2023年12月6日 12月定例県議会本会議
県立大船渡病院の超過勤務激減問題にかかる関連質問(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。
大船渡病院における看護科での超過勤務手当の激減問題について関連質問いたします。
先ほどの医療局長の答弁は、看護師さんの深刻な声も実態も否定する、背を向ける、ひどい答弁でありました。
問題の本質は、今年の4月に、新しい総看護師長が赴任した直後から、超過勤務手当の申請が認められず、超過勤務手当の支給が激減したことであります。
県医労大船渡支部が、6月27日、「超過勤務の申請ができない」という看護師のたくさんの切実な声を、支部要求書として病院当局に提出し改善を求めました。私も10月27日の決算特別委員会の医療局審査で取り上げましたが、事態は全く改善されていません。たくさんの看護師の切実な声と実態をどう本当に受け止めているのでしょうか。
昨年の4月から10月の一人当たり超過勤務時間は11.3時間でした。今年は3.1時間に4分の1程度に激減している。この具体的な要因、理由は何でしょうか。先ほどの答弁は全然答弁になっていない。事務の部門も技術職の部門も超過勤務増えているんですよ。ところが4分の1まで激減しているのは看護科だけなんです。
11月24日に、改めて看護師さんの実態と声を聞いてきました。改めて切実な声、深刻な実態を紹介します。
「超過勤務手当の申請は今もできていない。怖くて書けない」
「始業時間と終業時間の打刻は、8時15分、17時15分に打刻するように言われている。その後はパソコンに触るなと言われている」「残業は打刻したその後に行われている」
「看護サマリー、退院準備の超勤は認められない」
「総看護師長が4月に代わってから、恐ろしい勢いで状況は悪化し、民主主義の全く通用しない所になりました」
こうした総看護師長による圧力、パワハラで、超過勤務の申請ができない状況になっているのではないでしょうか。医療局長は、看護師のこの具体的で切実な声と実態についてどう認識されているか。否定するのか、はっきり答えていただきたい。
終業時刻の打刻が事実上強制されている実態について、労働基準法違反となるのではないでしょうか。昨年度と今年度の看護師の把握されている勤務時間はどうなっているか示してください。
大船渡病院は、11月17日まで、超過勤務の申請ができなかった分を、看護科ではなく事務局に直接申請するように伝えました。先ほど答弁あったように、期日までに申請した看護師は300人中60人にとどまりました。その理由を看護師さんたちに聞きましたが、「事務局への申請といっても、怖くて申請できなかった」「組合員ではないから申請できなかった」等の声が寄せられました。
事務局長自身も、看護師が看護科を通して超過勤務を申請できないことを自覚しての対応ではなかったでしょうか。それでも申請できないような異常な圧力と恐怖を感じているのが看護科の状況ではないでしょうか。
こういう声も寄せられました。
「たった一人のために、どれだけの人間の気持ち、人生を犠牲にすればよいのでしょうか」
「たった一人に地域の大事な病院を内部から破壊され、多くのスタッフの気力がそがれ、徐々に仲間を失っていくのは本当につらいことです」
この声を医療局長はどう受け止めますか。ただちに改善すべきではないですか。
【医療局長】
先ほどと繰り返しになる部分がございますが、まず看護師の声の受け止めについてでございますが、大船渡病院において、職員団体等から「超過勤務の申請がしづらい雰囲気がある」という話を受けまして、病院において超過勤務の申請手続きや超過勤務状況の確認を行うなど通知を発出し、適正な勤務時間の把握や管理に努めてきたところであります。
時間外に行った業務に対する手当は、適切に支払われるべきものでございまして、申請されていないものがあるのであれば、その状況を確認したうえで必要な対応を行うよう現在病院とまさに調整をしながら進めているところでございます。
一方で、超過勤務につきましては、事前に命令して事後に確認するという手続きの原則に基づき、必要な超過勤務はしっかりと認め、事後報告についても確認のうえ進めているところであり、日頃から業務の内容の把握、調整など、適切なマネジメントを行い、職員の負担軽減やワークライフバランスの確保、健康保持等につなげていくことが重要であると考えております。
超過勤務の減少の理由でございます。患者の減少により、看護師のみ減っているというお話でございますけれども、まず患者の動向といたしましては、今年度4月から10月までで入院患者数は、20病院全体では0.6%の減少に対し、大船渡病院においては2.7%減少しております。他病院と比較して入院患者数が減少しているところでございますし、同様に今年度4月から10月までの外来患者数は、全病院で1.0%減少に対し、大船渡病院は4.7%減少していると。他病院に比較して外来患者数も減少しているところでございます。
