2023年3月7日 予算特別委員会
高田一郎県議の
総括質疑(大要)


1.少子化対策について

【質問】高田一郎
 日本共産党の高田一郎でございます。まず2022年の出生者数は前年比5.1%減の80万人割れとなりました。政府の予測よりも 8 年も早いペースで少子化が進んでいます。その要因をどう分析しておられるのか、諸外国との比較も含めて示してください。

【答弁】八重樫副知事
 少子化社会対策大綱では、少子化の主な原因を未婚化・晩婚化及び有配偶出生率の低下であるとし、その背景には経済的な不安定さ、出会いの機会の減少、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、子育てや教育にかかる費用負担の重さなど、様々な要因が複雑に絡み合っているものとしています。
 また令和2年度に国が実施した少子化社会に関する国際意識調査によると、比較対象であるフランス、ドイツ、スウェーデンの国民の7割以上が、自国が子供を産み育てやすい国だと思うと回答しているのに対し、日本では過半数はそうは思わないと回答しており、教育費の支援、雇用の安定、育休等の職場環境の整備、子育てに対する社会全体の理解などが不十分であると感じている傾向にあります。
 本県においては、若い女性の社会減を含めた女性人口そのものが減少しているほか、全国に比べて、男性は50歳時の未婚割合が高く、女性は30歳以上の有配偶出走率が低い状況にあり、出会いや結婚を取り巻く環境や仕事と子育ての両立の難しさなども、少子化に影響を及ぼしているものと考えております。

【質問】高田一郎
 知事にお伺いしますが、(少子化が)予測を上回る早いペースで進んでおります。政府も異次元の子育て支援と言っています。 具体策も財源も示されずに、という状況でありますけども、そもそも何が足りないのかこの点について知事の見解を伺います。

【答弁】達増知事
 先ほど部長が述べたようなことを始め、やはり生きにくさという目の前の課題が大きいのだと思います。そもそも若い人たち の賃金が安くて結婚ということを考えられない、まして妊娠、出産、子育てというところまで全然手が届かないというような状況に始まり、結婚はしたけれども共働き、なかなか妊娠、出産、子育てまでいかない。そしてなんとか1人出産、子育てを始めても、女性が働きながらの子育て、また男性の家事・育児参加、それぞれやはり難しい状況、そういう生きにくさ、そういうことも重なりあって今のようなことになっているのだと考えております。

【質問】高田一郎
 若者の貧困化という問題が今お話しされましたけれども、今非正規雇用が増加して若い世代の収入が低く抑えられて、そして常に雇い止めの不安があります。年収200万円以下のワーキングプアが1千万人を超えているということがずっと続いています。この問題を解決しないと結婚にも子育てにも希望を持てないという状況だと思います。そこで伺いたいんですけども、県内の正規と非正規労働者の婚姻率についてどう県は把握されているんでしょうか、そして最低賃金を欧米並みに1,500円への引き上げが必要です。県として何ができるのか、例えば会計任用職員や指定管理者で働く方々の賃金、これを大幅に引き上げることや若者への住宅支援、直接支援こういったものも県として対応すべきだと思いますけれどもいかがでしょうか。

