2024年3月6日 予算特別委員会
警察本部に対する質疑(大要)
・上司のパワハラによる警察官の自殺について
【斉藤委員】
警察官の不祥事案、私が一般質問で取り上げた上司のパワハラと暴行によって若い警察官が自殺した事件について、「本部長注意」の軽い処分になった対応はなぜなのか。懲戒処分の指針と異なった対応となったのはなぜなのか。
【参事官兼首席監察官】
パワハラ行為を行った上司に対する措置についてでありますが、平成31年当時の調査で明らかになった事実に基づき対処したものであり、判明した事実の中で「平手で頭を叩く」などの行為が暴行にあたると判断し、パワハラ行為の一様態として認定し、暴行の規律違反を参考に措置したものでございます。
平成31年当時は、懲戒処分の指針に、未だパワー・ハラスメントに関しての直接的な分類や規定が示されていない状況もあり、「暴行」という規律違反行為を参考にして処分したものでございます。
また、暴行の原因については、「業務の指導が必要な場面において、相応の理由があった中でいきすぎた指導となったもの」と認められたものでございます。処分を決めるに当たっては、個別具体的に、行為の動機、態様、職責の有無などを総合的に考慮しており、当時の過去の先例等に照らして適正に処分したものでございます。
指針と異なった対応とのことですが、懲戒処分の指針の基本的事項において、「実際の処分にあたっては、行為の態様など総合的に考慮するものとし、事案の内容によっては、指針に定める懲戒処分の種類とは異なる処分を行うこと、懲戒処分とせずに監督上の措置である訓戒・注意を行うことなどもあり得るもの」 と明記されております。このことから、当時そのような措置しているものでございます。
【斉藤委員】
立ち入って聞きますが、あなた方は詳細な調査をしたと言いました。その詳細な調査で、パワハラ、暴力・暴行がいつからいつまでどのように行われたか示してください。
【参事官兼首席監察官】
調査の結果でどのようなパワー・ハラスメント行為を認定したかということでございますけれども、期間は一定程度の期間を認定しており、つまり単発的な行為という状況ではございませんで、平成30年5月頃から同年12月頃までの間、当該職員に対して「立たせたままの叱責」「平手で叩く」などの指導の中において、いきすぎたパワー・ハラスメント行為ということの調査結果でございます。
【斉藤委員】
あまりにも不十分な話です。詳細な調査をしたと言っているじゃないですか。それが詳細な調査の結果ですか。
あなた方はこの調査の結果、パワハラが自殺の一因となったと認定しましたね。
【参事官兼首席監察官】
当時は、「パワー・ハラスメント行為が自殺の一因となったことは否定できない」という判断でございます。
【斉藤委員】
今のはきわめて重要です。「一因となったことは否定できない」と。
その後、遺族が公務災害の申請をしました。公務災害が認定された理由は何ですか。
【参事官兼首席監察官】
公務災害が認定されましたのは、県警察において措置をした後の令和2年になってから、地方公務員災害補助基金において認定したものでございまして、答弁できる立場にはないということでご理解いただきたいと思います。
【斉藤委員】
公務災害認定は、「元巡査部長からのパワー・ハラスメントにより精神疾患を発症し、自殺に及んだ」と。公務と精神疾患の発症に相当の因果関係が認められ、かつ精神疾患の自殺に相当の因果関係が認められる事案ということで公務災害が認定されたのではないですか。
【参事官兼首席監察官】
その事案が発生した平成31年当時、関係者10名から詳細な聞き取り調査等を実施いたしまして、そのような措置をとったわけでございますが、公務災害認定がなされたのは、あくまでもその後の令和2年になってからの基金の認定でございまして、県警察としては公務災害認定の内容の確認ができるような当時の調査は確認できていないということでございます。
【斉藤委員】
捜査権のあるあなた方の調査が、公務災害認定よりもお粗末だったということになりませんか。そして去年の12月に、損害賠償請求8310万円余を認めた理由は何ですか。
【参事官兼首席監察官】
先の12月県議会において、亡くなった職員のご遺族から損害賠償請求がなされまして、これを県警察といたしましては、賠償すべき責任があると判断しまして、この和解に応じるべく交渉を進めてまいりまして、先の議案提出に至るという状況でございます。
県警察といたしまして責任を認めた理由ですけれども、たしかに平成31年当時の調査結果を踏まえた措置はございましたけれども、その後基金におきまして公務災害認定がなされ、これはすなわち県警察において安全配慮義務違反があったということで認定されたと受け止め、これについては、しかるべく県警察としても和解に応じるべきという判断に至ったものでございます。
【斉藤委員】
損害賠償請求、和解について、あなた方の説明資料にはっきり書いています。「本件は、盛岡東警察署に勤務していた巡査が、元巡査部長からのパワー・ハラスメント行為により、精神疾患を発症し、平成31年1月28日に自殺に及んだものであり、公務と精神疾患の発症に相当因果関係が認められ、かつ精神疾患と自殺に相当因果関係が認められる事案に関し、損害賠償請求がなされた」と。公務災害と精神疾患の発症に相当の因果関係が認められた。精神疾患と自殺に相当の因果関係が認められる事案だった。間違いないですね。
【参事官兼首席監察官】
繰り返しになりますが、その認定はあくまでも基金の方で行ったものでございまして、その認定に対しまして県警察としては答弁できる立場にないということでご理解いただきたいと思います。
【斉藤委員】
