2023年1月11日 文教委員会
いじめ、不登校問題に関する質疑(大要)
・いじめ問題について
【斉藤委員】
まず最初に、いじめ問題について。
いじめ防止対策推進法に規定する重大事態について、発生件数20件増加をしています。先ほど、県立学校は7件ということでした。だとしたら、小学校も中学校も明らかにしておかしくないんじゃないでしょうか。
【生徒指導課長】
校種別の重大事態発生件数についてでございますが、先ほど申しました通り、令和3年度県内で発生した重大事態20件のうち、県立の高等学校で発生した重大事態は7件でございます。
小学校・中学校につきましては、公表になってございませんので、残りの13件につきましては、県立学校以外の国立・市町村立・私立でございます。
【斉藤委員】
これはいじめ防止対策推進法にかかる重大事態なんですよ。それで校種別も明らかにできないなんて話ないでしょう。法律に関わっているんだから。
それでこの20件というのは、1000人あたりの発生件数0.17で、全国2番目です。それをしっかり受け止めていますか。
【生徒指導課長】
重大事態の発生件数については、十分に承知しているところでございます。
重大事態につながらないように、各学校、未然防止、そして適切な対処について、今後取り組んでいかなければならないと認識してございます。
【斉藤委員】
「重大事態」というのは、生命、財産、いじめによって30日以上不登校を強いられるという深刻な事態です。私は、こういう重大事態については、しっかりした第三者機関で調査して、そしてその教訓を全体のものにすべきだと思いますが、この20件は、どの機関でどのように調査をされているでしょうか。その調査の中で明らかになった重大事態の内容・特徴はどうなっているでしょうか。
【生徒指導課長】
重大事態における調査等についてでございますが、基本的には学校が調査主体となりまして、学校のいじめの防止等の対策のための組織に、第三者を加えて調査を実施しております。ただし、学校主体の調査では重大事態への対処や再発防止に十分な結果が得られない場合など、教育委員会が設置している付属機関である「いじめ問題対策委員会」において調査を実施してございます。
内容といたしましては、「仲間はずれ」「集団による無視をされる」がもっとも多く、次いで「冷やかし」や「からかい」、「悪口」「脅し文句」「嫌なことを言われる」「パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされる」等の対応がございます。
特徴といたしましては、第一号であります「生命・心身・財産」に関連する事案が6件、「不登校」に関連する事案が1件という状況でございます。
課題といたしましては、やはり初期対応における適切な対処であると認識してございます。
【斉藤委員】
今は県立学校にかかることを言ったんですね。県立学校について聞きますが、学校での調査は7件全部やられたのか。もう1つは、いじめ対策委員会、ここで調査された件数は何件ですか。
【生徒指導課長】
この7件でございますが、学校主体の調査は7件、そして県のいじめ対策委員会で調査したのは1件でございます。
【斉藤委員】
全体の20件含めて、調査報告書は県教委に報告されるのでしょうか。
【生徒指導課長】
設置者への報告ということになってございますので、基本的には県立学校につきましては報告を受けているところでございます。
【斉藤委員】
いじめ問題それ自身が大変深刻ですよ。同時に、生命に関わる、いじめによって長期の不登校に関わる、これは子どもにとっては本当に将来のかかった重大な案件なんですよ。それを学校任せにするということ自身、きわめて軽視していると思いますね。何のためにいじめ対策委員会があるんですか。重大事態こそ、いじめ対策委員会でしっかり調査して、その教訓を全体に返すと。小中の案件だって、県教委に報告書ぐらいきてですね、それが全体で共有されてやられるべきだと思うけれども、教育長、いじめ対策委員会をつくっているんだから、しっかりここで重大事態については調査すると。調査しないまでも報告書を検討する。そして教訓を全体に明らかにするということが必要だと思いますけれども、いかがですか。
【教育長】
まずこの重大事態それぞれの内容については、県教委の方に、設置者として常に情報共有を図りながら対応しているところでございます。また、必要に応じては、教育委員との情報共有もしているところであります。
なお、小中学校については、これは制度上は設置者としてそれぞれの首長への報告というところになっておりますので、一方では、教職員に関係するような場合については、県教委としても教職員の非違行為等につながるものがないかどうか等も関心がございますので、そういうところについては、市町村教委と情報共有を図りながら対応していくということにしてございます。
【斉藤委員】
いじめ対策委員会はせっかく常設で設置されているんですから、しっかり重大事態ぐらいは調査・検討して、その問題点・課題・教訓を全体のものにすべきだと。
・不登校問題について
【斉藤委員】
次に不登校の問題についてお聞きします。
今日の資料はあまりにもあっさりしていて、不登校問題に対する姿勢・構えがきわめて不十分だと感じました。
