2023年10月25日 決算特別委員会
ILC推進局に対する質疑
(大要)


・ILCをめぐる国内外の動向について

【斉藤委員】
 ILCをめぐる国内外の動向について示してください。

【副局長】
 ILCについては、現在、ICFA・国際将来加速器委員会の下に設置されておりますIDT・国際推進チームにより、国際協働による研究開発や政府間協議に向けた取組が進められております。
 この7月には、国際共同による研究開発推進に向け、KEK・高エネルギ一加速器研究機構と、CERN・欧州合同原子核研究機関との間で、ILCの研究開発に関する新たな枠組みでありますILCテクノロジーネットワークに関する協定が締結されました。
 また、5月には米国におきましてLCWS・リニアコライダーワークショップが4年ぶりに実地開催され、9月には盛岡市内においてILCに関連するサスティナビリティ国際ワークショップが開催されるなど、研究者の活動が活発化しているところでございます。
 さらに、県内外のILC推進団体による講演会などの多様な活動が相次いでおりまして、ILCをめぐる動きは国内外ともに再び活発化してきているものと考えております。

【斉藤委員】
 今年度ILC関連の予算は増額をされたわけでありますけれども、その内訳を示してください。

【副局長】
 国のILC関連予算については、ここ数年は4億円台後半で推移してまいりましたが、令和5年度はこれまでの予算から倍増となります9億7千万円が措置されたところでございます。
 その内訳でございますが、うち7億円が「将来加速器の性能向上に向けた重要要素技術開発」の補助金でありまして、海外研究機関との協働による研究開発を推進するとしたKEKの応募が採択されまして、国際的な研究開発を推進する枠組みであります「ILCテクノロジーネットワーク」の立ち上げなどの取組が進められているものと承知しております。
 またこのほか、KEK運営交付金の内数としまして、ILC関連経費2億7千万円が盛り込まれているところでございます。

【斉藤委員】
 この間の最近の動向の資料をいただきました。その中で、超党派国会議連の拡大総会で、KEKの山内機構長が「もっともうまくいった場合、2030年建設開始を念頭に進めたい」という発言があったようでありますが、その内容、そのプロセスというのはどういうものでしょうか。

【副局長】
 山内機構長から説明がありましたタイムラインは、2030年の建設開始に向けたプロセスで、研究者が想定する「理想的なモデル」として示されたものでございます。
 同様のタイムラインは、局長からも説明がありましたが、5月のLCWS2023においても、IDT・ILC国際推進チームの中田議長からも紹介されております。
 「最も上手くいった場合」という説明もあったということで紹介がございましたが、KEKの山内機構長の資料によりますと、モデルのとおりの進展のためには、現在、各国政府が慎重な姿勢を示している背景としまして、様々な状況がありますが、「国際的に支障となっている感染症の拡大、国際関係の問題、グローバル経済の混乱」などが解決されることが必要だという前置きをした上でのタイムラインという説明でございました。
 こういった前提を置きつつ、今年度から、2年から4年程度の「ILCテクノロジー・ネットワークの段階」、それに続きます数年程度の「準備段階」を経て、2030年頃に建設段階に至るプロセスが示されたものでございます。

【斉藤委員】
 研究者が期待するということでしょう、この2030年建設開始というのは。それには大変国内の壁があり、国際的な壁もあると思います。
 そこでこの間の経過の中でもう1つお聞きしたいのは、8月7日にILC計画研究会が設立をされています。「山下・県立大学特任教授が中心となって、ILCの日本誘致をめざし、立地に関わる研究活動を行う研究会を設置」と。「今後数年間を目途に立地の具体像を作成する」ということですが、立地に関わる研究活動の中身をもう少し立ち入って示してください。

【副局長】
 手元に詳細な資料は持ち合わせていないのですけれども、これまで産学官連携で取組を行ってきました建設候補地周辺のまちづくり、それから、環境影響に係る調査や対応、そういったものを中心に検討を進めて、広く日本全体で誘致を進めるための材料としたいとのことで、そういったことを検討する研究会と聞いており、ここ1、2年のうちに成果を出して、様々な取組に生かしていくと聞いております。

【斉藤委員】
 私はILCというのは、日本にとっても世界にとっても科学技術の進歩をめざすという点で期待をするものであります。本来日本は、技術立国をめざすべきだと。
 しかしいま日本はどうなっているかといいますと、1000兆円を超える借金を抱え、その中で5年間で43兆円を軍事費に投入するというんですよ。その財源が確保できない。子育て支援の未来戦略の財源も示せない。こういう状況ですよね。これが一番のネックになっているのではないかと。
 ILCも財源の見通しがあれば、積極的に進めることができるわけですけれども、全体として大変な借金の中で大軍拡を進める―ここに一番の政治の障害があるのではないかと思っておりますけれども、この点はいかがですか。

【副局長】
 ILCの実現に向けましては、約8,000億円の建設費や国際的な費用分担が課題として指摘されております。この件につきましては、文部科学大臣も記者会見などで言及されております。
 政府の誘致決定に、財源問題は避けて通れない課題と認識しておりますが、現在、その前提となる国際的な費用分担などの政府間協議に向け、IDT・ILC国際推進チームが設置した国際有識者会議により、政府間協議の環境醸成の取組が進められており、その取組の動向を注目しております。
 ILCは、イノベーションの創出と産業の発展、新たな地方創生と震災からの創造的復興など、多様な価値を生み出します。その経済波及効果は、建設費を大きく上回る2.4兆円〜2.6兆円にも上るといった試算もございます。
 ILCホスト国としての負担は、学術研究の枠を超えた、日本の将来に向けた投資と位置付けて取り組むことが必要であり、こうした認識の下に取組を進めてまいりましたが、引き続き、省庁横断による国家プロジェクトとして誘致を推進するよう、国に対し引き続き強く働きかけてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 冒頭に述べたように、日本は科学技術立国をめざすべきだと。しかし残念ながら逆行していると。大軍拡の道を進んでいることが本当に政治の障害になっているのではないかと思います。政治の転換が必要だと。
 しかしこうした中で、岩手県立大学の鈴木学長や今回特任教授となった山下了氏が大変重要な役割を果たしているということは高く評価をして質問を終わります。