2023年12月12日 復興特別委員会
復興推進プランに関する質疑(大要)
・いわて被災者支援センターについて
【斉藤委員】
先ほど復興推進プランの概要の説明のところで、「生活・雇用」の冒頭に、「市町村や社会福祉協議会等と連携した被災者の生活の安定に向けた相談対応」という説明もありました。
決算特別委員会でも取り上げたんですけれども、いわて被災者センターの活動が大変重要だと。実績もあげているということで、直近のいわて被災者支援センターの活動実績をまず示していただきたい。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの今年度の実績についてでございますが、令和5年度は、10月末現在で76人から相談がございまして、相談対応回数は1571回となっております。また今年度は、職員等を対象とした被災者支援担当者研修会を2回開催しておりまして、そのほかに、相談者への支援方針の共有など、市町村や市町村社会福祉協議会との連携強化を図りながら支援しているところでございます。
【斉藤委員】
相談対応件数は10月末現在1571回と。特に、複雑困難な課題に対応するということで、弁護士による専門家派遣がすでに63回、生活設計、ファイナンシャルプランナーに基づく専門家派遣が10回。いわば法律的な、専門的な相談にも対応していると。ただ、専門家の相談というのは1回では解決しないんですね。それをセンターがフォローしているということになるわけです。
それで個別支援計画の作成状況の実績を示してください。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの個別支援計画の作成状況ということでございますが、令和3年度の開設から本年10月末までに、495人から相談が寄せられ、このうち継続した支援が必要と認められた339人について、個別支援計画を作成しており、これまでに215人の支援が終了し、124人の支援を継続しているところでございます。
【斉藤委員】
この個別支援計画というのは、センターに行って見させていただきましたが、10ページ以上の詳細な支援計画なんですよ。本当にしっかり被災者の生活実態を把握して、そして継続的に支援をしていると。相談受付件数のうち、計画作成した割合が68.5%、支援が完了した割合が63.4%ですから、約7割方が相談を受けた者の個別支援計画を作っているということになりますね。
それで、これだけ大変頑張っているにも関わらず、センターの体制はどうかと。たった4名なんですよ。訪問同行支援はこれまで、令和3年度、4年度、5年度どう推移しているか示してください。
【被災者生活再建課長】
センターにおける訪問同行支援の状況ですが、令和3年度は23回、令和4年度は45回、令和5年度は10月末現在で48回となっております。
【斉藤委員】
訪問同行支援、伴走型支援、いま本当に重要になっています。すでに10月末現在で昨年を超えているんですよ。訪問同行支援といったときに、複数で同行すると。4名の体制ではセンターに人がいなくなるんですよ。だからこのセンターでは、NPO法人が独自に人を配置してやっているわけです。ますます切実になる被災者の生活相談への体制、伴走型支援、知事も最近そのことを強調しています。伴走型支援を強化するといったら、来年度抜本的に体制を強化する必要があるのではないかと思いますがいかがですか。
【被災者生活再建課長】
センターの体制強化ということについてでありますが、住宅ローンの返済であるとか、生活設計の見直しなど、専門的な支援が必要なケースについては、弁護士やファイナンシャルプランナーなど外部の専門家と連携しながら、きめ細やかに対応できる体制を構築して、伴走型の支援を現在実施しているところでございます。
相談対応回数や訪問同行支援、専門家相談の回数が増加傾向にあることを踏まえまして、令和5年度は相談体制の充実を図るために、相談支援に対応する職員の人件費を増額し、センターの業務を相談支援により特化した内容に見直しを図ったところでございます。
今後とも相談内容や支援の状況を踏まえまして、業務の見直しを検討するとともに、弁護士等の専門家や市町村社会福祉協議会などと一層の連携強化を図りながら、相談体制の充実に努めてまいりたいと思います。
