手県が学校を維持しているのは地域の高校を守るためであります。小規模校でも地域に必要な高校は維持する取り組みを進めている教育長はどう受け止めているでしょうか。

【教育長】
 中学校卒業予定者数の減少が進行していくことが避けられない状況にあって、教育の質の確保やより良い教育環境の整備を図っていくことは重要であります。新たな県立高等学校再編計画後期計画は、少子化による生徒数の減少への対応や、地方創生に寄与する人材の育成など、高校に期待される役割の変化を踏まえ、生徒の希望する進路の実現と、地域や地域産業を担う人づくりの2つの基本的な考え方のもと、各地域における学びの選択肢の確保や、地域の産業教育の拠点となる専門高校等を整備することとして、令和3年5月に決定したものです。
 後期計画に掲げる学校施設の整備の考え方については、すでに地域との連携・協働を目指した共創空間の整備も盛り込んでいるところです。県教育委員会としましては、後期計画を着実に推進するとともに、後期計画期間後を見据えた県立高校のあり方についての検討に令和5年度から着手してまいります。

【斉藤議員】
 いま求められているのは、進学にも就職の希望にも応えられる地域に必要な高校だと思いますよ。そういう方向をぜひ堅持していただきたい。


6、気候危機打開の取り組みについて

(1)温室効果ガス排出削減目標について

【斉藤議員】
 第2次地球温暖化対策実行計画の見直し、ここでは県は、温室効果ガス排出削減目標を2013年度比で2030年度までに41%から57%に引き上げる目標が掲げられています。このことを高く評価するものであります。この目標の引き上げは、昨年開かれたCOP26での「2030年までに45%削減目標」を達成するために、各国がさらに目標を引き上げることを呼びかけたことに対応するものであります。
 57%削減の目標は積極的なものですが、実際に実行することになると発想の転換、県民、事業者の意識の変革と具体的な行動が問われる問題であります。知事はどういう決意でこの目標を掲げ達成しようとしているかお聞きいたします。

【達増知事】
 今後、地球温暖化のさらなる進行にともない、猛暑や豪雨のリスクが高まることが予測されており、本県においても台風や豪雨による甚大な被害の発生や、秋サケ・サンマなどの漁獲量の減少など、県民の生活や本県の産業に深刻な影響が出ていることから、脱炭素社会の実現は喫緊の課題であります。
 このような危機に対応するため、本県の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で57%減、そして2050年度までに実質ゼロとすることを目指して取り組みを進め、国際的な目標達成に向け、地域から貢献していく考えであります。
 目標の達成に向けては、エネルギー、産業経済、交通運輸、農林水産業、家庭など、各分野において地球温暖化防止に資する施策を総合的に推進することが温室効果ガス排出削減だけではなく、エネルギーコストの削減やエネルギーの地産地消による地域経済の活性化、さらには快適さや便利さなどの生活の質の向上にもつながる側面があることを示しながら、県民や事業者に前向きで主体的な行動変容を促していくことが必要であります。
 このような取り組みを進めるため、知事を本部長とした岩手県地球温暖化対策推進本部を中心とした全庁的な施策推進体制の強化や、温暖化防止岩手県民会議への金融機関の参画、県・市町村GX推進会議の新設等により、地域経済と環境に好循環をもたらす持続可能な脱炭素社会の実現に取り組んで参ります。

【斉藤議員】
 本当にこの目標を達成するためには、あらゆる分野で意識の変革が求められます。産業界との本当に膝を交えた協議なども含めて、県民の意識を変えて、この気候危機打開に取り組む県政にしていただきたい。

(2)県有公共施設への太陽光発電の設置について

【斉藤議員】
 具体的な課題について質問します。県が率先して取り組むうえで、県有公共施設への太陽光発電の設置は重要な課題です。当初200施設の導入可能性調査の計画が40施設に縮小したのは残念なことであります。40施設の内容と今後の見通しを示してください。災害公営住宅等にも設置すべきと考えますがどう検討されているでしょうか。
 太陽光発電については、メガソーラーではなく、住宅や事業所に設置する取り組みを進めるべきと考えますが推進方策を示して下さい。

