2023年10月23日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑
(大要)


1.物価高騰対策について

・物価高騰の影響について

【斉藤委員】
 日本共産党の斉藤信でございます。県政の緊急課題について公約実現の立場から知事に質問いたします。
 物価高騰から県民の暮らしと営業を守ることは最も切実な課題であります。あらゆる分野で物価が高騰しています。物価高騰の現状と県民への暮らし、事業者の営業に与えている影響、医療・介護施設等社会福祉施設に与えている影響をどう把握しているでしょうか。

【達増知事】
 県が先日公表した岩手県の景況では、「県内の景気は緩やかな持ち直しの動きが続いている」としているものの、盛岡市の消費者物価指数は、食料品や光熱費等の上昇の影響を受け、令和4年4月以降+3.0%を超える水準で推移しており、直近は4%を超える上昇となっています。また、県が商工指導団体と連携して実施しているエネルギー価格・物価高騰等にともなう事業者の影響調査においても、「光熱費や原材料費の高騰で利益が減少している」という声が多く寄せられているほか、岩手県社会福祉協議会が行ったアンケート調査からも、電気代や燃料費、食材費等の高騰により社会福祉施設は厳しい経営環境にあると受け止めており、県民や事業者、社会福祉施設等への影響は非常に大きいものと認識しております。

【斉藤委員】
 物価高騰がとりわけ深刻になっている背景には、30年間にわたって賃金が上がらず、経済の停滞と衰退が続き、消費税増税が3回にわたって行われ、社会保障と教育費の負担が大きくなったことがあると考えますが、知事の認識をお聞きします。

【達増知事】
 日本は、バブル崩壊後の1990年代初頭から現在まで、高度経済成長期や安定成長期のような成長が見られず、経済の低迷や景気の横ばいが続いており、失われた30年と呼ばれています。その間、議員ご指摘の通り3回にわたる消費税増税をはじめとした税負担増に加え、年金・医療・介護等の保険料の増加や、国立大学の授業料増加等にともなう子ども一人当たりの年間教育費の増加などが、国民生活・県民生活に大きな影響を与えています。また、経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、2020年における日本の平均賃金は、先進国の下位に位置しているとともに、1990年以降1世帯あたり平均所得金額は伸びておらず、家計における可処分所得が減少してきている状況です。
 このような中、最近の消費者物価指数の内訳を見ると、食料や被服、家具、家事用品など生活必需品の高騰が著しく、これが物価高騰の深刻さを招いていると考えております。

・物価高騰対策の継続と拡充について

【斉藤委員】
 具体的な課題について質問します。
 第一に、4月28日の臨時議会で全国に先駆けて実施した物価高騰対策は積極的なものでした。しかし基本的には4月から9月までの6ヶ月分の対策でした。その後さらに物価高騰が進みました。物価高騰対策の継続と拡充が早急に必要と考えますがいかがですか。

【達増知事】
 物価高騰対策は喫緊の課題であることから、これまで低所得世帯および子育て世帯をはじめとした生活者支援、中小企業者や運輸・交通事業者、介護・福祉・医療施設や農業者等への幅広い事業者支援などを実施してきたところであり、今定例会においても追加対策として補正予算を計上し議決いただいたところです。
 まずはこれまで実施してきた支援策を必要な方に迅速かつ確実に届けていくとともに、全国知事会の枠組みも利用しながら、現在検討が進められている国の経済対策の実行を促し、これに呼応した補正予算案の編成を含め速やかに対応するなど、今後も物価高騰対策を強力に推し進めてまいります。

【斉藤委員】
 ぜひ継続・拡充という立場で、国の対策はあまりにも遅すぎるので、並行して、一定程度見通しが立ったら直ちに補正予算を提出するということで頑張っていただきたい。

・福祉灯油について

【斉藤委員】
 第二に、県民のくらしを守る課題では、もっとも困っているのは、ひとり親世帯や低所得世帯です。灯油価格の高騰で1缶・18リットル当たり2000円を超えています。
 福祉灯油助成は請願が採択されましたが、昨年度の6千円から1万円に引き上げる必要があるのではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 県では毎年、灯油価格の動向や国による財政支援の状況、市町村の意向などを勘案し、福祉灯油助成事業の実施の有無を判断しており、昨年度は市町村が生活困窮者に対し、冬期間の灯油購入費や防寒用品費等を助成する際に補助を行ったところであります。県の補助金額は1世帯あたり6000円といたしましたが、9市町村において2000円から9000円の上乗せが行われるなど、市町村の状況に応じた助成が行われたところであります。
 今年度におきましては、今後明らかとなる国の経済対策なども踏まえながら、県としても必要な対応を行ってまいります。

