2023年12月7日 文教委員会
教育振興計画(案)に対する質疑
(大要)


・県内就職率について

【斉藤委員】
 教育振興計画はきわめて重要なもので、直前に渡されて熟読できなかったのは大変残念なんですね。今回案件が多いじゃないですか。もう少し余裕をもって、こういう重要な文書については事前配布がされるようにお願いしたい。直前では十分読めないということをまず一言。
 それで、読んでいて教育の哲学が見えないんですね。岩手の教育が本当に何のためにあるのか。どういうものを目指すのかという哲学が感じられなかった。午前中にスポーツ振興基本計画が、国のスポーツ基本法で哲学がはっきりしていたんですよ。スポーツというのは、私たちの生活を豊かにする根本的課題だという理念がしっかり書かれていて、ただ、教育は「岩手の教育のあゆみ」というのは書いているけれども、残念ながら哲学が感じられなかったということをまず前段にお話ししておきます。
 ちょっと気がついたところだけの質問になりますけれども、4ページの「学校教育における成果と課題」の中で、「令和5年3月高卒者の県内就職率が73.6%と高い水準を維持しています」と。これは正確じゃないと思います。73.6%というのは全国的に見たら決して高い水準じゃないと思いますよ。全国順位を示してください。そして岩手県が県民計画で目指しているのは84.5%ですから、たしかに若干上がってきているけれども、高い水準まで上がっているとは言えない。これは全国水準で分かっていると思うので、あとで示してください。

【産業復興教育課長】
 4ページにあります、令和5年3月卒業の高校生の県内就職率が73.6%、全国ではどうかというご質問でございました。現在公表されているのが1年前の4年3月卒業のとき、県内74.1%のときの全国の順位で申し上げますと33位、東北では5位となっております。

【斉藤委員】
 この県内就職率73.6%というのは高くないということがはっきりしていますので、表現は「高い水準を維持している」とはならないと。事実の問題として。

・いじめ、不登校問題について

【斉藤委員】
 それから5ページのところで、「いじめの認知件数や不登校児童生徒数が増加傾向にあることから、ICTの活用等による相談支援体制の一層の充実や、関係機関と連携した教育機会の確保に取り組む必要があります」と。これはかなり矮小化しているのではないかと。ICTの活用等による相談支援体制の一層の充実という、ICTの活用は一つの方策であって、これが目玉のような相談支援体制になるとは全然思わない。その点では、やはり増加傾向にあるいじめ・不登校というのは、いまの学校教育が抱える本当に重大な問題ですよ。一言で言うと、学校が子どもたちのストレスを強めているんですよ。そこの問題を解決するといったときに、やはりなぜ子どもたちにストレスを与えているのかということを考えないと、その基本的な答えは、国連子どもの権利委員会の勧告にあるんです。そういうような視点で見ないと、ICTを活用して相談支援体制の一層の充実という小手先のことでは、本当の相談支援体制の充実にならないと。本会議でも議論されましたけれども、不登校が2000名を超える、高校を入れると2800名でしたか。その4割が「どの相談機関にもつながっていない」ということが指摘をされています。そうしたときに私は、やはり学校が不登校の子どもとどうつながるのか。そういうことを、こちらからのアウトリーチといいますか、こちらからつながるということが大事で、つながって初めて支援相談に結びつくので、不登校というのはただ学校に戻すことが目的ではない。しかしつながっていることがすごく大事なので。私はここの表現はあまりにも短絡ではないかと感じました。
 それから、9ページのところで「自分らしい生き方の実現に向けて」というサブタイトルについて小西さんも指摘をしましたけれども、なかなかこれは微妙な問題だと思います。やはり教育の目的に関わるんですよ。教育の目的というのは、教育基本法からいけば子どもたちの人格の完成ではないですか。人格の完成と子どもの生き方の実現ということ、これはイコールにはならないんじゃないか。もう少し教育の目的、それは子どもたちの人格の完成ということであれば、そこの本質に関わるような正確な表現の方が良いのではないかと、小西さんの意見を聞いて感じました。
 10ページから「予測困難で変化の激しい社会」というのが次々出てくるんですね。これは国の振興計画がそう表現していると。率直にいえば国が混乱しているだけなんです。今いろんな事件起きていますよ。しかし世界の流れを大局的に見たら進化・前進しているんですよ。目の前のさまざまな出来事、激動といってもいい。しかしだからといって予測困難と表現するのは、政府にとっては予測困難かもしれないけれども、私はまったくそう思っていない。例えば、ウクライナへのロシアの侵略だって、イスラエルの大規模攻撃だって、一言でえ言えば、国連決議違反、国連憲章違反なんです。世界の平和を実現するためには、この国連憲章、国際的な決議、法規に基づいて解決すると。いま大変な時代になっているけれども、必ずこういう侵略とか大規模攻撃というのは破綻、失敗するんです。ただ、いま起こっている犠牲を最小限にしなくちゃならないというのが現瞬間の課題なので、「予測困難」ということで将来が全然見えないような表現というのは、いくら国が用いるといっても正確ではないのではないか。予測困難と子どもたちに押し付けているんですよ。そうではなく、解決の方向を示すのが教育の目的じゃないのかと。そういう規範はすでにあると私は思っているので、予測困難ということを子どもたちに押し付けるのはいかがなものかと。
 17ページですけれども、これは県民計画の指標だからここでは何とも言えないんですけれども、この中に「中学3年生、高校3年生において求められている英語力を有している生徒の割合」となっていますが、英語だけをここに持ち出してやるということが、グローバル化だというかもしれないけれども、子どもたちの教育にとって英語だけ取り出してやるということが正確なものなのかどうか。学者側から言わせれば国語力の方が大変なんだと。国語の力があれば何でも理解ができるという学者もいます。ここで英語力だけを取り上げるということがいかがなものかというのが私の意見として指摘をしておきます。
 22ページにも「将来の予測困難な時代」というのがあって、23ページもこれも県民計画の指標なのですが、目標項目、目標値が@〜Cまであるんですが、例えば@の「意欲をもって自ら進んで学ぼうとする児童生徒の割合」は、小学校81.2%、令和8年に82.5%にすると。これだけ上げて何が変わるのかと。「授業で自分の考えを深めたり、広げたりする」82.6%を83%に、0.4ポイント上げることがどういう教育の目標になるのか。こういうのは目標にならないのではないでしょうか。目標というのはやり切るためにあって、0.4ポイント上げるだけの取り組みというのはどういうものなのかという疑問を感じたところです。

