2024年3月13日 予算特別委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・物価高騰の中での中小企業対策について
【斉藤委員】
今日の新聞報道を見ますと、盛岡財務事務所の発表ですが、県内の景況判断指数は−22.1と、前回調査(10〜12月期)との比較で15.7ポイント悪化したということでした。
一方で、実質賃金は22ヶ月連続減少、1月の消費支出は6.3%減と。株価が異常に上がって、今少し下がり始めていますけれども、株価が全然景気を反映していない。経済の弱みを示しているんじゃないかと思いますけれども、こうした中で、県内中小企業の現状と課題、県の対応策について示していただきたい。
【経営支援課総括課長】
県と商工指導団体と連携して定期的に事業者影響調査を実施しておりますが、11月時点で調査した結果から見ますと、エネルギー価格・物価高騰等の影響が継続している事業者が86%、債務の過剰感を感じている事業者が50.2%、売上がコロナ前の同月と比較して20%以上減少している事業者が22.8%ということで、大変厳しい状況にありますし、それから、いま委員からご紹介のありましたような、直近ではなかなか取り巻く経済環境は厳しいという状況もございます。それと合わせまして、先ほどの事業者影響調査の中では、現在の経営課題として、原材料・資材高騰への対応を挙げる事業者が56.8%、人材確保が35.5%、賃金の引き上げ29.5%といったような形になってございます。
こういった経営課題を事業者が多く抱えている状況でございますので、いま実質賃金のお話もございましたが、県内の中小企業者の経営を維持して、県内経済を活性化していくためには、物価高騰に負けない県民の安定した暮らしの実現に向けて、中小企業者の賃上げを促進していく施策がやはり今一番求められていると考えております。賃上げの施策としては、いわゆる防衛的な賃上げも含む当面の賃上げ原資の確保、持続的な賃上げを実現していくための生産性向上のための支援、そして適切な価格転嫁の実現といったものが今必要です。
そういった考えもありまして、昨年の12月議会で物価高騰対策賃上げ支援金の予算をお認めいただきましたし、今般の当初予算でも中小企業者賃上げ環境整備事業費補助を計上させていただきました。それから、昨年7月に関係団体等と行った共同宣言に基づきまして、適切な価格転嫁に向けたさまざまな取り組みを県として展開していくことにしております。
【斉藤委員】
やはり二正面作戦が必要だと思います。いま物価が高騰しているので、物価高騰を上回るような賃上げが必要だと。これは本当にみんなそう思っています。しかしもう一方で、いま答弁あったように、売上が減少している。そして令和4年度の法人事業税は65%が赤字です。法人事業税の対象にならない。これがまた中小企業の実態でもあります。そういう中で、賃上げ支援、売上減少に悩む多くの中小業者に対する支援―この両面作戦が必要だと。
前向きのところからお聞きしますが、今回県が物価高騰対策賃上げ支援金を21億円の事業費で打ち出したと。これは全国でも高く評価される取り組みで、先ほどの答弁では、3月8日段階で1055件の申請があったと。2月5日からほぼ1か月で1000件を超える申請があったということで、出足好調だと。791事業者の分析がありますから、どういう規模の事業者が申請しているのか。業種別にはどういうところが多いのか示してください。
【労働課長】
規模別でございますが、5人未満が159件、5人以上20人以下は347件、21人以上50人以下は153件、51人以上100人以下は81件、101人以上は11件ということで、5人以上20人以下のところが割合では44%となっており、この規模のところで使われていると感じております。
業種別では、建設業180事業者・22.8%、製造業155事業者・19.6%、卸売・小売業が105事業者・13.3%でございます。
【斉藤委員】
規模別では、1〜4人が20%なんですね。5〜20人が44%。だから20人以下で64%を占めるということで、この小規模・零細企業が積極的に申請していることを高く評価したいと思います。