他の医療従事者も増えているということでございますが、そちらにつきましては、放射線部門につきましては、今まで一夜二勤体制をとっておりましたが、今年から宿直に切り替えましたので、そちらの宿直部分で超過勤務が増えていると。また、栄養部門でも人が足りなくなったということで、その分業務の負荷が増えたということで増えているという話をうかがっているところでございます。
また、看護師の超勤の実態の認識についてでございます。時間外に行った業務に対する手当は、適切に支払われるべきものでございまして、申請されないものがあるのであれば、その状況を確認したうえで必要な対応を行うよう病院と調整しながら進めているところであります。
今後、報告状況の分析を進めるとともに、病院において超過勤務の報告のあった職員と面談を通じて状況の確認を行い、必要な対応を行ってまいります。
なお、業務改善の取り組みを通じて、職員負担の軽減、超過勤務の縮減等の取り組みの方向性は正しいものと考えていますが、多様な取り組みを進めるにあたりまして、職員により丁寧に説明するなど工夫していく必要があるものと考えております。
終業時刻の実態への認識でございますが、大船渡病院において勤務時間の打刻を強制しているということはございませんが、職員からの超過勤務の追加報告では、約半数が勤務時間の打刻外の超過勤務となっており、勤務終了後の勤務記録の業務や勤務開始前の情報収集など、ほぼ毎日短時間で行っている状況が見られたところであります。
今後も、超過勤務の事前命令、勤務開始前および勤務終了後の打刻の徹底など、院内ルールの周知徹底を図り、労務管理の適正につなげてまいります。
看護師の勤務時間の昨年度との比較についてであります。大船渡病院看護科の勤務時間について、本年10月の休憩時間を含む勤務時間8時間45分を含んだ在院時間は、1日平均で9.2時間と、昨年10月の10.1時間と比べ0.9時間減少しているところであり、業務改善の取り組みは職員の負担軽減や超過勤務の縮減に寄与しているものと考えております。
看護師の声に対する受け止めについてでございますが、委員ご指摘のような声につきましては、先ほど来申し上げている通り、職員との面談を通じまして詳細を確認しながら、働きやすい職場づくりに向けた取り組みを丁寧に進めていきたいと考えているところでございます。また、一方で他の職員からは、「改善の取り組みにより定時で帰れるようになった」「職員配置の見直しにより休憩時間を確保できるようになった」「時間効率化を意識して業務に取り組むようになった」など、それとは異なる声もうかがっているところでございます。
職員負担の軽減と超過勤務の縮減に向けまして、職員の一層の理解と共感が得られるよう、日々の業務の中で取り組みの目的や効果をしっかり説明しながら進めてまいりたいと考えております。
【斉藤議員】
本当にひどい答弁でありました。本当に看護師さんの血の出るような声や実態を医療局長はまったく分かっていない。パワハラをやっている側からの話しかあなたは聞いていないのですよ。被害者の話を聞いていないのですよ。
改めてお聞きをします。大船渡病院の院長名で、10月20日付で看護科職員宛に、超過勤務の申請状況の確認についての事務連絡を行いました。その結果、60人から1281時間の超過勤務の追加報告が行われました。これは病院当局も、看護師の超過勤務の申請ができていないという事実を認めていることではないでしょうか。同時に、300人の看護師のうち60人しか追加の申請が行われなかったという事実は、いまだに怖くて超過勤務の申請ができていないという実態を示しているのではないでしょうか。医療局長は、9月議会の決算特別委員会の私の質問に対して、「超過勤務の申請が認められなくなったということはございません」と答弁しましたが、これは事実に反する答弁ではなかったですか。60人が超過勤務の申請をしているのだから。あなたの答弁は事実と違ったのではないですか。
総看護師長のパワハラについて、「総看護師長が看護事務室で師長等に対して怒鳴り散らしている声が聞こえる。『どう落とし前をつけてくれるんだ。指2、3本じゃ済まねえ』」という暴言も聞いています。こうしたパワハラで超過勤務の申請をさせない圧力をかけているのであります。パワハラの実態を医療局長自身が直接看護師等から聞くべきじゃないでしょうか。
知事にお聞きします。この総看護師長は、2018年度〜2019年度の2年間、遠野病院で看護師の超過勤務の申請を認めないという同じことをやっていました。このときは、釜石労働基準監督署に告発があり、88人中87人の看護師に総額2424万円余の超過勤務手当の追加支給となりました。