【教育企画室長】
 今までの成果と課題の記載、また小西委員からもご指摘いただいた「自分らしさ」の表現が教育基本法でいう「教育の目的」の部分との関係でいかがなものかということ、「予測困難」というところにつきましては、今回この委員会でいただいた意見をもとに再度検討させていただきたいと思っております。
 また、指標に関して申し上げますと、この教育振興計画に関しましては、現行計画を策定する際に、この文教委員会でもご議論いただいたのですが、教育に指標というものが馴染むのだろうかというご意見もいただいたところです。また、教育というのは、必ずしも施策でもって即効性があって伸びていく分と、あとはさまざまな要因で子どもたちも変化していく、成長していくというご議論もいただきまして、この教育振興計画では、指標というものは設定しないのですが、県民計画の指標を基に進捗を見ていこうということから、指標という形ではなく「参考」という形で載せさせていただいております。
そして指標の数値の設定におきまして、わずか上げたのが目標と言えるのかというお話もいただきました。今回これは第2期アクションプランに掲げた目標なんですけれども、その際我々が検討したのは、岩手県はかなり高いものもございます。全国的に、東北的に見ても上位の状態になっている子どもたちの意識であったり、態度であったりというところに関しては、これを維持していくのがまず我々の目標としようというような発想でもって、低いものに関しましては、さまざまな取り組みで上げていく。また、全国的、東北でも上位のものに関しては維持していくというようなことで、どちらかというと維持指標というような形で設定していることから、先ほどご指摘いただいたところは上げていくと、上昇というような設定になっているところでございます。
 ご意見を踏まえて検討を進めていきたいと思います。

【斉藤委員】
 答弁がなかったのは、いじめの問題で、ICTの活用等による相談支援体制の一層の充実という、ここの表現だけではきわめて不十分だと思うので、これは本当に大事な課題なので。

・読書状況調査結果について

【斉藤委員】
 28ページなんですけれども、「豊かな心の育成の現状と課題」の3で、「子どもの読書状況調査結果」なんですが、小学校5年生は1ヶ月で17.2冊、これはすごいと思います。全国よりもはるかに子どもたちは本を読んでいると。ところが中学校になると5冊、高校生になると2.2冊と。普通なら中学校高校と冊数が増えて当たり前だと。それが豊かな心をつくるんじゃないでしょうか。こんなに激減する子どもを取り巻く状況というのは何なのか。やはりいま学校が歪んでいる。子どもたちを取り巻く状況がかなり深刻になっているということを示しているんじゃないかと思いますがいかがですか。

