2023年3月2日 文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・再発防止「岩手モデル」の策定について
【斉藤委員】
それでは、再発防止「岩手モデル」の策定について、今日は立ち入ってお聞きをしたい。
2月4日に、第8回再発防止「岩手モデル」策定委員会が開催をされました。盛岡一高事件の事実解明について、被害生徒の家族から、事実関係について「多くの間違いがある」と指摘をされました。どういう指摘をされたのか。その指摘にどう対応しようとしているか示してください。
【教職員課総括課長】
第8回の策定委員会での報告とその後の対応についてでございます。
まず、理由の解明チームにおきましては、学校、県教委の対応状況にかかる事実関係、そして不足した点などにつきまして、外部委員さんからのご意見を踏まえまして、当時の関係者に聴取を行うなどしながら、整理を進めてきたところでございます。
現在、8回の策定委員会におけるさまざまなご意見を踏まえまして、今後の事実関係の整理等、作業に関する見直しの検討を行っているところでございまして、来年度も引き続きまして外部委員の参画をいただきながら、再発防止策の策定に向けた作業を進めていくこととしております。
【斉藤委員】
私も傍聴していましたので、被害者家族の意見はきわめて重大なものでした。
そもそも、これが第8回に出されたものです。これは被害者の立場からの記述は一つもないんです。これは加害者側の学校、県教委の内輪の調査で、内輪の人たちの証言に基づいて書かれています。被害者家族は「違う」と言っているんです。10項目ぐらい問題点を指摘されました。
加害者の側の学校・県教委だけの意見聴取では、事実に接近できないということが、傍聴していて痛切に感じました。外部委員の方も「これは調査をやり直ししなければだめだ」という意見も複数出ました。そういう受け止めですか。
【教職員課総括課長】
第8回の委員会の中では、そういう被害生徒のご家族、そして外部委員からさまざまなご意見をいただいたところでございまして、いま委員からもご指摘がありましたように、当時の学校における対応状況ですとか、関係者の発言などについて、被害生徒・ご家族が行った調査があるというようなご指摘をいただいたところでございます。
【斉藤委員】
ご指摘をいただいたところでありますはいいけど、それを受け止めて、県教委は調査をやり直さなくちゃならないぐらいの問題提起でしたよ。聞いていて。
例えば、学校の調査、これ実は平成24年に調査をされているんですが、元部員を調査をしたと。その調査結果は、「体罰はなかった」という調査だった。ところが、平成28年5月に、県教委が改めて部員を調査をした。「体罰があった」と証言した。その際、「学校の調査を受けた記憶がない」と言明しているんです。それはあなた方も聞いているはずです。盛岡一高の調査は何だったのかと。いわば改ざんしたんじゃないかと。これきわめて重大ですよ。そもそも元顧問教師が、自らの暴言・暴力をずっと全面否定していた。それをあなた方は鵜呑みにして裁判を応訴したんですね。ところが、一審の段階で、訴えた側が、元部員の証言を出して、県教委が急きょ調査をしたというのが平成28年5月の調査です。ここで部員3名とも体罰があったことを証言したので、裁判で元顧問は、今までの証言を翻して、体罰があったと訂正したんですよ。私はこの段階で、この問題はきわめて悪質だと、あなた方が感じなきゃだめだと思います。そして、学校の調査に根拠がない。改ざんされた可能性もこの段階で分かったはずです。違いますか。
【教職員課総括課長】
委員ご紹介ありました通り、28年に一審の裁判途上におきまして、被害者である原告側の方から、そういう元部員の証言録の書証が示されたことを踏まえまして、当該部員の方に聴取を行って、そういう事実を確認したというような状況でございます。
【斉藤委員】
答弁が中途半端なんですね。私は2つのことを指摘したんです。体罰があったということが明らかになった。もう1つは、その調査を受けた部員が「学校の調査を受けていない」と言っているんですよ。そういう記憶はまったくないと。だったら一高がやったという、体罰があったという、この調査は改ざんではないか。その疑いはあなた方は感じませんでしたか。その点について問題意識持ってますか。
【教職員課総括課長】
いま委員がご指摘していただいた部分につきましては、我々としても理由解明の中におきまして、改めて当時24名に調査に関わった教員にも聴取を行いまして、電話調査で調査をしたということを確認しております。
【斉藤委員】
体罰があったということが県教委の調査で明らかになった。それだけじゃなくてもう1つ、学校の調査を受けていないと言っているんだから、県教委が調査したら。だったら学校の調査で体罰があったと言っていたその調査それ自身が改ざんじゃないかということなんですよ。あなた方の調査にはそんなことは1つも書いていない。都合の悪いことは書いていないんです。
実は、裁判にこの被害者家族は、学校とのやりとりを全部音声で記録して、それを裁判に提出しています。あなた方はそれを聞いたのでしょうか。