それで問題は、しかし全体として売上に今の原料価格・資材価格等が転嫁できない。そして人件費を上げても、人件費の分を転嫁できない。こういう状況があるわけで、そういうところに対する支援策が必要だと。
そこで、中小企業事業継続緊急支援金、これは第一弾・第二弾とやって、1万件を超える申請がありました。特に第二弾は、2回にわたって補正予算を組んで対応したと。これだけ切実に要望されている取り組みは、そして県内市町村も連動して同額またはそれに近い額を上乗せ支援するというダブルの効果もあったので、来年度早い時期に、市町村とも連携をとりながら、この中小企業者等事業継続緊急支援金の第三弾が必要だと思いますがいかがですか。
【経営支援課総括課長】
物価等の高止まりによる影響、それからいわゆるゼロゼロ融資の返済といったものもあり、コロナ禍による影響が継続し、そういった環境もあり、厳しい経営環境に置かれているという状況もございますので、今後も中小企業者のニーズに的確に対応した支援が必要であると考えております。ただ、どうしても財源の問題等もございますので、そこら辺は国に対する働きかけなども継続的に行いながら、支援については検討を進めてまいります。
【斉藤委員】
もう1つ、新しい問題を指摘をしておきたいと思います。
昨日の国会で取り上げられた、岩手県内で2番目の事業規模のタクシー会社が倒産をしたと。倒産したきっかけは何かというと、社会保険料の滞納による差し押さえだったと。税務署よりひどいと言われるんですが、2023年度の差し押さえ事業者は全国34000件。いま厳しい物価高騰の中で頑張っている中小企業が、行政もさまざま支援策をとっているときに、社会保険庁が社会保険料滞納で差し押さえして潰すなどということは、絶対にあってはならないと思います。これは所管は違うと思いますが、やはり中小企業を守るという点で、こういうやりすぎについて、県の担当部局としてもしっかりものを言うべきだと。
もう1つ、これは皆さんご承知のように、日産が約束した下請け代金・納入代金を不当に引き下げていた。これはたった2年間で30億円です。公正取引委員会が厳しく指導をいたしました。実は20年以上前から行われていた可能性があると指摘されているんです。以前はマツダもやりました。トヨタは、いくら本社がぼろ儲けしても、下請けの単価は乾いたタオルを絞るぐらいに締め付けています。
いま大企業が空前の利益を上げて、内部留保をため込んでいるときに、それをきちんと下請け単価や賃金に反映させると。賃金については「満額回答」という報道もありますが、残念ながら下請け・中小企業には十分還元されていないと思います。だからこういう日産のような状況が他のところにあるかないか、総点検しながら、下請け単価を企業の利益・内部留保に見合ってやるように、行政としてもさまざまな関係機関と総点検しながらものを言うべきだと思いますがいかがですか。
【経営支援課総括課長】
いまお話ありました公租公課、コロナ禍で特例的に支払いが猶予されていて、それが明けたので払えなくなり差し押さえ、それがきっかけとなって倒産という状況は、最近報道等で見るようになってきましたし、県が金融機関や商工指導団体と設置して定期的に意見交換している事業継続支援センター会議の中でも、金融機関から実際にそういう実態があり対応に苦慮しているようなお話もお聞きしております。ただ、一方でやはり支払いが必要なものというところもございますので、その辺の兼ね合いは非常に難しいとは思いますが、県内の状況等的確に把握しながら、必要な対応があれば対応してまいりたいと思います。
それから下請法に関するお話ですが、やはり下請代金支払遅延等防止法に基づいて、発注者が順守すべき事項が定められており、それに反するということで、今般日産自動車、最近は小売り事業者の話もニュースになっております。そういった状況もございますから、基本的には国で所管する法律、公正取引委員会等で罰則等を所管しておりますので、そういったところ連携を図りながらということにはなりますが、県でも適切な対応という観点で関わりをもっていきたいと思います。
【斉藤委員】
