2024年3月7日 予算特別委員会
復興防災部に対する質疑
(大要)


・いわて被災者支援センターの取り組みと体制強化について

【斉藤委員】
 相談活動、相談件数、内容、特徴はどうなっているか。個別支援計画の作成と支援の状況、訪問同行支援の実績を含めて示してください。

【被災者生活再建課長】
 被災者の相談内容の特徴と対応についてでありますが、いわて被災者支援センターに寄せられる相談は、住宅ローンや家計の見直し、家族間トラブルなど経済面や生活面に関する相談が多く、市町村、市町村社会福祉協議会などと連携して支援に向けた対応をするとともに、専門的な支援が必要なケースについては、弁護士やファイナンシャル・プランナーと連携し、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援を行っているところです。
 また、個別支援計画の作成と支援の状況についてでありますが、令和3年度の開設から本年1月末までに、530人から相談が寄せられ、このうち、継続した支援が必要と認められた372人について、個別支援計画を作成しており、これまでに232人の支援が終了し、140人の支援を 継続しています。
 センターでは、継続支援が必要であるにもかかわらず、生活困窮の相談の後、連絡が取れなくなった方などへの訪問や生活保護の受給申請等への同行支援なども行っており、令和5年度は1月末までに、訪問同行支援を73回実施しているところです。

【斉藤委員】
 被災者支援センターは、被災者の困難な相談に対応するということで、今年度も相談人員新規で111人、いまお話あったように、継続して支援しているのが140人いますから、1月末までで2379回の相談対応回数、これはほぼ昨年と同レベルということになります。
 特に特徴的なのは、訪問同行支援が昨年度は45回でしたが、すでに73回と倍近くに、最終的には倍以上になると思われます。その点で、本当に困っている被災者の駆け込み寺というか、単なる駆け込み寺だけではなくて、沿岸4地区で毎週月4回、弁護士等の専門相談にも対応するということで、大変頼りになる対応になっているのではないかと思います。
 私も直接被災者支援センターに最近の特徴を聞きました。今お話しのように、住宅ローンなどの生活困難が大変多いというのと、相続、家族関係の相談、最近はDVの相談もあるということで、月日が経つほど深刻化した相談が増加をしているという話をお聞きをしました。
 これだけ大事な役割を果たしていますが、来年度の事業、予算はどのように措置しているでしょうか。増えているでしょうか。

【被災者生活再建課長】
 いわて被災者支援センターの委託事業費ということになろうかと思いますけれども、今年度の委託事業の予算額は4112万3千円でした。
来年度は4128万3千円であり、前年度から16万円ほど増加されております。

【斉藤委員】
 昨年度は相談員3人+事務員が相談員で4人ということで、本当に若干だけ人件費が増えたと。
 実態をお聞きしましたら、釜石のセンターに3人、盛岡のサブセンターに3人+αなんですよ。ですから、委託されたNPOが自腹を切って人を派遣して運営しているというのが実態です。この1年間の物価高騰を考えたら、16万円増やしても実質マイナスになるのではないか。人員自身6人以上の体制で回していると。そして物価高騰分もあるといったら、これは本当に実際にはマイナスの事業費にならないか。
 被災者支援センターは、知事も含めて活動を高く評価をしています。評価している割には事業費が増えない。人員も増えない。これはなぜでしょうか。

【被災者生活再建課長】
 いわて被災者支援センターの人員体制についてでありますが、センターでは、相談員が電話や自宅訪問などにより相談に応じているところですが、アウトリーチが必要なケースについては、市町村や社会福祉協議会の生活支援相談員が実際にお伺いするといったところもございますし、すべてがセンターでアウトリーチするというようなところでもないというところが実態としてございます。
そういった中で、県での人員体制については、4人を計上しているというところでございます。

