2023年1月12日 地球温暖化対策調査特別委員会
寒冷地における建築物の断熱化に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
ありがとうございました。
朝日新聞が正月から「気候危機と住まい」という5回連載をやっていまして、私も興味深くこれを読んだんですけれども、結論的にはですね、「住宅の省エネは、化石燃料の使用と光熱費を減らすだけでなく、健康にも良い」「一石三鳥」と。このことをかなり具体的に普及することが必要なのではないかと。WHOは最低室温は18℃ということで、日本の場合ほとんど9割以上それ以下になっていると。18℃以上のところはそれで死亡率も減っているという、実験の結果も含めて紹介しているんですが、いろんな研究報告も出ていると思いますけれども、気候危機のことで、やはり化石燃料を減らすと。ましてや今灯油代かなり上がっていますので、これはもう本当に緊急の課題だし、もう1つは、やはり住み心地が良いということですよね。そういう一石三鳥という中身について、一つ先生のご意見をお伺いしたい。
あとは、この連載の中ではこういう指摘もあるんですね。「世界全体で温室効果ガス排出量の2割は建築物関連」だと。この中でびっくりしたのは、東京は7割だと。おそらく事業所や住宅が多いということだと思いますけれども、岩手の場合はどうなのかと。もし先生の推計的にどのぐらいの比率を占めるのか。あるものを見ますと、日本の場合にはですね、エネルギー分野からの温室効果ガスが9割という指摘もありますので、発電からが全体で4割という、石炭火力に依存しているというのが日本の特徴だと思うんですが、この建物関連の温室効果ガスというのはどのぐらいの比率を占めるのか。そういう意味でも、住宅で省エネ・高断熱にするということはすごく緊急の課題なのではないかと。
それで、新築住宅をつくるときに、いま先生も紹介されたZEH基準、ZEH基準というのは断熱性能だけで比較するとヨーロッパよりも低いんですよね。だから鳥取県とか長野県とかいくつかの県ではもっと高いレベルで、ランク別に住宅のそういう高いレベルの整備には補助するという取り組みが進んでおり、岩手もそのようにすべきだと思っているんですが、新築住宅でどのように省エネ・健康住宅を推進するのか。
先ほど先生の話を聞いてびっくりしたんですけれども、いま新築のZEH化率は24%と、こんなに高いのかと。これは最近の状況でしょうか。去年の国会だと、太陽光パネルの設置率は新設で9%なんですよね。既存住宅を合わせると0.1%ですから、既存の住宅でいけば古い住宅にもできるかということはありますけれども、まだまだなのではないかと。
2つ目に、既存の住宅が圧倒的ですから、この住宅リフォーム、高断熱の住宅リフォームに対する支援・推進というのも必要なのではないか。
3つ目に、この連載の中で東京都のことが紹介されているんですが、東京都では内窓の交換に補助を出していると。窓の交換もかなり大きな効果があるといので、去年から上限50万円から100万円に補助を上げたら、月700件から月2500件に増えているということで、かなり効果的なのかなと思っておりますが、そういう施策について先生のご意見をうかがいたいし、全国のさまざまな例がありましたら紹介していただきたい。
【林基哉・北海道大学大学院工学研究院教授】
まず、内窓の補助ですが、だいぶ以前から北海道なんかでもやって、窓サッシというのは20年来になるかと思いますが、本当に断熱が低い、ほぼ断熱が入っていないような築30年以上の建物の場合は、シングルガラスが一番の熱損失の経路になりますので、一番サッシというのは相当効果があります。ただ、例えばリビングや寝室をおこなって、トイレとかお風呂とかなかなか温められないという問題があるんですね。それで、最近ほとんどやっていないんですけれども、保健所で一人暮らしの高齢者の住環境を改善するという取り組みを、国立保健医療科学院=前の公衆衛生院が研究をしてまして、そこで出てきた課題は、部屋は断熱化しているんですけれども、トイレやお風呂はなかなかできない。東北の古い家は、トイレ・お風呂はリビングや寝室から遠いので、結局1階全部を改修するぐらいのことになったり、建物によってどこまでやればいいのかというので違うと思います。なので、その人がこれから長く生活していくために、どういう環境整備が必要か。例えば、寝室の近くにトイレを作ってしまうとか、そのように実際の生活から健康リスクを下げるために必要な改修というのはこういうもので、それに補助を効率的に出すとかですね、もうひと工夫あった方が良いのではないかと。そのためには、モデル事業を行うといいんじゃとないか思います。その方のための断熱改修、改修のモデル事業、そうするとメーカーやいろんなところが乗ってきてくれる、そういうふうになるといいんじゃないかと思います。
それから比率の問題ですが、24%というのは、ニアリーZEHとかZEHまでいかないものも含めてです。本当のZEHになると3分の1ぐらいになると思います。
一挙三徳の話は、これまで省エネルギーだけのものと言っていたんですけれども、健康の話が出てきたというのはここ5〜6年の話だと思うんです。先ほどご紹介しました厚労省の研究というのは、実は国交省の研究チームの研究成果が出て、厚労省にもっとこれを進めてくださいという強い要請があって、それで私がやることになったと。本来、厚労省が進めるべきことだったんですけれども、むしろ省エネルギーを考えている人たちから要請がきたと。そのときに、やはり寒さ問題というのが健康に関する第一の問題ですので、それはやはり寒冷地がトップをきって進めていただくのは重要だと思います。北海道はもう別格状態になりますので。改善をすることで先ほどの過剰死亡率が変わったりすれば大きな成果になると思います。北海道は、調査をし始めるときにすでにこの暖房が普及していて、過剰死亡率が減っていたんですけれども、我々も高断熱・高気密が北海道でそれなりに進んできたので、過剰死亡率が減っているんじゃないかという分析をしようとしたんですが、北海道の場合すでに減っていたので、そういうデータにはならなかったんですけれども、抜本的な視点でいうと、東北はこれから高断熱・高気密を進めて暖房習慣を定着させていくと、冬の過剰死亡率が減っていくというエビデンスが出てくるかもしれないです。何十年もかかるかもしれませんが。