遠野病院事件と同じことが、同じ総看護師長によって、大船渡病院でも行われているという異常な事態について、知事はどう受け止めているでしょうか。
医療局長に改めて聞きます。遠野病院の場合は、総看護師長の人事異動によって対応されましたが、今回も具体的な対応をすべきではないでしょうか。総看護師長が温存されれば、大船渡病院の看護体制は崩壊しかねません。退職に追い込まれる看護師が多数出ることは明らかです。総看護師長を大船渡病院に配置した医療局長の責任はきわめて重大だと私は考えます。
看護師は、患者の命と健康を守るために、献身的に患者に寄り添い看護を行っています。ところが、超過勤務を減らすために、患者の記録を書くことも、退院の手続きを行うことも「超過勤務ではない」と否定され、患者の安全も看護師の使命も無視されていることに本当に心を痛めています。業務改善と言いますけれども、看護師さんは去年と仕事量はまったく減っていません。それどころか、業務改善の名のもとに、1時間遅番、2時間遅番、3時間遅番、こんなことが前日に指示される。チームワークとしての看護ができなくなると言っているんですよ。病棟から他のところに、例えば8月9月、新型コロナでクラスターが発生しました。大船渡病院でも20人前後の患者を一般病床でも受け入れた。そこに病棟から看護師が派遣されて、4-4体制のところが崩壊してしまった。3-3体制も維持できなかった。これは大問題ですよ。看護体制が崩壊しているんだから。こういうことまで起きているんですよ。あなたは分かっていますか。業務改善というのは、プラスどころか混乱を招いているのです。
そして、看護師の本当に患者に寄り添った、看護をしたいというこの思いが、努力が無視されているのですよ、実態は。
医療局長、遠野事件と同じことを繰り返してはだめだ。そしてその総看護師長を配置したのはあなただ。最後に言いますけれども、私は改めて事務局長に会ってきました。「あの総看護師長は変わらない」と言っていました。変わらないということは、遠野事件と同じことをやっている。大船渡病院にいる限り同じことをやっていますよ。これからも続きますよ。ただちにこれは人事異動を含めて、遠野病院のように改善すべきだ。このことを最後に質問して終わります。
【達増知事】
大船渡病院看護科における超過勤務の状況についてでありますが、職員の働き方については、法令が守られなければならないのは言う間でもないことであり、さらに県においては、生活とバランスのとれた働き方を実現できるよう、若者や女性に魅力ある職場環境づくりの推進に取り組んでいるところであります。
病院など組織の運営にあたっては、職員間の意思疎通が十分に図られ、職員が意欲を持って取り組んでいく環境を整えていくことが必要であり、大船渡病院においても、議員ご指摘の内容を踏まえながら、こうした職場環境を整え、地域において必要とされる医療が持続的に提供されるよう医療局において取り組みが進められることを望みます。
【医療局長】
9月議会におきまして、事実と違う答弁をしたのではないかということでございますが、そちらにつきましては、私も「そういう認識はございません」というお話をしております。その根拠といたしましては、令和3年度から勤務管理システムということで、勤務をタイムカードでチェックしております。それと超過勤務の申請の乖離につきまして、例えば、帰りが18時すぎなのに超勤の申請がなされていないかとか、そういうのをしっかりつぶしながら申請がなされていないのではないかというものにはちゃんとしっかり確認したうえで、それをしっかり申請するようにと改めて確認しながら毎月やっているところでございましたので、そういう点で「ない」ということをお答えしましたが、先ほどご答弁いたしました通り、打刻後もしくは打刻前に超勤しているというような実態が今回聞こえてまいりましたので、そこにつきましては、しっかりやり方として見直すことも含めまして、周知が必要かと思っていますし、取り組みが必要と考えているところでございます。
人事異動等の具体的な対応についてでございますが、総看護師長には、看護部門のトップといたしまして、院長を補佐し、病院全体のマネジメントに携わる者として質の高い看護を実践するため、現場の監督、指揮指導、評価、人材育成、安全管理、職員の健康管理などに加えまして、看護部門の目標や病院の目標の達成をめざし、業務改善を行いながら、看護部門全体のマネジメントをしていく看護管理者としての役割を期待し、これまでの経験や実践能力等を踏まえまして、適材適所で配置しているところであり、今後もこうした観点から対応してまいりたいと考えております。