2023年10月17日 9月定例県議会本会議
高田一郎県議の議案に対する質疑
(大要)


・物価高騰の県民への影響、今後の対策について

【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。
 議案第1号岩手県一般会計補正予算(第3号)、議案第11号、行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行条例の一部を改正する条例、議案第16号、訴えの提起に関し議決を求めることについて質問いたします。
 まず、議案第1号岩手県一般会計補正予算(第3号)は、大雨・霜被害などの復旧費、新型コロナ感染対策、そして物価高騰対策などの予算を計上するなど総額96.8億円余の予算となりました。
 まず知事に質問します。
 第1に、物価高騰から県民の暮らしと事業者を守ることは喫緊の課題でもあります。
 原油価格や物価高騰への県民と県内経済への影響をどう把握されているでしょうか。
 今回の補正予算には指定管理施設や地域交通の運行支援を計上し生活者や事業支援は国の経済対策と連動して早急に対応すると述べてきました。しかし、政府の経済対策は今月中にまとめるとしており、これでは年内に支援が届く状況にありません。あまりにも遅すぎる対応であります。県の物価高騰対策は全国に先駆けてこの間取り組まれましたが、4月〜9月までの対策となっています。追加対策の時期、見通しを示すべきと考えますが知事の考えを伺います。

【達増知事】
 原油価格・物価高騰の県民と県内経済への影響についてでありますが、県が先月公表した岩手県の景況では、「県内の景気は緩やかな持ち直しの動きが続いている」としているものの、盛岡市の消費者物価指数は、食料品や光熱費等の上昇の影響を受け、令和4年10月以降+3.0%を超える水準で推移しており、直近の8月は4.7%の上昇となったところです。また、県が商工指導団体と連携して実施しているエネルギー価格・物価高騰等にともなう事業者の影響調査においても、「光熱費や原材料費の高騰で利益が減少している」といった声が多く寄せられるなど、県民や事業者への影響は非常に大きいものと認識しております。
 追加の対策についてでありますが、今年度に入り原油価格・物価高騰対策として、全国に先駆けた4月臨時会の第1号、6月定例会の第2号と2度の補正予算を編成し、低所得世帯および子育て世帯をはじめとした生活者支援、中小企業者や運輸・交通事業者、介護・福祉・医療施設や農業者等幅広い事業者支援を実施してまいりました。
 今般の物価高騰のように、全国的また長期的に影響が及ぶような課題に対しては、必要な財源を確保しながら国や市町村などと有機的に連動を図り、臨機に対応していく必要があるものと認識しております。このため、今回の第3号補正予算案では、地域公共交通の運行支援や指定管理施設の負担軽減策などの経費について、まずは先行して計上したところであり、現在検討が進められている国の経済対策の内容や地方財政措置の規模等を見極めつつ、県としてもこれに呼応したさらなる生活者支援・事業者支援等について補正予算案の編成を含め速やかに対応してまいります。

・弾道ミサイルの飛来を想定した総合防災訓練費について

【高田議員】
 次に具体的な事業について質問します。
 第1に、弾道ミサイルの飛来を想定した住民避難訓練を実施する総合防災訓練費として167.3万円余を計上しています。武力攻撃を想定するものであり、防災・避難訓練とは全く別物であります。訓練内容や規模など具体的内容について示してください。

【復興防災部長】
 弾道ミサイルの飛来を想定した住民避難訓練についてでありますが、予定している訓練は、国外で弾道ミサイルが発射され、我が国に飛来する可能性があるとの想定で行うものであり、訓練では、住民等への情報伝達や堅牢な建物への避難等を行うこととしております。
 実施時期は、来年2月8日木曜日、場所は盛岡市内において実施することとしておりますが、具体の実施場所や規模、内容など詳細につきましては、今後国や盛岡市と協議のうえ決定していくこととしております。

・介護施設等整備事業費について

【高田議員】
 第2に、介護施設等整備事業費3.33億円余は、市町村が行う地域密着型サービス等の施設整備等に要する経費であります。今回の補正予算でどの程度の施設整備になるのでしょうか。県内の特養ホームの早期入所待機者は722人(4月1日現在)と先日公表されましたが、待機者はこれで解消されるのでしょうか。第8期の介護保険事業支援計画の最終年度となっていますが、整備状況はどうなるのでしょうか。

【保健福祉部長】
 今般の補正予算には、地域密着型特別養護老人ホームや短期入所生活介護事業所など143床分の整備に関する補助経費を計上しております。今年度は、特別養護老人ホームが265床、認知症高齢者グループホームが99床開設する予定であり、こうした整備が入所待機者の解消に資するものと考えております。
 また、第8期介護保険事業支援計画における特別養護老人ホームの整備については、504床の計画にたいし、実績は今年度分を含め319床となる見込みとなっております。
 県といたしましては、引き続き市町村が計画に基づいて行う施設整備に対する補助を行うとともに、総合的に人材確保対策を進めることにより、介護サービス提供体制の充実に努めてまいります。

