2023年3月8日 予算特別委員会
ILC推進局に対する質疑
(大要)


・ILCをめぐる動向について

【斉藤委員】
 最初に、ILCをめぐる国内外のこの間の動向について示してください。

【副局長】
 ILC計画につきましては、昨年2月、文部科学省による有識者会議が「時期尚早」とする議論のまとめを公表いたしましたし、4月には、ICFA=国際将来加速器委員会が「今後1年間の進展を注意深く見守る」といったステートメントを公表しております。
 現在はこういった状況を踏まえまして、IDT=ILC国際推進チームが、国際共同による研究開発に向けた取り組みですとか、政府間協議に向けた検討を進めているものと承知をしております。
 また、国内におきましても、コロナ禍にともなう行動制限の解除にともないまして、関係団体等による講演会など、多様な活動が再開されております。さらに、昨年10月には、超党派国会議連の総会が開催されましたし、先月8日には、ILC実現建設地域期成同盟会が設立されるなど、ILCをめぐる動きが活発化しつつあるものと認識しております。

【斉藤委員】
 国際的な動向として、政府間協議に向けた国際有識者会議が設置をされて、この間開催をされているようですが、この内容は分かりますか。

【副局長】
 国際有識者会議と申しますのは、各国の研究者の中で、各国の政府機関と話ができる方が集まった、IDTの指導の下につくられた会議でございます。この会議が昨年設置されまして、いま大型加速器を国際プロジェクトとして建設する場合に、どういったプロセスで進めたらいいのかといった台本づくりを進めていると聞いております。その台本を基にして、政府間での協議につなげたいという考えの下に、現在さまざまな検討が進められていると聞いております。

【斉藤委員】
 私が昨年聞いたときにはですね、国内の動きで、全国知事会として政府に要望するようになったと。これは知事が頑張ったということだと思いますけれども、これは今年度もなされているのですか。

【副局長】
 知事会の要望につきましては、全国知事会、北東知事会の要望として継続して要望を行っておりまして、令和5年度にも同様に強く働きかけるための要望を行うという方向で検討が進められております。

【斉藤委員】
 私がいただいた最近の動向にも、全国知事会が要望しているのであれば、きちんとこれは記述すべき大事なことではないかと思います。

・ILC関連予算について

【斉藤委員】
 来年度政府予算で、9.7億円のILC関係の予算が提案をされているところです。一応予算倍増ということで、この中身、この意義、どのように受け止めているでしょうか。

【副局長】
 令和5年度の文科省のILC関連予算案は、ご紹介の通り前年度比倍増の9.7億円ということでございます。このうち7億円が補助金として、また、2.7億円がKEKの運営交付金のうちのILC関連経費として計上されているということでございまして、文科省からは、いずれも次世代加速器の研究開発を推進するための予算と説明を受けております。特に7億円の補助金でございますけれども、海外研究機関との共同による研究開発を推進すると説明を受けておりますけれども、現在IDTにおいてICFAの承認の下で、国際的な共同研究開発を推進する枠組み、ILCテクノロジーネットワークの立ち上げの取り組みが進められておりまして、こうした取り組みの方向性に沿ったものと考えております。

【斉藤委員】
 先ほどの議論で、2025年ということがポイントになると話がありました。その欧州原子核研究機構、いわゆるセルンの設立の経緯と、FCCを含めた最近の動向について示してください。

【副局長】
 セルン=欧州原子核研究機構でございますけれども、「第二次世界大戦で荒廃したヨーロッパを1つにし、科学で平和を生み出す」理念のもとに設立されまして、世界中から研究者が国や地域・言語・宗教等の垣根を越えて集結し、その核となるLHC=大型ハドロン衝突型加速器の運用によりまして、2012年のヒッグス粒子の発見など、さまざまな成果をあげてきたものと承知しております。
近年は、LHCの運用による実験のほか、新微粒子の探索やヒッグス粒子の詳細な性質調査に向け、LHCの高輝度化の取り組みでありますとか、将来の加速器の検討も進められているものと承知をしておりまして、将来の加速器等に関しましては、ご紹介のありましたFCC=周長約100kmの円形加速器の技術的・財政的な実現可能性調査を進めていると聞いておりまして、2025年の報告書の取りまとめに向け検討が進められていると承知しております。

