2023年10月25日 決算特別委員会
ふるさと振興部に対する質疑
(大要)


・岩手県立大学の理事長の報酬について

【斉藤委員】
 先ほど県立大学の理事長報酬問題が議論になりました。
 これは知事選挙前の2月議会でも議論になってことで、私もそのときに述べたんですけれども、本来これは大学の規則に基づいて大学が自主的に決める大学自治に関わる問題だというのが基本だと思います。
同時に、理事長の役割・実績ということも議論になりましたので、私も調べてみました。一番重要だと思っているのは、ILC誘致に関わって、鈴木厚人学長が今年の4月から3期目を迎えると。今年の1月にはILC、素粒子物理学の第一線で頑張っている山下了氏を特任教授に迎えたということで、県政と一体でILC誘致を進める体制がさらに強化されたということは評価をしておきたいと思います。
 あわせて、開学25周年を令和5年度に迎えるんですけれども、25周年記念式典を開催して、三笠宮妃殿下を迎えてこうしたものも開催したと。
 法人職員の処遇改善についても、理事長の主導で法人プロパーと派遣の県職員の賃金に差がありましたから、その処遇改善を図ったということもお聞きをいたしました。
 学生支援については、今年7月に学生一人当たり5000円の食費および教材支援を全ての学生を対象に実施をして、学生食堂利用負担軽減事業として、これは今年の10月から12月までのようですけれども、そうした学生生活を支援する独自の取り組みをやっているということも評価できるものではないのかと。
 さらに今年度は、重度の機能障害を要する学生を受け入れましたが、介助員の配置、施設の利便性の向上など、こうした就学環境の支援も行っていると。
 ダイバーシティの取り組みでも、ダイバーシティ推進室を設置して、多様な学生の個性が尊重される、こうした職場の男女共同参画の取り組みにも理事長が率先して取り組んでいると。
 私は理事長の幅広い見識とこれまで築いた人脈が発揮をされていると。これもしっかりと評価をすべきことではないのか。
 2月のときにも触れましたけれども、他の公立大学の理事長報酬と比べて、決して県立大学は高いわけではない。もっと高いところたくさんありますよ。そういう意味でも決して突出しているものではないということも改めて指摘だけにとどめておきます。

・国によるJR東日本のローカル線切り捨て問題について

【斉藤委員】
 ローカル線切り捨ての理由、国の動向はどうなっているでしょうか。

【地方路線対策監】
 ローカル線切り捨ての理由、国の動向についてでありますが、本年10月1日に施行されました地域交通法の一部改正によりまして、自治体または鉄道事業者の要請により、国が特に必要と認める場合に再構築協議会が設置される制度が創設されたところでございます。
 今回の法改正につきまして国は、その背景として、人口減少等による長期的な利用者の落ち込みに加え、コロナ禍の直撃により、地域交通を取り巻く状況は年々悪化しており、特に一部のローカル鉄道は、大量輸送機関としての特性が十分に発揮できない状況にあることを挙げており、こうした状況を踏まえまして、あらゆる交通モードにおける地域の関係者の連携・協働=「共創」と呼んでおりますけれども、そういったものを通じ、利便性・持続可能性・生産性が向上するよう、地域公共交通ネットワークを再構築することが必要であると説明しているところでございます。
 そして本年8月には、同法の一部改正に伴い、「地域公共交通の活性化及び再生の促進に関する基本方針」を変更し、同法の運用に関する基本的な考え方を示しているところでございます。

【斉藤委員】
 富山県でしたか、国が設置する協議会が最近つくられて、早々と第三セクター化を決めたと。本当に十分な議論がされたのかと驚くような、本当にこの国による協議会の設置というのは、そうした危険性があるのだということをまざまざと示した事例だったのではないかと思います。
 JR東日本のローカル線維持確保連絡会議が開催をされておりますけれども、JR沿線自治体会議を含めて、開催状況、確認事項、取組状況について示してください。