【答弁】八重樫副知事
 非正規雇用の婚姻率についてでありますが、県別の調査結果は公表されていませんが、国が実施した平成27年労働力調査では正規非、正規雇用における配偶関係が調査項目として設定されており、正規雇用のうち有配偶である割合は男性が68%、女性が49%、非正規雇用のうち有配偶である割合は男性が49.4%、女性が 64.5% となっており、男性は正規雇用に比べ、非正規雇用において有配偶者の割合が低くなっております。
 次に若者への住宅支援についてでありますが、県では空き家や県営住宅の空き室を活用し、結婚や子育て等のライフステージを控えた39歳以下の若者世代を対象に、住宅支援に取り組んでおります。 住宅の確保については県営住宅活用促進モデル事業により、若者から求められるwi-fi環境を整備した県営住宅を低廉な家賃で貸し出し、若者の住宅支援と既存ストックの有効活用を図っているところであります。
 また住宅の取得については、若者、移住者、空き家住まい支援事業により、若者が市況村が運営する空き家バンクに登録された空き家を取得、改修する際の経費の一部を補助し、若者世代の住宅取得や移住の促進を支援しているところであります。
【答弁】千葉総務部長
 県の会計年度任用職員につきましては、地方公務員法に定める均衡の原則に基づき、生計費や民間給与と踏まえて決定されている、上級職員との均衡を考慮して報酬やボーナスの水準を決定しているところでございます。
 令和5年度における会計年度任用職員の給与水準についても、県内民間の給与の状況や生計費等を反映した、 令和4年人事委員会勧告を踏まえた増額会計を行い、12月定例会において条例改正案をかけていただいております。今後におきましても物価高騰等の社会情勢の変化を注視しながら適正な処遇を確保してまいります。

【質問】高田一郎
 政府が一昨年行なった少子化社会に関する意識調査では、育児を支援する施策として何が大切かについて、教育費の軽減と答えた人の割合が69.7%とこれはダントツです。県は子育てに関わる経費をどう把握されているのでしょうか、私は子育て世代が一番求める高等教育を含めた教育費の無償化というものを、少子化対策の中心に据えて対応すべきと考えますが知事の見解を伺います。

【答弁】達増知事
 大学・専門学校の教育費の無償化についてありますが、日本における大学の授業料は諸外国と比較して高く、大学進学にかかる家庭の経済的負担が大きいことが課題であると認識しております。
 高等教育の無償化については、国において真に必要な低所得者世帯の学生を対象に、給付型奨学金の拡充、授業料等減免制度の創設を内容として令和2年度から導入されており、県内では6つの大学、4短期大学及び29の専門学校の計39の高等教育機関が授業料等の無償化の対象をとなっております。
 県では高校生等が経済的理由により、大学等への進学を諦めることのないよう毎年度行っている政府予算等に関する提言・要望において、給付型奨学金の拡充などの更なる制度の充実、授業料と減免対象者の所得要件の緩和などの制度の充実を要望しているところであります。
【答弁】八重樫副知事
 子育てにかかる経費についてでありますが、国が実施している出生動向基本調査によると、理想の数の子供の持たない理由としては、毎年子育てや教育にかかる経済的負担が最も多くなっているところであります。
 また県が独自に調査した、令和4年県の施策に関する県民意識調査において、子育てに関する実感について子育てがしやすいと感じないと回答した方の理由として、子どもの教育にかかる費用が最多で、次いで子育てにかかる費用となっており、本県においても子育てや教育に係る経済的負担が子育てのしにくさの要因となっているものと認識しています。

【質問】高田一郎
 本当に日本の大学の学費は世界でも異常だと思います。高い学費で進学を断念したり、あるいはバイトに明け暮れる学生生活、そして奨学金という借金を背負って社会に出なければならない、こういう若い世代が実感する将来への出費の不安から、中々子どもを作れない状況になっているのではないかと思います。こういう中で新年度の県予算には、高校生の大学などへの進学支援が初めて創設されました。 昨日も議論がありましたけれども、この事業に対する知事の思いを聞かせてください。そして全国の自治体でも同様の取り組みが行われているのか、この点についても併せて示してください。

【答弁】達増知事
 高校奨学事業費補助で実施する新たな奨学金制度は、広域財団法人岩手育英奨学会を実施主体に、経済的に困窮している高校生等に大学等進学に必要な経費を貸与し、県内大学進学または一定期間の県内就業を条件に返還を免除するということであります。
 これは教育費負担の軽減を図るとともに、将来県内での就職を希望する生徒への支援になるものと考えております。
 他の都道府県の取り組みとしては、東京都では塾費用や受験料の貸与、鹿児島県では大学等の入学金や授業料相当額の貸与などがあり、また令和5年度に新たに生活保護世帯の高校生を対象とした支援制度を創設する県もあると承知しております。
 本県には東日本大震災津波の発災以降、復興支援のため被災地に多くの方に入っていただきましたが、沿岸地域の高校生が復興支援活動を行う大学生や教職員の方々と交流する中で、大学での学びに興味を持ち、進学したいと思うようになったと私直接聞いたことがあります。
 大学等での学びは社会的・経済的な背景を超えて社会に大きく貢献する力を身につけ、個々の可能性を広げる機会にもつながるものであり、進学意欲がある生徒を支援していきたいと思います。