【生涯学習文化財課総括課長】
 子どもの読書状況調査の結果についてでございますが、1ヶ月の読書冊数については先ほどご紹介いただいた通りですけれども、1ヶ月に読書をした「読書者」と呼んでおりますけれども、1ヶ月間に読書をした児童生徒の割合につきましては、平成26年度の調査では中学生が90%、令和4年度で95%になっております。高校生は、66%から78.7%になっております。冊数としては割合が伸びておりませんけれども、読書活動をする児童生徒については決して低くないと考えております。

【斉藤委員】
 読書の問題で指摘したのは、小学校で17.2冊も読むのに、中学校・高校となると5冊・2冊となること自身が、いま子どもの環境の問題なんだと思うんですよね。どんどん減っているのに、「生涯にわたって読書に親しみ、楽しむ習慣につなげていく」とならないじゃないですか。離れているんだから。だからこういうデータが出ているんだったら、なぜこうなっているのかと。本当に中学校・高校に入るにしたがって、読書に親しむような環境をつくるためには何が必要なのかという風に考えないといけないのではないか。あまりにも中学校・高校となれば、成長すればするほど読書から遠ざかるということでいいのかというのが私の問題提起であります。

・主権者教育について

【斉藤委員】
 あとは28ページの7のところで、これは主権者教育に関わるんですけれども、ここでは「各教科や総合的な探究の時間を中心にして、現在の諸課題を考察し、解決策を構想する学習などにより、一層児童生徒が社会に主体的に参画しようとする態度の育成」となっています。
やはり18歳選挙権なのだから、さまざまな政治活動、平和運動に積極的に参加をしていくということが必要なんだと思います。ヨーロッパなんか見たら、気候危機打開などで高校生が自ら立ち上がって社会を変えていこうとやっているけれども、日本の場合はまだほんの一部です。社会を変えていくというのは行動なんですから、いろんな行動が自由にできるような、学習だけにとどまらない、そういう主権者教育を。EUでは主権者教育の基準というか基本みたいなものも示されているので、そういうことも含めた取り組みが必要なんだと思います。まだまだ制約ありますよ。さまざまな集会や運動に参加する点でいくとブレーキがかかるということありますが、そうではないのではないかと。そうやって規制していたら、やはり子どもたちの人権というのが本当の意味で保障されない。
 子どもの人権ですごく大事なのは、主張する=意見表明権なんです。意見表明権を保障することをもっと積極的に学校教育の場でもやっていく必要があるのではないかというのが私の提起です。

【高校教育課長】
 主権者教育につきましては、主権者として社会の中で自立して、他者と連携共同しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決など社会の構成員の1人として主体的に担うことができる力を育成することが大切だと考えております。
 基本法におきましても、意見を表明する機会や社会的活動に参加する機会などの確保ということが謳われておりますので、こういった社会の課題解決等に参加する中で、そういったことで行動できるような力をつけていけるように、学校教育に取り組んでいきたいと考えております。

・部活動について

【斉藤委員】
 34ページのところで、「部活動への加入が任意加入となるように、生徒の自主的・自発的な参加による部活動の徹底について周知する必要がある」と。まったくこの通りで、いま中学校はだいたい100%近く任意の加入になっているのではないか。実態をお知らせください。
 問題は5のところで、「部活動における指導方針等について、学校、保護者、外部指導者等の共通理解が図られ、望ましい活動となるよう、学校に対する働きかけを行う必要があります」となっていますが、生徒の自主的・自発的な参加による活動と言うなら、なぜここに生徒が入らないのですか。生徒が自ら活動の計画、方針、目標を立てると。それが本来の部活動だと思いますよ。生徒を除いて指導方針を考えるということは、これは違っていると思います。生徒が主役で、そこに適切にアドバイスするというのが教師その他専門家、指導者の役割だと思います。いま高校野球でもそうなっているじゃないですか。選手に考えさせてやるような、甲子園に出るような学校でもそのように子どもたちの自主性・自発性、それがチーム力を高めると。この5のところは、生徒を除いて部活動の指導方針を立てるということはとんでもない話だと指摘おきます。
 37ページの「適切な部活動の体制の推進」ということで、休日の地域移行は必要なことになっていますが、心配なのは、部活動休養日の設定なんです。週2回は休養日にしようと。これはスポーツ医科学的にも根拠のある話なんです。学業と部活を両立させるという点でも大事な提起だと思うし、それだけ部活動というのは、長時間ではなく集中的に取り組むような部活動に改善を図ることが必要だと思いますが、この手引きで示された週2日の休暇というのが、現在実態として守られているのか。どう取り組まれているのか。課題は何か示してください。