【教職員課総括課長】
理由の解明作業の中におきまして、教職員課の職員が手分けして、私も含めてそういう裁判上の記録につきましては読ませていただいたところです。
【斉藤委員】
裁判中の記録はあなた方目を通しているというんだったら、被害者家族の言い分も分かるはず。しかし、そういうものは一つも書かれていません。学校側と県教委の、いわば加害者側の立場での調査しかやられていないんですよ。だからもう都合の悪いことは書かれていない。弁解です。そのことについても被害者家族は厳しく指摘をしておりました。
そこで、第一審の過程でも体罰・暴力は明らかになった。暴言も含めて。だったらそのときに県教委は、この顧問教師の暴力・暴言について自ら認めたんだから。それへの対応というのが求められたと思いますよ。何もしていませんね、この顧問教師に対して。
もう1つお聞きします。これも何度か取り上げてきたことですが、第二審、仙台高裁で裁判所に出された陳述書、これは本当に克明な、日常的な顧問による暴力・暴言が、多数の部員に行われているということを明らかにした。これは証拠採用されたんですよ。これを読んだんでしょうか。読んでどう受け止めたんでしょうか。
【教職員課総括課長】
一審後の部分についての対応ですが、一審判決を受けまして、学校において当該顧問教諭に対しまして、気をつけるようにという指導を行っていると承知しております。
そして、陳述書の受け止めについてでございますが、これは30年6月に控訴審におきまして、被害者側から提出されました元バレーボール部員による陳述書の中で、元顧問教諭による部員への平手打ち等の暴力・暴言が記載されております。県教委では、この陳述書受領後すぐに元顧問教諭に対して聞き取り調査を行い、記述されている行為について確認したところ、「記憶がない」という主張でありました。またこの際、県教委としては、第二弁護士と協議を行いました。その中で、陳述書を作成した元部員と、被害者生徒は、バレーボール部で活動していた期間が重なっておらず、陳述書が被害生徒さんの暴行の事実を直接裏付けるものではないと判断したものでございます。さらにその後、30年9月になりますけれども、被害者側から陳述書を作成した元部員の証人尋問の申し出がありましたけれども、これに対しまして県教委としては、証人尋問の必要は認められない旨、準備書面を提出させていただいたところでございます。その後、30年10月に弁論準備手続きにおきまして、裁判長の方から認証の必要がないと判断した旨の発言がございまして、証人尋問は行われないことと決定されたものと承知しております。
【斉藤委員】
この陳述書は、2年後輩の陳述書です。2年後輩の同級生、その後輩が、どういう暴力・暴言を受けていたかを克明に、時期・場所を指定して述べたものであります。たしかに直接被害者とは関わらなかった。しかし、これだけ克明で、深刻な暴力・暴言を明らかにしたものは今までなかったと思います。だから、あなた方は裁判対策はやったけれども、深刻な暴力・暴言の実態に、全然正面から対応しなかったということですね。
【教職員課総括課長】
その部分につきましては、第8回の策定委員会の中でも、ご遺族の代理弁護士さんの方からも、そういう部分についてきちんと調査すべきだというようなご意見をいただいているところでございまして、我々としてもそれに対応して調査を進めさせていただきたいと考えているところでございます。
【斉藤委員】
当時は前教育長でしたね。教育長も陳述書を読んだと思うけれども、あれを読んだら、この顧問教師がどういうことをやっていたかというのが分かったんじゃないでしょうか。その時点で教育的な対応が必要だったと。教育的な対応をしなかったために、第二の事件が起きたんじゃないでしょうか。教育長はあの陳述書を読んでどう受け止めましたか。
【教育長】
私も読ませていただきましたし、今回の理由の解明チームでもさまざま調査をしてまいりました。そして、元顧問教諭に対しましても、私ども追加で聞き取り調査をしておりますが、ただ、その際にも元顧問教諭は、いずれの聴取に対しましても陳述書に記載された行為については「記憶がない」という主張がありました。ただ、内容については、非常にこれは裁判過程でも体罰等を認めているわけでございますので、それへの対応というものについては、本来であればしっかり対応すべきものであったのではないかという思いであります。
【斉藤委員】
第二の事件―不来方高校バレー部員の自死を防止する2つのポイントがあったと。
1つは、第一審で本人が今までの証言を翻して暴力・暴言を認めた。この時点です。暴力・暴言を裁判の過程で認めたんだから、そのときに厳格にこの顧問教師に対応することが求められたと思います。
もう1つは、一審判決が出た。これはもう暴言、違法だということで、これは平成29年11月10日です。一方で、平成29年12月11日、保健体育課と高体連の連名で通知が出ました。どういう通知かといいますと、「部活動における体罰根絶に向けた取り組みの徹底について」と。「体罰事案が発生した場合、当該職員は少なくとも3カ月間は担当する部活動の顧問から外す。優秀指導者の認定を取り消す。1年間高体連主催の大会への出場を禁止する。1年間高体連の役職に当てない」と。一審判決後の1ヶ月後にこれ出ているんですよ。だったら、この時点で顧問教師は、この通知に基づいて対応すべきだったんじゃないですか。それをしないで、不来方高校のバレー部の顧問を続けさせて、そしてあの事件が起きたと。これは県教委の対応の間違いだと思うけれども、いかがですか。