【斉藤委員】
 ぜひ請願採択を重く受け止めて、今の物価高騰に対応するような施策をやっていただきたい。

・エアコン設置への補助について

【斉藤委員】
 異常な暑い夏の選挙戦で痛感したのは、エアコンもない高齢者、低所得者世帯の問題であります。命にかかわる問題ですから、緊急に市町村と連携してエアコン設置への補助を実施することが必要ではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 高齢者世帯、低所得者世帯がエアコンの購入および設置を行う場合は、生活福祉資金の借り入れを利用することが可能であり、県社会福祉協議会に確認したところ、今年度は9月末までに12件、計98万1千円の貸付実績がありました。
 全国では独自の補助を実施する市町村があるとうかがっておりますが、例えば、省エネ家電への買い替え促進や地域内での購入といった条件をつけずに高齢者・低所得者のみを対象とした補助制度を導入した場合、すでにエアコンを所有する低所得者等との公平性の課題があると考えております。
 県では、エアコン設置補助に関する市町村からの要望等は現時点では受けていないところではありますが、まずは生活福祉資金制度の周知を行うとともに、高齢者・低所得者に対する支援のあり方を研究していきたいと考えております。

【斉藤委員】
 この暑い中の選挙で私本当に痛感したんですね。暑くてもエアコンがない。買えないからですよ。買えない人に借金でと言っても、それは全然現実的ではないですよ。
 誰ひとり取り残さないというんだったら、エアコンも買えない人にきちんと補助すると。そのぐらいの気持ち必要なんじゃないですか。もう1回聞きます。

【保健福祉部長】
 たしかに今年は猛暑で、本当に緊急搬送された方多く、今年1278人緊急搬送され、そのうち高齢者が822人という形で、大変な猛暑の影響があったと我々も認識してございます。
 一方で、繰り返しの答弁になりますけれども、生活困窮者・生活保護者等に関しては、さまざまな制度がございますので、こういったものをきちんと活用していただいて、実態としてやはり省エネ家電の促進といった施策でやっている自治体はあるんですが、低所得者向けの施策としてはさまざまな視点で研究すべき課題があろうかと考えております。

・LPガス価格高騰対策について

【斉藤委員】
 LPガスの負担軽減の軽減実績と継続実施の準備はされているのでしょうか。

【復興防災部長】
 LPガス価格高騰対策費ですが、LPガスを使用している世帯等の約97%、35万4千件余が支援対象となっており、原則として9月検針分の請求額から値引きするため、実績額が確定していないものの、県全体の値引き額は9億円余と見込んでおります。
 事業の延長については、LPガスの価格が高止まりしている中、これから冬季を迎え使用量の増加が見込まれることや、電気・都市ガスに対する国の支援が延長されたことも踏まえますと、LPガス使用世帯等への対応を検討していく必要があると考えております。
 一方、本事業は、物価高騰に対応した国の交付金を財源として実施しており、現在検討が進められている国の経済対策の動向を見極めながら対応してまいります。

【斉藤委員】
 国は都市ガスの軽減はやるといっていますから、いま答弁あったように35万4千件と。LPガスを活用しているのは県内世帯の半分以上ですよ。本当に国の対策は遅すぎる。

・医療・介護施設への支援について

【斉藤委員】
 医療・介護施設の現状は「これまでに例をみないほど深刻」な状況です。昨年度以上の支援が必要ではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 医療・介護施設は、診療報酬や介護報酬の公定価格により運営されており、物価高騰による影響を価格に転嫁することができず、経営努力のみでは対応が困難であると認識しており、関係団体からも要望をいただいているところでございます。
 こうしたことから、現在検討が進められている国の経済対策の動向を見極めつつ、県としてもこれに呼応し、患者・利用者ともに安心・安全で質の高いサービスの提供が維持できるよう、医療・介護施設への必要な支援について速やかに対応してまいります。