【地方路線対策監】
 JRローカル線維持確保連絡会議等の開催状況等についてでありますが、県と沿線市町で構成するJRローカル線維持確保連絡会議を昨年11月に開催し、国鉄改革からの経緯を踏まえ、国やJR東日本が当事者として鉄道を維持していくべきこと、県及び沿線市町が連携を強化して、更なる利用促進に向けた取組を実施していくこと、県内6路線の状況がそれぞれ異なることから、路線ごとに沿線自治体首長会議を設置することについて、沿線市町と認識を共有したところでございます。
 沿線自治体首長会議については、これまで、JR山田線、JR北上線、JR釜石線で開催し、鉄道の維持に向け、県と沿線市町が連携して利用促進に向けた取組を強化していくことについて確認したところであり、他の路線についても準備が整い次第開催していく予定であります。
 また、沿線自治体首長会議の下にワーキンググループを設置するなどして、今年度創設した県の補助事業の活用も含め、利用促進について検討しているところであり、例えば、定期券・回数券の購入支援、モデルツアーの実施、プロモーション動画の作製などの事業が展開されているところでありまして、今後も沿線市町と連携し、鉄道の維持に向け取り組んでいくところでございます。

【斉藤委員】
 この問題が提起された一つの理由、きっかけは、コロナのもとで、2021年・22年にJR東日本が赤字になりました。2年間の赤字が6954億円でした。しかし5年間で見ますと9738億円の黒字なんです。5年間で見たら十分黒字化になって、昨年度から完全に黒字に変わっていますから、赤字というのはまったく理由にならない。逆にいけばこうした黒字を使って全国のローカル線を含めた公共交通網を維持するというのが本来のJRの役割ではないかと思いますが、JRの5年間の経常収支、内部留保はどうなっていますか。

【地方路線対策監】
 JR東日本の5年間の経常収支と内部留保についてでありますが、JR東日本が公表している決算資料によりますと、経常利益は、令和元年3月期決算では3,548億円余の黒字、令和2年3月期決算では2,601億円余の黒字、新型コロナウイルスの影響を受けた令和3年3月期決算では5,177億円余の赤字、令和4年3月期決算では1,777 億円余の赤字となっておりますが、最新の令和5年3月期決算では460億円余の黒字となっております。
 利益剰余金、いわゆる内部留保についてでありますが、令和元年3月期決算では2兆1,692億円余、令和2年3月期決算では2兆2,284億円余、令和3年3月期決算では1兆6,718億円余、令和4年3月期決算では1兆5,348億円余、令和5年3月期決算では1兆5,495億円余となっております。

【斉藤委員】
 おそらく今のは利益剰余金だと思うんですね。内部留保というのは利益剰余金だけではない中身もありますから、全労連の試算でいいますと2兆8千億円になるという規模です。全体として黒字で、内部留保もこれだけため込んで、これは基本的には公共交通網の維持に使われるべきだと。
 いま鉄道維持の意義・役割というのはますます高まっていると思います。特にEUでは、気候危機打開と結んで鉄道にシフトするという動きもありますが、諸外国の動向、気候危機打開にとっての鉄路の果たす役割、どのように受け止めているでしょうか。

【地方路線対策監】
 鉄道維持の意義・役割、諸外国の動向と気候危機打開についてでありますが、JRを始めとしたローカル鉄道は、地域交通としての役割だけではなく、地方における観光振興・災害時の移動手段や支援物資の輸送手段になるなど、代替性・補完性の確保等、重要な役割を担っているものと認識しているところでございます。
 国際的には、フランスやドイツ、スペインなどにおいては、国が全株式を保有する国有鉄道による鉄道輸送が行われているなど、鉄道を公共交通のインフラとして、公的な経営形態を取ってでも維持すべきとの考え方が浸透していると受け止めているところでございます。
 また、フランスにおいては、近距離移動は一定の条件のもと、航空機でなく鉄道にシフトするといったような施策をとっていると承知しているところでございます。
 国土交通省の資料によれば、移動手段別の輸送量当たりの二酸化炭素排出量は、鉄道、バス、航空機、自家用車の中で、鉄道が最も低く、旅客については、自家用車の1/5以下となっており、地球温暖化対策の推進に向けて、鉄道は大きな役割を果たすものと認識しております。

【斉藤委員】
 大変大事な答弁だったと思います。総括質疑でも議論ありましたけれども、2040年問題にも関わって、貨物輸送が増大するという話も出ておりますので、本当に公共交通網にとっても気候危機打開にとっても鉄路を守っていくと。あわせて利用・利便性の問題も一緒に解決していくことが必要だと思います。