【斉藤委員】
たしかに今年度若干拡充されたんですよ。4名の体制は変わらないけれども、事務員を相談員の人件費で措置したという程度です。だから人員は変わらないんですよ。最低あと2名の増員は必要だと思います。センターに聞いたら、お隣の宮城県はこういう支援センターはないと。その話を聞いて、岩手の相談支援センターに相談に来ていると。東京からも来ていると。これは本当に全国に誇る達増県政の大事な取り組みですよ。被災者の生活再建を「継続した課題」と県は位置づけているわけだから、住宅を再建してもその借金返済で困っている。本当に大変なさまざまな問題を抱えていますから、私はぜひ本当に今の取り組みが継続して、さらに拡充されるように体制の強化をぜひお願いしたい。
県内・県外避難者への支援ですけれども、これは昨年度の調査で100名近くが岩手に戻りたいという意向でした。この対応は県は今直接やっているということなんですけれども、県内・県外への避難者への支援についてはどう取り組まれているのか。
【被災者生活再建課長】
令和3年度と令和4年度に、県外に避難している434世帯、県内で避難している645世帯、合計1079世帯を対象に、帰郷の意思などを確認するアンケートを実施したところです。その結果、789世帯から回答があり、うち帰郷希望のあった92世帯にたいし、いわて被災者支援センターにおいて個々の状況をお聞きしながら、災害公営住宅の募集案内や沿岸市町村の移住定住支援の情報を送付するなど、県とセンターが連携しながら帰郷に向けた支援に取り組んでいるところでございます。
【斉藤委員】
帰郷を希望している世帯が92世帯だったと。もちろんこの中には、すぐに戻りたいだけではなく、本当に5年後10年後、そういうこともあると思います。ですから、そういう点でも継続した支援が必要だと。
・原発汚染水への対応について
【斉藤委員】
福島原発事故による汚染水による被害・損害が発生をしております。この汚染水の海洋投棄による被害・損害の状況をどのように把握されているか示してください。
【放射線影響対策課長】
本県水産業への影響についてでございますが、水産加工関係団体からの聞き取りによりますと、一部の水産加工業者で、イナダやスケソウダラ、イクラ等の輸出が困難になっているほか、スルメイカ、ホタテ、サケ等の取引がキャンセルになっているなどの影響が生じていると把握してございます。また、アワビの10kgあたりの事前入札価格は、10月漁獲分が97000円と前年比約3割低下、11月漁獲分が76000円と前年比約4割低下したところですが、他の水産物の影響については現時点では確認がとれていないところです。
【斉藤委員】
おそらくスケソウダラは冷凍物が中国にかなり入っていたんですね。これは総額で6億円余ではなかったでしょうか。これはほとんどストップではないでしょうか。そうすると、本当に冷凍庫に保管しているわけです。電気代が大変な額でかかっているんです。現段階でどういう被害・損害が発生しているかということも把握する必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
【放射線影響対策課長】
現在、具体的な損害額等については把握していないところでございますけれども、損害賠償請求の取り組みでございますが、中国からの輸入停止措置等により損害が生じた場合には、東京電力において賠償を行うこととしており、県内の一部の水産加工業者については、東京電力との賠償に向けた交渉を行っていると把握してございます。また、アワビの事前入札価格の低下にともなう損害についても、県漁業協同組合連合会が東京電力と賠償に向けた交渉を行っていると把握しているところでございます。
【斉藤委員】
すでにそういう損害賠償で交渉を行っているという例はあるわけですから、具体的に県が把握をする必要があると。先ほど水産加工業の大変厳しい状況も議論になりました。そういう中で、追い打ちをかけるように汚染水の海洋投棄によって被害・損害を受けると。本当にこれは許されないことだと思います。元に戻りませんからねこれは。どんどんこれから被害・損害が広がるだけなんです。だから、次々としっかり手を打って、被害・損害が広がらないような対策を政府に求めるべきだと。