【環境生活部長】
 現在、合同庁舎や学校、病院など、その面積や耐用年数等から、導入効果が見込まれる県有施設40カ所を対象として、日照時間や積雪の状況なども踏まえた太陽光発電設備の導入可能性調査を行っております。今後、年度内を目途に調査結果を取りまとめ、それぞれの施設における最適な導入手法や優先順位などを吟味したうえで、来年度には具体的な導入計画を作成し、関係部局と連携しながら順次導入を図ってまいりたいと考えております。
 また、お尋ねの災害公営住宅等については、すでに太陽光発電設備が導入されている市営住宅も県内にあるところですので、別途関係部局と研究を進めてまいります。
 さらに県営施設以外では、被災代替家屋等での太陽光発電設備の導入支援も行っているところですが、今後、住宅や事業所での導入をより一層促進していくための方策について考えてまいります。

【斉藤議員】
 東京都は、新築住宅について太陽光発電の設置を義務づける方向が示されております。そういう全国の先進的な取り組みをしっかり学んで、実効性ある取り組みを進めていただきたい。

(3)住宅等の省エネルギー化について

【斉藤議員】
 家庭部門での削減目標は57%となっています。高断熱で省エネルギーの住宅の建築と改修は重要な課題であります。鳥取県や長野県の取り組みを参考に、ヨーロッパ並みの高断熱の住宅整備と県産木材の活用を一体にして推進し、省エネ基準のランク別に補助を行う制度を創設すべきと考えますがいかがでしょうか。
 電化製品等の省エネルギー化も重要です。長野県で実施されている省エネルギー性能の高い電化製品の普及を推進するために、費用対効果を含め販売業者に説明の努力義務を課すなどの取り組みも進めるべきではないでしょうか。

【県土整備部長】
 省エネ住宅についてお答えいたします。省エネ住宅の普及に向けて、県ではこれまで、新築やリフォーム住宅を対象に、一定量の県産木材を利用した住宅への補助を行い、さらに岩手型住宅の規定を満たした住宅に上乗せ補助を行い、木材利用の促進と省エネ住宅の普及に取り組んできたところです。
 国は本年10月、地方公共団体が地域の気候・風土や特殊性を踏まえ、独自に設定するZEH基準を上回る住宅性能を評価するための2つの断熱性能の基準を示したところです。
 県といたしましては、この国の基準や鳥取県や長野県などの先進自治体の取り組みを参考にしつつ、本県の基準の方向性について、岩手県住宅政策懇話会で意見を聞いてまいります。
【環境生活部長】
 省エネ家電についてでありますが、省エネ家電への買い換えは、電気代の節約や温暖化の防止になるばかりでなく、新しい家電は便利な機能も向上しているため、人々の生活をより豊かで快適なものにするといった効果も期待できます。
 これまで省エネ家電への買い換えの効用については、いわてわんこ節電所のウェブサイトを通じて啓発を行ってきており、昨今の物価上昇で省エネに対する関心がより一層高まる中、このことは県内自治体による省エネ家電への買い換え促進キャンペーンにもつながっているところです。
 さらに、省エネ家電への買い換えは、倫理的な消費、いわゆるエシカル消費としてとらえることもできるものであり、これまでの本県の消費者教育はトラブル防止にやや偏っておりましたが、省エネ家電などを含むエシカル消費の側面からどのような取り組みを行うことができるのか、この点も前向きに考えてまいります。

【斉藤議員】
 盛岡市が省エネ家電の購入に補助をすると。こういう取り組みも県内で始まっていますので、ぜひ岩手県が具体的、実効的な政策を示して取り組んでいただきたい。


7、警察本部における不祥事と公安委員会の在り方について

(1)供述調書改ざん事件について

【斉藤議員】
 第七に、警察本部における不祥事と公安委員会の在り方について質問します。
 今年3月下旬、被害関係者の供述調書を改ざんする事件が発生しました。これは公用文書毀棄罪に当たる重大な事件で、岩手県弁護士会が7月29日、「冤罪の大きな原因にもなりえる。極めて重大な違法行為」として、詳細な事実の公表と再発防止策の明示を求める要請書を県警本部長あてに提出し、8月18日までに回答を求めました。警察本部長はこの岩手県弁護士会の要請書にどう回答したのでしょうか。

【警察本部長】
 お尋ねの事案につきましては、非常に重く受け止めており、再発防止に取り組んでいるところであります。
 ご質問の岩手弁護士会からの要請書に対する回答についてでありますが、警察本部の担当者が、回答を求めた岩手弁護士会の方にお会いをし、丁寧に説明をしているところであります。