・こども家庭センターについて

【高田議員】
 第3に、「こども家庭センター」を整備するために1.09億円余が計上されております。「こども家庭センター」は、妊娠、出産、子育てまで伴走的に支援し、虐待防止につなげるものであり、児童福祉法改正に伴って2024年4月からすべての市町村での設置について努力義務となりました。平泉町では、新たに社会福祉士を採用する予定と伺っています。県内の設置状況及び課題をどう県は把握されているのでしょうか。

【保健福祉部長】
 令和6年4月の改正児童福祉法の施行にともないまして、こども家庭センターの設置が市町村の努力義務とされており、それに向けて現在26市町村において設置の準備を進めているところであります。
 市町村が整備を円滑に進められるよう、国庫を財源とした基金を活用し、施設整備費や開設準備費への補助を実施するため今般新たに所要の予算を計上するものであります。
 こども家庭センターは、母子保健と児童福祉の相談機能を備え、妊産婦・子育て世帯、子どもにたいし一体的支援を提供する必要があるため、両部門の相談に対応できる職員の育成などの支援が主な課題と考えており、各市町村へのヒアリングなどによる状況把握に努めるとともに、今後専門職員向けの研修を実施するなど、市町村を支援してまいります。

・新型コロナウイルス感染対策費について

【高田議員】
 第4に、新型コロナウイルス感染対策費として11.47億円が計上されています。
@緊急時介護人材確保、職場環境復旧等支援事業費補助(16.37億円)は、感染者が発生した場合の人材確保や衛生用品などの係まし経費であります。これまでの実績及び申請が1月末となっているその理由を示してください。
A新型インフルエンザ患者入院医療機関等設備整備費補助(8.42億円)は、患者数の増加に対応し入院医療機関や外来対応機関の整備を行うものであり、これは3月末までに契約納品したものが対象となります。今後の感染拡大時への対応に課題はないのでしょうか。

【保健福祉部長】
 緊急時介護人材確保職場環境復旧等支援事業費補助についてでありますが、この補助金の交付実績は昨年度は241件・4億8191万円余となっており、令和5年度は、令和4年度中に感染者が発生し補助金の申請が今年度になったものも含め、9月末時点で53件・4億3983万円余を交付しております。また、大規模なクラスターの発生により、申請額が基準単価を上回り、国への個別協議を必要とする場合もあることから、その協議に要する期間を考慮するとともに、他県の状況も参考にし、申請期限を1月末としているものであります。
 次に、新型インフルエンザ患者入院医療機関等設備整備費補助についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行する前においては、入院医療機関は29、外来に対応する診療検査医療機関は435でありましたが、令和5年5月8日の5類移行後、県内医療機関の協力をいただきながら、9月末時点で入院医療機関は80、外来対応医療機関は483まで拡大したところであります。7月からの感染拡大時においては、定点報告数が1定点あたり35.24人と季節性インフルエンザの警報値を超えるような流行状況となりましたが、入院医療については一部の医療圏において負荷が高まったものの、個別の病床拡大により対応ができ、また外来医療についても受診困難といった状況はみられなかったことから、医療提供体制の逼迫は生じなかったものと考えておりますが、今般国の当該補助の一部が令和6年3月まで延長され、3月までの対象となったため、これも活用しつつ引き続き医療体制の充実に取り組んでまいります。

・中国の水産物輸入停止への対応について

【高田議員】
 第5に、県産品の販路開拓を実施する経費に538.8万円計上されています。水産物を輸入停止している中国への再開を想定して準備を整えるとしていますが、その具体的な取り組み状況を示してください。
 「北海道のホタテ禁輸の影響は大きく、滞留による値崩れがおき県内にも広がる」と漁業関係者から懸念が広がっています。
@中国・香港の輸出実績及び輸入規制による影響をどう把握されているでしょうか。
A早期の賠償を求めていくべきでありますが、相談窓口を含め県の対応を示してください。