【斉藤委員】
 これは10月16日の新聞報道ですけれども、全国老人福祉施設協議会の調査結果で、「特養の6割は赤字」「赤字がコロナ前の倍になった」と、本当に深刻ですよ。
 先ほども紹介したけれども、社会福祉団体が県に要望した文書で「これまでに例を見ないほど深刻」という県への要請なんですよ。そこで私は昨年度以上の支援が必要だと言いました。実は今年度前期の支援は、去年1床あたり1万円だったのが6千円になってしまった。いわば電気代が高騰しているときに支援は減らされてしまった。だから私は昨年度以上の支援が必要ではないかと聞いたので、そのこともしっかり答えてください。

【保健福祉部長】
 私も団体から要望をいただきまして、切実な状況は十分に認識しているところでございます。先ほど答弁いたしました通り、国の経済対策十分見極めながら、必要な対応を速やかに行ってまいりたいと考えております。

・中小企業・小規模事業者への支援について

【斉藤委員】
 中小企業・小規模事業者に対する支援も切実な課題であります。中小企業者等事業継続緊急支援金支給事業は、「売上原価が上昇し、収益が減少している」状況を踏まえ、売上減少の基準を緩和し、給付金を引き上げること、市町村との連携を強化することが必要だと考えますが、これまでの実績を含めて示してください。市町村が連携したところも示してください。

【菊池副知事】
 現在実施しているこの事業ですが、本年4月から9月までの期間の売上高や経費の状況に応じて支援金を支給するものでありまして、11月末を期限として申請受付を行っているところでございます。
 10月6日時点での申請者数は4534者、そのうち3112者に対し3億4千万円余が支給済みとなっており、また、市町村と情報共有等を図りながら予算化したこともあり、9市町で県事業への上乗せ等が行われているところでございます。今後、対象となる事業者に確実に支給できるよう、事業のさらなる周知徹底を図りながら、適切に支給事務を行ってまいりたいと考えております。
 新たな支援策については、中小企業・小規模事業者の経営課題を的確にとらえつつ、商工指導団体等の声もよく確認しながら、国の経済対策の動向を見極めつつ市町村とも連携し、適時適切に展開してまいりたいと考えております。

・酪農・畜産への支援について

【斉藤委員】
 酪農・畜産危機の取り組みの実績と今後の支援策の必要性をどうとらえているでしょうか。

【菊池副知事】
 県ではこれまで酪農家等の経営安定に向け、飼料等の価格上昇分を補てんする国事業の活用を積極的に進めるとともに、県独自に累次の補正予算により飼料や肥料の購入費、酪農経営への影響を緩和するための支援を実施してきました。また、酪農家の経営課題に応じた支援を強化していくため、農業普及員が酪農家の約9割にのぼる580戸の訪問を行い、自給飼料の一層の生産拡大や、一頭あたりの生乳生産量の増加など、個別課題に応じた実地の指導を実施してきているところでございます。
 本年8月現在の飼料価格を見ますと、高騰前の令和4年に比べ約4割高く、また和牛子牛の平均取引価格は約2割低下しており、依然として厳しい経営環境に置かれております。このため、これまで措置した支援策を迅速かつ確実に実施するとともに、さらに必要となる対策について、現在検討が進められている国の経済対策の動向も踏まえながら臨機に対応してまいる考えであります。

【斉藤委員】
 100頭規模の大規模酪農家、去年は一頭あたり10万円の値上がりだったと。年間1200万円ですよ。今年は1頭あたり15万円。ますます飼料代・電気代・その他…こういう状況ですから、本当にこの酪農家を守るということでしっかり対応していただきたい。

2.ALPS処理水海洋放出の影響への対応について

【斉藤委員】
 福島原発事故による汚染水(処理水)の海洋放出によって、中国・香港が日本の水産物の輸入を中止しました。昨年度全国では836億円余、県内でも6億8千万円余の輸出実績がありました。すでに出荷停止などの実害が出ています。速やかに損害賠償を求めるべきですが、どうなっているでしょうか。

