2024年3月5日 予算特別委員会
政策企画部に対する質疑
(大要)


・知事のマニフェスト+39について

【斉藤委員】
 先ほども議論がありましたが、2月14日付の令和6年度当初予算におけるマニフェスト関連の事業についてという資料をいただいて、9月4日に選挙が終わったばかりで半年も経たない中で、予算に39の公約がほとんどの項目で盛り込まれたということは高く評価をしたいと思います。
 そこで、全体像と新規事業、拡充した事業を示していただきたい。

【政策課長】
 知事のマニフェスト+39についてでありますが、令和6年度当初予算案では、「希望郷いわてのその先」へ歩みを進めるため、4つの重点事項を中心に据えつつ、「マニフェスト+39」の内容を踏まえ、新機軸の事業を盛り込んだ予算編成を行ったところです。
 新機軸の事業については、
・国内外への岩手の強みや魅力の積極的な売り込み
・相談支援をはじめとする公的福祉の拠点整備
・いじめ・不登校対策の強化
・県北地域の農業人材の育成
などを具体化しているほか、関連する事業も含め、10の政策分野や11のプロジェクトなどに位置づけているところであり、全体で364事業、約977億円の予算規模となっているところでございます。

【斉藤委員】
 この+39の具体化で、新規事業、事業を拡充したものというのはすぐ出ますか。そこもリアリズムで示していただいて。

【政策課長】
 令和6年度は、少子化対策強化3本の柱、社会減対策強化3本の柱で、新たな事業、拡充した事業も含めて取り組むこととしており、少子化対策の強化に向けては、有配偶率の向上として29歳以下の新婚世帯に対する支援金について県独自に10万円上乗せ、あとは産後ケア等の利用促進や子どもの遊び場整備など市町村が行う少子化対策への支援、有配偶出生率の向上として…(答弁中断)

(後日書面回答)
令和6年度当初予算におけるマニフェスト関連の新規・一部新規事業数
・新規事業数:38事業
・一部新規事業数:51事業

【斉藤委員】
 達増知事が知事選挙で圧勝して、その公約を部局の方々が真剣に受け止めて、来年度予算に最大限組み込むと。これはもちろん出たばかりの新しい政策なので熟度はありますが、本当に大変な努力だと思っています。

・人口減少対策について

【斉藤委員】
 2023年の出生数が全国で過去最少となる75万8631人、これは速報値ですが発表になりました。人口減少は全国的な大問題ですが、この数は予想より13年早い大変深刻なものです。この主な要因についてどう受け止めていますか。

【政策課長】
 人口減少の主な要因についてでありますが、高齢化が進行する中での、長年にわたる少子化の継続が要因と考えており、有識者によると、社会経済の変化に伴い、晩婚化・晩産化が進み、出生率が減少し、その後の「生み戻し」、いわゆるキャッチアップ、遅れて結婚・出産する動きが起こらず、少子化につながったものとされています。
 また、1990年代後半から2010年代前半の第3次ベビーブームが期待された時期に、経済危機が発生する中で、晩婚化の進行、未婚者の急増により、出生率が過去最低に落ち込んだことなど、これまで少子化から脱却するチャンスがあったものの、適切な対応がなされなかったとの指摘もあります。
 本県の人口の自然減は、高齢化の進行に加え、出生数の減少が大きな要因であり、出生数の減少は、若年女性人口の減少、有配偶率の低下、有配偶出生率の低下によって引き起こされていると分析しております。
 さらに、近年では、コロナ禍による婚姻件数の急減や妊娠、出産控えが出生数の減少につながるなど、新たな要因も顕在化しているという認識でございます。

【斉藤委員】
 今のお話は現象的な理由なんですね。
 もう1つ最近の重要なニュースで見ますと、韓国の出生率が0.72まで落ち込んだと。ただ、報道を見ますと日本との共通性が指摘されています。
朝日新聞では、「大都市部で特に出生率が低くなっている」と。ソウルに人口の約半数が集中していて、「少子化の背景には、長時間労働などによる子育てと仕事の両立の難しさ、子育ての負担の女性への偏りなど、日本とも似通う」「初婚年齢の平均は男女とも30歳を超えた」「日本以上と言われる学歴社会と教育熱も少子化を加速させる大きな要因」だと。
 読売新聞では、「少子化の原因としては、高騰する不動産価格や教育費など、子どもに伴う経済的負担に対する若者の懸念が大きい」「子育てに関する経済的不安を挙げた人は58%」と。
 だから日本の話と同じなんですよ。このまま推移したら本当に韓国の二の舞になりかねないと思います。一言で言うと、「失われた30年」でこの深刻な少子化がもたらされたと。
 皆さんの分析の中で、特に注目して対応しなくちゃならないのは、少子化対策について、構造的アプローチといって、「若い世代の非婚意識が急速に高まっている」「男女とも家庭・子育ての両立を望む人が多いが、家事・育児の負担が女性に偏りがちとなり、仕事を続けたくても難しいと考える女性も多い」と。結婚を諦める、結婚するけれども子どもはもたない。先ほどの韓国の話と同じなんですよ。いま少子化というよりは、若者・女性の中で「結婚を諦める」というところまできていると。ここの打開を真剣に考えなければならないと思いますが、この点はどう検討されていますか。

