2023年3月13日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑
(大要)


・高齢者施設でのクラスターの実態と改善について

【斉藤委員】
 第6波、第7波、第8波の感染者数、死者数はどうなったでしょうか。感染拡大、死者数増加の要因を含めて示してください。

【感染症課長】
 令和4年1月から6月までの第6波では、感染者数が延べ34557人、死亡者は43名。7月から9月までの第7波では、感染者数が延べ70555人、死者数は97人。10月から令和5年3月9日の第8波の感染者数は延べ12万4851人、死者数は416人となっております。
 第8波においては、全国的にも第7波を超える感染が拡大し、死者数も過去最大となったところでございます。
 国のアドバイザリーボードでは、オミクロン株はデルタ株に比べ、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されており、オミクロン株の高い感染力が全国的な感染拡大を発生させ、また、高齢者への感染拡大が死者数の増加の要因であると認識しております。

【斉藤委員】
 オミクロン株になって、第6波、第7波、第8波と、1年間3つの波が連続して続いて、そして感染者数は倍々で増えた。死者数もそういう形で増加をしたと。本当にこのオミクロン株というのは、重症化リスクは低いと言われたけれども、感染力、押谷教授に言わせると「インフルの7倍」という指摘も最近しているようですが、本当にそのことによって死者数が増加したというのをしっかりリアルに見る必要があるのではないかと。
 死者数が増えた大きな要因は、高齢者の感染、高齢者施設のクラスターだと思いますけれども、第8波における高齢者施設のクラスターの多発、施設内療養者の激増、これが死者が増加した要因の1つだと思いますが、なぜ124人もの高齢者が施設内療養中に亡くなったのか。どのように受け止めているか示してください。

【感染症課長】
 高齢者施設における死亡者の増加要因についてでございますけれども、第8波においては、オミクロン株の高い感染力により、本県でも高齢者施設でのクラスターが複数発生する中で、基礎疾患のある高齢者が体調を崩され、亡くなられることについては非常に重く受け止めております。
 なお、国のアドバイザリーボードの資料によると、全国的に高齢者の死亡が増加している要因として、死亡リスクが高い身体的活動が低下した高齢者が多く利用していること、これまでのワクチン接種や感染によって獲得した免疫が低下した可能性があること、救急搬送や一時医療の負担が不可能等の影響により、高齢者施設入所者への治療介入が遅れた可能性があることなどが指摘されているところでございます。

【斉藤委員】
 第8波における高齢者施設でのクラスター、そして職員、入所者の感染者数、施設内療養者の死者数を示してください。

【感染症課長】
 施設内療養の実態についてでございますけれども、高齢者施設において陽性者が確認された場合、多くの施設において軽症の患者は嘱託医や協力医療機関等により、薬の処方や必要に応じて酸素投与などを行い、医師が入院の必要があると判断した場合には、保健所等が入院調整を行ってきたところでございます。
 高齢者施設のクラスターについては、昨年10月以降、3月10日までに374件発生しており、感染者は、公表時点での数字となりますが2300人を超えているところでございます。また、この期間に施設内で亡くなった方は124名となっており、感染拡大のピークであった12月は64人、その後1月が38人、2月が4人と減少しているところでございます。

【斉藤委員】
 第8波で高齢者施設374施設でクラスターが発生して、入所者の感染者数は2310人、職員は948人なんですね。ところが、施設内療養で124人が亡くなっているわけです。必要な人が入院できなかったんじゃないかと。なぜ124人も施設内療養で亡くなるということになったのか。このことについてどう受け止めていますか。

【感染症課長】
 施設内療養についてでありますが、高齢者施設の入所者の治療については、県ではこれまで、高齢者施設等において陽性者が確認された場合、嘱託医や協力医療機関の医師による医療の提供が行われるよう働きかけてきたところであり、多くの施設において軽症の患者は薬の処方や必要に応じて酸素投与などを行い、医師が入院の必要があると判断した場合には保健所が入院調整を行っているところでございます。
 オミクロン株の流行となってからは、新型コロナウイルス感染症自体の重症化率は大きく低下してございますけれども、循環器系の疾病や基礎疾患等のほか、いわゆるADLの低下が、高齢者の予後の認知力に影響しているということが国のアドバイザリーボードにより指摘されているところでございます。

