2023年3月16日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・災害公営住宅のコミュニティ形成について
【斉藤委員】
災害公営住宅の高齢化の状況、集会所の活用状況、コミュニティの形成についての取り組みはどうなっていますか。
【建築住宅課総括課長】
高齢化の状況、集会所の活用状況とコミュニティの形成についてですが、県営災害公営住宅における高齢化の状況については、令和4年12月末現在で、災害公営住宅に入居している1,473世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は835世帯・56.5%となっております。
そのうち、高齢者の一人暮らし世帯は514世帯で、全体の34.8%となっているところです。
次に、集会所の活用状況についてでありますが、県が管理している災害公営住宅29団地における、令和4年度第3四半期の1月当たりの集会所の活用状況は、0回が2団地、1回から4回が22団地、15回から20回が5団地となっております。
コミュニティの形成については、県営災害公営住宅31団地での自治会の組織状況については、28団地で組織済となっております。残る3団地では自治会は組織されておりませんが、市町村や支援団体等と連携したコミュニティ形成支援により、それらの団地においても、班長会や世話人会などが発足するなど、コミュニティの形成が一定程度図られているものと認識しております。
【斉藤委員】
いま高齢化の状況が明らかになりました。独居世帯が34.8%、3分の1以上が一人暮らしです。65歳以上の入居者が1027人で40.4%、深刻な高齢化が進んでいると。
実は、災害公営住宅における孤独死は、令和4年度は県内22人で、過去最多であります。そして12年間で孤独死は103人なんですね。この5年間で実に87人、年間20人前後になり、増加をしていると。コミュニティの形成がどうなっているか聞いたのは、こういう深刻な状況がますます進行しているということですね。
そして、コミュニティの一つの指標は、災害公営住宅の集会所がどう使われているかということだと思います。私はこれは何度も取り上げているけれども、阪神淡路大震災で孤独死が発生をしたと。このことを教訓にして集会所、支援員の事務室まで整備をされたのが今回の災害公営住宅です。いま答弁あったように、月1回しか使われていないのが11団地あるんですよ。0が2団地。2回というのが7団地ぐらいあります。月1回しか集会所が開いていないということは、そこで人が集まっていない、行事も組まれていない、阪神淡路大震災の教訓が生かされていないということだと思うんです。せっかく整備をされた集会所の状況をどう受け止めていますか。そしてそれが活用されているところもあります。どういうところが活用されているのか。どういう支援があれば活用されるのか。そのことについてお聞きします。
【建築住宅課総括課長】
集会所の管理につきましては、基本的には当該アパートの自治会にお願いしているところです。
あわせまして、活用されているアパートについてですが、基本的には、自治会活動が盛んなところ、見守り活動を行っている支援団体が一緒になって活動しているアパートと認識しております。
このようなところにつきましては、市町村の社会福祉協議会などと連携いたしまして、基本的には県の集会所につきましては、自治会と協議して使ってくださいということを、指定管理者を通じましてきちんと伝達しているところです。
【斉藤委員】
あまりにも受け止めが弱いんだと思いますよ。自治会は28つくられています。単独だと14です。一応形は自治会がつくられているけれども、先ほど言ったように、集会所は月1回か2回しか使われていないんですよ。十分な活動がされていないという証明なんです。
積極的に使われているところはどこか。それは支援員が配置されているところです。山田の大沢20回、大槌の上町20回、みどり町15回、南青山16回、唯一自力で頑張っているのが陸前高田市の栃ヶ沢が20回、さまざまなサークルをつくって、ここは本当に自治会が頑張っているところ。いま紹介したところは、支援員が配置されているところです。支援員が援助に入って、そしていろんな行事を組み立てて、入居者が来れるようにしている。
つい最近、災害公営住宅自治会交流会が仙台で開かれ、岩手の災害公営住宅からも参加をしました。一番の悩みは、自治会の担い手をつくれない。そしてもう1つは高齢化です。震災から12年経っているんだから、それだけ歳を重ねています。そして頑張っているところでもこういう報告がありました。「副会長、総務部長、防犯部長、家賃が値上がって退去せざるを得なかった」と。自治会の中枢で頑張っていた人が退去するという自体も少なからず生まれています。
そういう意味で、丸12年経って、自治会も形作られたけれども、十分なコミュニティ形成がされていない。そして一方で、生活相談支援員が配置されたところは、それなりに集会所が使われてコミュニティの形成、見守りなどについても成果をあげていると。この事実を見て、違いを見て、今度の東日本大震災津波は、新しく整備をされた集会所や支援員の事務室が使われたという教訓をつくらなかったら、何のために集会所を整備したか分からなくなってしまう。災害公営住宅のコミュニティの形成にとって、ここが大きなポイントになると思っておりますが、いかがですか。
【建築住宅課総括課長】
集会所活用数が多いアパートの状況についてですが、支援員が配置されている又は自治会活動が盛んなアパートであると認識しております。
災害公営住宅に集会所を作る際には、普段よりも大き目な施設にする又は相談員等が常住できるスペースを用意しておりまして、こちらを使っていただくことが非常に大切であると認識しております。
集会所を積極的に活用いただくよう、当課におきましては、岩手県立大学と共同研究という形により、地域のコミュニティ形成をどのようにしていくか、ご指摘の通り担い手不足、高齢化にどのように対応していくかについて、共同研究を通じまして、今後、県内の災害・一般の公営住宅において取り組んでいきたいと考えております。