【商工労働観光部長】
 水産加工品の輸出再開に向けた取り組みについてでありますが、中国が本年8月24日に、日本産水産物の全面輸入停止措置をとって以降、県内の水産加工業者におきましても、中国国内での商談の中止や輸出先を他国に切り替えたこと、また、水産加工品以外の物の販売も落ち込むなどの影響が生じていると承知しているところでございます。
 このため、全国知事会を通じて、この措置の即時撤廃に向けた政府間交渉を進めることなどについて、緊急申し入れとして8月31日に行っております。
 県では、平成17年に大連経済事務所を設置して、水産加工品を含む県産品の販路拡大を進め、地方政府や経済界とのつながりを強めてきたところでございます。
 このような状況から、中国における措置解除後の輸出再開を見据えて、これらの方々に本県の水産加工品の安全性などを直接説明するとともに、あらゆる県産品の購入の継続を働きかける機会を設けるための経費を今般の補正予算案として計上したものでございます。
【農林水産部長】
 中国・香港への輸出実績と輸入規制による影響についてでありますが、県とジェトロと行っている貿易等実態調査によれば、昨年の中国・香港への県産水産物の輸出額は約7億円となっています。
 中国の輸入停止措置等による影響について、ホタテガイの入札価格に下落が見られたものの、中国の輸入停止措置による影響か現時点で判断できていないところでございます。
 一方、水産加工業者の一部で、イナダやスケソウダラ等の輸出ができず、在庫となる影響が生じていると把握しております。
 県の対応についてでありますが、県では、漁業者等からの相談に対応するため、先月、県庁と広域振興局に相談窓口を設置しており、昨日現在、「漁業者」から1件、「事業者」から4件の相談があったところであります。
 主な相談内容は「風評被害が生じた場合の損害賠償の相談先」や「中国の輸出停止による損害賠償、販路開拓」などとなっております。
 県では国に対し、支援策や損害賠償に関する説明会の開催を要請し、漁業者向けは説明会が開催されたほか、水産加工業者向けはこれから開催が予定されております。引き続き漁業者等からの相談に対応するなど、関係団体と連携しながら漁業者、水産加工業者の事業継続、賠償等について万全の対応が行われるよう取り組んでまいります。

・物価高騰にかかる県営施設の光熱費について

【高田議員】
 第6に、原油価格・物価高騰による影響が見込まれる県営スポーツ施設などの光熱費が計上されています。県が管理する施設への全体の影響はどう把握されているのでしょうか。
 今夏は、熱中症で救急搬送される住民が増加しました。冷房を設置できずに電気料金高騰で利用を抑制したことが原因とも指摘されています。東北電力は、今年度の通期の業績予測を2000億円の黒字と過去最高益を更新する見通しを示しました。一切発電していない日本原子力発電の原発に大手電力会社が巨額の基本料金まで支払っていることも明らかになっております。電気料金の見直しを求めるべきと考えますがいかがでしょうか。

【総務部長】
 県が管理する施設への原油価格・物価高騰による影響についてでありますが、原油価格や価格の高騰による光熱費の負担増は、施設の管理運営に大きな影響を及ぼすことから、県が直接管理する県庁舎や地区合同庁舎、県立学校などの公共施設については、所管部局で年間の影響を見込み、令和5年度当初予算において7億5600万円余を措置したところであります。
 一方、県営スポーツ施設やいわて県民情報交流センターなどの指定管理施設については、利用状況が光熱費に影響することから、使用実績も踏まえつつ、今定例会で1億1400万円余を提案させていただいているところであり、現時点で影響額の合計は8億7000万円余となっているところでございます。
【商工労働観光部長】
 電気料金の見直しについてでありますが、東北電力の今期の業績予想につきましては、同社が実際に要した燃料費の上昇による経費負担増、いわゆる赤字部分が昨年の業績に反映されているといったタイムラグを要因とするものであり、電気料金を引き下げるまでには必ずしも至っていない状況であると聞いております。
 また、このような状況は東北電力に限らず、全国的な状況でもあると聞いており、引き続き東北電力を含めた全国の状況を注視しながら必要な対応について検討してまいります。

・生活に困窮する外国人に対するマイナカード事務について

【高田議員】
 議案第11号は、行政手続きにおける識別するための番号の利用等に関する法律の施行条例の一部を改正する条例であります。生活に困窮する外国人に対するマイナカード事務を追加するものです。
@県内におけるマイナカードの交付率と保有率はどうなっているか。
Aトラブルの発生状況をどう把握されているのでしょうか。

【ふるさと振興部長】
 マイナンバーカードの交付率についてでございますが、令和5年8月末時点で、県内の交付枚数は907,350枚となっており、交付率は令和5年1月1日時点の人口の76.3%となっております。また、保有枚数は860,217枚、保有率は72.3%となっております。
 次にトラブルの発生状況の把握ですが、9月末時点で盛岡市における3件の紐づけ誤りの事例を把握したところでございます。

・県営住宅入居者への明け渡し等の請求について

【高田議員】
 最後に議案第16号は、訴えの提起に関し議決を求めるものです。
 1名の県営住宅入居者に対して県営住宅の明け渡し及び滞納家賃等の支払い請求を求めるものであります。この入居者は働いているのでしょうか。誠意はなかったのでしょうか。
 公営住宅は所得の少ない方に対する福祉住宅です。福祉の機関につないで丁寧な支援も必要でありましたが、どのように対応されたのでしょうか。