【質問】高田一郎
 専門学校や大学で本当に学びたいというそういう若者、どんな家庭に産まれてもその学びを保証するっていうのがやっぱり政治の役割だと思います。本当に全国的にも優れているこの制度を 是非周知をして多くの学生の皆さんが利用できるようにしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 次は学校給食の無償化について伺います。今全国、県内の実施状況がどうなっているかを示していただきたい。 また岩手県で小中学校含めて無償化を実施する場合の所要額、また第3子以降無償化する場合の所要額についても併せて示していただきたいと思います。

【答弁】菊池副知事
 学校給食費の関係でございますが、まず全国の状況、これは平成29年度文科省調査によりますと、当時の全国1,740自治体でございますが、そのうち小学校、中学校とも無償化を実施している自治体は76自治体で、割合いうと4.4%、一部無償化、一部補助を実施している自治体は424自治体で24.4%、無償化等実施してない自治体は1,234自治体で70.9%となっております。
 県内の状況については、令和4年度において全額無償化を行なっている市町村は5町村、一部補助を行なっている市町村は5市町となっております。
 県内の全市町村において全額無償化を実施する場合の所要額ですが、これは約41億6,000万円、第3子以降も無償化する場合の所要額となりますと、約8億3,000万円となる見込みと試算しております。
 学校給食につきましては、義務教育緒学校の設置者であります各市町村において、学校給食の意義や児童・生徒の実態及び地域の実情などを踏まえつつ、その実施方式を総合的に判断しているものと捉えております。
 学校給食費の無償化につきましては、今後の国の動向等を注視し各市町村に対し、給食費の設定状況や助成事例をはじめ、必要な情報提供に努めて参る考えであると聞いております。

【質問】高田一郎
 学校給食無償化については副知事から、必要な情報提供に努めるという答弁に留まりました。本来、教育費は無償化という観点からすれば、これはもう憲法上の要請であって国の責任で本来は対応しなければならないと思います。しかし今県内でどういうことが起きているかといいますと、貧困家庭が増えているということもあって、給食費を親が払えないから食べないと、こういう子どもたちを見るということを現場から聞いております。
 国への要請と共に、やはり地方自治体でも独自の努力を行って、国策にしていくということが大事だという風に思います。実は千葉県は今年の1月から第3子に対する給食費の助成が始まりました。沖縄県でも検討を始めているということが、新聞の報道でもされていますので、ぜひそういう方向で検討していただきたいという風に思います。

2.新型コロナウイルス対策について

【質問】高田一郎
 次に高齢者施設の支援策について伺います。新型コロナ第8波では、高齢者施設のクラスターが急増して、施設内療養中に亡くなるという方が最多となりました。その要因をどのように受け止めているのでしょうか、第8波での高齢者施設でのクラスターの発生状況、施設内療養者数及び施設内で亡くなった高齢者の実態についても示してください。