【菊池副知事】
 ALPS処理水海洋放出の影響への対応についてでありますが、本会議でもご答弁申し上げました通り、県といたしましては、知事が全国知事会農林商工常任委員長として、内閣等関係省庁にたいし8月31日に緊急申し入れを行ったほか、今週中にも改めて損害が出ている事業者にたいし、迅速かつ確実に賠償が行われるよう、国と東京電力が責任を持って対応することを求めるなど強く働きかけることとしております。
 また同じく今週中になりますが、経済産業省と農林水産省にたいし、県単独で迅速かつ確実な損害の補てんを求めるとともに、水産物等の消費拡大に向けた取り組みの強化や、持続可能な水産業の実現に向けた取り組みへの支援などを要望することとしております。
 なお、これまでの調べによりますと、輸出を予定していたイナダやスケソウダラ等の在庫の発生、これまで出荷していたイクラの商談の停止、大連市内への岩手県産の水産加工品や加工食品の売上減少といった影響が確実に出始めているところでございまして、今後の拡大を懸念しているところでございます。
 県が設置する漁業者および事業者向けの相談窓口には、10月16日時点で受け付けた相談は5件でございますが、3件が損害賠償請求に相談となっております。
 引き続き、関係機関・団体と連携しながら、事業者等が確実に賠償を受けられるよう対応してまいる考えであります。

3.県福祉総合相談センターと県民生活センターの合築について

【斉藤委員】
 県福祉総合相談センターと県民生活センターの合築による整備について、県内のモデル施設施設として太陽光発電も設置するZEB基準で新築整備すべきと考えますが、グリーンボンドの資金の活用も含めて知事はどう考えているでしょうか。

【達増知事】
 県福祉総合相談センターと県民生活センターの合築についてでありますが、県では脱炭素社会の実現に向け、本県の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で57%減、2050年度までに実質ゼロとすることを目標にかかげ、事業者等に対する省エネ・再エネ設備の導入支援などの取り組みを進めております。
 今般この削減目標の達成に向けた取り組みを加速するため、県有施設等の脱炭素化に向けた基本方針を新たに作成し、新築建築物の基準について、政府実行計画が、原則省エネ性能30%以上の「ZEB oriented相当以上」としているところ、本県においては、省エネ性能50%以上の「ZEB ready相当以上」とし、より高い基準を採用したところです。
 お尋ねの両施設の合築のついては、この方針により建物性能をZEB readyとしたところでありますが、省エネ性能50%以上とするとともに、太陽光発電設備の導入も検討するなど、本県のモデル施設として施設の脱炭素化を積極的に推進したいと考えております。
 また、グリーンボンドの発行は、脱炭素化等の本県の取り組みについて、県内法人等の参画による政策推進に向けた機運醸成や、新たな投資家の獲得による資金調達基盤の強化など、財政面への効果が期待されるところであり、当該施設整備への活用について積極的に検討を進めてまいります。

【斉藤委員】
 良い答弁でした。よろしくお願いいたします。

4.新型コロナウイルス感染症対策について

【斉藤委員】
 9月上旬には全国一の感染拡大となりましたが、第9波の感染状況はどうだったでしょうか。第8波と比べてピーク時はほぼ同じレベルの感染状況ではなかったでしょうか。
 冬に向けて第10波の可能性があるのではないかと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 県内における令和5年7月からの感染拡大時においては、定点報告数が一定点あたり全国最大の35.24人となったところですが、第8波のピークだった令和4年12月下旬は、厚生労働省の公表資料によると37.81人相当であり、定点報告数としてはおおむね同等の感染状況と認識しております。
 今夏の感染拡大時における県の医療提供体制については、入院医療については一部の医療圏において負荷が高まったものの、個別の病床拡大により対応ができ、また外来医療についても受診困難といった状況は見られなかったところです。これは、5類移行後すべての医療機関で対応するとの原則のもと、事前に構築していた医療提供体制が有効に機能したものと考えております。
 今後の見込みについては、冬季に感染が拡大しており、今冬の感染再拡大や季節性インフルエンザとの同時流行の可能性があることから、県では医療機関との連携を密にし、県医師会等の関係者の強力のもと、オール岩手の体制で引き続き県民が安心して医療を受けられるよう取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 ピーク時の入院患者の数は第8波391人、第9波406人でありました。学校における学級閉鎖、学年閉鎖、これは第8波を超えておりました。そういう点で、県の情報発信が弱かったのではないか。
 感染状況について、感染者数、クラスター発生状況、入院患者の状況など、科学的データに基づいた感染状況についての情報発信がなされたでしょうか。弱かったのではないでしょうか。死者数をなぜ把握し公表しないのでしょうか。