【政策企画課総括課長】
 出生数の減につきましては、ニッセイ基礎研究所シニアマネージャーの天野馨南子先生からアドバイスを受けており、若年女性の問題が大きいだろうということで、その背景には、20代がどんなライフスタイルを描いているのかというのを地方自治体がきちんと把握していないことがあるのではないかと。
 一例を申し上げますと、今の50歳以上の女性が考える理想の家族というのは「専業主婦」というものに対して、若者は「両立」が主流であることから、両立できるような環境整備や、若い未婚女性が活躍できる場が必要ではないかということで、今年の少子化対策の強化に向けましても女性の社会減対策を進めているところでございます。

【斉藤委員】
 私はもう1つ手前の話をしたんですね。
 皆さんの資料の中でヒントがあるんですよ。合計特殊出生率の減少率が小さい他県の特徴―1つは、「子育て支援サービスを利用して、正規雇用の職に就いている女性が多い」。2つめは、「雇用環境が安定して、共働き世帯の所得水準が高い。その結果、家計に経済的余裕が生まれ、子どもも産み育てやすい環境となっている」と。ここなんだと思うんです。そういう条件がないから、厳しい生活の中で結婚を諦めるという傾向が今出ていると。だから、正規雇用の職に就いていない女性が多い。非正規は全体で4割ですけれども、女性は6割です。ここの改善をしなかったら女性が結婚しようと思わない。もう1つは雇用環境の安定です。家計に経済的余裕が生まれなかったら、子どもを産み育てるという気にもならないわけです。やはり根本に安定した雇用というものがあると思います。ここに本気になって、しかし賃金水準がすぐ東京に追いつくというわけにはいかないから、岩手的な雇用の安定、そういうイメージも示していく必要があるのではないか。そこを本気にでやらないと、今の若い女性の結婚を諦める意識というのを変革していかなければならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【政策企画部長】
 長期的な観点から見ると、やはり所得、生活、子育て、教育等に要するコストとの関係、それとの関係でのそれぞれの可処分所得の問題といったこと、それから地域の社会的なアンコンシャス・バイアスといったこともございます。そして所得・コストの関係の背景といたしますと、若者、特に女性が安定した雇用を得られる地域の状況を作っていくこと、それは所得面もそうですし、心理面といいますか心も安定的に仕事ができるといったことも重要と考えております。
 そういった中で、女性の社会減対策を柱の一つとして挙げていることから、女性が働きやすい環境づくりに向けたさまざまな取り組み、セミナーもございますし、あるいは会社・事業所を巻き込んだ取り組み、デジタル分野でのスキル取得に向けたより幅広い仕事を選択できるようにといったことでの取り組み等を来年度予算に盛り込んでいるところでございまして、こういったところにも力を入れながら取り組みを進めてまいりたいと考えています。

【斉藤委員】
 自然減・社会減対策で、少子化対策の3つの柱、社会減対策の3つの柱はその通りだと思います。ただ、皆さんがせっかく分析して、減少率が少ない他県の特徴までつかんでいるんだから、そこを根本にして、そして岩手で安定して働き、経済的余裕が生まれるような、そういう子育て支援にしても労働環境にしても作っていかなくちゃならないと。そういう岩手で若者・女性が働くイメージ、姿を分かりやすく示していく必要があると思います。若者が岩手で働きたい、結婚したいと思うような、そういうイメージが持てるような対策を合わせてしっかり進めていただきたい。

・県政懇談会について

【斉藤委員】
 今年度の資料をいただきました。10回開催されて、そのうちほぼ半分は若者・女性との懇談と。ここもすごく大事な取り組みだと思います。
 この県政懇談会で寄せられた県民、若者・女性の要望・意見の特徴、県政への反映状況について示してください。

【広聴広報課総括課長】
 今年度、知事による県政懇談会は合計10回開催済みでございます。その中では、参加者を若者・女性とする会としたり、以前から県内の大学等を訪問しておりますが、今年度は二戸高等技術専門校の学生達と懇談するなど、できるだけ多様な立場や年齢の方々からご意見をいただけるよう工夫しているところです。
 今年度の懇談会の中で、特に若者や女性の方々からいただいた意見・提言と県政への反映状況について、例示としてご紹介すると、代表質問で知事が答弁しましたが、県営住宅を活用したお試し居住体験事業について、「期間が1年では短い」という意見について、令和6年度から最長2年まで可能とする方向で施策の拡充を図ろうとしている例もありますし、大学生の方々から、学内で積極的に脱炭素に向けた取組をやっているけれどもなかなか地域でPRしにくいことについて、そこを行政にもサポートをしていただきたいとするご意見がありまして、富士大学さんでしたけれども、これにつきましては、複数の大学も含めた参画によるプロジェクトチームの立ち上げやSNSを活用した情報発信を県としても支援する事例もございます。
 参加者の方々からはそれ以外にも、子育て支援や教育環境の充実など幅広く意見・提言をいただいており、それらについては全庁で共有し、県としての施策の検討等にあたって参考としています。

【斉藤委員】
 せっかく資料いただいているので、84件の提言が出されて、33件措置されて、44件努力されていると。ここまで答弁してください。
 10回の県政懇談会、これだけ若者・女性の意見を聞いている知事は全国にいないんじゃないかと思うぐらいです。本当にこれからを担う若者・女性の意見・要望、実態をつかんで、県政に生かすというのは大変重要なことだと。これを高く評価をして、継続・強化していただきたい。