【県土整備部長】
 県営住宅の家賃滞納者に対する訴えの提起についてでありますが、通常家賃滞納者に対しては面談等を行い、入居者が病気で働けないなど生活の困窮等が把握できた場合は、必要に応じて家賃の減免や福祉機関等につなぐといった対応を行うこととしてございます。
 当該入居者は収入未申告であり、過去に分納の申し出があった際に、あわせて収入申告するよう求めたところでありますが、その後連絡が途絶え、居住しているにも関わらず、度重なる訪問や電話連絡等に対しても応答がないことから、就業状況等の生活実態が把握できず、減免や福祉等との連携などの対応もできない状況にあり、やむを得ず訴えを提起することとしたものでございます。

<再質問>

・弾道ミサイルを想定した訓練について

【高田議員】
 弾道ミサイルの訓練の問題について伺いたいと思います。
 今回の訓練は、我が国に着弾するのではなくて、飛来を想定した訓練だという説明でありました。いま我が国の防衛政策を見ると、攻撃能力を持つ、あるいは自衛隊の基地を強靱化すると。そして訓練に次ぐ訓練、この1年間で39カ所の避難訓練が予定されているということもうかがいました。いま訓練で県民の命が本当に守れるのかと。本当に命がけで外交交渉をするという姿勢こそ大事だと思うんですけれども、これについて知事の考えをうかがいたいと思います。

【達増知事】
 国民保護事案における県の対応等については、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法があり、その下で岩手県も岩手県国民保護計画を定めているところであります。武力攻撃事態等における国民の保護のための措置として、国・都道府県・市町村が連携して対応する制度になっておりまして、この国民保護法が対象とする事態の中には、武力攻撃事態等緊急対処事態(テロ等を想定)などさまざまあるわけでありますけれども、この法律や県の計画に基づいて、国・都道府県・市町村が連携して対応するという訓練を、それぞれ国・盛岡市と連携してやるということでございます。
 こうしたことと、東アジアにおける核兵器やミサイルの軍縮、そして使われないようにするための外交努力は別途進められるべきものでありまして、トランプ大統領のときには、アメリカと北朝鮮が朝鮮戦争の終戦ということを目指した交渉を始めたこともありましたし、また、アメリカ・中国の新冷戦という言葉もありますけれども、米ソ冷戦のときでも核軍縮やミサイルの軍縮は行われてきたわけでありまして、東アジアにおいてもそうした核廃絶、ミサイル等を含む軍縮が進むことを期待したいと思います。

・介護基盤整備について

【高田議員】
 介護基盤整備については、待機者722人ということでありますが、第8期の施設整備計画は504人に対して319人となりました。つまり待機者解消どころか、自らつくった第8期計画にも届かないという状況です。この要因をどのように分析しているのか。この待機者を解消する具体的な打開策について県の考えをうかがいたいと思います。

【保健福祉部長】
 介護事業計画での実績でございますが、第8期につきましては達成率63.3%となる見込みになっているんですが、第8期期間中は、法人においてコロナ禍におけるサービス提供体制の維持確保を優先しておりまして、新設や増床の検討が進められなかったことなどが影響したのではないかと考えております。
 今後におきましては、第9期計画を策定中でございますので、県としても市町村や地域の実情に即した計画のもと、特別養護老人ホームをはじめとする介護サービス基盤の整備が着実に進められるように必要な支援を行ってまいります。

・新型コロナ対応について

【高田議員】
 新型コロナ対応では、特に5類移行になってから、特に8月末から9月上旬が大変大きな感染拡大となりました。医療機関は大変な状況の中で医療に従事したとうかがっております。
 これから新たな感染拡大、波もつくられるということも専門家からも指摘されております。そういう中で、介護・医療現場を支える交付金が、先ほど議論あったように3月末まででなくなってしまうという状況です。これは医療介護現場にとって大変大きな問題だと思いますけれども、国に対して見直しを求めるとかそういうことが必要だと思いますけれども、これも含めて今後県として介護や医療現場をどう支えていくのか。この点についてうかがいたいと思います。

【保健福祉部長】
 今いわゆる第9波につきましてはかなり流行状況落ち着いてまいりましたが、委員ご指摘の通り、エンデミックになりましたので、また冬の流行といったことも懸念されるところでございます。
 5類に移行しましたけれども、新型コロナウイルス自体は何も変わっておりませんので、現状いま医療機関や介護施設では高い緊張感をもって院内感染防止に努めつつ、利用者の対応にあたられておりますので、県としても流行状況を十分見極めつつ、全国知事会とも連携しながら必要に応じて国に対して対策を求めていきたいと考えております。