2023年3月23日 2月定例県議会最終本会議
千田美津子県議の請願および議案に対する討論全文
日本共産党の千田美津子です。
私は、請願陳情受理番号第94号及び請願陳情第96号、並びに議案第68号について、各委員長報告に反対の立場で討論をいたします。
・安保関連3文書改定の撤回と大軍拡・大増税の中止を求める請願
まず、請願陳情第94号の「安保関連3文書改定の撤回と大軍拡・大増税の中止を求める請願」であります。政府は、昨年12月16日、安全保障関連3文書の改定を閣議決定しましたが、これは憲法9条のもとで、これまで歴代の自民党政府も守ってきた「専守防衛」の原則を大きく転換し、日本への攻撃がなくても、米軍が海外で戦争を始めた際は、自衛隊が米軍と一緒に敵基地を攻撃することが可能になることは、相手国から報復攻撃をされて日本が戦場となる危険性を含むものであります。
岸田首相は、安保3文書で決めた敵基地攻撃能力の保有について、「日本への武力攻撃を抑止するため」と繰り返しておりますが、3月2日の参議院予算委員会において日本共産党の小池晃書記局長は、「防衛省が全国の自衛隊基地を、核兵器などによる攻撃にも耐えられるよう『強靭化』する計画を立てている」ことを明らかにしましたが、このことは、「抑止」が破れ、日本中に戦火が及ぶことを想定したものであり、「抑止のため」というのは欺瞞でしかありません。
さらに、昨年12月と今年2月には、ゼネコン関係者と「自衛隊基地の強靭化」に関する意見交換会を開催し、全国に300ある自衛隊基地・駐屯地などが持つ約2万3000の建物などを強靭化するとしています。これについて、浜田防衛大臣は、5年間で約4兆円をかけて集中的に実施した上で、概ね10年後には全ての施設に対して出来るようにしたいと答えるとともに、強靭化の中身は、司令部など自衛隊の主要施設を地下化したり、構造を強化したり、核攻撃にも耐えられるようにするという基地強化計画となっています。
敵基地攻撃能力保有の現実的な危険は、米国の戦争に集団的自衛権の行使として日本が加わり、相手国に敵基地攻撃を行うことであります。そうなれば、相手国からの報復攻撃は避けられません。これについても、浜田防衛大臣は、「日本が集団的自衛権を行使した後に相手国から攻撃され、大規模な被害が生ずる可能性」を2月6日の衆院予算委員会で認めています。
このような中日本共産党は、憲法9条を生かして東アジアに平和をつくる外交ビジョンを提案しています。いまASEAN東南アジア諸国連合は、ASEAN10カ国と日米中など8カ国でつくる東アジアサミットを平和の枠組みとして強化し、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望し、ASEANインド太平洋構想を提唱しています。今、日本が取り組むべきは、ASEANの国々と協力し、東アジアサミットを強化し、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にして行くため、憲法9条を生かした徹底した平和外交こそ、取り組むべき政治の最大の仕事ではないでしょうか。
元自民党総裁の河野洋平さんは「決してあの過ちは繰り返さないと何十年も言い続けて、その結果がこの政策転換というのはあり得ない」と批判しており、評論家の故加藤周一さんはかつて「戦争の準備をすれば戦争になる確立が大きい。平和を望むならば、平和の準備をした方がいい」と述べておられました。軍事に軍事で構えると、無限の悪循環になるだけであり、今やるべきは、戦争の準備ではありません。徹底した外交努力で地域の緊張を緩和することこそ重要であります。
このような観点から、請願陳情第94号は採択すべきであり、不採択とした総務委員長報告に反対をいたします。
・原発回帰への方針転換に反対し、原発に頼らないエネルギー政策実施を求める請願
次に、請願陳情第96号「原発回帰への方針転換に反対し、原発に頼らないエネルギー政策実施を求める」請願でありますが、これは昨年12月22日、岸田首相を議長とするGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議において、新たな原発推進政策を含む基本方針をとりまとめ、今年2月に閣議決定されたものであります。これまで政府自身が、可能な限り原発依存度を低減するとしてきた立場を180度転換し、原発再稼働の加速、60年を超える長期運転、次世代革新炉への建て替えと原発を最大限活用することを含んだ方針となっています。
福島原発事故では、多くの人が避難を強いられ、暮らしの土台である地域の産業と文化が破壊され、今なお多くの人が苦しんでいます。このような危険をはらむ原発は、社会とは共存出来ません。3月4日に公表された日本世論調査会の調査では、原発の最大限活用を「評価しない」が64%、建設推進に「反対」が60%などで政府方針に反対が多数となっています。原発回帰への方針転換は、甚大な被害を及ぼし、いまも収束が見通せない福島原発事故の反省も教訓も投げ捨て、国民の生命と財産、日本の経済と社会を危険にさらす道であり、原発のリスクを軽視することは許されません。エネルギーの安定供給にとって重要なのは、自給率の向上です。核燃料は輸入資源であり、自給率向上にはなんら貢献しません。国内資源である再生可能エネルギーの利用拡大を進めるべきです。政府の試算では、国内の再エネの潜在能力は、現在の電力使用量の7倍以上もあります。気候危機打開のためには、省エネルギー対策と再エネの普及・拡大こそ重視されるべきであります。ところが、供給力が一時的に需要を上回る時に、太陽光発電などの出力を抑えて原発の運転を維持するという運用が行われています。原発という障害を無くしていくことが、再エネ拡大にとって不可欠となっています。
以上のような観点から、請願陳情第96号は採択すべきであり、不採択とした環境福祉委員長の報告に反対いたします。
・岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンターの指定管理者の指定について
最後に、議案第68号、岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンターの指定管理者を指定することに関し、議決を求めることについてでありますが、この議案については、第一に、これまでの県直営での管理費が1億16万円余だったものが、指定管理で7868万円余に2147万円余削減されます。特に、人件費は1529万円余の削減となっています。しかも正規職員が5人から4人に、非正規職員が7人から5人に削減となります。結局、経費の削減、人員の削減が指定管理に移行する最大の理由になっていることです。
第二に、非正規職員の5人の賃金は、時給1147円となっています。1日7.75時間、月20日働くとして、月収が17万7785円にしかなりません。一時金が出るとしても年収で216万円です。指定管理の期間は2年となっており、安定した賃金も雇用も確保出来ないのではないでしょうか。第三に指定管理によって学芸員が1人削減されることも問題です。
以上の理由から、議案第68号について、文教委員長の報告は原案を可とするものでありますが、委員長報告に反対いたします。
以上でありますが、何とぞご賛同賜りますようお願いいたしまして、反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。