2024年3月6日 予算特別委員会
出納局に対する質疑
(大要)


・入札制度の課題―予定価格の事前公表の問題について

【斉藤委員】
 この5年間、落札率はどのように推移しているでしょうか。全国との比較ではどうなっているでしょうか。

【入札課長】
 5年間の落札率の推移についてでありますが、県営建設工事における一般競争入札の加重平均による平均落札率は、令和元年度から令和3年度がそれぞれ91.6%、令和4年度が92.1%、令和5年12月末までで92.1%となっております。
 国の入札契約適正化法等に基づく実施状況調査結果によりますと、単純平均による全国の落札率は、令和元年度が93.7%、令和2年度93.8%、令和3年度93.5%、令和4年度 93.9%、単純平均による岩手県の落札率は、令和元年度が92.6%、令和2年度が92.4%、令和3年度が91.8%、令和4年度が92.0%となっております。

【斉藤委員】
 全国との比較で見ると、ずっと岩手県の方が低くなっている。残念ながら。令和4年度は、全国が93.9%に対して92.0%です。ほぼ2ポイント弱岩手県の落札率が低くなっていると。これは事実として確認をしておきたいと思います。
 予定価格の事前公表制度について、全国、東北の状況はどうなっているか。品確法の改正における運用指針を踏まえ、事後公表とすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

【入札課長】
 予定価格の事前公表の状況についてでありますが、全国では、事前公表は、一部に事後公表との併用を含みますが、令和5年7月1日現在、29都府県で採用されており、東北地域では、本県を含む5県で採用されています。
 なお、事後公表のみとしている自治体数18団体には、予定価格は事後公表としているものの、設計金額を事前公表としている自治体が含まれていることを確認しています。
 予定価格の事前公表について、県では、入札の透明性の向上、発注者・受注者双方の事務効率の向上、さらには、予定価格に係る不正防止の観点から有効として導入し、国の指針に基づき十分検討を行いながら運用しております。
 制度導入以降、予定価格の事前公表による弊害は確認されていないところでありますが、引き続き、入札動向や他県の状況等を見ながら適切に対応してまいります。

【斉藤委員】
 正確に言いますと、事前公表は東北6県では3県、事後公表が1県、併用が2県ということですね。
 それで、国がやっていないんですよ。県内市町村も宮古市を除いてやっていません。だから全体としては、事後公表になっているんですね。なぜ岩手県が事前公表にこだわるのか。品確法の改正における運用指針では、必ず実施すべき事項として、「ダンピング受注を防止するため、低入札価格調査制度または最低価格制度の適切な活用を徹底し、予定価格は原則として事後公表とする」として国は指導しているのではないですか。

【入札課長】
 国が示す指針では、予定価格の事前公表により懸念される事項として、「落札価格が高止まりになること」、「くじ引きによる落札の増加」、「建設業者の見積努力を損なわせる」などがあります。
 本県の入札の状況をみますと、「落札価格の高止まり」については、直近3か年の平均落札率が91〜92%台であり、全国平均と比較して著しく格差が生じていないこと、また、「くじ引きによる落札の増加」については、その発生割合が1%程度と非常に低い状況であります。
 さらに、適切な積算を行わなかった入札参加者が受注する事態を避けるため、入札書と同時に工事費内訳書の提出を義務付け、入札価格が積算によるものであることを確認しており、現時点では弊害は確認されていないものと考えております。
 指針で、原則事後公表という御指摘がありましたが、地方自治体においては予定価格の事前公表を禁止する法令の規定はないことを参考までにお知らせします。

【斉藤委員】
 実際に事前公表で2ポイント落札率が下がっているんですよ。建設業者の生の声は「95%ぐらいでないと元が取れない」と。これは切実な声です。こういう声もあります。「予定価格の事前公表は適正な積算による価格競争ではなく、予定価格からいくら値引きして入札するかということだけを助長している」と。これが建設業者の声です。適切な積算をさせてほしいという要望にしっかり応えるべきだと思いますけれども、なぜ業者のまともな切実な声に応えられないのですか。

【入札課長】
 国が示す指針で、事前公表による弊害というところが示されています。そういったことに現時点で弊害がないということを確認していることから、事前公表の制度を運用しているところであります。

【斉藤委員】
 国もやっていないし圧倒的多くの市町村もやっていない。県だけがそれにこだわっている。弊害があったら国はやらないでしょう。なぜこだわるのか、答弁からは全然示されない。