【斉藤委員】
 実態として、市町村の生活支援相談員も減っているんです。一方で被災者支援センターは、訪問同行支援を倍近くに増やしている。本当にこの実態をよく見て、全国的にも高く評価される被災者支援ですから、ぜひ活動の実績、体制をよく見て、それに見合った支援を、物価高騰分も含めてやるべきではないですか。

【復興防災部長】
 センターがスタートしたときから、県で仕様書を作りまして、人数は何人相当という形での委託ということにしてございます。それで応募していただいたのでございますが、受託者の方ではそれに加えて、自分のところで県の委託の範囲内ということであると思うんですが、自前で人数を足して運営している状況でございます。物価高騰等のお話もその通りでございますが、県としては、積算につきましては、人件費の上昇分等も見て積算を出しているところでございます。いずれセンターのあり方、非常に全国的にも評価されているというお話もございますし、相談内容等の状況もその通りでございますので、市町村や社会福祉協議会等と連携しながら、被災者の支援にあたってまいりたいと考えてございます。

・災害援護資金について

【斉藤委員】
 災害援護資金の滞納の問題ですけれども、貸付実績が1171人、支払い期日が到来した者が1041人、滞納が291人・28%、3億649万円、一人当たり105万円ということになっております。この滞納の実態、13年貸付だったと思いますけれども、これはどのように今対応されているのか示してください。

【被災者生活再建課長】
 災害援護資金の貸付けの滞納案件への対応状況ということになろうかと思います。
 市町村においては、法令、条例に基づきまして、借受人の資力状況等に応じて、支払の猶予、あるいは少額での返済等の対応を図ることも可能となっておりますので、市町村では、償還が困難な場合には、早めに相談をしていただくように促すなど、借受人の方の経済状況に配慮した対応を行っていると伺っているところでございます。

【斉藤委員】
 岩手県の場合には、さまざまな支援策が充実していたので、相対的には災害援護資金の活用件数は少なかった。しかし滞納ということは、年金だけで生活が苦しいという方々ですから、阪神淡路大震災も、かなり長期になりましたけれども最終的には免除措置がとられた。新型コロナの福祉資金も非課税世帯は返済免除。こういう取り組みがされているので、東日本大震災の災害援護資金についても、今までの到達点を踏まえて、返せない人から無理矢理返還させることがないように、これは指摘だけにとどめておきます。

・福島原発事故による汚染水の海洋放出問題について

【斉藤委員】
 県内への影響、損害賠償請求の取り組みはどうなっているでしょうか。

【放射線影響対策課長】
 まず、本県への影響についてですが、関係団体等からの聴き取りによりますと、一部の水産加工業者で、中国への輸出が困難になっているほか、取引がキャンセルになるなどの影響が生じていると把握してございます。
 また、漁業団体からは、アワビの10キログラム当たりの事前入札価格が、前年に比べ約4割低下したほか、ナマコの10キログラム当たりの平均単価も前年に比べ約3割低下したと聞いてございます。
 次に、損害賠償請求ですが、中国からの輸入停止措置等により損害が生じた場合には、東京電力において賠償を行うこととしており、県内の一部の水産加工業者が東京電力との賠償に向けた交渉を行っているほか、アワビの価格低下に伴う損害について、現在、漁業団体で組織する損害賠償対策協議会が東京電力と賠償に向けた交渉を行っていると把握しております。

【斉藤委員】
 昨年の決算のときも聞いたんですけれども、中国に対する水産物の輸出額は6億8千万円ありました。これが基本的にストップしていると。この今の対応状況、被害額は把握されていますか。

【放射線影響対策課長】
 輸入停止措置後にどのぐらいの損害が出たかについては、現在把握されていない状況であります。
 なお、こういった損害額につきましては、東京電力に対する損害賠償請求が各事業者から個別に実施されてございます。東京電力が本県の損害賠償額を公表しておりませんので、具体的な損害賠償の状況については把握できていないところでございますが、東京電力では、全国の海洋放出の影響に伴う損害賠償の支払額を公表しており、2月21日現在、全国で40件、43億円の支払が行われたと承知してございます。