・マイナンバーカードについて

【斉藤委員】
 マイナンバーカードの事実上の強制の問題についてお聞きをいたします。
 6月2日にマイナンバー法が改悪をされました。その中身はどうなっているでしょうか。

【デジタル推進課長】
 令和5年6月に改正されたマイナンバー法等の改正内容についてでありますが、社会保障制度・税制及び災害対策の3分野以外の行政事務においてマイナンバーの利用推進をする、法でマイナンバーの利用が認められている事務に準ずる事務についても利用可能とする、健康保険証を廃止するとともにマイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない方に対して、本人からの求めに応じて「資格確認書」を提供する―などの6点が改正されたものと承知しております。

【斉藤委員】
 一番の問題は、マイナンバーカードに健康保険証を紐付けたということです。本来マイナンバーカードは任意です。しかし健康保険証を紐付けたら事実上の強制になる。
 そこで今本当に医療の現場で大問題が起きています。岩手県内の話で、岩手県保険医協会が何度か実態調査を行って、記者会見でも明らかにしておりますが、オンライン資格確認を行っているところで、「トラブルが発生した」62.5%です。「カードリーダーまたはパソコンの不具合によるマイナ保険証読み取りができなかった」「保険者情報が正しく反映されなかった」と。本当に深刻な問題があって、「他人の医療情報が紐付けられた」というのも保険医協会の中でも2件あったと。命に関わる問題です。こうしたトラブルどのように把握されていますか。

【デジタル推進課長】
 県内におけるマイナンバーカードの交付等ついてでございますけれども、全市町村に調査を行ったところ、9月末時点で盛岡市における3件の紐づけ誤りの事例を把握したところでございます。
 マイナンバーカードの健康保険証利用に関しては、 岩手県保険医協会が医療機関に対して行った6月時点のアンケート調査結果によると、「不具合があった」と伺っておりますが、市町村から具体的な情報は寄せられておりませんでして、把握していないところでございます。

【斉藤委員】
 マイナンバーカードの最大の問題の1つは、来年に健康保険証を廃止すると。そして事実上強制する―これが一番の問題だと。そしてその問題でトラブルが発生していると。命に関わる問題が起きている。
 実はこの調査、実際に開業医の方々なんですけれども、マイナ保険証で受診する人は1日2〜3人いるかどうか。1割にも満たないんですよ。数%なんです。これは不便だからなんです。そうした実態をよく把握してやっていただきたい。
 マイナンバーカードの交付状況、保有状況はどうなっているでしょうか。交付枚数と保有枚数に大きな乖離がありますが、どのぐらいの乖離で、その理由は何かも示してください。

【市町村課総括課長】
 マイナンバーカードの交付状況、保有状況についてでございますけれども、最新の令和5年9月末現在で申し上げますと、交付率は県全体で76.9%となっております。
 交付枚数につきましては、県全体で915,083枚になっております。併せて保有枚数ですけれども、保有枚数につきましては、県全体で72.8%、枚数でいきますと866,636枚という形になっております。
 ここの差の部分ですけれども、交付後の移動ですとか、そういう部分で若干異同が出ているということと、申請後にまだ交付されていないという部分もございますので、そこのところで若干差があるのかなというふうに考えております。

【斉藤委員】
 交付枚数と保有枚数で4万件以上違いますよね。返上したというのもあるだろうし、取りに行かなかったというのも事実上あるんじゃないかと思いますけれども、その実態は分からないですか。

【市町村課総括課長】
 自主返納の状況につきましては、市町村の方で調べている部分がございまして、151枚という形では聞いておりますし、先ほど申しました交付と保有の差につきましては、自主返納もありますし、死亡した場合についてもございますので、そういうところで差になっているのかなというふうに考えております。

【斉藤委員】
 いずれにしてもマイナンバーカードを事実上強制するというのは本当に異常なことで、トラブル起こっているときにどう解決するか。今の保険証で解決するんですよ。だから「今の保険証を持ってきてください」―これが医療の現場です。これだけ大混乱をしているわけですから、一度中断して、徹底した調査をやって、そしてマイナ保険証の強制は止めるということを、県としても強く求めるべきだと。時間がきましたので終わります。