【斉藤委員】
ぜひ違いが出ているわけだから、そこをしっかり受け止めて、孤独死が出ないように、コミュニティが形成されるように、そして3世帯に1世帯以上が一人暮らしの高齢者ですから、見守りがしっかりやられるような体制をつくって、これを今後に生かしていくということをぜひ考えていただきたい。
・災害公営住宅の家賃問題について
【斉藤委員】
収入基準を引き上げたということは評価をしますが、残念ながらそれでも対象にならない収入超過者がおられます。収入基準の引き上げによって対象になった世帯、ならなかった世帯、そしてその結果退去された例はどのぐらいあるか示してください。
【建築住宅課総括課長】
収入基準の引上げ対象世帯とならなかった世帯の状況についてでありますが、県営災害公営住宅において、令和4年4月から実施した収入基準の引上げにより、引上げ前であれば収入超過基準を超える収入のあった72世帯のうち、60世帯が昨年12月末時点で収入超過認定の対象から外れたところです。
また、収入基準の引上げ後も収入超過認定されている世帯は、27世帯となっております。
なお、県では退去に際して理由を求めておりませんので、収入超過が原因で退去した世帯数は承知しておりません。
【斉藤委員】
決算のときには3人と答弁していますから、分からないことはないと思うので。おそらく年度始めで、値上げで退去せざるを得なかったいうのは、少なくとも3人はいたと。今になって分かりませんではダメなので。もっと誠意ある答弁をしっかりやっていただきたい。
それで、いまだに27世帯が収入超過世帯で、最高額の家賃になっています。被災して、終の棲家として入ってきた人たち、特に被災者については、何度も提起していますが、すでに陸前高田市が実施している「みなし特定公共賃貸住宅制度」、もしくは、答弁にもあったけれども目的外使用、いずれにしても家賃が上がることによって退去せざるを得ないということは、解決しなければいけないんじゃないかと。いかがですか。
【建築住宅課総括課長】
みなし特定公共賃貸住宅制度の導入についてですが、制度の導入にあたりましては、被災者や本来対象とする所得階層の入居に影響を与えないことが条件となります。
県では、被災者用の住戸を確保した上で、令和2年7月から一般の方向けの入居募集を開始しまして、これまでに239戸の入居がございました。これら一定のニーズが認められることから、みなし特公賃制度を導入した場合、本来入居対象となります所得階層の方の入居に対する影響が懸念されるというところがございます。
一方、被災者が安心して住み続けられるための制度として、令和4年4月から収入基準を15万8千円から25万9千円に引き上げるとともに、さらには高額所得者には退去を求めない措置をあわせて講じたところでございます。
こうした方々が安心して住み続けられますよう、今回の収入基準引上げ等改定状況の状況把握に努めていきたいと考えております。
【斉藤委員】
収入超過世帯の認定が27世帯で、私は一般化を求めているわけではないんです。被災者として入居された方々が終の棲家として頑張ってきた、そういう方々が入居継続できる手立てをとるべきじゃないかと言っているんです。12月末現在で、県営災害公営住宅287戸空いているんですよ。こんなに空いているのに、高齢化でこれからもっと空きますよ。そういう対策、いま若い人たちをどうやって入れるかという対策を考えなかったら、本当に深刻な高齢者住宅、空き室だらけの住宅になってしまう。今そういう手立てをとるべきじゃないでしょうか。5年後10年後、いまの高齢者はいなくなってしまいますよ。だから陸前高田市なんかはそういう手立てをいち早く打って、現役世代も入居できるようにしているわけです。そういう危機感をもって対応すべきではないですか。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅の空き室については、今後、高齢世帯の退去に伴い、空室が増えていくものと認識しております。県の方では、先ほど申し上げました通り、まずなるべく退去しない方法として、収入超過の見直しを行ったところと合わせまして、委員ご指摘の通り、若い方の入居におきまして、コミュニティの活性化というところも合わせて行いたいということで、令和3年度から実施しております県営住宅活用促進モデル事業について、災害公営住宅も含めて実施するとともに、本年度から実施しております、あわせて、本年度から行っております、いわてお試し居住体験事業を活用し、若い世代に入居いただくよう、継続して行ってまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
お試し居住はたった1年なので、それでは定着にならないのです。定着のきっかけになるかもしれない。私が言っているのは、いま入居している被災者の方々を追い出すようなことは止めるべきだということ。世帯が限定されているんだから。そのうえで、現役世代で低所得のボーダーラインで生活している方々が少なくないわけだから、そういう方々も入居して、例えば、東京や全国で自治会活動に参加するというので、学生の入居を認めたり、若者の入居を認めることをやっていますよ。そういうことを、災害公営住宅持っている岩手が新しい取り組み、経験をつくるべきではないですか。
【建築住宅課総括課長】
目的外使用による災害公営住宅の活用についてですが、ご紹介いただきました通り、学生の入居や企業等への貸出し等が考えられるところですが、国の方からも災害公営住宅の空き家が増えている状況を踏まえ、復興庁からも紹介をいただいているところでございます。
これら新しい取り組みについて、どういったものが良いかというところを判断いたしまして、今後さまざまな形で拡大していきたいと考えております。
【斉藤委員】
私が提起した問題は、今すぐ手立てを打つべき課題として提起しております。いつまでも検討しているだけでは対応できない。そういう問題として受け止めて、しっかり対応していただきたい。