【斉藤議員】
 これは12月3日付で「岩手弁護士会が県警調査改ざんで公開質問状を提出」と。これについてはですね、「書面回答がなく、口頭説明も不十分なため、今回公開質問状を出すことになった」と。「刑事手続きに関する信頼を根本から揺るがすもので、えん罪を引き起こす恐れのあるきわめて重大な違法行為だ」と。このように記者会見をいたしました。これを県警本部長どう受け止めているんですか。

【警察本部長】
 繰り返しになりますけれども、本件事案につきましては、大変非常に重く受け止めているところであります。
 本事案に関してはですね、まず事件化をしっかりと行い、速やかに処分を行い、再発防止に取り組んでいるというところでご理解いただきたいと思います。

(2)改ざん事件についての県警本部の対応について

【斉藤議員】
 県警本部長は、10月20日の決算審議で私の質問に答え、「この事案については非常に重く受け止めております。県警察としてはしっかり事件化したという認識でおります」と答弁しました。しかし6月1日付で示された処分は、改ざんした巡査部長は所属長訓戒、改ざんを許可した上司の警部補は本部長訓戒と、懲戒処分に当たらない極めて軽いものでした。県警本部に真剣な反省がない表れではないでしょうか。

【警察本部長】
 先ほど議員がおっしゃったように、9月議会においても答弁しておりますけれども、事案については非常に重く受け止めているところでありまして、県警察としてもしっかり事件化をし、また処分を行い、再発防止策をとっているということであります。
 具体的には、事件化については、本事案が4月下旬に発覚した後、約1ヶ月後の5月20日に関係職員2名を公用文書毀棄の被疑事実で盛岡地方検察庁に送致しております。
 また、それに続いて6月1日付で行った関係職員の処分については、事案の内容ならびに全国および県内におけるこれまでの先例を踏まえて厳正に対処しているところであります。
 さらには、再発防止策として管理する幹部職員に対する指示をはじめ、教養資料を発出するなどして、職員に対する公文書の重要性に関する認識および管理のあり方について徹底を図り、再発防止に努めているところであります。

【斉藤議員】
 警部補が供述調書を改ざんして、上司がそれを容認したと。岩手弁護士会は「県警の体質じゃないか」と厳しく批判をして、第三者委員会での調査を求めているんです。

(3)公安委員会の対応について

【斉藤議員】
 公安委員長に質問します。この被害関係者の供述書改ざん事件と処分について、改ざん事件の発生時、処分がなされた時期、県弁護士会から要請書が提出された時期、その都度公安委員会に報告されるべき問題だと考えますが、公安委員会には、いつ、どのような報告がなされたのでしょうか。公安委員会でどのような議論があったのか。県警本部をどう指導したのか。なぜ軽い処分で済ませたのか。公安委員長の認識をお聞きします。

【公安委員長】
 県警察からは、適宜必要な報告を受けております。いつ、どのような報告がなされたかという個別のお尋ねについてはお答えを差し控えさせていただきます。
 公安委員会では、事案の背景、経緯および要因等について報告を受け、発生要因等を踏まえながら議論を行い、県警察に対しましては、本件事案の発生要因等を踏まえた再発防止対策の徹底について指示したところであります。
 措置につきましては、県警察から、事案の内容ならびに全国および県内におけるこれまでの先例を踏まえた措置内容であると報告を受けており、適正な措置であると考えております。

【斉藤議員】
 公安委員長、そんな答弁だめなんですよ。私県警から公安委員会にいつ報告されたか聞いていますよ。令和4年6月8日、令和4年8月24日の2回ですよ。ところが、私は公安委員会の議事録を見ました。何にも書いていません。なぜですか。どんな議論がされたか書いていないじゃないですか。公安委員長、答えてください。あなた見てますか、この公安委員会の議事録を。

【公安委員長】
 本件公安委員会の会議録についてでありますが、岩手県公安委員会運営規則において、会議の日時、出席者および会議の概要を会議録に記録することになっており、これに基づき適正に記録されていると認識しております。

【斉藤議員】
 いつの議事録か見てください。私もらったんです議事録を。書いていないんです。この改ざん事件について報告あったとも書いていない。だから私はあなたが議事録を読んでいるかと聞いたんですよ。読んでいるんですか。本当に書いていますか。簡潔に答えてください。読んでいないでしょう。

【公安委員長】
 県警察からは、適宜必要な報告は受けております。いつ、どのような報告がなされたかという個別のお尋ねについてはお答えを控えさせていただきます。会議録については、適正に記録されていると認識しております。