例えばこの表で見て、小学校の場合、比率でいくと5年間で2.33倍ですよ。中学校は1.43倍、小中合わせると1.60倍となるんですね。本当に急増していると。この状況をどのように受け止めていますか。
【生徒指導課長】
不登校児童生徒の急増にかかる実態把握についてでございますが、前年同期で小学校が471人で115人の増、中学校で1208人で192人の増、高等学校で591人で75人の増、全体では2270人で382人の増加となってございます。
背景といたしましては、生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況や、学校生活においてさまざまな制限がある中で交友関係を築くことなど、登校する意欲がわきにくい状況があったことなどが挙げられており、本県でも同様の傾向があり、急増していると認識してございます。
【斉藤委員】
先程来、不登校の要因について、「無気力」「不安」ということが言われました。これは学校の評価なんですよ。ところが、文科省が不登校に関する調査研究協力者会議の報告書を出しました。この報告書では、これは不登校の子どもたちと保護者を調査した結果です。最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけは、「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」「友達のこと」―それぞれ3割程度を占めていると。これは「令和2年度問題行動調査と実態調査の結果に乖離が見られた」と。学校の評価と不登校の子どもたちが言っていることと乖離が見られたと。この報告書を読んでますね。これはどのように受け止めていますか。
【生徒指導課長】
不登校児童生徒の実態把握に関する調査についてでございますが、令和2年度の調査結果は、不登校児童生徒のさらなる充実について検討することを趣旨として、小学校6年生、中学校2年生の児童生徒を対象に、調査票による調査を行い、回答は複数回答可としており、回収は児童生徒・保護者合わせて約4002件と把握してございます。
不登校児童生徒の実態把握に関する調査の結果によりますと、最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけに対する回答では、小学校では「先生のこと」30%、「身体の不調」27%、「生活リズムの乱れ」26%の順で高い割合となってございます。中学生では、「身体の不調」33%、「勉強が分からない」28%、「先生のこと」28%の順で高くなってございます。また、小学生・中学生とも2割強は「きっかけが何か自分でもよく分からない」と回答しているものでございます。
このように不登校の要因は、特定のきっかけに偏らず、多岐にわたる結果となっているものでございまして、今後不登校につきましては、個々が抱える課題に応じた対応が求められることから、今後も一人一人に寄り添いながら、適切な支援に努めるとともに、すべての児童生徒にとって魅力ある学校づくりをめざして、不登校の未然防止に努めてまいりたいと考えてございます。
【斉藤委員】
不登校の要因分析で、学校の言い分と不登校の子どもたちの言い分が全然違っていたら解決にならないんですよ。このことを文科省の協力者会議の報告書でも指摘をされた。実は日本財団が2018年12月ですけれども、不登校傾向にある子どもの実態調査をやりました。私も前に取り上げたことあるんですけれども、これは不登校経験のある中学生6500人、そして卒業後の子どもたち13500人を調査したものです。かなりの膨大な調査です。この結果は、1つは、不登校傾向にある中学生が10%・33万人ということで衝撃を社会に与えました。不登校中学生の約3倍、10人に1人が不登校傾向。中学校に行きたくない理由について、「授業がよく分からない」「良い成績がとれない」「テストを受けたくない」―学習面での理由がトップ3なんです。いわば、学校の教育の中でストレスを溜めている、苦しんでいる、これが実態です。だから、不登校の要因が「無気力」「不安」とか「生活リズムの乱れ」とか、子どもの責任にしたら解決しないんです。子どもが苦しんで不登校になっているんですよ。苦しんで苦しんで不登校になっている、学校に行けなくなっている。私は一言で言うと「管理と競争の教育」の結果です。これは国連子どもの権利委員会が何度も日本政府に勧告していることです。極度に競争的な教育制度、学校制度が子どもたちを苦しめている。これは国連子どもの権利委員会の政府に対する勧告ですよ。
不登校にずっと携わってきた親の会をしてきた専門家は、「いじめ・不登校・校内暴力および自殺―この4つの表れというのは、いじめはプレッシャーの転嫁、不登校はプレッシャーの忌避、校内暴力はプレッシャーへの攻撃、自殺はプレッシャーを感じる自分への破壊を意味している。これら4つの現象が公教育から与えられているプレッシャーを原因としていることについて、日本社会において異論はない」という分析であります。
だから、今の管理と競争の教育がこういう形で子どもを苦しめて、それに耐えられなくなった子どもたちが不登校に陥っていると。こういう認識に立たなかったら、本当の意味で急増する不登校を解決することができないんだと思いますが、いかがですか。