・失格基準価格の引上げと最低制限価格制度の導入について

【斉藤委員】
 全国、東北の実施状況を示してください。岩手県も導入すべきだと思いますけれどもいかがですか。

【入札課長】
 失格基準価格の引上げと最低制限価格制度の導入についてでありますが、失格基準価格の引上げについては、県営建設工事入札では、競争性、透明性、経済性等に優れた一般競争入札を原則としつつ、総合評価落札方式を導入し、その拡大を図ってきたところであり、また、品質確保等の観点から低入札価格調査制度を運用しております。
 失格基準価格については、国の通知で「失格基準価格」と「調査基準価格」に適切な幅を設けることとされており、制度の趣旨に即して一定の価格幅を確保しているものです。
 次に最低制限価格制度についてでありますが、令和5年7月1日現在で、全国では、44 都道府県で制度があり、東北地域では、青森県、宮城県、秋田県、山形県、福島県で制度を設けています。
 なお、宮城県では制度は廃止していないものの適用しておらず、秋田県でも令和4年度から適用しないこととしたと聞いております。
 現在、県が採用している総合評価落札方式及び低入札価格調査制度は、ダンピング防止を図りつつ、企業の技術力や企業努力、地域貢献活動等を適切に評価し、価格と品質が総合的に優れた者を契約の相手方にしようとするものであり、最低制限価格を下回った入札を一律に排除する最低制限価格制度よりも優れたものと考えております。
 競争性、透明性、経済性を確保しつつ、企業の地域活動等が適切に反映されること等の観点から、現行の低入札価格調査制度を運用し、また、総合評価落札方式も効果的に活用しながら、ダンピング防止にも適切に取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 少し立ち入ってお聞きします。失格基準価格の算定にあたって、県は5者未満でやるんですよ。入札価格の低い順に、8割の者を算定対象としているんですね。すべての入札者を算定対象とすべきではないか。それから、調査基準価格を下回った場合、調査基準価格に0.95を乗じるということをやっているんですね。これは落札率を下げることになります。建設業者は、「係数の0.95を削除していただきたい」と求めています。「一般管理費は0.68となっているけれども、0.9に引き上げていただきたい」と。この要求というのは、まともなものだと思いますけれども、いかがですか。

【入札課長】
 低入札価格調査制度において、失格基準価格、入札額がこの価格を下回った場合、契約内容に適合した工事の履行がなされないとして失格となる価格を設定しています。
 本県では、入札金額の低い順に8割の者を算定対象者とし、その合計金額に0.95を乗じて算定対象者数で除して得た金額とすることを基本としています。
 失格基準価格を引き上げた場合、調査基準価格に近づくこととなり、最低制限価格制度と同様の内容となってしまい、調査基準価格と失格基準価格の幅が少なくなり、企業の技術力、企業努力等が価格に反映される余地が限定されてしまうものと考えております。

【斉藤委員】
 あなた方の今の制度で、結果的には全国と2ポイントの落札率の差があるという事実を見て、改善すべきだと。
 具体的に、例えば一般管理費は0.68だけれども、0.9に引き上げれば落札率は約95%になると。これは建設業者そう言っていますよ。一般管理費が低すぎるんじゃないかと。

【入札課長】
 繰り返しになりますが、失格基準価格については、国の通知で調査基準価格と失格基準価格に適切な幅を設けるとしておりまして、制度の趣旨に即して一定の価格幅を確保しているものです。

【斉藤委員】
 具体的に言っているので、私の提案は道理があるんじゃないかと。そして元を取るためには95%ぐらいの落札率が適切だと建設業者は言っています。今のさまざまな物価上昇やその他の状況の中で。一般管理費を引き上げればそうなりますよと。私の提案が一番説得力あるんじゃないですか。そういうことを検討したことはありますか。

【入札課長】
 繰り返しになりますが、失格基準価格を引き上げた場合、調査基準価格に近付くこととなり、最低制限価格制度と同様の内容となってしまい、調査基準価格と失格基準価格の幅が少なくなり、企業の技術力、企業努力等が価格に反映される余地が限定されてしまうものと考えております。

【斉藤委員】
 同じ答弁を二度してはだめでしょう。検討したのかどうか聞いたので。検討していないということですよね。

・公共工事積算における物価高騰対策について

【斉藤委員】
 資材、労務単価等の高騰対策など、各種の施行確保対策を、専門工事を含めて、すべての工事ならびに資材供給を対象に拡大すべきではないかと思いますがいかがですか。

【入札課長】
 公共工事積算における物価高騰対策については、工事所管部局がそれぞれ対応することになるため、県土整備部の取組状況を取り上げて説明させていただきますと、県では、毎月、単価改定を実施するなど、資材価格の急激な変動に柔軟に対応しているほか、国と連携しながら、毎年、公共事業労務費調査を実施し、適切な労務単価を設定しているところでございます。
 また、平成25年3月以降に発注する工事では、当初契約締結後に受注者からの請求を受けて、単価適用年月を変更し、最新の単価をもとに変更契約することを可能としているほか、その後に生じた物価変動に対しては、従前からいわゆるスライド条項によって適切に対応していると聞いています。

・被災地への特例措置、地元企業への優先的な発注について

【斉藤委員】
 被災3県の土木工事を対象にした積算を割り増す特例措置、これは継続される見通しかどうか。
 地元企業への優先的な発注の対策はどうなっているか。実績はどうか示してください。

【入札課長】
 国土交通省では、岩手県を含む被災地域に適用してきた特例制度について、一部を見直した上で令和6年度も継続すると発表したところでございます。
 継続が決定した特例措置、復興係数は、被災地域において機材の調達が難航すること等により間接工事費が増大している実態を踏まえ、公共工事の円滑な施工体制を確保するために、共通仮設費及び現場管理費に係数を乗じて設計金額を割り増しするものであり、令和6年度は令和5年度と同様の係数が適用されると伺っています。
 特例措置の県営建設工事への適用については、工事所管部局において適切に判断されていくものと認識しています。
 地元企業への優先的な発注についてでありますが、県営建設工事の発注に当たっては、県内企業の育成、地域経済の活性化、雇用確保の観点から、県内企業で施工可能と認められる工事は、県内企業への優先発注を原則としております。
 復旧・復興工事の円滑な施工の推進のため、入札参加資格要件の緩和措置を講じたこと等により、県外企業の受注割合が高くなった時期もありましたが、平成29年度以降、県内企業の受注は、件数、金額ともに8割を超え震災前の水準に戻っています。
 令和5年度は12月末時点で発注件数が687件、割合が94.9%、金額としては346 億円余、割合が93.6%と、県内企業への発注の割合は、件数、金額ともに9割を超えています。