2023年4月28日 臨時県議会
議案に対する質疑
(大要)


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。2023年度岩手県一般会計補正予算(第1号)について質問します。
 初めに、今回の物価高騰対策の補正予算を全国に先駆けて提案したことを高く評価するものであります。今回の補正予算の提案について、知事の思い、意気込みをお聞かせください。また、食料品の値上げやさらなる電気料金の値上げなど物価高騰の現状と県民の暮らし、事業者の経営に与えている影響をどうのように受け止めているでしょうか。中小企業等へのさらなる支援策も必要と考えますがどのように考えているでしょうか。

【達増知事】
 斉藤信議員のご質問にお答え申し上げます。
 まず、今般の補正予算案についてですが、エネルギー、原材料、資材等の価格の上昇は、県民生活や地域経済に大きな影響を与えており、県はこれまで類似の補正予算により生活困窮者や子育て世帯への生活者支援、中小企業者・農林漁業者等への幅広い支援を実施してきたところであります。
 今般これらの対策に加え、国による予備費を活用した原油価格・物価高騰対策に、全国に先駆けて呼応し、LPガス使用者に対する負担軽減策、学校給食費の高騰にともなう保護者の負担軽減策、運輸・交通事業者への事業継続支援、畜産経営体等に対する配合飼料等の負担軽減策など、緊急的な対応が必要となる予算を計上したところであります。これらの施策を迅速かつ確実に実施し、県民一人ひとりの暮らし・仕事・学びに寄り添った支援を行ってまいります。
 次に、物価高騰の現状の受け止めと中小企業等へのさらなる支援策についてですが、県が先月公表した岩手県の景況では、県内の景気は緩やかな持ち直しの動きが見られるとしているものの、盛岡市の消費者物価指数は、食料品や光熱費等の上昇の影響を受け、令和4年4月以降、前年同月比+2.0%を超える高い水準で推移しており、直近の3月は3.6%の上昇となっています。また、県が商工指導団体と連携して実施している事業者調査でも、光熱費や原材料費の高騰で利益が減少しているといった声が多く寄せられるなど、県民や事業者への影響は非常に大きいものと認識しております。原油価格・物価高騰は長期化が見込まれるという見方もあることから、今後も県民生活や地域経済への影響、国の支援策の動向などの状況を見極め、中小企業者等への支援も含め、県民一人ひとりに寄り添った必要な支援策を機動的に講じてまいります。

【斉藤議員】
 具体的な課題について質問します。
 第一に、LPガス価格高騰対策費として13億2466万円余計上されています。LPガス料金の値上げの実態はどうなっているでしょうか。平均的な家庭で昨年1年間での値上げ高騰分はどう試算されているでしょうか。今回支援策では、高騰分の2分の1を支援することが基本ですが、平均的な家庭での高騰分、支援分はどうなるでしょうか。

【復興防災部長】
 LPガスの価格高騰に対する支援についてでありますが、一般財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センターが公表している岩手県の家庭用LPガスの10立方メートルの小売価格は、比較的価格が安定していた令和2年12月の9,072円から、平成元年度以降でもっとも高い価格となった令和4年12月には10,117円、2年間で1,045円、約11.5%上昇しています。一般家庭におけるLPガスの使用形態は、調理用コンロのみを使用する世帯や、給湯器や暖房器具でも使用する世帯などさまざまであることから、平均的な家庭の使用量をお示しすることは難しいところであります。なお、複数の料金比較サイト等によれば、4人世帯の使用量は7.1立方メートルから13.5立方メートルなどと推計されています。
 一般家庭での使用量を10立方メートルと仮定し、先ほど答弁申し上げました令和2年12月と令和4年12月の小売価格を比較した場合の上昇額1,045円を1ヶ月あたりの値上がり額として試算いたしますと、年間では約12,000円の負担増となっています。こうした一般家庭への支援額は、1ヶ月あたり500円、6ヶ月分で3,000円となります。

【斉藤議員】
 第二に、バス事業者・タクシー事業者への運行支援緊急対策交付金として2億433万円が計上されています。新型コロナ感染拡大による利用者の減少の実態、経営の実態をどう把握しているでしょうか。今回の支援交付金は乗り合いバス1台当たり25.2万円、タクシー1台当たり最大3.5万円となっていますが、その根拠は何でしょうか。

【ふるさと振興部長】
 バス・タクシー事業者の経営の実態と交付金の考え方についてでございます。県内の主な乗り合いバス事業者3者における令和4年4月から令和5年2月までの利用人員は約1344万人とコロナ前の令和元年度同期比で30.5%の減、また、同期間の運賃収入は36億2,500万円余と令和元年度の同期比で28.5%の減となっております。また、タクシーについてでありますが、岩手県タクシー協会の調査では、利用人員のデータがございませんが、令和4年4月から令和5年2月までの運賃収入につきましては、約64億5,000万円余と令和元年度の同期比で22.5%の減となっているところでございます。
 次に、運行支援緊急対策交付金の根拠についてでございますが、バス事業者に対する支援については、安全かつ安定した運行を図るための車両を維持する相当分として、車両1台あたり21万2千円、燃油費高騰分として40,000円を合わせた25万2千円を、また、タクシー事業者に対する支援につきましては、車両維持相当分として、車両1台あたり25,000円、燃料費高騰分として1万円を合わせた35,000円を、それぞれ上期相当分として支援しようとするものでございます。