【教職員課総括課長】
たしかにこの通知におきまして、当時の学校の管理職の者に対しても、関係者ヒアリングということで実施させていただいたところでございますが、過去の体罰事案であったということもあって、そういう認識には至らなかったということを聞いております。
【斉藤委員】
そういうのが弁解なんですよ。通知を出したら、判決が出たんだから。判決で処分をしたでしょう。しかし顧問に対しては何もやっていないじゃないですか。1ヶ月の減給だけですよ。おかしいじゃないですか。あなた方自ら出した通知も除外して、そして不来方高校であの事件が起きてしまった。私は二重三重に県教委の対応、不来方高校に異動させたことが間違いだと思いますよ。反対する意見もあったということは書かれているけれども、本当に無責任な県教委の対応が続いたのではないかと思います。
そういう点で、残念ながらこの事実関係の解明は大事なことが全然触れられていない。陳述書にも触れられていません。そういう意味では本当に根本からやり直すことが必要だと思いますが、根本からやり直しますね。
【教職員課総括課長】
理由の解明についてでございますけれども、理由の解明チームにおける策定作業につきましては、第三者委員会の調査報告書におきまして、学校・県教委の対応についての不足する部分があったとの指摘を受けまして、当時の関係資料ですとか、当時在籍していた職員へのヒアリングの結果をもとに整理を行って、策定委員会の場に報告しながら進めてきたところでございます。
これまでの策定委員会における検討の中で明らかになった事実関係ですとか、不足した点もあると考えておりますが、一方で、2月4日の8回の策定委員会におきまして、外部委員からは、被害にあわれた方たちの主張も含めて整理すべきというようなご意見などもいただいているところでもございまして、引き続きこうした外部委員のご意見も踏まえつつ、再発防止策の策定に向けた作業を進めてまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
実はこの1年間、最近でも教師による不適切な言動で懲戒処分されたというのが7件ありました。再発防止「岩手モデル」を策定している最中に、教師による不適切な言動で処分をしなくちゃならない。だから全然この再発防止の県教委の精神、方針というのは徹底されていないと思うんですね。
こういう調査があります。1952年から2022年まで、128件の指導死があったと。有形の暴力で亡くなったのが22件、有形の暴力でなかったというのは106件。80%以上が暴言なんです。暴言の方がある意味子どもたちを追い詰める。そういう意味で、本当に暴力・暴言、総称して暴力と言われるんですけれども、この根絶に本気になって県教委が襟を正して、自らの対応の検証もしっかりやって対応すべきだと思いますけれども、教育長に最後に聞いて終ります。
【教育長】
斉藤委員から、最近になっても児童生徒への体罰、あるいは不適切な言動によって処分が多いというご指摘をいただきました。実際に、私もさまざまな場で陳謝する場面がありまして、本当に申し訳なく思っております。
教職員の綱紀の保持、あるいは服務規律の確保に向けて再三再四通知あるいは各種会議、先月の県立学校長会議の際にも、改めて教職員のコンプライアンスの徹底について求めました。また、不来方高校の事案が発生しました7月3日の命日におきましては、毎年度各学校において研修を実施するように、そして私も各学校を訪問する際、学校長と実際にどのような研修活動をされているのか、必ず聞き取っております。そして時間があれば授業風景であるとか部活動の状況等も見ながら、教職員一人一人に浸透していくようにお願いをしてきたところであります。
また、今年1月には、さまざまな事案の発生がありますので、事例をベースに研修資料を改めて作って、そして各学校、これは市町村教委を通じて小中学校の方にも配布をして、これを用いて研修をしていただくよう、改めて通知をしたところであります。
今後におきましても、根絶に向けた取り組みは重要でありますし、しかも今回「岩手モデル」の策定が時間を要しているという面がございます。学校長会議の際に、継続して検討を進めていくとお話をしましたけれども、その中で触れたのは、モデルの策定を待たずにしても、大事なことは、いま現在でも苦しんでいるかもしれない児童生徒が置き去りになるようなことがあってはならないということで、それを早期に把握して、適切な対応をとるよう、改めて会議の冒頭でもお話をさせていただきました。
引き続き、不祥事案の撲滅に向けて、チーム県教委として、また、市町村教委とも連携をしながら、本県からこのような事案が二度と発生することのないよう努力していくよう、一丸となって取り組んでいきたいと思います。