【斉藤委員】
 私はなぜ124人も医療を受けられずに亡くなったのかということを指摘したんです。私は12月議会でこの問題を指摘をしておきました。12月4日までで、そのときは施設内療養で亡くなったのが42名でした。これは死者数の14.7%、7人に1人です。こういうことがあってはならないという風に、12月5日に私は一般質問で指摘をした。野原部長は「患者の状況に応じて今後とも適切な支援、療養環境の整備、また高齢者の方々が亡くなることがないようにという、この視点で取り組みを進めてまいる」と答弁しました。ところが、12月1月、残念ながら施設内療養中に亡くなる。実際にこの施設内療養者は、第8波で124人亡くなりましたが、これは亡くなった方々の29.8%です。私が指摘したときの倍になってしまっている。いわば、医療が必要な方々が入院できなかった。県内の施設聞いてみてみんなそうです。「原則施設内療養」ということになっているというのが実態です。そういう指示を、有形無形で出したことはありますか。

【感染症課長】
 そういう指示を出したことはございません。

【斉藤委員】
 出したことはないと。
 私は感染症課長から何が基準なんだということをお聞きをいたしました。私が唯一いただいたのは、スコアシートです。スコアシートでチェックして、例えば「酸素飽和度93以下」、その他いろいろあるんですが、1項目でもあれば入院調整の対象だと。しかし、1月13日の特別委員会でこの問題を取り上げました。酸素飽和度が60・70でも入院を拒否されました。看取りまで言われました。その後改めてこの施設を調査しました。ここは2月11日現在で、陽性患者は入所者25人、職員14人、死者2人です。私が指摘をした入院できなかった高齢者はその後亡くなりました。ここは、酸素飽和度93以下になった方々が5人いたけれども、1人も入院できなかった。こういう状況になっているんです。だから124人という数が出ているんじゃないでしょうか。スコアシートは使われていない。この実態をどう見ていますか。

【感染症課長】
 当初スコアシートというのは、新型コロナウイルス感染症の患者の肺炎などの呼吸器疾患に着目して、重症度を判断して対応してきたところでございますけれども、オミクロン株に変わってからは、循環器系の疾病であるとか、基礎疾患のみに関わらず、例えばADLの低下であるとか、非常に大きく関与しているところであることも指摘されているところでございまして、患者の症状やスコアシート以外にも、ADLの状況ですとか、認知症、要介護度、患者個々の状況に応じて適切な医療環境を提供していく必要があると考えているところでございます。

【斉藤委員】
 適切な療養環境がなかったから亡くなっているんですよ。この施設は、5人が酸素飽和度が60・70台だったけれども、1人も入院ができなかった。どういう状況になっていたかというと、入所者だけでなく職員14人も感染しているんですよ。どうやって施設内療養で陽性患者を看るんですか。職員も感染している。隔離しなければならない。結局、陽性になった職員が3日目から陽陽介護しているんですよ。この特養は、3階だけに感染は抑えました。それでもそういう状況です。
 あなた方は安易に「施設内療養」と言うけれども、特養ホームその他、医療機関ではないんです。生活の場所なんです。陰圧室もない。そういうところに、感染力が強い陽性患者25人も施設に置いていて、どうやって命を守るんですか。
 部長にお聞きしたい。施設内療養で亡くなることがないように努力すると、部長は12月議会で答弁をした。医療機関が大変だったということも分かります。皆さんが本当に頑張っていることも分かるけれども、しかし1月10日現在の即応病床使用率は全体で47%、盛岡は43.2%でした。決して入院できない状況ではなかったと思います。だから、実態として「原則施設内療養」がずっと貫かれていると思います。そういう状況、第8波で124人が施設内療養で亡くなったことについて、問題を感じませんか。どうこれを解決していきますか。