【斉藤委員】
 40件・41億円というのは、おそらくほんの一部なんだと思います。そういう点では、汚染水の海洋放出というのは安上がりでやったんですよ。しかし国内外の理解を得ないでやりましたから、こういう輸出禁止とか、水産物の暴落とか、本当に安上がりどころじゃない大変な被害が生まれている。こういう海洋放出は見直すことを求めるべきではないかと思います。

・避難所の改善について

【斉藤委員】
 能登半島地震を見て改めて、初動対応の課題、重要性が明らかになったのではないかと。特に、トイレの設置(T)、温かい食事の提供(K)、簡易ベッド・段ボールベッドの供給(B)ですね。これはTKBと言われますが、48時間以内にどれだけ提供できるかというのが被災者の命と暮らしに関わると。この点で岩手県は、大震災の教訓を踏まえて、どのような備蓄の体制、48時間でどういうTKBの供給体制が構築されているか示してください。

【防災課総括課長】
 トイレ等の供給体制についてでありますが、岩手県地域防災計画では、避難生活に必要な物資の備蓄を市町村の役割とし、県は市町村が物資供給または調達が困難な場合に備えて備蓄を行う補完的役割を担っています。
 そのため、県では、市町村の備蓄だけでは不足することも想定される簡易トイレ、組立トイレ、アルファ米、飲料水、段ボールベッドなどの備蓄のほか、県が作成している「市町村避難所運営マニュアル作成モデル」において、炊き出しについて定めるなど、避難所生活の質の向上を進めるようにしているところです。
 県からの物資供給は、災害発生箇所に関わらず迅速な支援が可能となるよう、消防学校、県遠野地区合同庁舎、県北上地区合同庁舎等、県内複数箇所に備蓄しているほか、大規模災害時に速やかに供給できるよう、岩手県総合防災訓練の中で緊急物資受入・輸送訓練を実施しているところでございます。

【斉藤委員】
 ぜひ教訓を踏まえて、必要な備蓄、もちろん市町村も備蓄するわけですが、ただ一番解決しなくてはならない問題は、学校の体育館での避難です。これは諸外国に例がないんですね。やはり災害大国と言われる日本で、1ヶ月2ヶ月も避難せざるを得ないということ自身、根本的に打開する必要があるのではないか。

・復興への国の支援の再強化について

【斉藤委員】
 日本共産党の小池書記局長が、今年も達増知事、陸前高田の佐々木市長にお会いして、被災の現状、課題をお聞きしました。
 達増知事の発言で大変印象に残ったのは、「いま大不漁、物価高騰等さまざまな中で、国の支援の再強化が必要だ」ということでした。新聞報道でも達増知事は「復興を機械的に終わらせるのではなく、心のケアやコミュニティ支援などの必要な事業は、被災地への影響を十分に踏まえて予算確保をお願いしたい」と。
 第二期復興・創生期間は令和7年度までです。令和7年度で支援が終わるのではないかとみんな心配しています。そうではなく、生業の再生にしても心のケアにしても、ますます支援が必要だという状況ではないかと思いますが、必要な被災者支援、生業再生の財源というのは、第二期復興・創生期間が終わっても継続されるべき、取り組みを強化すべきだと思いますがいかがでしょうか。

【復興防災部長】
 第二期復興・創生期間、国では令和7年度までということにしています。
 現在、前回の5年のときもそうなのですが、国の基本方針は期間の3年目で見直しをするということになっていまして、実は今、まさに第二期復興・創生期間の見直しの作業が国で始まっているところでございます。
 県としましては、従来から申し上げているところでございますが、必要な支援については、「期間を区切って、ここで全部終わり」ということではなくて、被災地の状況をよく見ていただいて、必要な支援は引き続きお願いしたいということを繰り返し申し上げておりますし、今後もそういうスタンスで、国とはお話をさせていただきたいと思っております。