そもそも海洋投棄というのは、「関係者の理解なしにはやらない」と約束していたものです。それを一方的に反故にして、国内でも理解を得られずにやったし、海外に対しても理解を得られずにやったから、こういう深刻な事態になっているわけで、そういう点でこの海洋投棄をこのまま続けていいのかということが問われているんだと思います。被害・損害の状況を含めて、この海洋投棄を止めないと被害が広がるわけですから、そういう対応をすべきだと。
もう1つ、汚染水の処理については、海洋放出以外にも方法があるんです。それをまともに検討しないで一番安上がりな海洋放出をやったというのが実態ですよ。これは県の市長会も「別の方法を検討すべきだ」と毎年要望しているんですよ。そういうことも現段階で県もしっかり政府・東京電力に求めるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
【放射線影響対策課長】
海洋放出を含めた処理水の処分につきましては、漁業者をはじめとする事業者が安心して事業を継続できるよう、国および東京電力が処分方法も含め全責任をもって対応するべきものと考えてございます。
処理技術の検討については、今年度実施した県沿岸13市町村で構成する岩手三陸連携会議および県漁業協同組合連合会による三者要望や政府予算要望等で、トリチウムの分離技術などさらなる処理技術の推進を国に要望しているところでございます。なお、東京電力では、処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた行動計画に基づき、公募等を実施し、トリチウムの分離技術の研究が進められていると承知しているところでございます。
【斉藤委員】
汚染水の海洋投棄は、そういう意味でいけば、国内でも国外にも理解を得られずに強行したと。そして安上がりだと思ってやったけれども、中国に対する水産物の輸出額というのは、全国規模で見ると800億円を超えるんですよ。安上がりどころかとんでもない損害が発生するんです。そういう意味でも無謀なやり方だということは指摘をしておきたいと思います。
・災害公営住宅のコミュニティ確立支援について
【斉藤委員】
コミュニティ確立支援の要である集会所の活用状況について、実態を詳しく述べていただきたい。それについてどう認識されているかも答えていただきたい。
【建築住宅課総括課長】
県が管理している災害公営住宅のうち、集会所のある29団地における令和5年度第2四半期の一月あたりの集会所の活用状況でございますが、0回が2団地、1回が11団地、2回以上が16団地でございまして、そのうち20回以上の団地が2団地となっているところでございます。
集会所が活用されているアパートでございますけれども、多く活用されているところは、自治会活動が盛んなアパート、あとは市町村社会福祉協議会が一緒になって活動していただいているアパートが積極的に活用いただいている状況でございます。
【斉藤委員】
集会所が一ヶ月で全然活用されていないのが2団地、たった1回が11団地、2回以上と言ったけれども、2回だけが7団地あるんです。これで20団地です。0〜2回が20団地、圧倒的に集会所は使われていない。閉まっている。
なぜ集会所が整備されたかと言いますと、阪神淡路大震災の教訓なんです。あそこで孤独死が発生をしたと。2000名以上発生しました。だから本当に被災者が災害公営住宅の中で集える。そういう集会所。集会所だけでなく支援員の事務室まで整備されているのが岩手の災害公営住宅なんです。コミュニティ形成の拠点として整備した。それが現実問題として残念ながらほとんど使われていない。被災地岩手として、阪神淡路大震災の教訓を生かすということは、岩手県に求められている課題だと思いますよ。阪神淡路大震災の教訓を生かして集会所はつくったが、それを使えるような対策がなかったということになれば大変なことになる。
今の答弁にもあったように、20回活用されているところもあるのです。12回活用、16回活用されているところもある。共通しているのは、生活支援相談員が配置されているところです。そこではさまざまな行事も企画され、人がいますので安心してそこに集える。そういう意味で、私はせめて、50戸以上の災害公営住宅にはきちんと、実績で証明されている生活支援相談員を来年度から配置すべきだと思いますけれどもいかがでしょうか。