【答弁】野原保健福祉部長
 新型コロナウイルス感染症の第8波ではオミクロン株の高い感染力により、本県でも高齢者施設等でのクラスターが複数発生する中で、基礎疾患のある高齢者が体調を崩されて亡くなられていることについては非常に重く受け止めております。
 高齢者施設のクラスターは昨年10月以降2月までに369件発生しており、感染者数は公表時点での数値となりますが2,300人を超えております。
 またこの期間に施設内で亡くなった方は123人となっており、感染拡大のピークであった12月は64人、その後1月が38人、2月が4人と減少しております。
 本県でも全国と同様に、第8波では高齢者施設等におけるクラスターが多数発生いたしましたが、その要因については国のアドバイザリーボード資料によると、死亡リスクが高い身体的活動度が低下した高齢者が多く利用していること、これまでのワクチン接種や感染によって獲得した免疫が低下した可能性があること、緊急搬送や一般医療の負荷の増大の影響により、高齢者施設入所者への治療介入が遅れた可能性があることなどが指摘されております。

【質問】高田一郎
 私もこの間県内の高齢者施設を回ってきました。その中で関係者から「酸素飽和度が下がっただけで入院できないと保健所から言われた」とか、あるいは「透析患者も入院させてもらえなかった」こういう訴えもありました。入院が必要な高齢者が入院できなかった、こういうことが死亡者を大きくさせた要因だったのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

【答弁】野原保健福祉部長
 県ではこれまで高齢者施設等において陽性者が確認された場合、嘱託医や協力医療機関の医師による医療の提供が行われるよう働き掛けてきたところであり、多くの施設におきましては軽症の患者は薬の処方や必要に応じて酸素投与などを行い、医師が入院の必要があると判断した場合には、保健所等が入院調整を行っているところであります。
 入院調整が当たりましては、オミクロン株における高齢者の死亡リスクについて、基礎疾患の有無のみだけではなく、身体活動状況の悪化が指摘されていることから、認知症や要介護度が高い方にも対応できる宿泊療養施設への入所、また患者の状態によっては同期間に転院移動させることによって、リスクが増すことなどから介護施設に医療従事者が出向いて施設において治療を行うなど、患者の条件に応じて適切な療養場所の調整を行っているところであります。
 今後、重症化率の高い高齢者の命や健康を守っていくためには、高齢者施設等において医療との連結態勢を強化していくことが重要と考えており、関係機関と調整を進めているところであります。
 また感染症法上の見直し後においても、高齢者施設等における医療介護態勢の確保を図るため、施設の嘱託医や協力医療機関等の役割の明確化と機能強化、訪診・訪問看護の充実、専門医療等が必要な場合における医療アクセスの確保などの診療報酬、介護報酬上のインセンティブ付与や財政支援を含めた体制の構築について、全国知事会として国に対して強く要望しているところであります。

【質問】高田一郎
 色々説明頂きましたけれども、私もこの間厚労省通知を読みました。そこには入院が原則だと書かれております。県レベルでも入院調整を行ってもなお医療逼迫の場合は、医師の判断で対応していくということを明確に書いています。そういう対応が岩手県の場合されたのかどうかというのが1つです。
 そして、岩手県の場合は新型コロナ感染症患者のスコアシートというのがあります。このリスク評価を行って1つでも該当すれば入院が必要だということになっています。酸素飽和度が93%以下とか、あるいは基礎疾患があるとか、こういった方は該当されています。私はこの間いろんなところを回ってきまして、先ほどの紹介したような酸素濃度が下がっただけで入院できないと、あるいは透析患者もできなかったということで、そういう声が1箇所2箇所でなくてかなり多くのところで聞かれました。介護現場ではスコアシートの存在すら分からないという状況があります。そういう医師の適切な判断で対応されたのか、あるいはスコアシートが徹底されなかったところに、こういう問題が起きたのではないかという風に思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。

【答弁】野原保健福祉部長
 新型コロナ感染症の発生当初は、高齢者施設等で感染者が見られた場合は原則入院としておりましたが、オミクロン株の流行となってからはウイルスの毒性の変化やワクチン接種が推進されることもあり、そのまま回復する方も増えてきております。
 当初はスコアシートをというのは、新型コロナの感染者が肺炎、呼吸器疾患に着目して重症度を下げていましたので、そういったところで厳格に運用をしていたところでございますが、オミクロン株に変わってからは循環器系の疾病であるとか、基礎疾患のみならずいわゆるADLの低下、こういったことが非常に大きく関与しているということも指摘されていることであり、患者さんの症状、このスコアシート以外にもADLの状況でありますとか、認知症の有無、また要介護度など患者の個々の状況に応じて、適切な療養環境の提供することが必要と考えているところでございます。
 こうした点についてはきちんと検証しまして医療機関、医療関係者と協議を行い、適切な療養環境、また医療介護の体制の確保に努めて参りたいという風に考えております。