【斉藤議員】
 これは事実の問題なのでね。改ざん事件についての報告なんて1つもないです。議論された中身もないです。2回の議事録をいただきました。そんなことであなたは県警を指導できるんですか、市民の目線で。

(4)警察署における自死事件について

【斉藤議員】
 今年9月にある警察署の警部補が首つり自殺したのは事実でしょうか。
 なぜ、首つり自殺に追い込まれたのでしょうか。背景にパワハラやいじめがなかったでしょうか。調査はされたのでしょうか。

【警察本部長】
 本年9月、警察職員が自室で自殺した事案が発生したことは事実であります。
 本件につきましては、議員がお尋ねのような背景があるのかないのかも含め、調査を行った結果、ご指摘のような不正行為等はないということを確認しております。
 なお、自殺事案については、個人のプライバシーおよび死者の尊厳に関わることでございますので、死亡の原因、動機その他につきましては答弁を差し控えさせていただきます。

【斉藤議員】
 首つり自殺というのは追い詰められた自殺なんです。本当にこれがパワハラやいじめがなかったかという、これはこれ以上議論しませんが、徹底した調査をして、隠すようなことをしないでいただきたい。


8、統一協会と自民党の癒着問題について

(1)統一協会と自民党の癒着の実態について

【斉藤議員】
 第八に、統一協会と自民党の癒着の問題について知事に質問します。
 統一協会(世界平和統一家庭連合)と自民党との癒着は日本の政治と社会の前途にとって極めて重大な問題であります。この間の新聞各紙の報道で、県内でも統一協会と自民党との癒着の一部が明らかになっています。特に重大なことは、7月の参議院選挙に当たって、自民党公認の広瀬めぐみ氏が参議院選挙公示前の5・6月に統一協会を訪ねて責任者に会ったことが明らかになったことであります。自民党の県議も6月に教会を訪ねて広瀬めぐみ氏の話をしたとのことです。参議院選挙は自民党と統一協会一体の選挙だったのではないか。統一協会の応援を受けた選挙だったのではないか。こうした自民党と統一協会との癒着が明らかになっていれば選挙の結果も変わっていたのではないでしょうか。知事の受け止めをお聞きします。

【達増知事】
 旧統一教会の非人道的な金集めや非人道的な信者の処遇に対し、お墨付きを与えることに利用されうる、関係する団体との政治活動や選挙運動は、厳に戒められるべきものであります。
 先般の参議院議員選挙後、旧統一教会の問題が次々と明らかにされ、マスコミによる世論調査では、内閣支持率が下がり、内閣不支持率が上がるという傾向が続いています。
 いま改めて何らかの国政選挙を行えば、5ヶ月前とはかなり違った結果になるのではないかと思います。国政選挙において、主権者国民が必要にして十分な情報をもとに自由に議論して、投票日に主体性をもった投票ができるよう、政治に関わるものは努力すべきものと考えます。

(2)統一協会と県議会議員との癒着について

【斉藤議員】
 統一協会と自民党の県議会議員との癒着の事実も明らかになっています。6人の自民党県議が統一協会(世界平和統一家庭連合)そのものの会議や集会に参加しています。県議選に立候補する際に教会を訪ね挨拶をしたという県議もいました。癒着は深刻なものであります。しかし、この12月議会でも、統一協会と関わりのあった県会議員が一般質問に立ちましたが、一言も反省がありませんでした。
 また、昨年8月1日に統一協会の関連団体が主催した「ピースロードジャパン2021 in岩手」には県会議員、市議会議員が参加したとありました。だれも参加したと明らかにしている県議はいません。岸田首相は国会での答弁で、「自民党と教団との関係を断絶する方針を地方議員を含めて徹底する」と述べています。関係を断絶するというなら、これまでの関わりをすべて明らかにすることが大前提であり必要ではないかと考えますが、知事の見解を求めます。

【達増知事】
 旧統一教会と政治家とのこれまでの関わりが、非人道的な金集めや非人道的な信者の処遇に対し、お墨付きを与えることに利用されないようにするには、関わりがあった政治家の側が旧統一教会の非人道的な行いを批判する姿勢を示すとともに、過去の関わりのそれぞれについて、事実関係を踏まえて深い反省の意を表明し続けることが必要と考えます。
 そのような非人道性の批判とこれまでの関わりに関する反省の表明は、国会議員であれ地方議員であれ求められると考えます。