【地域福祉課総括課長】
生活支援相談員の配置についてでありますが、本県では生活支援相談員を配置して被災者の見守りなどの個別支援やサロン活動などの地域支援を重点的に実施する地域見守り支援拠点の設置を推進してきたところでありまして、今年度2カ所追加し、6市町に12カ所の拠点を設置しております。これらの拠点は、各市町村社会福祉協議会が地域の支援ニーズを踏まえ、4カ所、災害公営住宅のほか防災集団移転先団地や商店街などに設置しているものであり、災害公営住宅の入居者に加え、持ち家を再建した被災者なども対象に支援を行っているところでございます。
県としましては、引き続きこうした見守り支援の取り組みにより、市町村や市町村社会福祉協議会などの意向もうかがいながら、災害公営住宅の入居者相互の交流や近隣住民との交流を促進し、地域住民が相互に支え合う福祉コミュニティの形成を推進してまいります。
【斉藤委員】
私がかなりリアルにお話ししても、災害公営住宅には4カ所しか配置されていないんです。なぜなのか。20団地が立派な集会所があっても0〜2回しか活用されていないんです。先ほど言ったように、阪神淡路大震災の教訓を生かして、本当に孤独死をなくし、そして災害公営住宅でのコミュニティを形成する、そういう前向きの経験・教訓をつくるということが今求められているのではないですか。いま災害公営住宅の実態は、先ほどの答弁にもあったように、65歳以上が55%です。高齢者の一人暮らしが34%です。こういう方々は行き場がないんです。やはり集会所を拠点にして、3世帯に1世帯以上の一人暮らし高齢者も見守るような体制を構築することが必要なのではないか。20団地もあるんですから。なぜ改善しないんですか。やらない理由は何ですか。
【地域福祉課総括課長】
災害公営住宅への生活支援相談員の配置についてでございますが、本県いま約60人の生活支援相談員を配置しておりますけれども、やはり地域見守り支援拠点といたしましては、災害公営住宅の入居者に加え、持ち家を再建した被災者なども対象として支援を行うように、地域の実情に応じて設置・運営しているところでございます。
県といたしましては、市町村や市町村社会福祉協議会などの意向もうかがいながら、また、民生委員、市町村が独自に配置する支援員などとも連携しているという実態も踏まえまして、今後も必要な人員を配置してまいりたいと思っておりますが、災害公営住宅への配置につきましても、来年度以降の配置についても、今後市町村や市町村社会福祉協議会などの意向をうかがいながら、配置をしてまいりたいと思っております。
【斉藤委員】
たしかに自力で住宅を再建した方々がいます。しかし町内には町内会、自治会があるんです。町内会、自治会というのは、全世帯の名簿を把握しているんです。民生委員もいるんです。一人暮らし高齢者を民生委員がきちんと訪問しているんです。災害公営住宅は、100世帯200世帯あっても、そういう体制が自力ではないんです。先日ニュースも出ました、船戸岩手大学客員准教授が、災害公営住宅のコミュニティ問題で自治会役員と協議をしたと。「大変だ」と。やはり行政の支援がないと、自力だけでは今災害公営住宅のコミュニティや役員の体制を維持するのは大変だというのが共通の認識です。
本当にもう12年経ってますから、役員も交代の時期なんです。今まで頑張っている役員もいつまでももたない。そういう中で、自治会を支えながら、コミュニティを今の時期に確立しないと、本当にお年よりだけの住宅になってしまう。そういうことを絶対に岩手は解決すべきだと思いますけれどもいかがでしょうか。
【復興防災部長】
委員からもご紹介ありました船戸先生の取り組みも、県の方から委託事業という形で、コミュニティ形成の手助けという形で事業を進めているところでございます。
いずれ災害公営住宅でなかなか自治会が構成されないといったような問題は、ずっと以前からございますので、県としましても市町村とともに問題意識、共通認識をもって対応してまいりたいと考えております。