【保健福祉部長】
 県では、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、毎週水曜日に岩手県感染症情報センターのホームページで、国の感染症発生動向調査による定点医療機関における新規感染者数の公表を行っているほか、県独自で調査しているクラスターの発生状況や、10月4日からは入院患者数についても公表し、平時から最新の感染状況の発信に努めているところでございます。
 また、8月下旬の県内で定点医療機関における新規感染者数が30.42人になった際には、私の方からマスコミに対するブリーフィングを行い、感染状況や医療機関の状況などについて広く県民に情報発信をしてまいりました。
 死亡者情報の公表につきましては、5類移行前は感染症法に基づく患者の発生届により個々の患者を確認したところであり、感染した方が死亡された場合は、ご遺族等の同意を得たうえで公表を行ってまいりました。5類移行後につきましては、医療機関からの発生届提出の法的根拠がなくなり、死亡者についても県として把握ができなくなったことから公表していないところであります。
 県としましては、引き続き感染状況の把握に努め、県民に向けて発信に努めてまいります。

【斉藤委員】
 私さまざま調査をいたしました。県央保健所長さんからも大変詳しい説明をいただいて、そのときに、盛岡保健所が推計をしたら、第9波は盛岡医療圏で第8波を超えていると聞いて私はびっくりしました。そういう情報は何も発信されていませんでした。
 先ほど学校の状況もお話しましたけれども、あなた方の対応はピークを超えてからやっているんですよ。一番大事な感染拡大の状況の中で、的確な情報はなされなかった。そういう反省はありますか。

【保健福祉部長】
 5類移行後に関しましては、それまで毎日、いわゆる全数報告という形で感染者数を公表させていただき、その時々の医療機関の逼迫状況、クラスターの状況なども毎日公表していましたので、いわゆる報道等で県民の方もかなり目にする機会が多かったと思います。
 5類移行後につきましても、先ほどご答弁申し上げました通り、毎週の感染状況について公表させていただいたところであり、必要な情報については県として県民の皆様方に発信してきたところであります。なるべく多くの方々に感染状況を知っていただいて、その時々の感染対策をしていただくということが趣旨でございますので、必要な情報発信に努めてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 反省が足らないと思いますね。毎週ホームページに掲載するだけなんですよ。記者会見もしないんですよ。だから県民は、今の第9波という、そういう受け止めになっていない。個人個人が感染防止を徹底する、それは正確なデータが示されて初めてできるのです。その反省が足らないんじゃないか。
 そこで、感染状況を把握するために、神奈川県・山梨県でやっている下水サーベイランスを岩手でも実施すべきだと。これはもっとも正確にウイルスの拡大量を把握できます。これをやったらどうですか。

【保健福祉部長】
 新型コロナウイルス感染症の下水サーべイランスは、現在複数の自治体において実施されているほか、厚生労働省においても自治体への下水サーベイランス委託事業について、令和6年度からの実施に向けて検討を進めているところであります。
 県としても、新型コロナウイルス感染症の流行状況等の把握のため、下水サーベイランスは有効であると考えていることから、環境保健研究センターでの実施について検討しているところであります。

【斉藤委員】
 ぜひやっていただきたい。
 最大の感染者数となった第8波は12万6千人、死者430人、高齢者施設内の死者は124人でありました。この第8波の検証と今後に生かすべき教訓・課題はどう分析・整理されているでしょうか。

【保健福祉部長】
 令和4年10月から令和5年3月まで続いた第8波においては、それまでの感染者数・死亡者数を大きく上回る感染拡大が生じたところでありますが、症状等に応じた医療機関の役割分担と連携による入院調整、県医師会との協力による診療検査医療機関の拡充など、オール岩手での対応により一人ひとりに必要な医療を提供することができたものと考えております。
 一方で、医療従事者の感染や濃厚接触により勤務できない職員も増加し、一部の医療機関では検査や治療などの一般医療について制限をかけざるを得ない状況となったことや、高齢者施設等においてクラスターが多数発生した点が課題であったと認識をしております。
 現在県におきましては、岩手県感染症予防計画の改定を進めており、コロナ対応時に生じた教訓・課題を踏まえ、症状等に応じた医療機関の役割分担と連携、医療機関への人材派遣体制の確保、高齢者施設等における感染対策など、新たな新興感染症の発生、蔓延に備えるための対策を検討しているところであります。

