2023年4月20日 新型コロナ対策調査特別委員会
盛岡市立病院・加藤院長の講演での質疑(大要)
【斉藤委員】
今日はありがとうございました。
病院には何度か訪問して、その度いろいろご指導いただきました。
今日の話に関わってですね、1つは、昨年オミクロン株で6波7波8波と、波の度に感染者が増えて死者が増加した、この要因というのはどのようにとらえられているのか。これが第一点です。
第二点は、いま佐々木朋和さんも問題を指摘しましたが、高齢者施設のクラスターが第8波で急増したというのが特徴でした。特に、施設内療養といのが半ば原則みたいになって、第8波で124人が施設内療養で亡くなっているんですね。これはほとんどクラスターの発生した介護施設です。職員も感染し、入所者も感染するという中でですね、施設内療養という、この実態が県の行政にも医療機関にもしっかり受け止められていなかったのではないか。私は議会でも取り上げましたが、酸素飽和度が6割7割に低下した入所者が入院できなかったと。実際にこの方は亡くなりました。そういう事態を今後絶対起こさせてはならないと思っていますが、先生のご見解を。
3つ目ですが、5類への移行なんですが、実は昨日の厚生労働省の専門家会議=アドバイザリーボードで、専門家の有志が「今後第9波というのは起こりえる」「第8波を超えるかもしれない」という見解を出しているんですね。だから、日本の場合には、決して収束の方向に向かっているのではないと。今後も新たな大きな波が起こりえると指摘していることは、きわめて重大な指摘だと。そのときに、政府はあまり科学的根拠なしに5類への移行を決めたのではないかと思います。先生が先ほど紹介した5類への移行の最大の理由―国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある状況とは考えられないと。私は事実は違うと思うんですよ。昨年の第8波は今まで最大の感染の規模でした。岩手でも12万人ですよ。そして四百数十人岩手では亡くなりました。いわば新しい波の度に感染が拡大し、死者が増えたという、ある意味国民にとってはますますコロナは厳しい状況になっているのではないか。そういう点で、この政府の方針だからそれに従わなくてはならないという側面はあると思いますけれども、一般の医療機関でこれに対応するときに、陰圧室とか動線を分けるとか、特に診療所などの場合には出口を別にしなかったら、その診療所ですぐクラスターが発生してしまうと。感染力が何倍も高いわけですから、私は単純な形で移行することはできないのではないか。移行するんだったら、そういう体制が病院や診療所でとられるような、条件整備を少なくとも先行すべきなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【加藤院長】
ありがとうございます。先生のご質問、本当に医療従事者の立場に立ったご意見だと思います。
それで、波の度に感染者が増えるというのは、それは今、イギリスは波の度に波が小さくなっていますというお話を先ほど少しいたしましたけれども、やはり国の中の感染者の割合が違うんだと思うんです。ですから、通常のインフルエンザとか、収束していくのは、免疫を持った人が持たない人を取り囲むようにしていけば、取り囲まれた感染した人は他にうつせませんので、そこで収まっていくんだよねという考え方なわけです。だから今の日本の感染の状況は、3000万人とかといっても、まだ国の半分以上にはなっていませんので、いまマスクを外していますけれども、こういう状態で密着したようなところでワーっとやっていれば、あるいは、職場でみんなで同じ時間に歯みがきなんかやればアウトなわけです。そういう状況だということは確かだと思うんですね。
コロナ禍で、アドバイザリーボードの話をされて、それはアドバイザリーボードに出ているメンバーの中での、いわゆる感染疫学とか感染症を担当されている先生方は、前からそのことを言っておられるのです。季節性のインフルエンザと同じにしちゃだめだと、感染力が全然違うからと、それは盛んに言っていたんですけれども、アドバイザリーボードの中には、医療系じゃない人たちもたくさん入っています。それで、国としても、直接国から聞いたわけじゃないんですけれども、噂ではですね、財務省とかも、11兆円ぐらい使ったので、もう勘弁してくれと。それから、ある県庁の部長さんの意見としては、もう風を変えたいと。ずっと3年間やってきて、何とかしてほしい、流れを変えてほしいという意見もあることは事実なんですね。実際いま盛岡駅に行っても、今のオミクロン、デルタのときは違いました。あれはやはり若い人がデルタにともなう肺炎、これは重症だったんです。オミクロンになってからは、エクモという機械を回していないんですよ一人も。だからオミクロンはここで止まってしまうわけです。でも全身状態が悪くなって、ご高齢・超ご高齢の方は大変な思いをなさるという状況なんですね。ですから、国民・県民の中で、意識的に世代によってだいぶそれに対するとらえ方というのは変わってきているような状況は確かにあると思うんですね。ただやはり、ご高齢の方たちが大変な思いをされるということは、とても許されることじゃないですので、そこをどうやってレスキューしていくかということはあると思います。