【質問】高田一郎
 5類に移行しようとしていますけれども、移行しても感染力が下がるわけではありません。施設療養が当たり前という風にならないようにするべきと思いますし、やはり原則入院させて、そして高齢者施設の感染対策、感染把握を引き続きこれまで以上の取り組みをお願いしたいと思います。
 次に高齢者施設の経営状況でありますけれども、コロナの感染拡大や物価高騰で本当に深刻な状況になっています。県はこれらの施設の経営状況をどのように把握されているのか、介護事業所の倒産・休業の実態も示してください。また12月補正では光熱費に対する支援が現場で大変歓迎されています。しかし来年度の支援が全くありません。引き続きの支援が必要と考えますがどうでしょうか。

【答弁】八重樫副知事
 コロナ禍において経営難を理由に廃止となった事業所は令和3年度が12件、令和4年度の上半期が4件となっています。
 また臨時休業を行った事業所は、令和3年度が109件、令和4年度が12月現在で503件と大幅に増加しており、特に通所系の事業所において休業に伴う減収と経営に大きな影響を及ぼしているものと認識しています。
 県では感染症が発生した事業所等の業務継続を支援するため、いわゆるかかり増し経費に対する補助を行っているほか、物価高騰による負担の軽減を図り適切で質の高いサービスの安定的な提供を維持するため、国の財源を活用し社会福祉施設及び医療施設等物価高騰対策支援金の支給を行っているところであります。
 物価高騰は全国的な課題であり国による一元的、持続的な支援を行うよう、全国知事会として国に対し緊急提言を行っています。
 令和5年度以降の支援については、現時点では国から示されていないところでありますが、引き続き全国知事会と連携し働き掛けを行って参ります。

3.酪農対策について

【質問】高田一郎
 次に酪農対策について伺います。一つは今岩手の酪農の明かりが消えかねない深刻な危機だと思います。 1つ目はやはり県内の酪農家の経営実態をしっかりと把握していただきたい。
 2つ目は今酪農家が生き残れる抜本的な支援策です。未だに政府は酪農家への支援策が従来のままとなっております。酪農家が生き残れるような抜本的な支援策を政府に強く知事を先頭に求めていってほしいと思います。
 そして第三に国に求める際に大事なことはあのカレントアクセス、乳製品の輸入です。これは一般質問でも議論がありましたけれども、中止を是非県として求めていってほしいと思います。