【保健体育課総括課長】
 健やかな身体の育成についての内容についてですが、任意加入につきましては、高校におきましては任意加入が進められているところです。中学校段階におきましては、それぞれ学校の実情等もございまして、自発的な参加で行われているんですけれども、表現はちょっと異なりまして、いずれの部にも所属しないことを認めているというようなところ、例えば校外活動部、地域活動部等の設置ということで、令和4年度の段階で147校中112校。2つ目として、運動部・文化部等の所属はさせるが、校外部活動を優先させているのが147校中35校。そして運動部・文化部に所属させ、学校外の活動に対して特に配慮していないというのは0ということでございます。
 部活動における指導方針等についてですが、学校、保護者、外部指導者等の共通理解を図る機会を設けるということで設定をしているところでございます。生徒につきましては、さまざまな機会を見て、例えば部活動顧問であったり、学校全体の集会であったり、そういう機会をとらえながら設定が図られていると認識しております。
 スポーツ医科学の観点を踏まえた指導・研修の取り組みということで、休養日の設定につきましては、ガイドラインに記されている通り、週に2日ということで現在進められております。それについては、適切に進められているものと考えております。さまざまな医科学的な視点から、休養日を設定した方が効率的・効果的な活動につながるということで示されておりますけれども、これにつきましては今後においても適切に進めていきたいと考えております。

・食育の方針について

【斉藤委員】
 36ページですけれども、食育の方針が示されています。中核的な役割を担う栄養教諭、児童生徒に望ましい食習慣を身に付けさせる生活の規範である家庭への啓発に取り組みます」と。学校だったら学校給食の位置づけを明確にしなければだめなんじゃないですか。学校給食を通じて、望ましい食習慣、食育、安全安心。食育を進めるにあたって、教育の一環として取り組まれている学校給食をどのように重視するのか。地産地消、顔が見える給食、そういうものをやる必要があるのではないかと思います。

【保健体育課総括課長】
 食育についてでありますけれども、生活の基盤である家庭への啓発という点でございますが、ここでは児童生徒の健康の保持・増進に向けた対策の充実ということでございまして、現在60+プロジェクトということで、運動習慣、食習慣、生活習慣を一体的に取り組むということで現在進めているところでございます。そういう中で、さまざまな課題、例えば肥満等におけるもの、スクールタイムであったり生活習慣が変化しておりまして、そういう中で食事に関してもしっかりと学校での指導ももちろんですけれども、家庭との連携が必要ではないかということで進めているところでございます。

・特別支援教育について

【斉藤委員】
 42ページも県民計画の指標なのですが、「『特別支援学校が適切な指導・支援を行っている』と感じる保護者の割合」、現状値が96.6%で目標値が96%なんです。下がる目標はないんじゃないでしょうか。ちょっとびっくりしました。

【特別支援教育課長】
 いわて県民計画第2期アクションプランにおきましては、ここのページで現状値R4年と書いておりますけれども、計画の策定にあたってはR3年度のものを現状値として計画をつくっております。R3年度の現状値が96%ということで、それを維持していくということで令和8年度まで96%としております。

・教員の人材確保、資質向上について

【斉藤委員】
 56〜57ページの「教育への情熱と高い志を持つ有意な人材の確保、育成、資質向上」とあります。新聞報道で、今年先生になろうという人が1000人を割ったと、大変深刻なことが報道されました。いま先生方は、大変な残業をやっても手当も出ないと。そういう認識が定着しているんですね。生きがいの前に大変な仕事になっている。その払拭がまず文科省を先頭にして打開をされなくちゃならないと思います。
 それで、教職員の勤務時間の適正化、タイムカードだとか、学校閉庁日だとかあるけれども、根本的な解決にならないんじゃないでしょうか。やはり授業時数を適切に減らすとか、業務を減らすことをやらないと、タイムカードでいくらやっても、業務が減らない、授業が減らない。業務をどう適切に減らすのか、授業時数の基準より増やしてやっていますから、そういう具体的な改善方策を示さないと、現実にはこの問題は解決できないのではないか。

【教職員課総括課長】
 教職員の働き方改革につきましては、働き方改革プランというもので取り組んでおりまして、学校行事の見直しですとか、ICT機器を活用した会議の効率化なども進めております。何点か具体の取り組みを申しますと、研修時数を削減したりですとか、やはり部活の関係、多忙化に関するもので、例えば部活動指導員、市町村立学校でいいますと、平成30年度14人だったものが令和5年度10月末現在で139人、県立学校では28人が96人ということで増えていると。あとは、夏期休暇、年末年始の学校閉庁日の設定だったりとか、留守番電話による時間外対応を県立学校ではすべてやっています。こういった取り組み、委員からお話あったように、業務を減らすという取り組みが全体的に必要だということで、やれるところからやっているというところもあります。さまざま国の動きなりもとらえながら、引き続き縮減に向けた取り組みを行ってまいりたいと思います。