【保健福祉部長】
 委員ご指摘いただいた通り、第8波に関してはきわめて高い感染力を背景に、高齢者施設で多くのクラスターが発生し、療養中に多くの方が亡くなられたことについては重く受け止めておりますし、連日入院調整にあたっております県庁の入院調整班も非常に心を痛めながら、1人でも死者をなくすべく努力をしていたところでございます。
 この対応については、課長からもご説明申し上げましたけれども、もちろんオミクロン以外の場合は、原則入院という対応をしておりましたけれども、オミクロン株になって、ワクチン接種が進み、入所者の方によっては比較的軽症で経過をされた方も多くなったとうかがっております。
 また、課長申し上げました通り、死亡リスクに関しては、もちろん医療の介入は必要なんですけれども、それ以外にもADLの低下に支障がある方が病院を移れない。医療は受けられますけれども、介護が受けられない。どちらがその方にとって適切な療養環境なのかということをきちんと判断しなくてはならない時期であったと。
 また、アドバイザリーボードでも指摘されている通り、全国的にこの時期は岩手だけではなく、多くの介護施設でクラスターが発生をし、多くの方々が亡くなられたのも事実でございます。これについては、施設の日常からの医療との連携、早期に協力医やかかりつけ医が施設内に入れるような仕組みづくり、また、医療アクセスの改善、病床使用率は委員からご指摘いただきましたけれども、当時は病床使用率以上に一般医療に負荷がかかっていた時期でございます。医療と環境を守っていくという観点で日々対応させていただいたところでございます。
 今後におきまして、いずれ施設の嘱託医や協力医療機関等の役割の明確化・強化、往診や訪問看護の充実、DXの活用、また、必要な場合における医療アクセスの確保、診療報酬や介護報酬上の財政的な支援も必要でございますので、こうした部分について全国知事会としても強く国に対して要望しているところでございますし、この問題を重くとらえて我々も医療と介護の連携、訪問医療、十分強化に努めてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 医療も大変だった。しかし、クラスターが起きた介護の現場はもっと大変だったんですよ。想像力が足りないと思います。クラスターが起きて職員も感染をしている中で、医療施設ではないのに、25人もその施設で介護しなくてはならない。嘱託医というのは、特養ホームの場合は一週間に1回だけです。午前中に来て薬の処方をする程度です。医療もタスクフォースも来ていない。
 そういう意味で、本当にクラスターが起きた介護現場の深刻な実態を県がしっかり受け止めて、1月10日の病床使用率を指摘しましたけれども、盛岡だって即応病床で43.2%ですよ。これが6割7割だったら大変だと言えるけれども、県も「5割超えていないので大丈夫」と。しかし入院させないからこういう形になっているんです。そのこともぜひ改善をしていただきたい。
 アドバイザリーボードは「高齢者施設入所者への治療介入が遅れた可能性がある」とも言っています。ここが問題だと思うんです。施設も、全員入院させろという要望じゃなかったんです。スコアシートにある酸素飽和度が60・70になって、命の危険がある人を入院させてほしいというのが要望なんです。それさえ認められなかった。
 だから、本当にこの間高齢者施設のクラスターに対する対応はしっかり検証して改善すべきは改善して、今後に備えていただきたい。

・第8波における県立病院、公立公的病院の役割について

【斉藤委員】
 第8波における入院患者の県立病院が受け入れた患者数と比率、公立公的病院の受け入れた患者数と比率はどうだったか。

【感染症課長】
 昨年10月以降、本年2月末までで入院者数は1854人となっており、うち県立病院は全体の68.3%にあたる1266人、県立病院以外の公的公立病院は全体の26.2%にあたる485人となってございます。このほか5.6%の103人については民間病院で受け入れているところでございます。

・新型コロナの5類への移行について

【斉藤委員】
 5類への移行、これは公助の打ち切りを意味するものです。
 検査、発熱外来、病床の確保、ワクチン接種など、どういうことになるのか。検査も医療も保障されない、陽性患者を診る医療機関はかえって減ってしまう。
 医学部長・病院長の会議が、大学病院の場合、補助が減らされたら1病院4千万円赤字になると言っています。そういうことも含めて答えていただきたい。

【感染症課長】
 新型コロナウイルス感染症の5類移行後の検査や発熱外来等の対応ですが、3月10日に国から各自治体に、5類移行後の公費負担などの取り扱いについて示され、5月8日以降は、医療機関で実施するPCRや抗原定性検査については、保険適用の診療報酬によって自己負担になる。発熱外来での医療費についても、保険適用の診療報酬について自己負担。ただし抗ウイルス薬については、当面の間公費負担を継続する。病床確保の空床補償については、補助単価の見直しを行うが、当面9月までは継続するとされているところでございます。
【医療政策室長】
 ワクチン接種の公費負担でございます。国が3月7日に発出した今後のワクチン接種にかかる事務連絡によりますと、5月8日からの春の接種開始におきましては、高齢者・基礎疾患を有する方、医療従事者、高齢者施設等の従事者を対象に、9月からの秋の接種開始では、接種可能な方すべての方を対象にそれぞれ1回接種するということとされておりまして、令和6年3月末までは、年齢・接種回数の如何を問わず、予防接種法上の特例臨時接種として全額公費負担の対象となるものであります。

【斉藤委員】
 県立病院・公立公的病院が、岩手の場合は入院患者で圧倒的なシェアを占めて役割を果たしたということを本当に高く評価をしたいと思います。
 しかしこれは、さまざまな支援策があって可能だったと思うんです。これが5類移行になって、少なくとも9月以降はどうなるか分からないという感じですよね。5月8日からは自己負担が発生すると。だから本当に第9波にこれで対応できるのか。おそらく感染対策、陰圧室、こういう環境整備が整わなかったら、一般の病院ではとてもオミクロン株のような対応はできないと思うんですね。
 そういう意味で、本当に科学的根拠なしに5類移行が決められて、自己負担を押しつけられると。これでは何の教訓にもならないということを指摘して、質問を終わります。