【答弁】達増知事
 酪農家の経営実態についてありますが、酪農家の収益の基本となる飲用向けの生乳価格は1kgあたり10円引き上げられたものの、乳牛の投資価格が前年に比べ3割程度と大幅に低下し、さらに配合資料価格も極めて高い水準で推移するなど、生産コストが大幅に増加していることから、酪農家は厳しい経営環境にあると認識しております。
 県ではこれまで配合資料や肥料コストの上昇分を補填する国事業の活用を積極的に進めると共に、県独自に酪農経営等への影響を緩和するため、配合飼料や肥料購入費への支援を行ってまいりました。
 また自給飼料基盤の積極的な活用による飼料確保と生産コストの低減に向け、水田を活用したホールクロップサイレージの生産を推進すると共に、生産性を高める牧草地の改良を推進して参りました。
 酪農家を始め畜産経営体は依然として厳しい経営環境に置かれていることから、資金繰りに重大な支障が生じないよう金融機関に対し、適時適切な貸し出しや企業債務の返済猶予など実情に応じた十分な支援を行うことを依頼するとともに、配合飼料購入費への追加の支援策を措置したところであり、引き続き関係機関・団体と連携しながら経営安定が図られるよう取り組んで参ります。
 酪農家への支援についてでありますが、飼料価格等の高騰が酪農始め畜産経営に大きな影響を及ぼす中、県では国に対し飼料等の価格高騰対策や経営安定に向けた、効果的なセーフティネットの構築などを要望するとともに、全国自治会の農林・商工常任委員会委員長として生産コストの上昇等について、小売価格に適切に転嫁していくための環境整備などを要望して参りました。
 酪農家を始め同業者は依然として厳しい経営環境に置かれておりますので、こうした状況を踏まえ将来に渡り安心して農業経営に取り組むことができるよう、全国知事会として国への要望を今検討しております。
【答弁】菊池副知事
 引き続き乳製品の輸入についてでございます。我が国は平成5年ウルグアイランド農業合意において、脱脂粉乳等について最低限の輸入機会の提供が義務付けられ、その輸入数量を維持することとされ、1年間の輸入数量は生乳換算で13万7,000トンとなっていると承知しております。国では今年度の輸入数量について、12万7,000トンは既に入札済みであるということで、残り1万トンについて国内在庫の多い脱脂粉乳以外に振り向けて入札することとしていると聞いております。
 生乳需給が緩和する中で、国内において自主的な生産抑制を行っている地域もあります。また酪農家は現在飼料価格の高騰など厳しい経営環境に置かれていることは承知しているところでございます。こうした現状認識は本県以外の各道県の産地も同様であるということで、県といたしましては国の対応を注視しつつ、他の道県とも情報交換をしながら、国家貿易の輸入乳製品の輸入は国内生産に影響を及ぼさないように対応してほしい、など要望することを検討している状況にあります。

【質問】高田一郎
 今の副知事から乳製品の輸入は、カレントアクセスは、輸入義務だという答弁がありました。しかしカレントアクセスは輸入機会、いわゆるアクセスを設ければいいのであって、需要がなければ無理に輸入してもしなくてもいいというのはWTOのルールであります。先日国会で農林水産大臣がWTOのルールは義務ではないという答弁をしました。県の認識が義務だというのと輸入の機会、アクセスを設ければよいという認識度では全然違うわけであります。副知事にもう一度お伺いいたしますけれども、このカレントアクセスの輸入というのはWTO上義務という認識なのですか。

【答弁】菊池副知事
 国家貿易に関することですので、この解釈につきましては県として申し上げる立場にないと思いますが、国として然るべき判断をされてそれに従い各産地等が対応していくということが基本になると思います。

【質問】高田一郎
 農林水産大臣も義務ではないと言っております。しかし今アクセス枠を100%で輸入しているのは日本だけであります。酪農家には牛乳の破棄や牛の殺処分までさせてそして農家には減産を押し付ける、こういう対応は本当に間違っていると思います。是非WTO のルールの精査をして、きちんとカレントアクセス輸入機会中止を求めていって欲しいと思います。

4.岸田政権が進める敵基地攻撃能力の保有について

【質問】高田一郎
 最後に岸田政権が進める敵基地攻撃能力の保有についてお伺いいたします。
 敵基地攻撃能力は、「専守防衛」を投げ捨てて、射程3,000キロの相手国の奥深くまで届くミサイルを保有配備するものであります。「統合防空ミサイル防衛」のもとで、自衛隊が米国と融合して、他国に先制攻撃を行う―これは海外での武力行使そのものだと思います。これまでの安全保障政策を根底から覆す重大な内容と考えますが知事の見解を伺います。