やはりデルタのときは、感染すると「なんで感染したんだ」と、最初の方なんかは村八分みたいにされて大変な思いをされていたんですよ。今は「感染は仕方ない」と。子どもからうつってしまいますから。だけど感染したら広げないでねということをみんなで言うようになった。ですから、オミクロンの場合は、朝ちょっと喉痛いなと、これはもう感染しているんです。だからそれは絶対に病院に来ないでということをやって、幸いにして盛岡市立病院は、病院の中でそういうクラスターは起こらなかったんですけれども、やはり介護施設は働いている方の数はすごく限られているんですよ。だから介護施設に入所されている方お一人病院に連れて行ったりすると、そういう業務とかものすごく負担になるそうなんです。ですから、なかなか病院にちょっと来ないでくれ、代わりで何かするからということが現状では難しいということもあります。ですから、いずれ介護施設のところでのご高齢の方たちが生命の危険を及ぼすようなことを何とか避けたいと、先ほどもスライドでも出したんですけれども、そこは介護施設ともっと連携して、すぐ送ってもらうとか、あるいはこっちから病院車出してお迎えに行くとか、そういった形で、今から介護施設の職員の数を増やせと言われてもなかなか難しい問題で、とりあえず明日からできることとしては、もっともっと病院と連携をしてですね、何かあったらすぐ対応をこちらもしますということをやると。あとは、介護施設ではかかりつけの病院がそこの施設をケアされている方けっこうありますから、そういうところで施設と病院とで連携してもらって、すぐ受け入れるとか、もし難しいなら当院に送っていただくとか、そういうようなことでやっていくしかないかなと思っています。
感染をやっている先生方は、先生と同じ意見で、このままではダメだ、いやそうじゃないという話は、去年の8月くらいから出ていますので、国全体を考えるときに、やはり経済も回さなくちゃならない、国民を守らなくちゃならないということがあって、そこは私は決めることじゃないんですけれども、決まっていくんだろうなと思いますので。
【斉藤委員】
ありがとうございました。
あと1点だけ。後遺症対策です。感染した人の少なくとも1割以上、2割とも言われていますが、半年・1年経っても症状が残っていると。これもインフルエンザとの決定的な違いだと思うんですね。私は、専門外来とか専門的な相談窓口というのが必要だし、それで仕事ができなくなったり離職した人たちも出ているんですね。きちんと医療で診断されれば、それなりに職場なんかも対応できると思うんですが、そういう専門外来、専門窓口の設置について、入院された患者さんのフォローアップも含めてどんな状況でしょうか。
【加藤院長】
私どもの病院では、超重症者という方はお引き受けしてこなかったんですね。もちろん全身症状の重い軽いに関わらず、全身にウイルスが感染しますので、普通の季節性インフルエンザでも、採血してみると肝機能障害が出てくることはよくあるんです。ですから、ウイルスは全身に作用していますから、当然コロナでもいま言われているような、脳細胞自体の機能に障害を起こすとかさまざまなことが言われていますので、当院の場合だけ言いますと、特別外来ということではないんですが、そういったコロナで調子が悪いという方々は、当院の脳神経内科で拝見するということはやっております。ただ、新聞などでしか知識がないんですが、なかなかそれをどうしたらいいのか、どれくらいの期間診たら治るのか、分からないこともたくさんあるわけですよね。それでも、少なくともそれに対して、さまざまな症状がある方に対して、何らかの今できるお薬を投与するとか、そういったことは当院でもこれから続けていくんですけれども、国全体としてそういった特殊外来をきちんと設置せよという話はこれから出てくると思うんですけれども、それに対して中央病院さんとか日赤さんとか私どものところも、対応できることはやっていきたいと思いますが、とりあえず今の段階ではそういう訴えがあった人に対しては、そういうところで対応させていただいているという現状はあると思いますし、十分じゃないかも分からないですけれども対応しておりますし、他の施設でもご相談があればできるだけのことは対応されているのは現状かなと思いますけれども、分からないことをやっているということも事実ですので、進めていければと思っております。