2023年3月15日 予算特別委員会
農林水産部
(第一部)に対する質疑(大要)


・農業分野における物価高騰の影響について

【斉藤委員】
 肥料、資料、燃油、その他の農業資材の物価高騰の実態と農家への影響額をどのように把握しているでしょうか。

【農業振興課総括課長】
 燃油価格についてでございますけれども、この国の調査によりますと、本年1月時点の東北地方のA重油の価格1リットルあたり96.6円、昨年同時期の101%となってございますが、2年前の令和3年1月と比較いたしますと137%となってございます。
 また、国が実施しております農業生産資材価格調査では、令和2年の基準年を100とした場合、本年1月時点では、総合価格指数は122、肥料では154.7、飼料では149となっております。
 影響につきましては、生産する作物、経営規模、形態によって使用する燃料や肥料、生産資材の状況が大きく異なることもございまして、また、それぞれの経営の努力といったものも加味いたしますと、県が把握することは難しいことから、試算は困難だと考えてございます。

【斉藤委員】
 A重油の価格は、1月はたしかに2年前と比べると137%でしたが、昨年の5月は170%、6月は163%、7月152%でした。ですから、だいたい年間平均すると150%以上になっていると思います。
 いま答弁あったように、肥料が154%、飼料も149%ですから、全部1.5倍なんですよ。1.5倍上がったら農家はやっていけないじゃないですか。特に酪農家は。
 県議団で酪農家の調査をしました。乳牛90頭、子牛60頭を飼って規模を拡大した方であります。12月末決算は「こんなに厳しいのは初めてだ」と。飼料代だけで前年2500〜2600万円から3200万円に値上がりしたと。700〜800万円の値上げです。この農家は、牧草・デントコーンを自給しているんです。最後乳を搾るときにどうしても配合飼料を使うと。それで700〜800万円の負担です。
 本当にこれだけの異常な飼料代・肥料代・燃油代の高騰、これは国が責任をもって全額補てんしなかったら、いわば補てんしなければ赤字なんです。その規模が飼料代だけで700〜800万円なんですよ。
 中央酪農会議で「この1月の酪農家は前年比6.8%減少した。離農拡大が浮き彫りだ」と。岩手県はどうなっていますか。

【畜産課総括課長】
 県内の状況でございますが、令和4年12月の県内の酪農家戸数は、中央酪農会議と同じ設定で調査したものでございますけれども、約630戸でございます。前年同月比約8%の減となっておりますが、都府県の減少率とほぼ同様になってございます。

【斉藤委員】
 4年前と比べると148戸・18.9%、2割近く減っているんですよ。その減少幅がどんどん拡大しているという深刻な状況です。
 実は3年前、バター不足というのがありました。それで乳牛増やせと農水省は音頭をとった。それで規模拡大した酪農家は多かった。岩手県は、畜産クラスターで規模拡大した農家はどのぐらいあるんですか。

【畜産課総括課長】
 本県で畜産クラスター事業を活用して整備した酪農家戸数ですが、過去5年間では22戸でございます。
 事業内容とすれば、搾乳牛舎、子牛用牛舎、堆肥舎などでございます。

【斉藤委員】
 今まで国は、牛乳が足りないと言って、規模拡大を推進したんですよ。借金して規模拡大しているんですよ。今さまざまな事情で牛乳が余っていると。北海道は牛乳を流していますよ。そして乳牛1頭あたり処分したら15万円を補助すると。こんな話がありますか。
 欧米ではどういうことをやっているか。欧州は余った牛乳を全部買い上げているんですよ。そして生産費を全部補てんしています。アメリカもそうです。アメリカは不足払い制度があって、米・トウモロコシ・小麦なんていうのは1兆円規模で不足払いをやっています。農業予算は13兆円です。そのうち64%は食料購入費です。低所得者の方に支援すると。日本がお手本にしているアメリカでさえこのようにやっているのに。欧州というのは、農業を守るのが国の基本になって、農業所得の中で補助金は100%です。日本はたった30%です。牛乳が余ったら自己責任、農家の責任なんですよ。これは農政がないといわなければならない。安心安全な国産牛乳を生産する会のアンケート調査をやって、107戸の回答なんですが、「赤字」が100%、「廃業を考えている」は27%です。このぐらい深刻なんですよ。
 いま中長期の対策じゃなくて、酪農家の廃業を食い止める、緊急で抜本的な対策が必要だと。国にもそのことを求めるべきだと。そうしなかったら、日本の酪農、岩手の酪農がなくなる。私はそういう危機感を持っていますけれども、いかがですか。