(3)統一協会と政界との癒着を一掃することの重要な意義について

【斉藤議員】
 統一協会の問題は、第一に、正体を隠した伝道活動、霊感商法と高額献金、当事者の意思を無視した集団結婚など、数々の反社会的活動は、どれも司法によって法律違反と断罪されたものであり、日本国憲法に保障された思想・信条の自由、信教の自由をはじめ基本的人権を蹂躙するものです。第二に、半世紀にわたって自民党は統一協会を反共と反動の先兵として利用し、統一協会は自民党の庇護のもとに反社会的活動を拡大してきました。統一協会と政界との癒着を一掃することは、憲法に保障された基本的人権を守り、日本の平和と民主主義を守り抜く重大な意義を持つ課題だと考えますが、知事の認識を伺います。

【達増知事】
 旧統一教会がこれまで行ってきた非人道的な金集めや非人道的な信者の処遇は、日本国憲法が保障する基本的人権の侵害であると考えられ、被害者の救済や再発防止に政治が力を尽くそうとするのであれば、旧統一教会と利害を共にするということは、政治家にせよ、政党にせよ、問題であると考えます。
 日本国民を守り、国の誇りを失わないためにも、日本の政治が統一協会問題についてけじめをつけ、被害者を救い、被害の再発を防ぐことを期待します。

【斉藤議員】
 私は、自民党に自ら責任を持って、統一協会との癒着を解明する、そのことを強く期待をしたいと思います。


9、平和とくらしを脅かす岸田自公政権の大軍拡について

【斉藤議員】
 最後の質問であります。岸田自公政権の軍事費の2倍化をめざす大軍拡は、平和とくらしを脅かす危険な道であります。このことについて知事に質問します。
 政府の有識者会議は11月22日、「反撃能力=敵基地攻撃能力の保有と増強が必要」「今後5年を念頭に、反撃能力を持てるようにする」との報告書を提出、岸田首相は28日、浜田防衛大臣と鈴木財務大臣に対し、防衛費など関連予算を5年間で国内総生産(GDP)比2%にするよう指示しました。
 こうした大軍拡を進めることは、「相手国に脅威を与えるような能力を保有することは憲法上できない」としてきた従来の憲法解釈を踏みにじる憲法違反の暴挙であります。同時に、東アジアで戦争を起こさせない外交の方針を持たず、軍事力を拡大することは、「軍事対軍事」の悪循環をもたらし、戦争の危険を増大させるものといわなければなりません。
 また、軍事費を2倍化する財源は、有識者による報告書では「幅広く国民の負担による」としていることも重大であります。結局は、消費税の増税とこれまで以上の社会保障、教育の削減ということになりかねません。平和とくらしを脅かす大軍拡を絶対に許すことはできないと考えます。憲法9条に基づいて、東アジアで戦争を起こさせない外交こそ必要ではないでしょうか。知事の見解を求めます。

【達増知事】
 今般の防衛費倍増の議論については、個人的な印象としては唐突感を否めないと感じております。
 一国の防衛のあり方を「予算倍増」という規模で変更するのは、他の国々から見れば重大な現状変更であり、国際的な緊張を高め、歯止めの利かない軍拡競争に陥り、果ては不測の事態から全面戦争が始まるという、誰も望んでいない結果を招きうるものであります。
 我が国の防衛のあり方については、防衛費倍増ありきのような極端な議論ではなく、国際情勢や近隣諸国との軍事バランスを調査・分析しながら、慎重な議論が進められるべきであります。
 個人的には、いま東アジアで求められるのは、むしろ軍縮であり、アメリカ・中国・ロシア・韓国・北朝鮮と日本の6カ国協議で、軍縮や緊張緩和について協議すべき局面と考えます。
 東アジアにおいては、コロナ対策、災害対策、気候変動対策などで強力し、経済活性化や公正な社会の実現などに向けて連携すべき時であると考えます。