これは損害賠償請求で和解をしたあなた方の説明文書です。こういう受け止めがなかったら8310万円なんて払えないでしょう。あなた方の調査がどれだけずさんだったか。若い22歳の警察官がパワハラ、暴行によって自殺に追い込まれているんです。こんな重大な案件を「本部長注意」で済ませたから、公務災害認定が出て、損害賠償が出されたのではないでしょうか。本部長違いますか。この通りですね。
【警察本部長】
当時の調査でございますが、これは一般質問でも申し上げましたが、ここは詳細に調査をいたしております。それは職員からの聞き取りだけではなく、その他の方法も用いて調査をしたわけでございますが、その当時の結果からは、ハラスメントと自殺の直接の唯一の原因であると断定できなかったということでございます。
その後、公務災害が認定されたということで、そこを受けまして、新たな事実ととらえまして、我々としてはそれを事実と認め、12月議会での損害賠償の決済をお願いしたところでございます。
【斉藤委員】
あなた方は詳細な調査をして処分したと言いますが、その調査でも議会では「パワー・ハラスメント行為が自死の一因になっていることについて否定できないとの判断」と答えています。直後の調査でここまで言っているんです。パワハラが自死の一因だと否定できないと。不十分な調査でここまで言っているのに、あなた方の懲戒処分の基準、「セクシャル・ハラスメントまたはパワー・ハラスメントをすること、重大なものは免職または停職」です。それがなぜ「本部長注意」になるんですか。公務災害認定でそれは覆されてしまった。それぐらいあなた方は本当に不十分な調査で処分してしまったということなんです。だから損害賠償請求される事態になったのではないですか。
【警察本部長】
調査が不十分とのご指摘でございますが、平成31年当時の調査は、職場の中だけの調査だけではなく、あらゆる面から調査を行っております。その結果をもちまして、「パワー・ハラスメントが一因であることは否定できない」という結論には達しておりますが、そのパワー・ハラスメントが唯一の、その原因でもって自殺に至ったかどうか、これは当時の調査では断定をできなかったわけでございます。
懲戒処分というのは、職員に対する不利益を課すものでございますから、憶測に基づいて処分をすることはできませんので、当時の事実関係を厳格に調査した結果をもって処分を判断したわけでございます。
【斉藤委員】
言い訳にもならないですよ。1人死んでいるときに、そして不十分な調査でも「パワハラが自死の一因だと否定できない」と、ここまで言っていて、同じ3月25日に暴行で送検している、暴力行為も認めていた。なぜあわてて懲戒処分にもならない「本部長注意」になるんですか。ならないでしょう。「一因」だと言っているのに。
もう1つ確認します。パワー・ハラスメントによる精神疾患を発症していた。あなた方はこれを確認できませんでしたか。確認したんですか。
【参事官兼首席監察官】
パワー・ハラスメントによって何らかの精神疾患を発症したかどうかを警察として確認したのか否かというご質問だと思いますけれども、当然当時の調査においてその点も考慮しまして、亡くなった職員がいずれどこかのメンタル系のクリニックに通院した経歴があるであろうとか、あるいはご遺族の了解を得まして、本人のスマートフォン等の内容等も確認させていただき、詳細は申し上げられませんけれども、そういったことまでいたしております。その結果の判断でございます。
【斉藤委員】
パワハラによって精神疾患を発症していたということをいつ把握したのかと聞いています。いつ把握したんですか。
【参事官兼首席監察官】
当時の調査では確認できませんでした。あくまでもパワハラ行為と精神疾患の発症、精神疾患の発症と自死との関係については、先ほども答弁した通り基金において認定した事実となります。
【斉藤委員】
あなた方は職場の同僚や上司から聞いたと言っているけれども、かばったのではないですか。上司も処分されていないでしょう。そんな不十分な調査だったのではないですか。結果がすべてを物語っているんです。最終的に8310万円はどういう理由で支払うことになったか。パワハラにより精神疾患を発症して、公務と精神疾患の発症に因果関係が認められ、精神疾患と自殺に相当因果関係が認められる―このようにあなた方は最終的に認めた。
だから結果としてあなた方の調査はきわめて不十分だった。不十分だったら時間をかけるべきなんですよ。自殺事件が起こったのは1月、処分されたのは3月25日です。なぜこんなにあわてて処分したんですか。そしてこの職員は退職金をたっぷりもらって3月末に辞めているんですよ。結果的にこの職員をあなた方は救済したと、こう言われても弁解しようがないではないですか。
もう一度聞きます。8310万円の損害賠償請求の理由、そこから見たら、あなた方の対応がきわめて不十分だったと。一般質問で公安委員長にも聞きました。公安委員長は最後にこう言いました。「今後、警察本部と公安委員会できちんと議論していきたい」と。検証というところまでいかなかったけれども、議論していきたいと。これは検証すべきです。
去年処分されたパワハラも、実は本部長注意なんです。本当にあなた方はパワハラに甘い対応しかしていない。
この結果から見て、それでもまともな対応だったと言えますか。
【警察本部長】
繰り返しになってしまいますが、当時の調査の結果をもって、当時の指針に基づいて判断をしたものでございます。
また、今回パワー・ハラスメントを認定した行為については、あくまで「いじめ」とか「虐待」とかそういった趣旨ではなく、指導の中でそのやり方がハラスメントに及んでいたと。その「暴行」というところをとらえてハラスメントと認定して処分をしたわけでございます。
そしてこの職員について、健康状態等、当時のこと等も確認をしております。個人情報になりますので細かいことはもうしあげられませんけれども、そういったところも勘案した上での当時の判断でございます。ですから、今の段階から改めて検証するということは現時点で考えておりません。