【農林水産部長】
 酪農の支援策について、県では、これまで、配合飼料や肥料コストの上昇分を支援する国の事業の活用を進めるとともに、県独自に酪農経営等への影響を緩和するため、配合飼料や肥料購入費への支援を行ってきたところでございまして、先ほど来申し上げましたとおり、自給飼料の活用に向けた支援を行っているところでございます。
 また、国に対して、飼料等の価格高騰対策、経営安定に向けた効果的なセーフティネットの構築などを要望しておりますし、今般、全国知事会と連携しまして酪農をはじめとした厳しい経営環境に置かれる農業者が安心して農業経営に取り組めるように、国に対し要望してきたところでございます。

【斉藤委員】
 今までの国の支援策、県もそれに上乗せしました。しかし、酪農家がいくら負担しているかというと3000億円です。中央酪農会議の酪農戸数が11163戸ですから、1戸あたり3000万円近く負担しているんですよ。持ちこたえられるわけないじゃないですか。だから、若干補てんしただけでは農業を守れない。酪農を守れない。欧米のように全額補てんして、安心して経営できるようにする必要があると。1頭15万円淘汰したら補助金をやると。減らしたら規模拡大の借金を返せないんですよ。3年経たないと乳搾れないんだから。淘汰した頭数はいくらになっていますか。

【畜産課総括課長】
 乳牛を淘汰し奨励金を交付する国事業について、本県では、令和5年1月末現在、酪農家から約50戸、約250頭の要望があったと聞いております。

【斉藤委員】
 本当に自己責任を農家に押しつける農政の破綻は明らかだと指摘しておきたいと思います。

・米価対策について

【斉藤委員】
 令和4年産米の相対取引価格はどうなっているか。この間の推移とあわせて示してください。

【県産米戦略監】
 令和4年産の本県「ひとめぼれ」の出回りから令和5年1月までの出荷業者と卸売事業者との相対取引価格は、60 キログラムあたり13,618円となっており、令和3年産米と比較しますと、1,158円上回っております。
 また、コロナ禍前の令和元年産米と比較しますと、60キログラムあたり1,694円下回っております。

【斉藤委員】
 令和3年産米と比べると若干上がったと。しかし2年前と比べたら1俵あたり1694円下がったままなんですよ。
 そういう状況の中で、農業資材・肥料代が上がっています。生産費が上がっているんだと思うんです。令和3年産米では、15ヘクタール規模でも赤字だったという調査がありました。県内農家の実態を把握しているでしょうか。令和4年産米の生産費は、物価高騰を加味すればどう試算されるでしょうか。それで黒字になる農家はいくらあるでしょうか。

【県産米戦略監】
 令和4年産ひとめぼれの令和5年1月までの相対取引価格と、国が公表した本県の10アールあたり収量537キロで、10アール当たりの収入額を試算しますと112,853円となってございます。
 また、最新の値であります令和3年産の全国の米生産の作付規模別の10アール当たり生産費は、3から5ヘクタールの作付規模で115,880円、5から10ヘクタールの規模では、109,490円となっておりますことから、令和4年産米は、5ヘクタール以上の規模で、収入額が、生産費を上回る状況となっております。

【斉藤委員】
 今のは物価高騰分を加味していない話でしょう。私が言ったのは、いま肥料代が1.5倍、農業資材が平均して1.2倍だと言っているんだから、だから全中の調査でも15ヘクタールで赤字だったという調査が出ているんですよ。そういう実態を調べていますかと。物価高騰を加味した生産費はどうなっていますか。去年の決算の答弁したってだめですよ。

