2023年7月5日 農林水産委員会
高田一郎県議の農林水産部に対する質疑
(大要)


・果樹の凍霜害対策について

(高田委員)
 4月下旬から5月中旬に県内に被害をもたらした果樹の凍霜害の被害の実態をどう把握されているか。

(農産園芸課総括課長)
 県内では4月から5月中旬に最低気温が零点以下となったことなどによりリンゴやブドウの果樹について19市町村において、結実不良や果実の表面に「さび」と呼ばれる障害が発生する被害となった。その被害面積は6月22日現在607ヘクタール、県内栽培面積の2割程度が被害を受けている。リンゴは523ヘクタールと被害全体の約9割、盛岡市は215ヘクタール、花巻市が62ヘクタール、二戸市、紫波町がそれぞれ48ヘクタール、ブドウは被害面積67ヘクタールでそのほとんどが紫波町である。

(高田委員)
 花泉のなし農家は「8割の被害でこれまで経験したことがない、息子が会社を辞めて就農したばかり」JAいわて平泉の果樹部会長は「2〜3割の被害だが品質の低下が懸念されており、さらに大きな被害になるだろう」と訴えています。果樹被害は病害虫防除や徒長枝の整理などコストや手間がかかる、被災農家は減収補てんやかかりまし経費への支援を求めているが県の支援策を示せ。

(団体指導課総括課長)
 これまで収入保険や果樹共済への加入を進めてきた。県においても研修や広報の場を通じて組合の取り組みを支援している。今後も加入促進を呼びかけていきたい。
(農産園芸課総括課長)
 県は農作物の被害が合計で1億円以上の場合、県単独事業の「農作物復旧対策事業」を発動し、緊急病害虫防除対策や生育回復にかかわる経費の助成を行っている。令和3年度において、発生が懸念される病害虫の緊急薬剤散布に要した薬剤の購入費の支援、品質低下のための資材購入費の支援、次年度人工授粉用の花粉購入費を支援したところ。今後の調査の結果により事業の実施要件に合致した場合には、速やかに事業を発動できるよう令和3年度に実施した対策を参考に必要な検討を進めていく。

(高田委員)
 今年の生産が大幅に落ち込むことが確実でも来年の生産に向けて取り組まなければならない。被災農家は一昨年に続く被害であり、物価高騰も重なっている。従来にない支援策となるようにすべきだ。
 県内における凍霜害は平成10年以降、1億円を超える被害は平成10年、18年、20年、令和3年となっている。今年の開花が2週間早くなるなど気候変動もありリスクが高まるのではないか。農研機構で5メートル四方の単位で特定の地域の最低気温を推計する手法を開発された。事前に防霜ファンや霜対策の液肥散布など予防対策が行われれば被害の軽減につながる。被害を最小限抑えられる予防対策を抜本的に強化すべきではないか。

(農産園芸課総括課長)
 防霜ファンなどは国庫補助がある。果樹農家への情報提起をしながら予防対策を強めたい。

(高田委員)
 防霜ファンは国の支援があってもそもそも工事費の負担が大きい。福島県では独自の支援も行っているので検討してほしい。

・子牛価格の下落対策について

(高田委員)
 6月県南市場の平均価格は51.5万円となり、中には30万円台となっている。
 「病弱な父を助けようと農協を辞めた年に大幅下落となり妻が仕事に出た」と訴えている。繁殖農家の離農、経営の実態はどうなっているか。

(畜産課総括課長)
 県内の子牛の市場価格は下落しており厳しい経営状況が続いている。肥育農家が子牛70万円台の時の出荷となっており、肥料高騰もあり購入抑制が働いている。県内の肉用牛戸数は3650戸となっており前年比210戸マイナスとなっている。子牛価格も全国平均60万割れとの報道もあるように厳しい経営状況が続いている。

(高田委員)
 現出荷肥育牛が70万円強、肥料、資材高騰などもあり肥育農家の経営が厳しいことにもある。しかし、子牛価格の下落には和子牛生産者臨時経営支援事業があるが発動されない。現在のセーフティネットが機能していないのではないか。その改善が必要だ。

(畜産課総括課長)
 肉用子牛生産者補給金は子牛価格が全国平均で60万を下回ったときになっており、まだ発動されていないが、昨年から臨時的に行われている「和子牛生産者臨時経営支援事業」は、市場取引されている和牛子牛のブロック別平均価格が発動する基準を下回った場合に、当該平均販売価格と発動基準の差額4分の3を支援することになっている。発動基準は黒毛和種60万円、褐毛和種55万円、その他専用種35万円。6月分の市場価格が出ていないが東北ブロックでは発動できるかもしれない。厳しい畜産情勢であり生産者が安心して営農できるよう価格対策を拡充されるよう知事会などを通じて国に働き掛けていきたい。

・「農業基本法」中間とりまとめの対応について

(高田委員)
 ウクライナ戦争、物価高騰、コロナを経験し食糧自給率を引き上げることが極めて重要だ。岸田政権はこれまでの農政を検証し新しい「農業基本法を」を通常国会に提案する予定だ。農政転換の転機とすべきだ。先月「中間とりまとめ」が公表されたがどう評価しているか。

(企画課長)
 中間とりまとめは、食糧の自給率向上へ国内の生産を増やすことを明記されている。
 農業は岩手の第一次産業でもあり本県の自給率は100%超えている。国内生産を増やし自給率を高めていくためにも国に予算拡充を求めて生きたい。

(高田委員)
 5年ごとに農業基本法の見直しされてきた。毎回自給率の目標を掲げるが達成したことはない。どんどん下がって現在は38%になっている。輸入自由化と価格対策をなくし市場原理に基づいた価格対策となっていることだ。なぜ自給率が下がったかの検証がないのではないか。

(農林水産部長)
 価格対策は重要なことでもある。「中間とりまとめ」は、食糧の安全保障に言及し、国内での生産増やすことを掲げている国の動向を注視したい。今後とも岩手県の重要な産業には変わりない。国にしっかりと意欲を持って生産できる農政となるよう求めていきたい。