【斉藤議員】
 この軍事費の2倍化、大軍拡というのは、これまで憲法の立場から専守防衛というこの原則を政府は守ってきました。この専守防衛には3つの限定的要素があります。1970年5月8日の衆議院本会議で、当時の中曽根防衛庁長官がこう答弁をしています。「目的において防衛に限る」「地域において、本土ならびに本土周辺に限る」「手段において、核兵器や外国に脅威を与える攻撃兵器は使わない」。今回の軍拡は「敵基地攻撃能力」です。相手の国を先制的に攻撃する。文字通り許されないとしたこの専守防衛の原則を踏みにじるものではないでしょうか。
 もう1つ、いまアジアの本流はどこにあるか。11月18・19日、アジア政党国際会議が開催をされました。これには30カ国1地域から69の政党が参加しました。どの政党でも参加できる会議です。日本からは日本共産党だけが参加しました。志位委員長が発言をして、そして「イスタンブール宣言」が採択をされました。このイスタンブール宣言は、ブロック政治の回避を打ち立てました。ブロック政治というのは、軍事同盟による、そういう軍事対軍事の対立を避け、包摂的な枠組みを作るということです。いわば、中国や北朝鮮を敵に回して相手にしないということではなく、中国も北朝鮮も包摂をする、そういうアジアの平和の体制をつくろうとするものであります。すでにアジアには、ASEAN=東南アジア諸国連合の協力条約がありまして、国際紛争を外交で平和的に解決する原則が打ち立てられています。イスタンブール宣言は、東アジアの本流は、軍事対軍事ではない、中国も包摂した、そうした東アジアに戦争の心配のない平和の体制を構築する―このことを打ち出したという意味で大変重要な内容を持つものであります。
 軍事対軍事で、輸出入では一番の相手国は中国です。これを敵にして、ここと外交しない、話し合いをしない、そういうやり方では東アジアの平和は守れないと思いますけれども、この専守防衛の原則を踏みにじる、東アジア、アジアの本流のこの動きを知事はどのように受け止めているでしょうか。

【達増知事】
 冷戦時代には、ソ連とアメリカがお互いを滅亡させるような戦争もあり得ると、全面核戦争まで覚悟して、そしてその中で地球規模の勢力争いの中、アメリカにとっては日本を失えば、そこがソ連の拠点になれば西側の不利に大きく傾きますし、また、ソ連の方も当時は北海道への上陸や三海峡の占拠など、そういったことがきわめて現実的にあった中でも、当時日本はアメリカと連携しながら、あの程度の防衛力でやってきたということはあります。
 それを今、中国とアメリカの関係は、そのような全面核戦争を覚悟するところまではいっておりませんし、中国あるいは北朝鮮も北海道を占領するとか、日本の三海峡を占拠するとか、そういったシナリオを現実のものにはしていないわけでありまして、冷戦の頃に比べればはるかに潜在的な脅威はお互いに低い状態にあるわけですから、そういった現実の緊張がまったくないわけではないんですけれども、それぞれ兵器を一定数持ち、一触即発ということはあり得るわけですけれども、例えば、ベトナムでも中国の公船がベトナムの船と何か小競り合いになったときも、放水だけで対抗して自動的にそこに兵器、軍による攻撃をしたりはしないという自制が働きましたし、思えば今ウクライナもロシアの侵略に対して、しかしロシアの側に兵器による攻撃をしないということでむしろ国際的な信頼と支持を勝ち得ているというところもあります。
 いずれ、武器使用というものは、戦時であれそこに出る過程であれ、できるだけしない方がいいものでありまして、できるだけせずに済むような国際関係を東アジアにつくるために、それこそ死に物狂いで責任ある人たちは努力すべき局面なんだと思います。
 そういう中で、むしろ東アジアには、経済の発展でありますとか、災害対策での協力でありますとか、気候変動対策の協力など、そのような協力から得られるメリットの可能性が非常に東アジアには多いわけですから、そういったメリットから少しでも日本の国民の暮らしが良くなるように持って行くことが現実的と考えます。

【斉藤議員】
 外交官の経験のある達増知事らしい見解だと受け止めました。
 アジアにはですね、私紹介したように、東南アジア諸国連合―これは国際紛争を対話によって外交によって解決する平和の枠組みがあって、その体制を東アジアに広げようと、東アジアサミットの体制もつくられているのです。私たちはそういう方向こそアジアで戦争を起こさせない、そういう体制だと。今こそ憲法9条を生かした、そういう東アジアに平和の体制をつくるべきだと、このことを強調しておきたいと思います。
 特に、いま岸田政権は、新型コロナでの無策、物価高騰対策での無策、統一協会問題、どの世論調査でも支持率30%で過去最低、不支持は50%を超える。こういう行き詰まった岸田政権が軍事費2倍化を、国会でも国民にも説明せずに強行するなどということは絶対にあってはならない。
 そういう意味で、私はこの軍事費2倍化の大軍拡は、平和を脅かし、国民の暮らしも破壊する。このことを許さない国民的大運動の先頭に日本共産党が立つことを表明して、私の質問を終わります。