【斉藤委員】
 第9波における高齢者施設におけるクラスターの発生状況と感染者数、入院と施設内療養の実態はどうなっているでしょうか。
 これまでの病床確保の補助金の実績と10月以降はどうなるのか。コロナ患者を入院させると病院は赤字となってしまうのではないでしょうか。

【保健福祉部長】
 第9波の高齢者施設の状況についてでありますが、7月からの感染拡大時において保健所が確認した高齢者施設のクラスターは74件、感染者数は公表時点での数値となりますが945人となっております。昨年の第7波・第8波における高齢者施設でのクラスターの発生等の経験を経て、多くの施設において協力医療機関等による訪問診療等の連携が進み、5類移行時には約9割で医療機関との連携体制が確保されたところであります。今般の第9波におきましては、症状が軽症の患者には薬の処方などにより施設内療養が行われたほか、医師が入院による治療が必要と判断された場合には、受け入れ可能な医療機関への円滑な入院調整が行われたものと考えております。
 病床確保の補助実績と今後の見通しについてでありますが、令和2年度は24医療機関にたいし69億円余、令和3年度は27医療機関にたいし106億円余、令和4年度は29医療機関にたいし97億円余を交付したところです。また令和5年度は、5月7日までが29医療機関、5類移行後の9月30日までは50医療機関が補助の対象となっております。10月以降は国において確保病床の対象を「感染拡大時における重症・中等症向けの病床に重点化し、病床数は感染状況に応じて変動すること」とされたところであり、本県においては平時には0床、感染拡大時は最大34医療機関・222床を確保することとしております。また、病床確保料の補助上限額はこれまでの8割に見直されたところであります。10月以降の病床確保による病院経営への影響については、平時においてはコロナに対応するために事前に空床にしておく必要がなくなったこと、また感染拡大時においては段階的に確保した病床に実際に患者が入院し空床となる可能性は低くなっていることから、影響は限定的なものとなるのではないかと考えております。

【斉藤委員】
 県内おける後遺症発症の状況と後遺症対策はどう取り組まれているでしょうか。

【保健福祉部長】
 令和3年度に実施をいたしました県における後遺症調査では、罹患後に6ヶ月以上継続した主な症状として、11%の方が「倦怠感」「気分の落ち込み」、9%の方が「嗅覚障害を認めた」と回答しており、全国調査と同様の結果となっております。
 また令和5年9月に公表された国による後遺症調査結果では、症状を有した割合は、アルファ株、デルタ株の流行期に比べてオミクロン流行期では低かったことが示されております。
 後遺症対策については、県では県医師会と連携して、後遺症に悩む方々が症状に応じて円滑に受診や治療が受けられる医療機関をとりまとめ、県ホームページで公表しているところであります。また他の医療機関に対しましても、後遺症が疑われる方が受診した際には、必要に応じて専門医を紹介するよう依頼しているところであり、今後も県医師会等の関係機関と連携し、後遺症にかかる診療体制の充実に取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 専門外来、専門相談窓口がないんじゃないでしょうか。

【保健福祉部長】
 県では一般的なさまざまなご相談に対応する相談センター・コールセンターを設けております。そこから必要に応じまして医療機関等にご案内させていただいているところであります。
 なお、コロナ後遺症の対応医療機関は、東北6県で比べますと、本県は福島県と並んで178医療機関と一番多くなっている状況でありまして、ある程度かなり県内の先生方、後遺症に対して診療対応いただいているものと認識をしております。

【斉藤委員】
 対症療法じゃなくて、専門外来、専門相談窓口がないんじゃないかと言っているんです。つくる気はないんですか。

【保健福祉部長】
 なかなか後遺症に関しましては疾病概念としてまだ確立していないこと、また、治療法がまだ開発・研究等されていないこと等もありまして、現状対症的な治療という風にならざるを得ない面もあろうかと認識をしております。
 現在国の方では後遺症につきまして調査・研究を進めておりまして、そうした動向を注視をしながら、県としても必要な対応をとってまいりたいと考えております。