実は中央タクシーの件についてもう少し立ち入って言うと、「事業の継続を困難にする恐れがある場合の社会保険料の猶予期間は最長で4年」となっています。鈴木俊一財務大臣は、「あまりにも取り立てが厳しすぎて破綻に追い込むのはいかがなものか。昨年10月はじめ、納付計画不履行の場合、計画見直しの協議などを年金事務所に周知した。納付猶予の緩和制度を適用するなど指導する」と。これは昨日の国会の答弁です。これをしっかり踏まえて、再びこういうことがないようにしっかりやっていただきたい。
もう1つ、この委員会でも議論になりましたが、商工会・商工会議所への支援―経営指導員の増員の問題について、残念ながら商工業・小規模事業経営支援事業費補助は、令和6年度は減少しているんですね。東北6県で見ても、予算額や経営指導員の数は、例えば秋田県は15億927万円、岩手県は13億円。経営指導員は秋田が143人で岩手は115人と。せめて秋田並に、本当に厳しい中で伴走型支援をやっている中小企業・商工団体への支援は、削減ではなく強化すべきだと思いますがいかがですか。
【経営支援課総括課長】
商工会・商工会議所の経営指導員の方々というのは、いまの厳しい経営環境に置かれている中小企業を伴走支援していくうえでも不可欠で、最前線でご活躍いただいている方々と私も強く思っております。他県との比較でいいますと、元々従来こういった支援は、国から都道府県向けの補助で行われておりましたが、平成5年から人件費は一般財源化されましたし、平成18年度からは事業費分も補助が廃止されて税源移譲がなされたということで、その段階から各県で若干差がでてきている状況でございます。
ただ、冒頭申し上げた通り、商工指導団体の方々の体制の整備は非常に大切だという認識を常に持っておりますので、これまでも中小企業事業再生再チャレンジ支援事業費で体制をさらに強化するという対応もとってまいりました。その時々で活用できる財源、必要な体制、そういったものをきちんと検討しながら体制の整備に努めてまいります。
【斉藤委員】
岩手県商工会連合会に聞きますと、経営革新計画の策定では東北1位、全国でもトップレベルの支援をやっていると聞いているので、ぜひその辺をしっかり評価して、対策を強化していただきたい。
・東日本大震災津波からの復興にかかる課題について
【斉藤委員】
東日本大震災から13年が経過をしました。報道等でも特集が組まれましたが、その中で、グループ補助の実績と高度化資金の貸付、返済状況、倒産、財産処分の状況、二重ローンの取り組みの実績と現状について示してください。
【経営支援課総括課長】
グループ補助金の実績については、令和6年2月末現在で、1570事業者に918億円余の交付決定を行っております。自己負担分について高度化資金を利用された事業者は、345件・165億円余の貸付となっており、返済状況については、完済が52件・7億円余、償還猶予・最終償還期限の延長などの条件変更を行っているのが68件という状況です。
倒産については26件ございます。水産加工8件、宿泊業と小売業が4件といった状況です。そして復旧した施設設備、財産処分制限期間内に譲渡や廃棄等を行う場合に、財産処分の承認手続きをとっていただきますが、673件の承認申請をいただき、そのうち財産処分にともなって県に補助金の一部に相当する額を納付していただいたものは105件・3億6千万円余です。
二重債務問題については、県では岩手県産業復興相談センターと岩手産業復興機構を通じて、事業再生計画の策定支援、債権買取金融支援を実施しております。岩手産業復興機構による債権買取件数は110件、そのうち経営再建等を果たしていわゆるイグジットと呼ばれる債務の完済等を行った事業者は98件、法的破綻等によってイグジットに至らなかった事業者は6件、支援を継続している事業者は6件となっております。
【斉藤委員】
グループ補助を受けて、大方これで再建をしたと。私は画期的な制度だったと。しかしその後、特に大不漁、コロナ、物価高騰ということで、26件の倒産の中で8件は水産加工業で一番多い。ここに本当に厳しさがあると思います。
知事と私たちが懇談したときにも、漁業・水産加工業の状況というのは、四重苦に対応する支援の「再強化」が必要だということでした。そういうことをしっかり受け止めて、生業の再生が最後まで成り立つような支援をしっかり継続・強化していただきたい。