【斉藤委員】
 このセルンの経過というのが大変重要なんだと思うんですね。第二次世界大戦後の荒廃したヨーロッパの再建・統合の象徴、いわば平和の象徴としてセルンはつくられたんですよ。
この間の経過の中で、例えばこれは9月6日ですけれども、第110回加速器科学研究会に鈴木財務大臣がメッセージを寄せました。「ILC実現は経済安全保障に寄与するプロジェクト」と。私はここにすごく違和感を感じました。政府が言っている「経済安全保障」というのは、安全保障=軍事力強化に経済も科学技術も動員するというものなんです。こういう発想だったら違うのではないか。先ほどの議論の中で、佐々木副局長は、「総合的安全保障に資する」という話をしました。この総合的安全保障というのはどういう意味で使われたのでしょうか。

【副局長】
 総合的安全保障という言葉、「ILCの実現による価値と未来」というPRのための冊子を作っておりますが、その中で使われている言葉ですけれども、経済安全保障というよりは、どちらかと言うと平和貢献のための安全保障という意味合いが大きい表現になっているかなとは思います。ただ「総合的」ということですので、さまざまな多面的な価値を有するという観点も含めて使われているのではないかと承知しております。

【斉藤委員】
 いまILCを実現するうえで最大の障害になっているのは何かと。岸田自公政権の敵基地攻撃能力の保有と大軍拡ですよ。5年間で43兆円を軍事費に投入する。これは財源がないから、復興特別所得税も流用して増税期間を延長する。国立病院の積立金、年金の積立金も軍事費に導入するんですよ。そして、自衛官とか自衛隊の施設に、今までやってはならないといっていた建設国債まで使うと。これは来年度の話です。こんなに大軍拡をやったら、ますますILCが、一番障害になっているのは財源なんですから、見通しがなくなってしまうのではないか。
 局長はこの大軍拡、敵基地攻撃能力の保有というのが、まさに平和の象徴であるべきILCの実現にとって大きな障害だと思うけれども、どのように受け止めているでしょうか。

【ILC推進局長】
 ILCの実現に向けての大きな課題の一つとしては、斉藤委員がおっしゃられたように、費用の問題というところと認識してございます。その実現に向けましては、先ほど来ご説明させていただいているように、ILCの価値が大きく費用を上回るのだということを、県民・国民の皆さんに理解していただいて、そういうことの下に実現に向けて頑張っていきたいと思っております。特に、平和に貢献する、アジア初の国際研究施設というのは、その大きな価値の一つであると考えております。

【斉藤委員】
 ILCというのは、あくまでも自然科学の発展に寄与すると。生命の根源を追究する研究でもあると。そういう意味で本当に歴史的な意義を持つし、その研究の場がこの岩手が適切だという、国際研究者がそのように言っていることが岩手にとっては大変重要なことだし、あくまでもセルンと同じように、平和の象徴として国際的にやられるべきなんだと思うんです。
 ところが、43兆円の大軍拡、この間国会でこういう議論がありました。敵基地攻撃能力ですから、相手を攻める、攻められたら報復される。実は、自衛隊300基地、2万3千棟を地下化をする。これに5年間で4兆円かけるんですよ。そういうことまで明らかになっている。これがまさにILCを進めるうえで最大の障害になっているということを厳しく指摘をしたい。
 やはり平和の象徴として、そうしてこそ技術立国たる日本の再建はあり得ると思いますが、もう一言だけ聞いて終わります。

【ILC推進局長】
 委員おっしゃる通り、ILCには科学技術の、宇宙誕生の謎を解明するという大きな命題がございますし、その技術開発の過程で、医学・生命科学・情報通信、さまざまな技術開発、イノベーションを起こす、そういった大きな期待もあると思います。
 そして、アジア初の国際研究機関として、平和の象徴として、全世界から2000人を超える科学者がこの東北・岩手に来て、また岩手から世界に旅立つ科学者が生まれるのではないかという大きな期待を持って実現に向けて頑張っていきたいと思います。