【答弁】達増知事
 相手国が発射するミサイルを打ち落とそうとするミサイル防衛と異なり、ミサイルが発射される前にミサイル発射能力を破壊しようと攻撃することは、国際法違反の「先制攻撃」とみなされる可能性があります。そのような「先制攻撃」は、従来の日本国憲法第9条の解釈上、日本政府も一貫して否定してきたと理解しております。
 専守防衛を旨とする従来の日本国憲法第9条の解釈を変更し、日本の先制攻撃の可能性を示すことは、日本と周辺国との間の緊張が高まる危険性があるとともに、世界全体の安全保障に大きな現状変更をもたらすものであります。
 政府に対しては、憲法第9条の趣旨を尊重し、近隣諸国との友好と、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に求めることを期待します。

【質問】高田一郎
 先月の国会を私も見ていまして、日本が先制攻撃を行って報復攻撃を受けた場合には、大きな被害を受ける可能性を防衛大臣が初めて認める答弁を行いました。そして日本全土の戦場化を想定して核・生物・化学攻撃に耐えられるように、全国各地にある自衛隊の300箇所の基地を4兆円もかけて強靭化するということも明らかになりました。本当に軍事に対して軍事で対抗するということになれば無限の悪循環になる、安全保障のジレンマというのはこういうことだと思います。
 それでお伺いしたいのはこういった大軍拡を進めるために、復興特別税の軍拡への転用とか、医療や年金財源である国立病院機構や地域医療機能推進機構などの積立金を活用するとしています。さらに建設国債を自衛隊艦船の建造費に充てるという禁じ手にも手を染めようとしております。なによりも軍事費の倍増で世界第3位の軍事大国となるということが、平和国家といえるのかということを申し上げたいと思います。
 こうした巨額の財源を国民生活に回せば、どれだけの国民が助かるかということを想像すべきだと思います。地方自治体にもそして私たちの暮らしにも、大変大きな影響を与えるものでありますが、この軍拡財源について知事の見解を伺いたいと思います。

【答弁】達増知事
 我が国の防衛のあり方については、防衛費倍増ありきのような極端な議論ではなく、国際情勢や近隣諸国との軍事バランスを調査・分析しながら、極力防衛経費のかからない防衛体制をめざし慎重な議論が進められるべきと考えます。
 いま東アジアで求められるのはむしろ軍縮であり、国内的にも国民の生活を考えれば新型コロナウイルス感染症対策、原油価格・物価高騰対策など喫緊の課題や賃金安、景気の低迷、人口減少の進行など構造的な課題を優先していくべきと考えます。

【質問】高田一郎
 知事は今議会の一般質問で佐々木順一議員の質問に対して、「憲法9条を今後も守るべきだ」と答えています。私も同じ思いです。9条を持つ日本がとるべき安全保障政策というのはどういうことかということを知事に質問したいと思います。
 「今とるべきことは軍拡ではなくて、軍縮なんだ」という話がありました。いま戦争への準備ではなくて、緊張を高めるような対応ではなくて、やはり平和への準備が必要だと思います。いま東アジアを平和な地域にするために東アジアサミットに集まった、アメリカや中国を含めた関係諸国を包摂した平和の枠組みに力を尽くす外交努力こそ必要と考えます。
 改めてお伺いしますけれども9条が持つ日本がとるべき安全対策政策とは何なのかということを知事に質問して私の質問を終わります。

【質問】達増知事
 日本国憲法は先の大戦とそこに至る日本のあり方について深い反省のもと、過ちは二度と繰り返さないという国民的な決意として「平和主義」を基本原理に掲げてきました。
 その「平和主義」を具体化する第9条は、国際の平和および安全を維持するという国際連合憲章の理念にも合致し、きわめて重要な条文であります。
 専守防衛を旨とするこの憲法第9条の存在が日本を取り巻く安全保障環境を維持し、第二次世界大戦の敗戦国である日本が、国際的に信頼され外交上名誉ある地位を支えてきたと考えます。
 今後の日本は憲法第9条を順守しながら外交の輪を広げ、アメリカと北朝鮮の停戦状態を恒久的な終戦に移行させることや米中関係の悪化を防ぐことなど、アメリカや近隣国とともに、東アジアの安定と国際平和の維持に向け、積極的に役割を果たしていくべきと考えます。