【水田農業課長】
 生産費につきましては、肥料等の資材費のほか、労働費や減価償却費、地代などで構成されておりまして、資材高騰のみをもって試算することは困難でありますが、肥料価格は現時点で、前年に比べ約4割上昇している状況でございます。

【斉藤委員】
 だから私は、農家の実態を聞けば分かると言っているんですよ。全中だってそうやって調べて、令和3年産米は15ヘクタールで赤字だという、私もこの記事を見てびっくりしましたよ。今それ以上の物価高騰なんですよ。そういう意味で、本当に規模別農家の実態を聞けば、いま確定申告の時期ですから分かるんですよ。そういうことを聞いたので。だからそういう危機感が少し足りないんじゃないか。いま農家がどういう厳しい状況にあるのか。それを把握してこそ、積極的な施策がとれるし、国にも言うことができると思います。
 それで、令和4年産米の水田における作付状況、水田活用交付金の減額の請求はどうなるでしょうか。

【水田農業課長】
 令和4年度の水田活用の直接支払交付金につきましては、現時点で本県への交付実績は国から公表されておらず、影響額等をお示しすることはできない状況でございますが、作付状況については、令和3年産と比較して、牧草等の飼料作物が減少している一方で、飼料用米やホールクロップサイレージ用稲、大豆、加工用米などが増加している状況でございます。

【斉藤委員】
 令和4年の作付状況を言いますと、主食用米が2500ヘクタール減少しているんです。飼料作物が479ヘクタール減少、蕎麦・菜種・備蓄米が若干減少しています。減少したのは3000ヘクタールなんです。そして飼料用米等を増加した分、1939ヘクタールです。そうすると、作付面積全体で1061ヘクタールが減少している。これは1000ヘクタール規模で耕作放棄地になっているのではないでしょうか。

【水田農業課長】
 委員ご指摘のとおり、水田全体で作付減少面積が約1,100 ヘクタールでございますが、その内訳については、主食用米から減少した分なのか、転換作物から減少した分なのか、あるいは転換作物の減少分のうちどの品目から減少した分なのか、詳細を把握することが困難な状況のため、影響額をお示しすることは難しい状況となっております。

【斉藤委員】
 作付面積が減少したのは事実ですから、問題にしているのはそこなんですよ。国の施策で、いま食料自給率が38%しかない。世界的に食糧危機のときに、耕作面積を減らすような農政でいいのかと。耕作面積を減らしながら、ミニマムアクセス米は77万トン・100%輸入しています。驚いたことに、SBS米、主食用米は1俵3万円ですよ。とんでもないことです。なんでアメリカの機嫌をとらなきゃだめなんですか。こういうときこそ、ミニマムアクセス米は義務輸入ではないのだから。乳製品だって義務ではないのだから。こういうときはムダな輸入は止めて、国内生産をどのように拡大するか、守るのか。こういう対策こそ必要では内でしょうか。
 カレントアクセスもミニマムアクセスも義務輸入ではない。農林水産大臣が認めていますが、こういうときこそ国内酪農家、米農家を守るという施策こそとるべきだと思いますがいかがでしょうか。

【農林水産部長】
 県では、ミニマムアクセス米について、主食用への仕向け量が増大した場合には、主食用米の価格低下が懸念されることから、毎年国に対し、国内需給に影響を及ぼさないための対策を講じるよう要望しているところであります。引き続き国に対し、必要な対策を要望していくとともに、需要に応じた米生産を進めていくことにしてございます。
 また、乳製品のカレントアクセスについても同様に、国内の需給に影響を及ぼさないように国に対して要望することとしてございます。

【斉藤委員】
 国内に影響を及ぼしているんですよ。乳製品14万トン、いま余っているから流しているんですよ。13万7千トン輸入しようとしているんですよ。こんな話はないでしょう。
 そういう意味で、本当に先進国で唯一、無為無策で農家に自己負担を押し付ける、自己責任を押し付ける、こういう農政は根本から転換が必要だと。そういう立場で国にも強く求めていっていただきたい。