【斉藤議員】
 第三に、トラック事業者に対する運行支援緊急対策費が3億2276万円余、1台当たり2.3万円。貸し切りバス事業者運行支援の対策交付金が2660万円、車両1台当たり4万円計上されています。
 それぞれ物価高騰と新型コロナ感染等による影響の実態を示してください。観光客数はかなりの程度回復してきているようですが、岩手県の場合はどうなっているでしょうか。貸し切りバスの運行状況を含めて示してください。

【商工労働観光部長】
 トラック・貸し切りバス事業者の物価高騰による影響等についてでありますが、トラック事業者については、全日本トラック協会が四半期ごとに行っている調査の直近となる今年2月の調査結果では、今後のトラック運送業界の景況感見通しについて、「悪化する」等の回答が約5割となっており、燃料費および物価の高騰にともなう輸送原価の増加が経営に深刻な影響を及ぼしていると受け止めております。
 観光客の回復状況につきましては、観光庁宿泊旅行統計調査によると、令和4年9月10月の日本人の宿泊者数がコロナ禍前の令和元年度を上回る状況となり、11月および12月においても令和元年とほぼ同水準となっているところです。
 貸し切りバス事業者への聞き取りでは、インバウンドを含めた利用が増えているものの、燃料費の高騰の負担が重くのしかかっている状況とのことでございます。なお、貸し切りバスの運行状況に関するデータにつきましては、県およびバス協会等におきましても持ち合わせていないところでございます。

【斉藤議員】
最後に、物価高騰対策の地方創生臨時交付金は、岩手県分として約61億円交付される見込みですが、今回の補正で約46億円を活用します。約14億円が残額となりますが、財政調整基金の活用も含めて、今回提案されていない中小企業等への物価高騰対策など検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。

【総務部長】
 今後の対策等についてでありますが、今回提案した補正予算案には、原油価格・物価高騰対策として、緊急的に対応が必要な事業を盛り込んでおり、その結果、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の残額は、約14億円となっているところです。議員ご指摘の中小企業等の物価高騰対策につきましては、現在事業継続のための緊急支援金により支援しているところでございますが、事業期間が6月までとなっており、当該事業の実績・成果や今後の状況等を見極めながら必要な対応等について継続的に検討していく必要があると考えております。
 追加的な対策の実施にあたっては、現時点で重点支援地方交付金の残額の活用を想定しているところでございますが、対策の規模・内容によっては、財源が不足する可能性があり、全国知事会等と連携しながら、必要な財源措置について引き続き国に要請してまいります。

<再質問>

【斉藤議員】
 それでは再質問いたします。
 全国に先駆けてこうした物価高騰対策を打ち出したということで、LPガスに対する軽減策などについてはですね、全国から問い合わせがあったということも聞いております。
 そこで、今回の補正予算に関わって、事業者・商工団体調査をいたしました。ゼロゼロ融資の返済時期を迎えて、倒産・廃業が増加をしていると。一方で、いま従業員、人が確保できないということで、赤字の中小企業も賃上げせざるを得ないと。もちろん5割ぐらいはしたくても資金が全くないという状況もお聞きをしてまいりました。そこで、いま総務部長からも答弁ありましたけれども、2月補正で措置した中小企業事業継続支援金、これは昨年度分の補てんなんですね。新年度分はないわけです。今の中小企業が直面している深刻な状況から見れば、新年度分もきちんと中小企業対策を措置をすべきではないのかと。地方創生臨時交付金の残額約14億円なんですけれども、もちろんこれだけでは足りないのもはっきりしています。総務部長の答弁の通り、ぜひ国に対してさらなる交付金の増額を求めると同時に、必要なら財政調整基金も活用して早く打ち出すことが必要なのではないか。このことについて商工労働観光部長、総務部長にお聞きしたい。

【商工労働観光部長】
 県内の中小事業者につきましては、3年におよぶ新型コロナウイルス感染症の流行の影響、物価高騰の影響で非常に経営環境は厳しい状況と受け止めております。
 そしてまた、賃上げの対応というのも大きな課題になっていると受け止めておりまして、まずは、先ほど総務部長も答弁しておりますが、2月補正で措置しました支援金の方を、6月まで受付期間になっておりますので、それを活用いただいたうえで、賃上げへの対応ということも含めまして、どういう支援が一番打倒かというあたり、しっかりと検討してまいりたいと考えております。
【総務部長】
 今回の補正予算につきましては、現時点におきまして打てる手は打ったと考えておりまして、全国に先駆けて県民の皆さんや事業者の方々に物価高騰対策をお届けできるのではないかと思っております。
 一方、現在の財政調整基金残高でございますが、約211億円ということでございまして、財政目標にしている177億円を約34億円上回る水準にはございますけれども、残高には来年度以降発生する普通交付税の減額精算への対応分として必要となる約47億円が含まれてございまして、その活用については、今後の持続可能な行財政基盤の構築の観点から慎重な対応が必要かなと考えてございます。今後につきましては、経済状況をはじめさまざまな状況を勘案し、また、他県の動きなども見ながら時期をとらえて適切に対応したいと考えてございますが、一般論とはなりますが、生活者支援、事業者支援など、さらなる物価高騰対策が必要となる場合におきましては、必要な財源確保にかかる国への要請等を含め、躊躇なく、また時期を失することなく、引き続き適時適切に追加の対応を行ってまいります。

<再々質問>

【斉藤議員】
 総務部長の最初は慎重な答弁でしたが、最後はやる気を示すような答弁だったと。
 昨年度、特に知事が思い入れを入れた子育て世帯に対する臨時給付金、これは2回にわたってやりましたが、こうした課題も含めて、新年度もそういう取り組みが必要なのではないかと。これは要望にとどめて質問は終わります。