【学校教育企画監】
調査の内容が違いますので、結果に差異が出てくるのは当然なんですけれども、生徒指導課長から申し上げたとおりではありますけれども、いろんな要因があって多岐にわたるものでございますので、児童生徒一人一人の不安や心配に寄り添った支援を進めていくということは大前提でございます。
先ほどの斉藤委員ご指摘の日本財団の調査でございますけれども、「授業がよく分からない」「良い成績がとれない」「テストを受けたくない」というようなことが要因として挙げられますが、委員先ほどトップ3と申し上げたところだと思うんですけれども、正確に申し上げればそうではなくてですね、その他にも、まず前提として上位にあるのが「朝起きられない」「疲れる」とか「学校へ行こうとすると体調が悪くなる」といったものがまずあって、それでそうしたものが今回の問題行動等調査における、ただ、委員おっしゃる通りで、だんだん増加傾向にあるのは確かでございます。
【斉藤委員】
私が言ったのは一言足らなかった。「身体的症状以外の要因」です。身体的症状というのは、「朝起きられない」とか、それはもう学校に行くことが耐えられなくなっている症状なんですよ。だからその前の原因というのがさっき話した点です。
NHKもLINEアンケートをとって、これは378人の不登校経験者の回答なんですけれども、「先生との関係」23%、「いじめを受けた」21%、「決まりや校則になじめなかった」21%、だいたいこういう形です。管理と競争の教育というのが子どもたちを追い詰めている。
だから、無気力とか不安が不登校の原因という、子どもに責任を押しつけては絶対にダメだと。
今日は星北学園に行ってきました。本当に感心したのは、解決志向の教育のポイントとして、1つは「生徒を信じる」、2つ目「生徒をねぎらう」、3つ目「生徒のリソースを見つける」―これは資源・資質ですね。そして4つ目が「生徒が上手くやっていることを見つける」と。7つあるんですがこれだけにしますが、本当に生徒を主役にして、生徒の悩みに寄り添って、だから不登校を経験した子どもたちも本当にそこが楽しい場所として毎日通学していると。今日聞いたら、来年定員を32名に増やすんだけれども40名以上応募があるといって、全部受けられないと。大変切実な声をあげていました。教育の原点が問われるような中身だったと思うんですけれども、やはり子どもたちに対するリスペクト、信頼と尊敬、子どもたちの力を信頼するということが本当に大事なのではないか。
最後に聞きますが、「学校内外で相談・指導を受けた」というのが全国調査で65.7%、実態調査では「誰にも相談しなかった」というのが約4割なんです。4割は不登校になっても誰にもどこにも相談しなかったと。これは本当に深刻な問題であります。ですから、そういう本当に気軽に相談できるような体制というものをしっかりとつくっていかなくちゃならない。アウトリーチが大事だと言うことが指摘をされています。
それと、子どもの権利委員会の勧告を先生方がよく学んで、グローバルスタンダードで子どもたちに信頼を寄せてやることが必要なのではないか。教育長に聞いて終わります。
【教育長】
まず教育委員会としての対応の仕方というところ、これはさまざま各委員からご指摘あったところでございますが、まず全体としての対応が求められる部分と、それから個別具体的に児童生徒一人一人にどう向き合ってきたかという部分があろうかと思います。例えば、不登校となった要因について、これは的確に把握すること、アセスメントの重要性があると思います。その場合に、学校関係者がまずスタートになっていくのかとは思うんですが、例えば学級担任とか養護の教諭、あるいはスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、そしてその次の段階として、児童生徒、保護者・家庭といかに共通理解を深めていくか、さらに深刻の度合い等に応じては福祉や医療関係などの関係機関との連携というのも求められていくと。そこには組織的な対応でしっかり対応していかなければならないと考えてございます。そのときに、児童生徒にどう向き合うかでございますが、斉藤委員からご指摘ありましたように、子どもたちの個人の希望といいますか、意向を尊重することも重要であると思います。その場合には、児童生徒の立場に立った考え方、柔軟性というものも求められるのではないかと考えてございます。それらにどのように適切に対処していくかということで、先ほど小西委員からもアドバイザーだけではなくというご指摘もございました。特に小中学校の対応については、市町村教育委員会が設置者になりますので、いま市町村でも教育支援センターの設置が3分の2にとどまっているということもございます。また、ICTを活用した学習支援等も、いまさまざまな対応の仕方が可能となってきておりますし、フリースクール等のさまざまな受け入れ機関といかに連携を図っていくか、そういったところの活用も視野に入れながら、私どももいじめ・不登校等への積極的な対応、これは喫緊の課題でありますので、さまざま検討を進めながら関係者と連携して対応していきたいと考えてございます。